2021/09/21放送
マツコの知らない世界
https://www.tbs.co.jp/matsuko-sekai/
'ローカルパンに自分を重ねる男'
酒井雄二さん(以下、酒井)

マツコ「自分を重ねる?ローカルパンに?それよりびっくりしちゃったの。たぶん同い年。同じ時代に青春を過ごしていたのね」
酒井「こんにちは」
マツコ「48?」
酒井「はい。昭和47年の10月なんですよ」
マツコ「月までいっしょ。何日?」
酒井「10月5日です」
マツコ「けっこう離れてきた」
酒井「でも同い年ですよね、マツコさん」
マツコ「同い年だし、あと月もいっしょです。だからだいたい見聞きしてきたもの」
酒井「同じはずです」
マツコ「観てたテレビとか、聴いてた音楽とかもだいたいいっしょよね」
酒井「ほぼ同じはずです」
マツコ「でも不思議よね、ほぼ同じ時に生まれて。千葉って磁場が悪いのかな」
酒井「今日はこの辺からお伝えしてまいりたいと思います。皆様にお伝えしたいこと、ローカルパンはおもしろパンじゃない。ご当地グルメと同等に扱ってほしい、という」
マツコ「すごいお上手。なに?今の」
酒井「そういうほめられ方したことない」
マツコ「いやいや、すばらしかった。あたしちょっと感動。声はもちろん美しいし、すばらしかった今の」
酒井「そういう地方のパンを、例えばご当地パンフェスみたいなもので一堂に会して集めてみるみたいなこともあると思うんですけれども、そういうときえてしておもしろパン扱いされちゃうんですよね。『珍しいものばっかり集めてみました、どうですか?』そういう目線になりがちなんですけれども、そうじゃなくてこういうパンって地元ではめちゃくちゃ愛されてるパンなので、あのパンがないなんて信じられないみたいな。そういうみなさんの心のパンになっているパンなんだっていうのを」
マツコ「名前伏せてナレーションかなんかやってます?要はだからあなたの東京人としての目線で見たらこれは物珍しいものだろうけど、それぞれ地元で何十年って生き残ってきたパンが集結しているんだよと。奇異の目で見るなと」
酒井「そういうことです。その理由がこちらです。パン店にも負けない。こだわりとぬくもりが詰まっている。言ったら袋パンです。袋パンなんだけれども、最近はいろいろ高級パン店みたいなのもたくさんありますけれども、そういうパンにも負けない魅力というものを今日はお伝えしたいなと。よろしくお願いします」
マツコ「わかりますよ。恵比寿との戦いになるわね。やだ、もうちょっとすごいのがいる」
酒井「気になるのありますか?」
マツコ「名前が好きです。『マイフライ』。私の揚げ物よ。すてきね。『マンハッタン』っていうのもすごいわね、憧れが強くて」
(鳥取県 亀井堂;マイフライ)
(福井県 リョーユーパン;マンハッタン)
酒井「それぞれにストーリーがあって」
マツコ「すばらしい。見ているだけで。あとこの『メロンパン』ってあるじゃない?これも広島の呉かどこかのやつよね?」
(広島県 呉のメロンパン本店;メロンパン)
酒井「西日本で我々の言うメロンパンとサンライズという。これが逆になっているという現象が起きていて」
マツコ「サンライズ?あら、おしゃれね」
ナレーション「そんなご当地スーパーヒーローの中から、まずは酒井さんイチオシ、北関東民が愛してやまないソウルフードをマツコが試食」
酒井「群馬県みそパンでございます。フリアンパン洋菓子店、『フランスみそパン』」
マツコ「これはいただいたことないけど、要はみそまんじゅうのパン版」
酒井「みそまんじゅうっていうのはローカルフード。群馬と言えばみそまんじゅうなんですけれども」
マツコ「涙が出そうになる。群馬はふるさとじゃないはずなのに」
酒井「なぜかなつかしい感じ」
マツコ「なにこれ。これ見て。すごいシンプルなの。味噌が挟んで塗ってあるだけなんだけど。なにこれ」
酒井「すごく長くテイスティングを。香りを楽しんでいただいて」
