2021/03/23放送
マツコの知らない世界
https://www.tbs.co.jp/matsuko-sekai/
'女性の歌声を分析し続ける歌声ソムリエ'
森山直太朗(モリヤマナオタロウ)さん(以下、森山)

スタッフ「最近気になる歌声のアーティストいますか?よく聴くアーティストとか」
マツコ「昔じいさんばあさんが懐メロばっかり聴いてて、なんだこいつらとか思ってたけど、今あたしが聖子や明菜やキョンキョン聴いてるのって、『青い山脈』を聴いているのと同じなのよね。こうやって考えると愕然とするんだよね。今もうチラッとお名前見えちゃったんだけど、わかってくれそうな気がする。お呼びしよう。あたし基本的にほぼ女性の歌手なんですよ、好きなのって。話合うかもね」
森山「初めまして」
マツコ「永遠の少年」
森山「いやいや、そんなことない。もう44歳ですから」
マツコ「44だけど、心が少年だよ」
森山「お初ですよね?」
マツコ「そうなんだよ。あたしお母様とはあるんですけど。あと義理のお兄様とも」
森山「ちょっと笑われているのはどういうことですか?」
マツコ「よく考えたらへんてこりんなファミリーだなと思って」
森山「改めましてですけども、歌声マニアの私が好きな歌声について延々語りたい」
マツコ「そういうプレーですから」
森山「今日一日よろしくお願いいたします」
マツコ「一日ですか?割と長尺を。じゃあラーメンの方に火を止めてくださいって言ってください」
森山「次の収録がありますからね」
マツコ「今からだと出汁が濃くなっちゃうから、火を止めてください」
森山「フリップ見ていただきたいと思います。僕がどうしても伝えたいこと。自分にピッタリな歌声を知れば最高の安らぎを感じられる」
マツコ「今の声がけっこうあたし好きです」
森山「だったらこの収録もう勝ちましたね。今ちょっと言い過ぎましたけれども、fぶんの1ゆらぎっていう言葉はご存知ですか?アルファー波」
マツコ「昔大ブームが起きたのは知ってますから」
森山「自然の営みの中で流れる音の成分。小川のせせらぎとか、あるいは小鳥のさえずり。たき火のパチパチいう音とか。そういうものが歌声の中にも入っている。そういう人がfぶんの1の成分が入った歌声をもたれている。有名なところで言うと美空ひばりさん。結果を出したりとか、歌い続けているアーティストの方たちって、天然でそういう成分が入っている」
マツコ「天然にはかないません」
森山「生まれ持っているものですからね。僕も調べてみたんです。聞くところによると、ジャパネットたかた創業者の高田社長も。あの声もずっと聞いていられる」
マツコ「確かに3分間くらいでテレ東とかで急にやるのあるじゃない。あれ始まるとわかったもんね、一番遠い部屋にいても。向こうの方から聞こえるんだよね。すごいよねあれ。あの声ね」
森山「どうですかマツコさん、人生謳歌されていますか?ご自分らしく」
マツコ「いや、謳歌っていわれるとちょっとなかなか『はい、謳歌しています』とは言い切れません」
森山「そういう意味でもね、マツコさんも歴史や時代に対しても生きづらさを感じられていると思うんですが。ある種においての世知辛さというか。コロナも相まって人の心もすさんでます。ということで今こそ生々しい癒しが必要なんじゃないかということで。まずどうして僕も歌声に安らぎを求めるようになったのか、自分のプロフィール。女性の歌声を分析し続ける歌声ソムリエ森山直太朗、職業シンガーソングライター」
マツコ「シンガーソングライターって言い方もいいわよね。最近あんまり使われなくなってきたじゃない」
森山「0歳、音楽家系の長男として生まれる。先ほどお話しにも出てきましたけど、うちの母、歌を歌っております。うちの姉も音楽をやっております。叔父にはムッシュかまやつさん。その枝葉の先におぎやはぎの小木さんがいる」
マツコ「アダムスファミリーみたいな」
森山「眠る前に歌を歌う。うちの母と私と姉で川の字になって。♪good night everybodyって。それがシャキっと決まると『はい、寝ましょう』」
マツコ「ありがたい話聞かせてもらって。本当にそういう話を聞かせて」
