本 3月8日-212
藪の中から白い顔。目があって鼻があって口がある。でも人ではない。ば、け、も、の。しかもぎゃっ!と叫ぶ。恐怖と動転、突っ走った甚三郎た、助けてくれ、誰か、誰か!
 
本 3月9日-213
前のめりにすっ転び、這いつくばっておそるおそる後ろを見やると、真っ暗な森と藪。助かったと立ち上がると、霧に包まれた満開の白梅。まさに場面一転、というかんじ。
 
本 3月10日-214
よく手入れされている梅林、きっと近くに家があると見当をつける甚三郎。化け物の叫び声も羽ばたきも消えたけれど、小鳥のさえずりさえも聞こえない。わたしも死んじゃいないよね?と慌てる。やがて見えた土塀。指先の感じる土の感触。
 
本 3月11日-215
瓦も土塀も崩れているその向こう側に見えた巨きな二階建ての巨きな家。本物の庭、せせらぎの音、柔らかな鐘の音。霞は吹き晴れることはない。
 
本 3月12日-216
とんでもない御殿の様子。よろけながら、へろへろの声で「通りすがりの者ですが、道に迷ってしまいました」と外廊下の端に腰を下ろす。
 
本 3月13日-217
疲労困憊の甚三郎、つい、こっくりと舟をこいでしまい、もう座っていられない、ほんのちょっとだけ横にならせてもらおう、と眠る。夢の中で自分が身を丸めて眠っている姿が見える。本人が見たって情けなく、ひどく貧乏くさい。闇の中で泳いでみる。本体の身体は小さくなっていくけれど、様子がおかしい、とはこれまた不穏な。
 
本 3月14日-218
おぉぉぉ…これは怖い。自分の姿が見えるだけでも怖いのに、その姿が…!そして闇を呑んでしまい、男の語り掛ける声。嫌だ!」と吠えるように叫んで目が覚める。目がかち合ったのは…。
 
本 3月15日-219

若い女。今度はちゃんと人。その場でとっさに正座して頭を下げ、す、すみ、すみません。わたしはね、め、めじ、目白へ行くところで、ど、どどどどどういうわけか、み、道に迷ってしまって

縮み上がる若い女。甚三郎は女の様子を見てただの女中と見て取り、身に馴染んだ上からの口調で言いつける。

 

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