マツコ「これ本当に良い香りなのよ。おばあちゃんの味がする」
酒井「みそだれっていうのが、社長さんすら知らない秘伝の配合で限られた人が調合している」
マツコ「社長さんも知らないの?」
酒井「そういうことらしいんですよ」
マツコ「作ってる方たちしか知らないんだ?でもこれおしゃれよ、パッケージ。あとパンも非常においしいですよ」
酒井「ちぎるときも少し手ごたえが強めという」
マツコ「このあとみそだれを味噌田楽にしたい」
酒井「けっこうたっぷり入ってるから、なにかに塗りたい感じもします」
マツコ「めっちゃおいしい」
酒井「僭越ながら、ここで自己紹介。出身は愛知県。ローカルパンに自分を重ねる男、酒井雄二48歳」
マツコ「かわいい48」
酒井「ありがとうございます。マツコさんと同い年です。ゴスペラーズというグループで歌を歌っておりまして、ローカルパンハンター。Twitterなんかでコンサートツアーの合間に見つけたパンをみなさんに知っていただくというような。そういう趣味。上京してきまして、早稲田大学でアカペラサークル『Street Corner Symphony』に入りました。あれこれしているうちにゴスペラーズのメンバーになりまして1994年にデビュー」
マツコ「えー!ずいぶん印象違ったね。芸能界ってすごい。あたしも人のこと言えないけど、こんなに人を垢抜けさせるんだね。いやでもあたしこちらの殿方相当タイプです」
酒井「そこから全国ツアーをするようになった頃、2010年岩手のスーパーで『福田パン』と出会う。福田パンというのが、岩手県盛岡のパン屋さん。パン工場を持って非常に大規模にやっていらっしゃる」
マツコ「すごい種類出してるじゃない」
酒井「種類が多いんです。明日の朝ごはんでも買いにいこうかなと思って、スーパーのパン棚見たら最大手さんのパンがずらーっと並んでいるわきに、こんくらいの福田パンの棚があって。うそでしょ、どういうポジション?と思って」
マツコ「どういうポジションって」
酒井「いやだって、ありえないじゃないですか」
マツコ「もちろん大手さんはちゃんと棚として、あたしたちが見慣れている棚があり。それとは別に、まあある意味雑に積まれているわけですよね」
酒井「買ってTwitterで『こんなんあったんだけど、これって…』っていう感じで投稿したら、『酒井さん、それは福田パンです』『私たちのソウルフードです』みたいな」
マツコ「要はだからみんな学校帰りとかに」
酒井「高校とかのコンビニとかでは取り合いで。高校野球のスタンドでも売り子さんが売ってて」
マツコ「みんな給食だから、そのパンで育ったみたいなもんだから思い入れが違うのよね」
酒井「そこなんですよ。それがなんだか聞いててうらやましくなってきて。コンサートのMCっていうかトークなんかで、広島でお好み焼き食べましたよって言っても、そんなに喜んでもらえない。ていうのがあるので、ローカルパンの話をしたときのお客さんのドヨザワザワっていうのがすごいうれしくて。口下手な僕にとって、地元の人を笑顔にできる最高のツール」
マツコ「こういうきっかけもあったのね」
酒井「めっちゃ心開いてもらえるので、そのあとの歌も歌いやすいんですよ」
マツコ「気がついたらこんな饒舌になってしまっていたのね」
酒井「自分ではそんな饒舌だとは」
マツコ「いやいや、お話しすごいお上手ですよ。あのね、なんて言うんだろう。いっしょに住める。…酒井さんがイヤだわ」
《ローカルパンのおいしい食べ方’パン圏’》
酒井「マツコさんもパンお好きですよね?」
マツコ「あたしけっこうこういうのたまんないタイプです」
酒井「世代で言うと、給食がパンから始まってますよね」
マツコ「ご飯の日は特別な日でしたよ」
酒井「後追いでご飯給食、米飯給食スタートしたんですよ」