森山「密接に今みたいな話が関わっている。幼少期、音楽活動で帰宅時間がまばらだった母を待つ日々。うちの母は僕が生まれた当時は120本くらい年間コンサート、いわゆるリサイタルってやつですよね。母親が帰ってくるとどんなに夜遅くても飛び起きて、『今日こんなことがあったんだよ』。寝なきゃいけないリズムが、本当は幼少期の頃っていうのは大切なタイミングでとしてある。なかなかそのタイミングを逸しちゃって、夜うまく眠れないような感じがあった」
マツコ「じゃあ子どもの頃から普通にてっぺん過ぎたりするような?」
森山「ずっと興奮してて、入眠にいささか障害がある。今も若干あるんですよね」
マツコ「気が合う。あたしも。夜が明けてこないと寝られないの」
森山「明日になるのが怖くて?」
マツコ「引き出しが多いわ」
森山「12歳の頃、自宅にあらゆる歌手がやってくる日常。うちの母が例えばNHKホールでライブやりましたよ、他で玉置浩二さんが中野サンプラザであったよ、みたいになると、うちの家が集合場所になって。バンドメンバーのみなさんもいらっしゃって。あれだけ歌ってたのにまだ宴やるのかっていうぐらいのあきれるほどの宴が行われる」
マツコ「玉置さんとライブ後に自宅集合して歌ってるの?それを見てるの?」
森山「部屋の端っこで姉と二人で」
マツコ「うわー。英才教育。すごいね」
森山「もしかしたらそういうふうに感じてたこともあると思うんですけど。そこで女性の歌声に衝撃。その曲が白鳥英美子さん『IN MY LIFE』」
マツコ「白鳥さんよくむこうの民謡的な歌を歌うじゃない。あれがあたし好きなの」
森山「とにかくこの人の歌声っていうのは僕にとっても、当時衝撃的だったんです。ひとたびパッと歌いだすとみんなが静まりかえる」
マツコ「お宅でも?」
森山「そうです。これを機にちょっと眠れるようになったり。この曲が僕にとってのターニングポイント。そして19歳、女性の声に憧れ音楽活動を開始」
マツコ「あたし最初に森山さんの声を聴いた時にお母さんだって本当思いましたよ」
森山「男の子がファルセットとか裏声出すのって、ちょっと恥ずかしかったりするじゃないですか。ある種日常的にそういうものがあったのであんまりそこに対する抵抗感がなかった。ただまずこういう曲を誰かに、女性に歌ってもらいたいなって言うことで『高校3年生』という曲を作ったんです。誰か歌ってくださる方いないかなってパッて横見たら母がいたので頼んでみたんです。いいわよって言って歌ってくれた。ただ歌ったんだけども、レコーディングしたあとに『やっぱりあなた歌いなさいよ』みたいなこと言われた。それで今に至る。そこでサジェスチョンみたいなのなかったら、僕もしかしたら音楽とか自分で歌ったりとかはしていなかったかな」
マツコ「お母様はやるべきだっていうのはその前からずっと思ってらっしゃったのかな?」
森山「思ってたらしいです。ただ僕にあんまり頭ごなしに押し付けたりしたらたぶん引いちゃうのは分かってた。なのでずっとこっち来いこっち来いって念じていたっていうのは聞きました。当時母に作って、後に自分が歌うことになった曲」
(♪「高校3年生」)
マツコ「お母様の顔も今浮かんだよ。良子さんが歌われていても全然違和感ないなって思いながら聴いてた」
森山「憧れがいきすぎて、テレビで聞こえてきた歌手の方とか、こういう曲歌った方がおもしろいんじゃないかな、とか。レコード会社とか事務所からこういうふうにやれよって言われているけど、本当はそういうんじゃないんだよなとか。個人的に勝手に曲作ったり。誰からも頼まれてもないのに」
マツコ「ド変態だ」
森山「こういうのを想像するのが好きなんです。人間性が出るじゃないですか、歌声って。そういうことを一人で妄想しながらニヤニヤしている」
マツコ「あたしも歌じゃないですけど、妄想が一番楽しいですよね」
森山「そうなんですよ。だいたい現実でがっかりすることばかり」
マツコ「がっかりするのもまたキュンときません?」
森山「もうその域までいっているんですね。すごいですね」
《気分に合わせて聴きたい!女性歌手の歌声分類マップ》
森山「マツコさん的にはそういう安らぐ歌声とか、好きな音楽のジャンルは?」
マツコ「声って言われると、あたしはaikoさんなんだよね」
森山「aikoさんきたか」
マツコ「最近の人でもわかる方で言うとね」
