2021/05/04放送
マツコの知らない世界
https://www.tbs.co.jp/matsuko-sekai/
'2000軒の農家を巡り野菜を発掘する女性'
小堀夏佳(コボリナツカ)さん(以下、小堀)
マツコ「(服の)パイナップルが気になる」
小堀「パイナップルは幸運を呼ぶフルーツ」
マツコ「パイナップルは幸運を呼ぶんですか?これからあたしパイナップルを身につけるようにがんばります。でもなんとなくなんですけど、夏佳さんが幸運に見えない」
小堀「今日はどうしてもみなさんにお伝えしたいことがございます。絶滅の危機にあるマイナー野菜にこそおいしいが眠っている。ここをなんとしても伝えたい。今ではおいしい野菜が世の中にはびこっている」
マツコ「はびこっているって、言い方」
小堀「世の中にあって、幸せをこうむっている」
マツコ「もっとシンプルな言い方できないですかね?なんか最後ひとかき行く」
小堀「スーパーとか世には出回らない野菜たちがけっこうたくさんありまして。そのお野菜たちにはすごくおいしい部分がある。そんな野菜たちの良さを今日はお伝えにきました」
マツコ「語尾の伸ばし方がひと世代前でいいですよね。あたしなんかはグッとくる感じの」
小堀「こちら見てください。ブレイクマイナー野菜。今ではたぶんメジャーだと思うんです。たとえば『安納芋』。安納芋もマイナーご当地野菜の元祖みたいなもので」
マツコ「寝かせてすごい糖度を増してるじゃない?そういうのじゃなかったんだ?普通のさつまいもだったんだ?ただ形が悪いだけの」
小堀「形が不揃いなので売れないんですよ、スーパーとかで。それのおいしさを食べ方とかをちゃんと伝えたことで安納芋の出荷数量も上がった。『だだちゃ豆』も見た目が、茶豆って毛深い」
マツコ「茶色いっぽいんだよね」
小堀「毛が茶色いっていうのと、あと匂いが臭い。腐ってるんじゃないかって」
マツコ「『トロなす』はごめんなさい、申し訳ないけど存じ上げなかったんだけど」
小堀「なすってインドが原産なので、インドは白とか緑が多い。色とか形が規格外なことで、置いておくだけで売れなかった。これを素揚げにして食べるとトロンとしておいしいですよっていう食べ方を伝えた。今ではトロなすとか大トロなすとかトロトロなすとか、なす業界ではトロがすごくブームなんです。こういう嫌われていたマイナーご当地野菜を、どこかのきっかけでブレイク野菜になるんですよね」
マツコ「まずはプロフィールから読み解こうかな。なにかあったの?トラウマみたいな。…トラウマはやめなさいよ。別にトラウマの結果ではないわよ」
小堀「トラウマはすごいあった」
マツコ「あったの?ほら、トラウマあった!」
小堀「小堀夏佳、46歳。職業は愛の野菜伝道師」
マツコ「闇1」
小堀「日本全国20年前から農家さんまわりをしていまして、農家さんの思いとか、野菜の気持ちを感じると、それがすごく乗り移って伝えたくなっちゃうんです」
マツコ「あら」
小堀「本当なんです」
マツコ「本当だったらなおさら怖い」
小堀「26歳になった時に、食の仕事に興味を持ちオイシックスに入社」
マツコ「オイシックス、当時あった?」
小堀「あったんですよ。まだ10人もいない頃に」
マツコ「10人もいない頃?あら、立ち上げメンバー」
小堀「その中で転機というか。女手ひとつで子育て」
マツコ「急に女手ひとつになったの?何があったのよその間に」
小堀「離婚をしている。結婚して1年くらいで離婚」
マツコ「早かったわね」
小堀「子育てをしていくところでも、好き嫌いない子にしたいっていう思いがあって、離乳食が始まってからどうしてこれを食べるかって意味を説明しながら」
マツコ「2歳の子に?」
小堀「たぶんウザいと思います、子ども的に」
マツコ「いや、ウザいんじゃないんです。ヤバいです」