マツコ「『毎週火曜日と金曜日、ご飯給食が始まります』、みたいな。鳴り物入りでご飯給食が始まったの。有吉さんが広島の地元のパン、『アポロパン』っていうさ。あれが復刻してくださって食べたんだけど。アポロパン食べたときに、アポロパン食べてないんだけど似たようなものは食べてるのよ。ザラメとバタークリームと。『甘い』っていう。あたしは今砂糖をいただいています、っていうね。だからそういうもののほうが、あたしたちの世代って幸福感を感じますよね」
酒井「砂糖の自由化っていうのもあったらしいんですよ。確か、東京オリンピックのちょっと前くらい」
マツコ「それまで砂糖って規制のもと使われてたの?」
酒井「そこまで自由に使えなかったらしいんですよ。僕ら70年代じゃないですか。砂糖がふんだんに使える時代に入った」
マツコ「じゃああたしたちが一番」
酒井「直撃世代です。ローカルパンをよりおいしく食べていただくために、押さえておいてほしいことというものをご提案いたします。こちらです。『パン圏』をおさえろ。これ僕が作った言葉なんですけど、エリアです。こっちから行かないと買えないっていう」
マツコ「パンは賞味期限ないからね。短いから、調理パンみたいなのは。あと小さい会社だったりするとね、そんなにやってらんないしね」
酒井「僕が全国ツアーでバスなり新幹線なりいろんな交通手段で日本をずっと移動していくときに、どうやら県境と関係ないなっていうことに気がついたんです。まだ青森県に入ってないのに、青森の工藤パンさんのパンがもう売ってるな、岩手でも」
マツコ「地方の強いパン屋さんのテリトリーみたいなやつ」
酒井「日本地図から一回県境を消してみようと」
マツコ「なにをやってるんですか?そんなことをやってるんですか?」
酒井「一回まっさらの白地図にして」
マツコ「パンによる区分けをしたのね」
酒井「そうです。それがこちらになります。ちょっと見ていただきたい」
マツコ「あたしたぶん本当にいっしょに住める。似たようなこういうことやるの大好き」
酒井「だいたいこういうふうなんじゃないかと。もちろん漏れとかたくさん。僕がまだ出会ってないパンもたくさんあるので、ざっとという感じなんですけども。大手全国区のパンメーカーさんというのは、日本のどこにても工場があって行きわたらせることができるんですけども。沖縄は完全に独自のパン圏なんですよ」
マツコ「沖縄のパンってでかいのよね」
酒井「これみんなで分けるために切れ目の入った『なかよしパン』」
マツコ「やさしさ」
酒井「オキコパンさんですとか。コンビニのパン棚見るだけでも、ガラッと違うって思います」
マツコ「逆に沖縄だと、大手って全部入ってるの?」
酒井「例えばプライベートブランド、ファミマのパンとかは日本の他の地域と同じように並んでいるんですけど、ローカルパンの面積広いです」
マツコ「沖縄ってやっぱりそうなると地元がけっこう幅利かせてるんだ」
酒井「あと同じように北海道にもパンメーカーさん多いですし。それからおもしろいのがローカルパンの宝庫と言っていいと思います。東北エリアです。東北6県全域にわたって、青森県の工藤パンさんと岩手のシライシパンさんが」
マツコ「東北じゅうに販路があって?工場もいくつかあるのかな」
酒井「秋田にはたけや製パンさん、宮城にはフレッシュ製パンさん、山形のたいようパンさん。なので、東北に行くといっぺんにこのパンもこのパンもこのパンも食べられるといった意味ではすごいおもしろいエリアなんです。まず行くと誰でも見つけられるという感じ」
マツコ「あんまり東京では見たことがないものが比較的お求めやすい?」
酒井「いきなり出会える」
マツコ「いきなり出会いたい」
ナレーション「東北大手の青森県工藤パンが販売する『イギリストースト』は、東北6県のコンビニ、スーパー、ドラッグストアに並ぶスーパーヒーロー。岩手県を拠点とするシライシパン『豆パンロール』も東北6県で売られているローカルスター。山形県たいようパンの『ベタチョコ』も県をまたいで50年以上愛され続ける東北のアイドル。そしてパン圏マップが教えてくれる一番の狙い目が、秋田と宮城の県境にあたる重複エリア。1か所で4種類ほどのローカルパンと出会える聖地になっている」
