440円光文社
戦乱の世を生きる男女の縁が色々と込められた短編集。
てだれの忍びの兄の嫁と暮らす愚鈍な弟、人質となって嫁いでいった
姫様の守り役、暗殺の命を受けた二組の夫婦が、駆け落ちと
その追い人として故郷を出るお話と設定が色々。
中には儚い最後を迎えてしまう二人もあるが、どれも
共通してどこか綺麗で潔く、読後感がいい。
たまに男性作家の書かれるお話では、女性が同じパターン
ばかりで心理描写もなく、読み手として感情移入を
しにくい場合もあるが、この作者さんの女性は見事と
言っていいぐらい女性視点に違和感がなく、物語が
悲しい結末でも、幸せな結末でもすんなり受け入れられる。
全部で七編のお話が納められていて、その中で男女の情愛
絡みでないお話は一つのみ。
そのお話も、愛でこそないけれど人の感情が
共感しやすく書かれていて読みやすいです。
しっとりとしたお話を読みたい方向け。
- 白石 一郎
- 夫婦刺客(めおとしかく)