2023年01月31日放送
マツコの知らない世界
https://www.tbs.co.jp/matsuko-sekai/
'365日焼き芋を食べる熱波師'
天谷窓大(アマヤソウタ)さん(以下、天谷)

マツコ「悲しいときも‘悲しんでいるなこの人’って思われたことないでしょ?」
天谷「そうですね、あんまり思われない」
マツコ「もうだってなんか目の形が笑ってるんだもん。すごい」
天谷「さっそくなんですがマツコさん。僕にとって焼き芋の魅力はなんなのか。こちらです。心も体もととのう。多幸感が味わえる究極の食べ物」
マツコ「わかるんですけど、最近の焼き芋やわらかくない?」
天谷「やわらかいですね」
マツコ「なんかねえ、苦手で」
天谷「そうおっしゃることはわかります」
マツコ「昔ね、焼き芋って割っても、こう、なんて言うのかな、ちゃんと割れたのよ。今のってさ、ムニュって。ムニュ。OLがああしたの?あれ。OLが好きなの?あれ。甘くなかったのよ、サツマイモって、あたしが子どものころ。ほんのり甘いくらい」
天谷「2000年代に入って安納芋が登場して以来、スイーツみたいなお芋っていうのが一気に広まっていきまして。しっとりねっとり系にちょっと押されて」
マツコ「やっぱり作付面積的には、ねっとり系のほうがやっぱり増えてきているのね」
天谷「ですね。やっぱりただちょっとこれだけ見ると『あ…』と思っちゃうかもしれないんですけど、ホクホク系が今巻き返しつつある」
マツコ「本当?」
天谷「サツマイモの新しい品種は、年に2、3個くらいのペースでけっこうなペースで実は出ているんですけど。最近出ている新しい品種ってホクホク系なの」
マツコ「ああそう。ああ良かった。やっぱりそうよね、ホクホクよね」
天谷「ぜひホクホク元気だよっていうのをマツコさんに」
マツコ「『ホクホク元気だよ』。良いねえ」
ナレーション「ということで、天谷さんイチオシ、ホクホク最前線をマツコが実食」
天谷「僕が特に注目している」
マツコ「もうだって断面がホクホクしてるもん。久しぶりに見たこれ。これよあたしが言ってるのは」
天谷「良かった。紹介しがいがあります」
マツコ「これよ。久々に見たわ本当」
ナレーション「‘むさしこがね’が食べられるのは埼玉県三芳町」
マツコ「三芳町なのね。お芋の産地だもんね」
天谷「川越芋の産地ですね」
マツコ「けっこう今お芋農家さんが、軒先でちょっとカフェやったりとかしてるよね。あの辺ね。あたし昨日今日のお芋好きじゃない」
ナレーション「そのいも街道の中で、300年以上続くサツマイモ農家が営んでいるのが『OIMO cafe』。自分たちで育てたサツマイモを使った料理やデザートを提供」
マツコ「ほらほら。やってるのよみんななんか。納屋とか改装してシャレオツなカフェ」
ナレーション「中でもお客さんに大人気なのが、栗のようなホクホク感が味わえる‘むさしこがね’」
マツコ「そう。ようやく戻ってきた。あたしこれが好きなの。最近焼き芋好きって言えなくなっていたのよ」
ナレーション「さらにホクホク感を存分に味わえるよう、つぼ焼きの遠赤外線でじっくり焼き上げる。すると2時間ほどで濃い黄色みを帯び、お日様の香りのような香ばしい焼き芋が」
店主・武田浩太郎さん「うちがホクホク系を販売していると、『これ買いたかった』『これ食べたかった』とホクホク系に戻ってきたなというお客さん、すごく感じます。昔ながらとか、これだったら毎日食べられるというか。お芋好きが戻ってくる味という感じで」
マツコ「そうなの。だからみんな気づいて、サツマイモ農家さん。もうあれOLの気まぐれだから。あれはもう一時的なものだから」
ナレーション「2つ目のオススメ、ホクホク芋を売っているのが、千葉県を中心に移動販売している『おいもやさんmoimoi』。ここではほのかに栗のような風味が漂う‘栗黄金’、‘大栄愛娘’など、希少なホクホク芋を各種取り扱うのだが、中でも天谷さんが絶賛するのが全国でここだけしか食べられない、サツマイモとは思えない白い皮が特徴の‘白あずま’」
マツコ「へえ、‘紅あずま’なんだけど、白くできるやつがあるんだ?」
ナレーション「農家さんとタッグを組んで改良したもので、中を割ると色鮮やかな黄金色でホクホク。懐かしいサツマイモ本来の味が楽しめます」
天谷「というわけで、実際にマツコさん、この2つを食べ比べしていただこうと思います」