酒井「同じように九州も全域にエリアを持っているリョーユーパンさんがあり、鹿児島のイケダパンさんがあり、『ネギパン』なんかはこちらの熊本でしたし。『ジャリパン』っていうのが人気のある宮崎っていうエリアもある。こちらもひとつの旅行先でいくつか出会える可能性、重複があると思います」
マツコ「東北みたいに比較的見つけやすい」
ナレーション「熊本県高岡製パンの『ネギパン』は高校の購買で争奪戦が起こるほど人気スター。さらに九州全土にパン圏を広げるリョーユーパンは、こちらの絵画風のCMでもおなじみ」
マツコ「これやっぱり関東のあたりが空白になってるのは、大きい所にどんどん負けていったのかな、地元のパン屋さんが」
酒井「パン店自体はすごい多いと思うんですけど、パンメーカーということでいうと競合がひしめいている」
マツコ「それこそPascoだの神戸屋だの乗り込んでくるわけだから、大手が」
酒井「それで生き残ってるのがすごくないっていうのが。その大手のパンもきてるんですよ。きてるんですけど、コンビニのパンすらセブンにはセブンのパン、ファミマにはファミマのパンがあって。でも居場所が残っているロングセラーってのはどういうこと?ていう話です」
マツコ「和歌山のやつかわいいの。なにそれ」
酒井「名方製パンさんです」
マツコ「かわいい。昔から変わらなくてそのデザインって、相当ハイカラさんよ」
酒井「50年代60年代のレコードジャケットみたいな」
マツコ「わかる。『スイート』っていうカタカナの書体がすごいかわいい」
酒井「創業者の名方吉兵衛さんがアメリカより帰国し」
マツコ「だからか」
酒井「そういうおしゃれなセンスを」
マツコ「本場の見てきた方だ。だからちょっと違うんだね」
酒井「アメリカン感じませんか?なんとなく」
マツコ「そういう血が入ってたのね。なるほど。おもしろい。『羊羹ぱん』との対比がまた良いんだよね」
酒井「『羊羹ぱん』もまたすごいおもしろいパンで」
マツコ「誰かからいただいたのかな?」
酒井「これはパンマニアの中で謎とされているパン。なぜか北海道にもあるし、富山にもあるし、高知にもあるし、あと静岡にもある」
マツコ「じゃああたしがいただいたパンは高知の菱田ベーカリーさんのじゃなかったかもしれないね」
酒井「なんで離れた場所に別々に羊羹ぱんがあるんだろうって、諸説あって」
マツコ「羊羹って和菓子の中でも別格なものじゃない?砂糖の量も多いし。偶然いろんな人が思いついたとしても、不思議じゃないよね、羊羹だったら」
酒井「あんこと同じくらいパンになにかっていったら出てきそう。そうやって想像するのめちゃくちゃおもしろくないですか?」
マツコ「あたし手のひらの上で転がされてない?そういうタイプ?」
酒井「菱田ベーカリーさんからの調査結果によると、どうやら初期は日本全国で流行ったっていう説。全国的にどこでもパンに羊羹をタラリとかけて固めるという、はさむのではないタイプなんですけど。日本中かつてはあったんだけど」
マツコ「あたしやっぱそちらのな気がするんだよね、食べたの。表面がコーティングされてるやつ。薄い羊羹がパンに乗っかってるみたいな」
酒井「本当に最初は焦げたあんぱんをトップを隠すためにコーティングしたんですって」
マツコ「そうなの?要はまだパンを焼く技術が。けっこう黒くなっちゃったんだろうね」
酒井「それを羊羹をコーティングすることで。最初はです。今はちゃんとやってる」
マツコ「ウマい」
酒井「北海道もようかんパンは各社作ってるんです。富山は抹茶色の『ヒスイパン』。静岡のようかんパンはおへそがへこましてあるっていう特徴があります」
マツコ「やだ。もうこんなに食べてる」
酒井「僕この中でいうとオススメがありまして。今ってマリトッツォってめちゃくちゃ流行ってるじゃないですか。マリトッツォがあれだけ流行るんだったら、このパンも流行っていい」
