2021/08/24放送
マツコの知らない世界
https://www.tbs.co.jp/matsuko-sekai/
'8万曲のゲーム音楽からエモさを楽しむ男'
田中治久(タナカハルヒサ)hallyさん(以下、田中)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20221221/18/tukinamibnnnsk/73/92/j/o1080060815219181664.jpg?caw=800)
田中「よろしくお願いいたします」
マツコ「年齢不詳」
田中「1973年生まれ」
マツコ「えっ。一個下?うわー、想像よりキモい人だった。48で何をして生計を立ててらっしゃるの?」
田中「日々ゲーム音楽を聴いて生計を立てております」
マツコ「生きづらそうで。まあ、あたしも人のこと言えないんですけどね。いくつになっても異常者なんですけど」
田中「ゲーム音楽をもっと知ってもらおうと、ライブ活動とかを始めて」
スタッフ「映像あります。観ます?」
マツコ「観よう。…一気に突き放された感覚になるよ。あんなことやってるのあんた。あれがハリーか。あいつがハリーなんだな」
田中「がんばったんです。昔見ていたゲームと、今世の中にあるゲームって、あまりにも違いすぎると思いませんか?」
マツコ「ピコピコ音とか聴いてるほうがあたしはいいですよ」
田中「そこなんですよ、言いたかったのは」
マツコ「葬儀で流してくださいよ、ピコピコ音を」
田中「昭和レトロブームの波に乗って、日本の若者にゲーム音楽のエモさを知ってほしい」
マツコ「エモさとか言ってる時点であなたとは友達になれない」
田中「すいません。これ今白状しておきます。めっちゃ無理して言ってます。ファミコンとかあの時代のゲーム音楽っていうのは、すごい個性的で輝いていたという気持ちがすごく強いんです」
マツコ「そうだよね、元をたどすとYMOとかの音ってあれに近かったよね?」
田中「そうなんです。僕はYMOの直径の子孫だと思って聴いていたので」
マツコ「だからたぶん、逆に昔はすごい画期的なことだったんだろうけど、あのYMOの時代のシンセサイザーの音に慣れてる人間からすると、とりたててフィーチャーする音楽でもなかったんだろうね」
田中「YMOに影響を受けているゲーム音楽も無数にあるので、そういう意味でも原点として無視できないかなあっていうのはありますね」
マツコ「あのゲーム音楽を音楽性で語り出したのって、だいぶ後じゃない?当時友達とかにもゲーム音楽が好きだって言ってたの?」
田中「言っちゃってました」
マツコ「当時ゲームやってた子ども同士で、このゲームのあの音楽がいいよねって話をしてた人って、相当高尚な人だと思う」
田中「特にシンセサイザー全盛の中にあって、研ぎ澄まされたむき出しの電子音がかっこよすぎると思っちゃったんですね。理解はされなかったんですけど」
マツコ「ごめんなさい、あたしも今も理解できてない。もうちょっと具体的に聞かないと」
《ファミコン登場から38年、歴史で振り返るゲーム音楽の進化》
田中「ゲーム音楽の全体の流れっていうのをまず。80年代、ピコピコゲーム期。名付けてみたんですけども。ゲームセンターのゲームっていうのが最先端で、それこそゼビウスとかパックマンとかすごい注目を浴びてた中で、ドラクエⅢが社会現象になったとかそういうことはご存知なんじゃないかなと思うんですけど。ドラクエを巡ってカツアゲが起きたりとかいうこともあったような」
マツコ「タチが悪いわね、当時っていうのは。力ずくで金品を奪う文化っていうのがあったのね」
田中「ゲームセンターに行ってもカツアゲされていましたし。そんな中でファミコンの音楽っていうのは同時に出せる音が3つという状況で音楽を作っていました。僕はなぜかこれにめちゃめちゃ惹かれてしまったんです」
マツコ「当時から?」
田中「はい。当時を象徴するひとつの例として、ドラゴンクエストを聴いていただくのがいいかなと思いまして」
♪序曲(ドラゴンクエスト、1986年)
マツコ「えっ?こんなだったの最初?」
田中「原曲の作曲も全部、すぎやまこういちさんがおひとりで」
マツコ「これすぎやまこういちさんなんだ。けっこうな人に頼んでたのね」
田中「ところがすぎやまさん自分からやりたいっておっしゃったんですよ」