小堀「濃厚な甘味と大玉ならではの歯ごたえがすごい、興農宮崎『フルーツマルとまと』。宮崎県なんですけど、興農宮崎さんっていうところ。品種は一般的な桃太郎トマトなんです。おいしさをすごく追求していて、手間のかかる栽培をしている。最大の特徴は濃い緑と薄い黄緑があって、ベースグリーンっていうんですけど、あのベースグリーンの濃いのがあると糖度がすごく上がる。緑の段階でも糖度ってわかるんです」
マツコ「同じ品種でも育て方で全然味が変わるのね」
小堀「変わります。一般的なトマトは水とか肥料とかたくさんあげるんですけど、こちらは水とか肥料を極力切る。ちょっとスパルタ的な」
マツコ「トマトたちはつらいのね」
小堀「もともとトマトはアンデスで育っていたので、水もない。そうするとすごい働く根毛が。すごくおいしいトマト」
フルーツとまと生産者、奈須勇さん「おいしいトマトはゆっくり熟成していく。普通のトマトだと40日くらいで色がつくんですけど、このトマトは長いものだと100日かけて色がつくので倍くらいかけて真っ赤になる。そのぶん毎日の光合成をもらって栄養価がギュッと凝縮される。一個一個がすごくおいしい」
小堀「普通のトマトは部屋数が少ないんですけど、こちらのトマトは部屋数がすごく多い。倍くらい。部屋数が多いと甘みも上がるしうまみも」
マツコ「ちょっと小ぶりに作ってるね、普通の桃太郎より」
小堀「そうなんです。水も肥料もを切ってスパルタに育てると、一生懸命やってもあまり大きくなれないんでしょうね。でも味は濃く。ちょっと形がいびつじゃないですか?」
マツコ「どういうふうに切ってるの?」
小堀「輪切りになっている。俵型なんです」
マツコ「輪切りでこの形なんだ」
小堀「そうなりやすいんです。部屋数が増えるんですよね。いかがですか?」
マツコ「うまい。味濃い。これすごいわ。食べたことない。噛みしめるとジューシーなんだけど、歯ごたえはすごい」
小堀「肉質がすごる締まるんですよね、スパルタで栽培しているっていうのもありまして」
マツコ「これが水も飲めない状態でできたものだと思うと。苦しかったんだろうね」
小堀「そのぶん根毛が働いて水を飲みにすごい奥深くまでいくんですよ。飲んでないわけではなくて、原産地アンデスなので、もともとトマトってそんなにいらない食物なんですよね」
《まだまだある!全国のおいしいご当地野菜》
小堀「まずは全国にどんなご当地野菜があるのか、マップにしましたのでぜひご覧ください。こんなどころじゃないくらいあるんですけど。マツコさんこの中で食べたことあるお野菜ってあります?」
マツコ「『あしたば』はあります」
小堀「あしたばあります?新島とか大島」
マツコ「あと『桜島大根』」
小堀「すごい大きい、鹿児島の」
マツコ「鳥取の『砂丘らっきょう』はけっこうこの中ではメジャーなほうよね。それくらいだと思う。あとは初めて聞いた名前」
小堀「例えば山形にあります『米沢雪菜』っていうのがあります。雪菜って秋に葉っぱが出る。ワラを敷いてその中に収穫した緑の菜っ葉を植えるんです。そうすると雪が降ります。ワラの温かさで新芽が横からゾンビのように出るんです。生命力あるゾンビ」
マツコ「たぶんゾンビのようには出てないと思います。横からにゅーっと出るのはゾンビじゃないと思うんですけど」
小堀「あと長野県の『ていざなす』。すごい大きい、30センチメートルくらい。ていざなすっていうのは田井澤さんっていう昔いらっしゃった方が明治期に育種して、みずみずしい焼きなすにして醤油とショウガがおいしい。そんななす」
ナレーション「埼玉県深谷市で作られている、今大注目のご当地野菜が、この『深谷もやし』」