マツコ「あたしも同じこと思いました。これをちやほやするんだったら、日本に似たようなものあるだろうっていう」
酒井「それだったら俺好きなものいっぱいあるよっていう」
マツコ「わかります。もっと日本のものを応援しなさいよって。これはそんなに騒ぐものじゃないだろうっていうね。あ、ごめんなさいね。イタリアの方ごめんなさいね」
酒井「そこに関しては本当にごめんなさい。おいしいです」
マツコ「ただね、おいしいはおいしいんだけど、あるよっていう」
酒井「俺の好きなもの食べて」
マツコ「そうそう、そういうこと。やっぱ同じこと思いました」
酒井「ありがとうございます。心強いです。推したいのがこちら、長野の『牛乳パン』です。これがすごくおもしろくて、ボリュームからクリームの量から、マリトッツォどころの話ではないです」
マツコ「すっごいよこれ」
酒井「信じられないです。どうしてこんなにクリームを?って聞いたら、なんか喜んでもらえる」
マツコ「これすごいね。これ長野のどちら?」
酒井「松本エリアっていうふうに」
マツコ「これあたしもし地元のパンだったらうれしいな。松本のあたりの方は放課後とかこれ食べるの。これすごいな」
酒井「ちょっとしたレンガくらいあります」
マツコ「クリームちゃんと映ってる?すんごいよ。どうやって食うの?ちぎっていいのかな?本当マリトッツォっぽいね。パンの比較的ずっしりした感じとかも」
酒井「それでいてクリームがバタークリームなんですって。でもそれほどしつこくないんです。サラーっと軽いんですよ。だから見た目ほどノックアウトされちゃうようなパンではなくて、『軽っ』と思いながら食べきれる」
マツコ「うんまい。このバタークリーム本当においしいね」
酒井「これお店では早々に売り切れるんですよ。お昼過ぎに行ったらもう無いくらいの」
マツコ「こんな軽やかなバタークリーム初めて食べた」
酒井「もう全く同感です」
マツコ「エアリー。バタークリームがエアリー。めっちゃうまい。これなんか止まらなくなるのよ」
酒井「本当ですよ。なんか食べちゃうんですよ」
《酒井さん流ローカルパンの2大楽しみ方》
酒井「ローカルパンがより味わい深くなる楽しみ方①、大手じゃ弾かれる、1周回っておしゃれなパッケージ。先ほどマツコさんもおっしゃってましたけど、パッケージが良いっていうパンが多くて」
マツコ「うん、すてき。日本って企業のロゴとかをすごい変えるじゃない?」
酒井「いじりますよね、『ここちょっと鋭くしました』とか」
マツコ「まだそれだったらいいけど、ガラッと何年かにいっぺん変えちゃう会社とかあるじゃない」
酒井「急に社名がアルファベットになったり」
マツコ「そう。あれなんか逆にダサいなって思うんだよね」
酒井「こういうローカルパンの世界では、変えないほうがいいよねっていう力が働いているというか、そういう声が集まっている事例が多いというのがデザインもロングセラーになっている理由かと思います。ちょっと見ていただきたいなと思うのがこちら」
マツコ「ちょっと待って。おしゃれパン屋だったんじゃない。なにこれ、『スイート』と『セレクト』があるの?かわいい紫」
酒井「名方製パンさんのパンって棚に並ぶと、レインボーカラーみたいになる」
マツコ「かわいい。やっぱいっしょに暮らせるんじゃない?これがあるの知らなかったんですよ、あたし。知らなかったのにさっきあたし名方さんに食いついたわけよ」
酒井「お目が高いなとしか言えない」
マツコ「お目が高いじゃなくて、雄二とつながってるの。これはもうそうとしか思えなくなってきた」
ナレーション「開発当時から変わらないパッケージやネーミングには、意味と理由が。たとえば沖縄県『なかよしパン』のカエルは戦後沖縄への復興への思い『無事に帰る』『福を迎える』などの縁起物として。石川県『頭脳パン』は脳の働きをよくするといわれるビタミンB1を多く含む頭脳粉が原料だから。中でも酒井さんが注目しているローカルパンが」