マツコ「すぎやまさんも当時からこの電子音に惹かれてたわけだ」
ナレーション「当時のゲームソフトのデータ容量は40キロバイトほど。これはスマホで撮影した写真一枚にも満たない。音数の制約がある中、当時の作曲家たちはゲームを楽しんでもらうために試行錯誤。その努力に感動し、hallyさんはゲーム音楽に心奪われていったという」
マツコ「確かにあの時のほうが幸せだった気がする」
田中「同感です」
マツコ「満たされてないから幸せな部分ってあるじゃん。ほしいという感情が枯渇感というか。この先なにがほしいかって、もうわからないじゃない」
田中「そうなんです。次が見えなくなってしまう。ゲーム音楽に関して、僕は強くそう感じている。90年代に入ると、スーパーファミコンとか出てくるわけなんです。プレイステーションとか、セガサターン、ドリームキャスト。この頃になると、ゲームの音の中でサンプリングっていう技術が使えるようになるんです」
マツコ「じゃあもうけっこうその頃は、相当今に近い形になってたんだ?」
田中「ていうふうに思うんですけど。そこは実際の音を聴いて判断していただければ」
♪序曲のマーチ(ドラゴンクエストV 天空の花嫁、1992年)
マツコ「ここ十年くらいなのね、すごくなったのって。歩み遅いわね、この十年」
田中「実は出る音とかも、3音からもう8音まで増えてるんですけど。これでも当時のゲームファンたちは、音がリアルになったってすごい喜んだ。この時代に僕がなにしてたかっていうお話もついでにさせていただく」
マツコ「90年代、あなたがなにをしてたか?まあ聞くわよ」
田中「ゲームの音楽が好きだからといって、人が遠ざかっていくことはなくなった」
マツコ「え?そんなに迫害されてたの?ゲーム音楽って」
田中「ゲームってオタク的な趣味なわけですけど、それと一般人との距離がちょっと縮まってきたかなみたいな感じが。ゲームセンターとかもあの頃雰囲気が変わって。昔、ゲームセンターって真っ暗で、すごいダーティー」
マツコ「そうね。たばこの煙もあるから、スモークに光ってるゲーム機の光みたいな」
田中「いかがわしい空間でしたね。それが警察から指導が入って。風俗営業法の改正で、ゲームセンターもうちょっと明るくしなさいっていう話になったんですよ。85年のことなんですけど」
マツコ「それまでは、ゲームセンターは暗くしてたんだ?なんのために?」
田中「画面がくっきり見えるから」
マツコ「ああそっか、画質も悪かったし」
田中「上から蛍光灯が映りこんじゃうとよく見えないっていうのもあった」
マツコ「ブラウン管の上にさらにガラスみたいなのが貼ってあったんだもんね。だから反射しちゃって見えなかったのよ。なるほどね」
田中「その中で、UFOキャッチャーとかプリクラとか、ああいった女の子向けの」
マツコ「でも今みたいに女子がこぞってゲームしてるみたいな時代じゃなかったでしょ?」
田中「時代じゃないですね。少なくとも僕にとっては、初カノができるくらいのところまではがんばれた時代だったという。できましたけどまあすぐにお別れすることにはなるんですけども」
マツコ「でもさ、モテてきたタイプよね?あたしはだからね、ハリーちゃんを完全に信じてないのはそこなのよ」
ナレーション「サンプリング技術や使える音数が増え、よりリアルな音楽でプレイできるようになった90年代。そして2000年代以降、音の制約がなくなり、楽器そのものの音でゲームを楽しめるまでに進化」
♪序曲Ⅺ(ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去り師時を求めて、2017年)
マツコ「すごい進化ね」
《たった3音で作る!作曲家の努力がすごい名曲2選》
田中「電子音で軽快な和楽器を再現させるのがエモい。『がんばれゴエモン!からくり道中』」
マツコ「なんかこれ覚えてる」
田中「けっこうテレビでコマーシャルをやってたからなんですかね」
マツコ「ゴエモンを覚えてるわけだ、ゲームっていうより。めっちゃ出てたよね、ゴエモンね。『がんばれゴエモン!』みたいなやつでしょ。すごい記憶に残ってるわ」
田中「電子音なのに和風に聞こえるテクニックですね。特に鼓の音を再現しているのがすごい画期的だなあと」