小堀「もやしって暗闇で作るんですけど、深谷もやしは62年前に飯塚さんの先代から埼玉県の深谷できれいな水で作っているもやしです。光合成をしないように暗闇で一週間くらいで栽培をします。根っこがビヨーンって長い。すごく筋肉質でシャープ。根っこが普通のものよりも2倍くらい長い。生命力がある証拠がこの根っこにあるんです。普通のもやしは成長促進のエチレンガスをかけて99パーセント作るんですけど、この深谷もやしは本来の自分の力で伸びていく。エチレンガス一切使わないのであれだけ根っこがすごく長くなる。もやしって普通機械で工業製品みたいな感じじゃないですか。これは全く機械を使わずすべて手作業で、愛情いっぱいなんですよね」
ナレーション「手間暇かけて作られた深谷もやしはそのおいしさが認められ、最近では高級デパートやフレンチの重鎮三國シェフのレストランなどにも卸されるように。そんな深谷もやしのお味は?」
マツコ「大変なのがわかりやすい。これは作るの大変だろうなって思う」
小堀「歯ごたえと風味となによりも栄養価も高くなる。GABAっていうのが8倍くらい増えるんですよ、こうやって育てると」
マツコ「これはもやしでいいんだけど、もっと明確に違うことを訴えるべきよ。もう全然もやしじゃないもん」
ナレーション「さらに小堀さんがこの時期にもう一つ注目してほしいというのが、宮崎県椎葉村で約800年前から栽培を始めたという『平家大根』」
マツコ「色もまちまちなの?」
小堀「そうなんです、これ両方とも平家大根」
マツコ「へえ、どっちになるかわからないんだ」
小堀「そうです。今日オススメの食べ方というので、おろし蕎麦。ぜひ召し上がってみてください」
マツコ「これ全部入れちゃっていいと思う」
小堀「入れちゃってください。うれしいです。なんか認められているっていうか、平家くんが。受け入れられているっていう感じ」
マツコ「いっぱい大根つけて。ちょうど良い。あたしこれぐらいでいいと思う。あんまり辛いとわさび入れすぎたみたいなお蕎麦になっちゃうじゃん」
小堀「私は伝統野菜ってその余韻とか、辛みもそうなんですけど、風味と余韻。あとこの大根はステーキにしてもすごくおいしい。今の大根って味がしないのが多いじゃないですか」
マツコ「これ大根の味は強い」
ナレーション「日本全国、数あるご当地野菜の中から、小堀さんがマツコに今最も食べてもらいたいという絶品野菜が」
小堀「とろける食感とジューシーな味がまるで桃。千葉県の田中さんが作る『ピーチかぶ』。千葉県の富里市、田中農園さん。もともと自家栽培で自分用に育てていた。身がやわらかくてすごくおいしいかぶなので、割れやすかったり気候の変動で育てるのが難しい。すぐ割れちゃう。毎日毎日あのトンネルを開けたり閉めたりして、本当はミニの小かぶなのにあの大きさにもっていく。普通のかぶは繊維質が多かったり、皮がぶ厚くて生で食べるっていうのはなかなか難しい。これは桃のように甘くてジューシー」
マツコ「生で食べるの?」
小堀「生で食べるとおいしんですよ。オススメの食べ方は、このやわらかさを活かして、煮物」
マツコ「煮ちゃうのね」
小堀「ピーチかぶの生、まず食べてみてください。どうですか?」
マツコ「桃は言い過ぎだけど、なんだろう、糖度の低い桃。食感は桃。熟れすぎてないくらいの、ちょっと歯ごたえが残ってるくらいの桃。すごいわ。これ煮るんだからトロトロになるでしょう。煮たのもめちゃめちゃやわらかくておいしいけど、生が衝撃だからそれに比べるとこれがこんなにやわらかいんだから、そりゃ煮たらこうなるよねって感じ。これびっくりするわ。噛んでるだけでわかるでしょ?シャキシャキしてないでしょ?」
小堀「ザクザクもしなくないですか?ジュワっていう」
マツコ「なにこれ?無理なんだとは思うんだけど、これをもっと量産化できる体制にできたらかぶの地位が変わるわね。これはびっくりする」