酒井「たとえば一番奥『ゼブラパン』。なぜシマウマが?これをコンビニの棚で見たときの驚き。気になりませんか?なぜ黄色い札を下げているんだろうとか。なぜシマウマなんだろうかとか」
マツコ「なにこの札?」
酒井「これはもともとここには値段が印字されていたんですって。ディファインされていく中で、値段はこっちに書こうって別のスペースができたあと、この札どうするっていう話になって。この黄色い札が昔から目印だったから、これは残そうよということになって、この札だけが今ここに残っている。たとえばここになにかを書く人がいたり、受験シーズンではここが五角形の絵馬になっていたり、そういう粋なことをするみたいです」
マツコ「それはわかったんですけど、なんでシマウマだったんですか?」
酒井「それはぜひお手に取っていただいて。サイドからご覧いただきたいなと思っております」
マツコ「理屈はわかりました。なかなかシマウマにはたどり着かないと思うんですけど。なるほどね、層になってるから。何が挟まっているんですか?」
酒井「沖縄といえばのピーナツクリームと、それから黒糖シートっていうのが」
マツコ「絶対ウマい。ピーナツ&黒糖」
酒井「これはなかなか沖縄ですよね。これもまたけっこうな量がありますよね」
マツコ「すごいですよ。子猫くらい。生まれたての子猫くらいの重さですよ。思ったよりあっさり。意外とぺろっと食べれちゃうかも、あっさりしてるから」
酒井「これもコンビニにあるくらいの人気パンということで」
マツコ「ピーナツに黒糖、良いな。ピーナツっぽい砂糖があまり入ってないのが好きで。けっこうあたしそれにメープルシロップをかけたりして食べてるのよ」
酒井「天才ですね」
マツコ「え、あたしこれ発表したらノーベル賞獲れるかな?」
酒井「では次のフリップにいってみたいと思います。ローカルパンがより味わい深くなる楽しみ方②。どうやってうまれたのか?の謎解きがおもしろい」
マツコ「ねえやっぱりこれ運命じゃない?さっきやっちゃってたじゃん」
酒井「そうなんですよ。これって?ていうふうに、そこのところを想像するのが楽しい。たとえばこのパンどうしてこうなったんだろう?って本当に知りたいというようなパンを集めてみました。まずはこちらです。食パンをカステラ生地で巻いた新発想。鹿児島県イケダパン『スナックブレッド』。僕炭水化物本当に好きなんですけど」
マツコ「あたしもです。でもなんでこんなに差が生まれるんだろう?」
酒井「こちらのスナックブレッドというのはですね、食パンの中身のところをカステラ生地でロールしたものでございます」
マツコ「確かにこれなんで作ろうと思ったんだろう。見て。でもこれ美しいよ」
酒井「この発想、全然ない」
マツコ「わかる?これ、額縁みたいになってるのよ」
酒井「中の四角いところ、食パンでございます。これ思いつける?」
マツコ「あと思いついたとしても、踏みとどまるよね」
酒井「これどうして実現できたのかっていう」
マツコ「まあ食べてみようか。カステラがあたしたちが普段いただいているカステラよりもバター感が強いというか」
酒井「巻くときにマーガリン」
マツコ「塗ってあるんだ?カステラとパンの間に」
酒井「淡泊さをよけることができるというか」
酒井「あたしこれからカステラいただいたときにバター乗せちゃうかも」
マツコ「禁断。これは禁断ですね」
酒井「どうするの?あたしのこと殺す気?でもおいしい。カステラとバターおいしい。禁断、本当に禁断。塗ろうなんて思ったことなかった今まで」
ナレーション「カステラの中身が食パンという、一見味気なさそうな『スナックブレッド』だが、製造過程に味を淡泊にしないための秘密が。それは食パンとカステラのつなぎとして塗る塩気のあるマーガリン。やわらかい食パンを芯にして1本ずつ手で巻いていく。スライサーで厚さおよそ3.5センチに均等に整えて、包装機へ。誕生から34年、鹿児島を中心に愛されているスーパーヒーローに」
酒井「そもそもこれがなぜ生まれたかっていうことを空想してみたら、どういう答えがでますか、マツコさん」