マツコ「パーカッションを再現したわけでしょ、電子音で。…これは鼓なのかな?だから要は歌舞伎とか、ああいう舞台とかで立ち回りとかするときにポンポンって連続して叩いてるところなのねこれは。あなたが勝手に鼓って解釈しているだけなんじゃないの?でもかわいらしかった。音楽が。ゲームメーカーの人が曲も作ってたりするの?」
田中「そうですね。まさにゲームメーカーの社員さんが作っている。音楽専門の社員さんがいる」
マツコ「いたんだ、お抱えで。その方に聞いたの?『鼓ですか?』って」
田中「いやそれは聞いてないですけども」
マツコ「でしょ。だから鼓じゃない可能性は残されているって」
田中「そもそもたった3つの電子音でやっていることなので、なにかに似ているようで似ていないものしかない世界なので」
マツコ「言っちゃったじゃないのよ。あんたがそんなに簡単に言っちゃだめでしょうよ」
田中「続いてはこちらです。3音を同時に使う和音に果敢に挑戦したゲーム。『レッキングクルー』」
マツコ「シュールな画ね、これ」
田中「マリオがビルの解体をするアクションゲームです。作曲してるたなかひろかずさんっていう方は、のちにポケモンの主題歌を作って一躍名前を知られる方です。ゴールデンハンマーっていうすごいハンマーが出てくるんですね。それを取ると強くなって、その強さを音楽で表現したいと思ったと思うんです。そのために和音を出そうとしてみたんじゃないかなという」
マツコ「なるほど、だからいっぺんには出てないんだけど、残音みたいな感じで人間が勝手に和音に聞き取ってる」
田中「そういうことです」
マツコ「はあー!すごい工夫だわ」
田中「ものすごく速くやってるんですよ」
マツコ「すごい。発明」
田中「これはもう和音にかける情熱がエモいと思うわけです」
マツコ「やっぱジジイなんだって」
田中「作曲家たなかさんのように、ゲーム音楽と歌謡曲の両方を手掛けている人は他にも。こちらのクレーンゲームの音楽にも使われた『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の楽曲。実はDREAMS COME TRUE中村正人による作曲。さらに、人気アニメの楽曲やCMソングなど多数手掛ける、作曲家菅野よう子。音数の制約があったピコピコゲーム音楽時代からいくつもの名曲を生み出してきた」
《BTS、Ado、YOASOBI...話題曲のファミコン風カバー》
田中「最近、ファミコンの音に立ち戻って、新しい音楽を作ってみようっていう人たちがけっこう増えていまして。もっと言うとですね、名曲をピコピコ音に変えて、最高のエモ曲に。8bitカバーなんて言われ方をしてる感じなんですけれども」
マツコ「最近の曲聴いてると思うけど、あたしけっこうインストを聴くのが好きなのね。その曲をとった音を。めっちゃ音数少ないよね、最近の曲。だから逆に若い子からすると、耳なじみいいのかもね。音数の問題で言うと」
田中「実際にですね、新しい曲とか有名曲で、ゲーム音楽風に作り直された楽曲っていうのは、動画サイトにいっぱいありまして」
♪うっせえわ/Ado
マツコ「だからさ、違和感がないのは、もともと音数が少ないからだと思うんだよね」
田中「普通にこんなゲームありそう、みたいな」
マツコ「だから『トトロ』とかのほうが違和感あるのかもよ」
♪風の通り道
マツコ「でもよく考えたら、これも原曲の音数少なかったわね」
田中「今どれもこういい感じでゲームっぽい映像がついてましたけど、その映像とのシンクロっていう意味でいうと、BTSの『Dynamite』がけっこうすごいかなと思います」
マツコ「この人は本業はなんなの?かなりなにかのプロの方よね、たぶん。たぶんものすごい人が趣味でやってるよね。もうなんか完成度すごかったわ今。あのままゲームにできるんじゃないかって」
田中「ちなみになんですけど、僕自身もこんな感じの曲作ったりしていまして。一曲流させてもらってもいいですか?」
♪SURFIN'U.S.A/ THE BEACH BOYS
マツコ「あのね、テクニックをひけらかしすぎ。よくありがちなね。あ、でもこの人の声っぽい音すごいね」
田中「ここだけファミコンの音じゃなくて後のせなんですけども」
マツコ「後のせの効果が大きかったわね。…冗談よ」
田中「ありがとうございます」
~完~