《絶滅の大ピンチ⁉後世に残したいご当地野菜》
小堀「いろんなマイナーご当地野菜をご紹介してきたんですけども、そんな中でも次ご紹介していくのは本当に危機に瀕している、絶対救ってほしいっていう。食べられるのはたった1か月、奇跡の野菜。淡路島の森本さんが作る『葉付き玉ねぎ』」
マツコ「葉付き?上がついてるの?」
小堀「付いてる。玉ねぎの収穫量は北海道が1位、2位が佐賀、3位が兵庫となっている。淡路島で葉付きで作っている森本さん。81歳、すごく良いお人柄で、お母さんが77歳。葉が付いてると手作業しなくちゃならなくて、新玉ねぎより早い時期に収穫するんです。傷つけないように一本一本収穫して、農薬も全く使ってなくて、化学肥料も使っていない。玉ねぎになる前のウブなタイミングの子なのでいろんな形の子がいるんです。食べ方としては、葉っぱのところは明石焼きっていって卵とおじゃこや桜えびを入れる。下側のウブなところはスライスしてかつお節と玉ねぎで食べる。葉付き玉ねぎを食べると、ウブな自分を思い出す。人間ウブな時代がある」
マツコ「ウブがいいってなっちゃうと、良い時期は一瞬になっちゃうじゃん。でもウブが良いよね」
小堀「最後、食の世界遺産に日本で最初に認定された、長崎県の『雲仙こぶ高菜』」
マツコ「日本で最初に認定されたのが高菜なの?」
小堀「ただの高菜じゃない。雲仙こぶ」
マツコ「わかってますよ」
小堀「さっきの平家大根もお作りされていた岩崎さんっていう方がすごく寡黙で、私みたいにぺちゃくちゃしゃべらない」
マツコ「本当にぺちゃくちゃしゃべるわよね」
小堀「このお野菜、世界で160か国が参加しているスローフード協会っていうのがある。そのスローフードの中で世界で途絶えそうになっている絶滅野菜を、食の世界遺産っていうのに認定をしている。なので世界で認定しているお野菜なんですけど、日本で一番初めに認定されたのが雲仙こぶ高菜。ちょっと一回見てみてください。こぶがある高菜ってこれしかないんですよ。このこぶは成長点で、若いときはすごく甘くてやわらかいんです」
マツコ「年を取ると?」
小堀「固くてえぐみが出てくる」
マツコ「えぐみ出るよね」
小堀「ぜひこぶ高菜を召し上がっていただきたいと思います」
マツコ「パスタになっちゃったじゃない」
小堀「そうなんです。召し上がってみてください。どうですか?」
マツコ「あたしさ、高菜を高菜漬け以外で食べたの初めてだわ。食べたことある?高菜ってこういうふうに。東京だと売っていないもん」
小堀「私の中では失礼な話なんです。高菜っていうとみんな漬物にしちゃうんですよ」
マツコ「しょうがないじゃない。売ってないんだから。失礼って言われても」
小堀「高菜に失礼なんですよね、業界が」
マツコ「業界が高菜に失礼なの?」
小堀「そう。だって高菜を野菜として扱わないで、漬物としてみんな見てるから」
マツコ「正直、あたし高菜を高菜漬けの前の状態で見たの初めてだわ」
小堀「みなさん見れないと思います」
マツコ「おいしいよ、良いクセがあって。なんだろう、何に近いかな。中国野菜っぽいよね」
小堀「すごい。さすが。もともと伝来が中国なんですよ。マツコさん本当に繊細で」
マツコ「食べればわかりますって。チンゲンサイとか空芯菜系の味よ。おいしいのよ。なんで全部漬物にしちゃったんだろう」
小堀「すごい高菜の伝道師になってくれた。すごいうれしいんですけど。言いたいこと全部おっしゃってくれました。高菜の可能性をみようとか無いんですよね。だから一回お漬物でそれはそれで良い時代があったんですけど、今SDGs、持続可能とか多様性、ジェンダー平等。形が不揃いも平等なんですよ、多様性で」
マツコ「壮大な話にするわね」
小堀「時代がきてるんです」
マツコ「あたし高菜の話してたのよ」
~完~