マツコ「これは謎だね。わかってるのね?ちょっとじゃあもう聞いちゃおうかな」
酒井「和菓子の製造ラインの救済措置」
マツコ「これは想像できないわね」
酒井「そういう事情というか。そういうところから生まれたもの」
マツコ「要は和菓子もやられている会社で」
酒井「そうなんです。イケダパンさんは和菓子セクションもあって、そちらの売り上げが少し伸び悩んでいた。でもパンが売れている。どうにかしてスーパーのパン棚に置けるような感じで、どちらの生産ラインも稼働できないかというところから」
マツコ「なるほど。じゃあこのカステラのほうは和菓子の製造ラインで作っているわけだ」
酒井「そういうことです。それを合体させたということ」
マツコ「余計なことをしたわよ。あたしどうしよう。我慢できるかな、これからカステラいただいたときに」
酒井「ホットケーキの上みたいな感じで」
マツコ「あー、やられた。言わないで。あたしにカロリーの魔法をかけないで」
酒井「そんなマツコさんにもうひとつ」
マツコ「もうやめて」
酒井「また炭水化物オン炭水化物の話なんですけども。ローカルパンの激戦区岩手で愛されて46年。岩手県オリオンベーカリー『力あんぱん』」
マツコ「これなんとなく想像できるんですけど」
酒井「お察しのとおり、『力』ということは。うどんで言えば乗っているのは」
マツコ「これはやりすぎでしょ。まじで?だってもうお相撲さんだもん」
酒井「そうですね、見るからに力が出そう」
マツコ「『もち入』って書いてある」
酒井「そうなんですよ。おもちが入っている。つまり大福が中からでてくるという」
マツコ「大福が入ってるの?」
酒井「パン、そしておもち、そしてあんこという」
マツコ「あんぱんの中におもちが入っているんじゃなくて、大福が?見てみる。みんな見てみるよ。割って見せるよ」
酒井「土俵みたい」
マツコ「本格的な伸び方」
酒井「見たときうれしくて」
マツコ「大福だよ。ちゃんと層になってるのよ」
酒井「こちらもオリオンベーカリーさんの和菓子部門が担当している大福」
マツコ「やっぱもともと和菓子屋さんをやられていたところがパンも始めて、西洋化が進んで、和菓子がちょっと衰退しちゃって、みたいな流れがあるのかね?」
酒井「戦後パンを大量に消費するようになったときに、和菓子屋さんが転向するケースもあったそうです」
マツコ「こちらパンもおいしくない?」
酒井「パンも平焼きみたいにグッてやることで良さが」
マツコ「あんまりない食感のパンになるよね」
酒井「おもちのことをおっしゃると思いきや、パンのほうにまず」
マツコ「これつぶしてるからなのかな。なにこのパン、おいしい。大福グワーってくる感じするじゃん。あっさりしてるよね、意外と。パンが負けていない。おもちも相当本格的なおもちよ。田舎のお正月とかにつくおもちみたいな。クセになる」
ナレーション「その秘密は製造過程に。強力粉と中力粉をブレンドした生地は、弾力がありさらに一般的なパンと比べ砂糖を少なめにし、甘さひかえめに。そこへ自家製の大福を、まるごとひとつ手作業で包んでいく。さらに食べ応えと食べやすさを考え、厚さおよそ2センチになるよう平焼きで成型。力士をプリントしたパッケージは海外からの観光客にもウケが良く、おみやげとしても人気」
酒井「これがどうして生まれたのかと。これもよそでなかなか無いパンですよね」
マツコ「聞きながら食べる」
酒井「これがどうしてできたのか、どんな人の声に応えたのかと申しますと。体育会系の生徒から『腹持ちのするパン』の要望があったから、ということなんです。オリオンベーカリーさんは高校の売店でパンの販売をしていたそうなんですけど、体育会系の生徒さんから『腹持ちの良いパンを作ってほしい』という要望があって、大福を入れました。『腹持ちの良いパンを作ってほしい』という要望があって、ここまでいいですよ。大福を入れました、どうしてそうなったんだろうって」
