7月27日-349
お秋が屋敷から逃げ出したあとの話。二葉屋の旦那様もおかみさんも、あれこれ詮索せず、お秋が言いたがらないのを察し「こういうことは、早く忘れる方がおまえのためだ」。質屋の世間知で大騒ぎしないでやり過ごすのがいいと思った、と。ほほぅ。
7月28日-350
富次郎はお秋に言う。「これからも、変わらずに忠勤なさい。甚さんのことは忘れっこないよね。だが、それ以外のことは忘れていい。この三島屋の変わり百物語が、まるごと聞き捨てにしてしまうからさ。あの印半天のことも忘れていいよ。二葉屋さんには、三島屋がとっくにばらして使っちまったって言いなさい」
富次郎、素敵だ
忌まわしい幻の屋敷の話は閉じた。
富次郎は以前ふらりと立ち寄った骨董屋へ。ここで出てくるのか!
7月29日-351
西洋の女魔物の掛け軸は売れていた。買い手の商家のご隠居の豪胆な話。富次郎、「オラショの印半天」の包みを膝の上に置く。
「今日は、売り物をお持ち込みくださったんでしょうか」と店主。
7月30日-352
店主と話しているうち、富次郎は今まで家で考えているうちは思いつかなかったことが閃いた。いわく、黒武は「黒い兜と鎧を着けた侍という意味かもしれません」…なるほど、そうか
うっかり捨てられない、この手の品物が舞い込んできたとき、どうするのかというと「手前どもでは、その手の品物も商いものでございます。どうするもこうするもなく、手入れして店先に並べ、目利きのお客様をお待ちいたします」
7月31日-353
骨董屋の主人は、富次郎のことを知っていた。あれは変わり百物語で評判の袋物屋、三島屋の若旦那だと、瀬戸物屋が教えてくれたのだという。「お話を集めるのが三島屋さんの得意なら、古い品物を扱うのが手前の得意でございます。ご安心ください」。
安堵に目が回りそうになる富次郎。読者も同様です
富次郎が半紙に書いたのは(描いた、ではなく)…。
お勝、「まあ。そういうことですの」。
駆け出しの聞き手、富次郎が効き捨てた最初の難話の締めくくり。(了)
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