マツコ「うわ、ありがとう。お久しぶり。お帰り。これどっちから食べるのがいい?」
天谷「まず‘白あずま’のほうから」
マツコ「こっちから?うわ、久しぶり。お帰り。いやー、ウマい」
天谷「そう言ってもらえると、お芋も喜んでいると思います」
マツコ「いやー、ウマいわ。久しぶりだわ。本当久しぶりだわ。うん。おいしい。ヤバい。いやー、ちょっとなんかなつかしくて涙出てきそうになる。昔のお芋だ」
天谷「ねえ。もう本当に昔ながらの。特に‘むさしこがね’を作っている『OIMO cafe』さんは、江戸時代から320年以上作り続けている農家さん」
マツコ「なんかなつかしいと同時に、こんなに道を踏み外してしまっていいのかっていうね。あのころのあたしはまさか女装で生計を立てるとは思っていなかったわ」
《育つ土で味が全く違う!土にこだわる焼き芋6選》
天谷「どうしてここまで焼き芋の魅力にハマったのかっていうところからちょっと。最初ですね、大学を卒業して」
マツコ「えっ。慶応?」
天谷「はい。実は」
マツコ「容姿関係なかったっけ?あんまり関係ないか。IT、合わなかった?」
天谷「そうですね。ボッキリいっちゃって」
(20代の天谷さんの写真)
マツコ「ちょっと待って。お父さんじゃなくて?今より老けてるじゃん」
天谷「このころはもう本当人生どん底なんじゃないかってくらいの時期で」
ナレーション「寝る暇もないほどの多忙な仕事と、人間関係のストレスで心がボロボロに。その後心機一転、転職した先で偶然焼き芋イベントの運営に関わるように」
天谷「その焼き芋を食べて、『ああ、人生って楽しかったんだな』って」
マツコ「なんか、やめちゃっていいと思うんだよね。そういう思いしている人、いっぱいいるじゃない、きっと。あとから考えればいいよ。今の写真と比べただけで、今お幸せなんだろうなというのがわかるんだから。よかったよ、本当に」
天谷「うれしい。ちょっと泣きそうに」
マツコ「いやいや、本当に」
天谷「どん底の中に差した一筋の光が焼き芋だったんです。食べてて『あ、幸せだなあ』って多幸感がすごく湧いてくる気がするんですよね。じんわり多幸感に満たされていく」
マツコ「‘多幸感’って言葉好きね。よっぽど幸薄かった時が長かったのね」
ナレーション「焼き芋に救われ、これまで2000本以上食べてきた天谷さん。その中で焼き芋のおいしさを生み出す最も大切なものに気づいたという」
天谷「こちらです。おいしさの秘密は土にあり。たとえば同じ品種のサツマイモだったとしても、育つ土地が変わると全然違う味になるんです。サツマイモって根っこを食べる食べ物なので、土の養分がダイレクトに味に影響する。というわけでこうやってパネルを見ていただくと、いろんな土地でいろんな土のもと、サツマイモが育てられています」
マツコ「ちょっと、‘うなぎいも’おいしそうね」
ナレーション「‘うなぎいも’を作っているのは、ウナギの名産地として知られる静岡県浜松市」
天谷「この‘うなぎいも’、このうなぎの骨や頭を使って育てているお芋なんです」
マツコ「肥やしにしているってこと?」
天谷「はい。さばく際にやっぱりどうしても頭とかね骨って変わっちゃうじゃないですか。そこに目を付けたのがサツマイモ農家さんなんです」
うなぎいも農家・笹原基央さん「さばいたあと捨てられてしまう頭や骨が、栄養価が高い」
天谷「そのまま捨てちゃうのもったいないということで、ご覧のようにたい肥に鰻の頭と骨を混ぜて。ウナギに含まれているミネラル・ビタミンがお芋の濃厚な甘さとうまみを作り出しているというわけなんです」
ナレーション「ちなみに濃厚な甘みが特徴の‘うなぎいも’は、バターとザラメを乗せてオーブンで3、4分焼くとブリュレのようなザクザクした食感が味わえる絶品スイーツに」
天谷「あとなにか気になるところありますか?」
マツコ「‘なると金時’って、あの‘なると金時’とはまた違うの?」
天谷「まさにその‘なると金時’です。なんですが、‘里むすめ’というこの品種は、特徴的な土作りをしているんです」
ナレーション「鳴門海峡からほど近い徳島県鳴門地区で栽培されている‘なると金時里むすめ’」