マツコ「今それを聞いた限りでは乱暴な発想よね」
《後世に語り継ぎたい究極のローカルパン》
酒井「続いてのフリップです。できるならこのパンになりたい。秋田県たけや製パン『コーヒー』。こちらのローカルパン、ご覧ください」
マツコ「酒井さんはこの手のタイプの人と違うなって思ってたけど、『このパンになりたい』ていう一言で、やっぱりおまえもかって。すぐにそういうことを言いだす」
酒井「いやいや、なんて言ったらいいんでしょう。シンパシーみたいな話なんですけどね」
マツコ「ちょっと待って。めちゃシンプルなの出てきたわよ」
酒井「すごいですよ。お店で見たらひっくり返りますよ」
マツコ「これ以上シンプルにできないっていうくらい」
酒井「普通だったらたぶん『コーヒーサンド』とか、『コーヒークリーム』とか。そういう書き方をするはずです」
マツコ「だってこれコーヒーじゃないもん。『コーヒー』って書いてある」
酒井「パンだよ、っていう。ただこれを食べてみると、いやいやって思いながら食べてるんだけど、『あ、思ったよりコーヒーだわ。コーヒーでいいかも』って」
マツコ「本当?これをなぜコーヒーサンドとかコーヒーパンにしないで、コーヒーという名にしたか、なんとなくわかる?匂いだと、確かにいわゆるコーヒークリーム系のやつと比べると、本格的なコーヒーの香りがする。シンプルにちょっとびっくりした。いわゆるパンに挟まっているコーヒークリームの色じゃない。見る?すごくないこれ。あと香りが甘くないの。これコーヒーかも」
酒井「まだ食べてないよ」
マツコ「まだ食べてないんだけど。これはコーヒーかもしれないわ。香りが甘くないのよ。いくよ。いい例え見つけた。ラテじゃない。ミルクコーヒーじゃないの。砂糖を入れたブラックコーヒーなの。こういうのに挟まっていると、いわゆるコーヒー牛乳だったりラテだったりのほうの味のものが挟まってるじゃない?違うの。砂糖だけを入れたブラックコーヒーなの。これはコーヒーです」
酒井「やった。いただきました」
マツコ「確かにコーヒーね。だってこの色よ。これチョコレートだよね。これだけを。コーヒー感をね。わかった。これ昔の方ならわかってくれると思う。『ライオネスコーヒーキャンディ』」
酒井「そう言えばいいのか。確かに。これは確かにそうですね」
マツコ「コーヒーだってさ、たぶんそんなに今ほど普及してなかったんだよね。昔のじじいってタバコ吸いながらコーヒー飲んでたじゃん。喫茶店とかで。あの時代のコーヒーへのあこがれ。ゴスペラーズとこのコーヒー。共通点あるって言えばあると思う。本物に近づきたいというところを目指したと思うんだよね」
酒井「先ほどのお話しのコーヒーへのあこがれみたいなところ」
マツコ「1994年にアカペラやゴスペルや、別に流行ってなかったのよ。売れるためにやってたわけじゃなかったないんだろうけども、もっとわかりやすい売れる方法ってあったはずだろうけど、自分たちの好きなスタイルを貫き通したわけじゃない。当時だって異論はあったと思うのよ。なぜなら、苦いの。パン食った後味が苦いの。だからたぶんこれ社員さんの中には『あれちょっと子どもには苦いですよ』とかあったと思うのよ。でも『いや、おれはコーヒーが好きなんだ、おれはコーヒーを表現したいんだ』っていうね。たぶん当時の社長さんが頑固だったんだろうね。その頑固さみたいなのが共通してる気がしますよ」
酒井「この名前ですよね、『コーヒー』っていう。こんなに端的でストレートで素直な名付けっていうところにも刺さったんですけど。ゴスペラーズっていうグループ名も、言うならゴスペルミュージックの力強く一人一人が歌い上げるような人が集まったグループを目指そうなっていうようなことでつけたんですけど、アマチュアな素直すぎる名付け方で。名前がちょっとスポンとつけすぎちゃったなっていうところでも、この『コーヒー』はすごい親近感を感じる」
マツコ「あたしきっとたけやさんは『そんなつもりじゃありません』」
〜完〜