天谷「こんな感じですね、育っているのがいわゆる海抜ゼロメートル地帯と言われる場所。すごく水はけも良くて、しかも海水由来のミネラルがすごく豊富な砂地で育っているんですね。土にミネラルを蓄えて、味もそうなんですけど、この美しい赤紫色の見た目をこうやって実現しているというわけなんです」
マツコ「‘なると金時’くらいでよかったんだよね。‘なると金時’が出てきたとき、『うわー、あまーい』ってなったじゃない?それをありがたく食べてたのよ」
天谷「わかります。やっぱり僕は昔ながらのホクホク焼き芋が」
マツコ「結婚する?」
天谷「あとですね、こちら。北海道の空知地区で育てている‘由栗いも’というのもちょっとご紹介させてください」
ナレーション「‘由栗いも’を作っているのは、北海道の中央部、由仁町と栗山町」
マツコ「それぞれの文字をとって‘由栗’にしたんだ?」
天谷「そういうわけです」
ナレーション「そもそもサツマイモの栽培北限は福島県辺りと言われており、本来は暖かい地域の作物。年間を通して気温が低く、冬は雪に覆われる北海道は、サツマイモの栽培に適していないと言われていた。しかしそんな常識を覆そうと、2つの町の若手農家が立ち上がったのです」
天谷「やっぱり北海道ってすごい低気温で、なかなかやっぱりサツマイモが育ちにくい場所って言われていたんですね。本州よりだいたい1か月ほど長く土の中に入れておくんですね。これがかえってサツマイモにはとてもプラスに働いた。こうやって長く置いておくことによって、甘みがたっぷりと蓄えられて、しっとりと甘みの強い‘由栗いも’に」
マツコ「芋掘りに行ったのを今思い出した」
ナレーション「生産開始から5年、クチコミでおいしさが広がり、出荷量も年々増加しているという。他にも、阿蘇山の水はけの良い火山灰土で育てられる‘甘太くん’はうまみが凝縮し、焼くと糖度40度を超えるものもあると言われ、また黒潮のミネラルをたっぷり含んだ土壌で育つ‘なんたん蜜姫’はクリーミーな食感が特徴。中でも天谷さんが一番土にこだわっているというのが」
天谷「こちらです。長崎県五島列島で育てている‘ごと芋’というお芋です」
マツコ「全然知らなかった。でも窓大ちゃんが勧めてくれるくれる焼き芋は、絶対においしいと思う」
天谷「『日本さつまいもサミット』というのがありまして、ここで『さつまいも・オブ・ザ・イヤー』、そして『ファーマーズ・オブ・ザ・イヤー』、この2つあるんですけど、2022年にダブル受賞したお芋」
マツコ「農作物としても表彰され、農家としても表彰されたんだ?」
天谷「そういうことですね」
マツコ「あら、すごいわね」
ナレーション「日本一に輝いた‘ごと芋’が作られているのは、長崎県五島列島。その土へのこだわりというのが」
天谷「同じ畑で2年に1回しかサツマイモを作らない。サツマイモって本来、毎年作ることができるんですけど、やっぱりその1回育てると、土の養分をお芋が吸い上げちゃうので、土地がやせちゃうんですね」
ナレーション「栄養分が少なくなっている畑では、連作をせずに小麦や大豆を育て、それを緑肥にし、再び元気な畑を作り上げるという」
マツコ「ええ?芋の値段じゃないんじゃない?そんな2年にいっぺんだから、3000円くらいするんじゃない?あれ1本」
天谷「そんなにしない」
マツコ「そんなしない?肥料にしちゃうわけでしょ、だから1年間植えた麦とか大豆を。すごいわよな」
天谷「食感的にはふかし芋が好きな方も気に入っていただけるんじゃないかなと」
マツコ「今までのに比べると、ちょっとしっとりしているね」
天谷「いかがですか?」
マツコ「これが本来の、『サツマイモって甘くておいしいよね』なのよ」
天谷「本当にまさにその土の、あの手間暇かけて育てた土の栄養がギュッと」
マツコ「すごいなんかこう、みなぎらしているわね」
天谷「本当に大地をいただいているって感じになります」
マツコ「これたぶん、小学校のときの甘さのあまりなかったサツマイモを食べている少年Aがこれを食べたら、たぶんこれ腰抜かしていたくらい正攻法の甘さ。昔の家って、台所の横にダイニングテーブル置いてなかった?あの家が浮かぶ。サツマイモってすごいね」
天谷「いろんなことを思い出させてくれる」
マツコ「ちょっとごめん、本当なんか死ぬ前みたいになってる」
ナレーション「3年前から横浜にあるサウナで熱波師として勤務している天谷さん。働く中で、焼き芋とサウナの共通点を見つけたという」
天谷「それがですね、こちらなんです。12月から2月が最高の季節。寒いときにすごくやっぱり良いっていうところでも同じで。調査によると、実際寒くなってくる12月から2月にかけてドカンっと上がるんですよね。焼き芋っていうと一般的に秋が旬なのかな、ってありませんか?なんですけど、実は焼き芋って掘り出した直後よりも、しばらく寝かせることで甘さおいしさが増して、ちょうど12月から2月にかけてが1年で一番おいしくなる」
マツコ「石を熱してという意味ではいっしょだもんね」
天谷「まさにあれも石焼きですから」
マツコ「そうだよね。石なんじゃない?もっと突き詰めると石にたどり着くんじゃない?」
天谷「石か。確かに」
マツコ「あ、えっと。すごい純粋な目で見てくるから。ごめん、嘘。ごめん、適当に言っただけよ。そんなあたし予言者とかじゃないから」
《最高の環境で最高の焼き芋を!マツコと冬空の屋外焼き芋》
天谷「今いろいろ食べていただきましたけど、今日はどうしてもマツコさんに体験してもらいたいことが最後にあるんですよ。こちらです。最高の焼き芋を最高の環境で食べてもらいたい。まず福井県あわら市で育てている‘とみつ金時’というお芋を食べていただきたいなと。育てているのがあわら市富津地区という、日本海沿いの」
マツコ「あわら温泉の‘あわら’?」
天谷「そうです。これはホクホク系の風味を残しながら、しっとり甘さも持っているお芋なんですけど、貯蔵の仕方にも秘密がありまして、室温35度、湿度95パーセントの環境で90時間置いておきます」
マツコ「湿度95パーセント?もうだから本当にムシムシの暑さの所から、一気に12度の所に」
天谷「こうして寒暖差を極端に作り出すことで、よりお芋の持っているポテンシャル、味を引き出すことに成功しているという。実はその最高の焼き芋を楽しんでいただくために、ある方にご協力をいただいております。この方です」
猪野正哉さん「こんばんは、マツコさん。ご無沙汰してます」
マツコ「あのね、焚き火をやってね、金を稼いでいるアコギなやつよ」
天谷「言い方」
ナレーション「今から4年前(2019年2月26日放送)、マツコに焚火の世界を案内してくれた焚き火マイスター猪野正哉さん。今夜は寒い冬空のもと、焼き芋をおいしく食べるための最高の環境を作ってくれました」
マツコ「行きましょう」
天谷「はい、お願いします」
マツコ「焚き火すごいから。あいつの焚き火は」
(TBS8階中庭)
天谷「ではマツコさん、最高の焼き芋が楽しめる環境ご用意しました」
マツコ「でもあちらが焼き芋屋さん?」
天谷「はい。‘とみつ金時’を焼かせたらこのお店、という『ヒゲ商店』さんです。福井から来ていただきました」
マツコ「福井から?ありがとうございます」
店主・関賢一郎さん「お待ちしておりました。よろしくお願いします」
ナレーション「焼いてくれるのは、自らも‘とみつ金時’を栽培する『ヒゲ商店』」
マツコ「石焼き?」
関さん「完全な石焼きです」
マツコ「見たい。良い匂い。ああ、なつかしい」
天谷「焼く石にもすごいこだわっているんです、『ヒゲ商店』さん」
マツコ「きれいな石だよね」
関さん「ありがとうございます。那智黒っていう石と」
マツコ「碁石に使うやつじゃん」
関さん「富士山の溶岩プレートを細かく砕いたものを混ぜ込んでいます」
マツコ「これ悩むんだよね。どういうのが好き?」
天谷「真ん中の大きく育ったこのお芋」
マツコ「そういうタイプ?あたしはこの中だったらこれ」
関さん「まちがいないです」
マツコ「本当?よくばっちゃうタイプでしょ」
ナレーション「寒い冬空のもと、焚き火がある最高の環境で、最高においしい焼き芋を実食」
マツコ「うわ、お芋が良いからね、きれいに割れるのよ」
関さん「ありがとうございます」
マツコ「いただきます。おいしいわ」
天谷「ウマいですね」
猪野さん「最高ですね」
マツコ「甘すぎないから良いのよ」
関さん「ありがとうございます」
マツコ「蜜が出ないのに甘いからおいしいの。何言ってるかわかる?焚き火屋はうまくいってるの?」
猪野さん「はい、おかげさまで。前回出させていただいて、放送終了後にプロポーズしまして、無事に結婚しました。今日も」
睦さん「はじめまして」
マツコ「なにが良かったの?こいつの」
睦さん「なんだかおもしろいところですかね」
マツコ「言っちゃあ悪いけど、そんなにおもしろくないわよ」
~完~