森山「このあと深くお話しさせていただきたいと思います。やっぱり類は友を呼ぶんだなという言葉だけここに残させていただきたい。同じ系列が響き合うんですね」
マツコ「あとCoccoさんの声。この年になっちゃったので、無我夢中になるようなことはなくなっちゃけど、最後にどハマりしたのがそのお二方です。まだ私もぎりぎり20代だったし、ライブとかも行ったりして。東京取れなかったら地方都市とかまで行っちゃってた。あの二人が最後の青春だったかな」
森山「なぜその歌声をマツコさんが欲しているかということも十分分析して」
マツコ「そんな心理分析のような。あたし全裸にされちゃうんですか?」
森山「ある意味でね」
マツコ「あたしすごいなかよくなれる気がする。全然感じてくださっていません?」
森山「僕はとにかく必死です。自分の思いの丈を伝えたくて」
マツコ「なんのストレスを感じなく。たまたまその辺のバーで会って掛け合いを始めたみたいな」
森山「ここにもアルファー波みたいなのが流れているのかも」
マツコ「うわ、夜のアルファー波」
森山「こちらご覧いただきたいと思います。めちゃくちゃ個人的ですけれど。これいつも一人でやっていることなので」
マツコ「ド変態マップですね」
森山「森山直太朗流、女性アーティストの歌声分類マップ」
マツコ「なかなか近年のテレビで五輪真弓さんから始まるってないですからね。これはすごいです。永久保存版です」
森山「パッと見て気になるのは?」
マツコ「気になるのは『エンジェル系』に原田知世さんしかいないっていうところです」
森山「僕も探しました。でも、とにかく心が洗われて純粋な気持ちになれる歌声。僕は本当にイヤなことがあったりすると、この曲を真っ先に聴く。デビューしたての頃のユーミンさんのカバー『守ってあげたい』。ちょっと音が外れている」
マツコ「わかりますよ。ちょっと外れる感じがユーミンとリアリティがあるっていうね。技術的にやれるものじゃないから、この外しは。こんなにユーミンのカバーが合っている人いないんじゃない?あたし一時どハマりしてた時期がある。あたし今日確実に家帰ったら知世聴きます。久々に気づかされたもん。あたしはなんでこんな何年も知世から離れていたんだろうって。絶対今日知世祭りやります」
森山「そういう気づきが一個一個あるとうれしいんですよ。『悟り系』五輪真弓さん、森田童子さん、Coccoさん、鬼束ちひろさん」
マツコ「けっこう好きなラインナップです」
森山「自分の世界に浸りたい時。これは失恋してどん底に落ちている時とか、壁にぶち当たって内省、掘り下げたい時とか。この辺の悟り系聴いたらたぶん一発で」
マツコ「あたしCoccoさんには救われました。あの頃本当に救われました。彼女があたしの代わりに何人も殺してくれたから、あたしは平穏な気持ちでいられた。殺意までいかずにとどめられたのはCoccoさんのおかげ。ありがたい。あたしはCharaさんとかUAさんをどうやってカテゴリーしたらいいだろうってところに『生きざま』を選んだのも好き。便利な言葉を発見したわねっていうね」
森山「歌声ももちろん個性的で、だれもマネできないような節回し。だからそういうふうに考えると、孤独な時期もあったんだろうなみたいな」
マツコ「そういうのも全部背負ったうえでやってるってことでね」
森山「私は私」
マツコ「私はUA、っていうね」
森山「『まっすぐ系』、共通項わかりますか?」
(松たか子、満島ひかり、高畑充希、上白石萌音)
マツコ「女優」
森山「そう。小さいころに舞台とかミュージカルとか経験されている。もう迷いのない。音のひとつやふたつ外しちゃってもいきます!みたいな」
マツコ「ちょっと憑依系も入ってますよね」
森山「そうですね。なにかに憑依させてまっすぐいってる。ちょっとなにかに迷ってる、一歩踏み出したいな、みたいな人が聴いたりするといいんじゃないかな。『パンチ力系』とか、テンションあげたい時に」
(広瀬香美、大黒摩季、水樹奈々、LiSA)
マツコ「なかなかの四天王ですよね。なにかを破壊することができるわよね、四人そろったら」
森山「声帯が僕の印象では歌えば歌うほど声が出てくるみたいな」
マツコ「女性って年齢重ねると男性より衰えてきちゃう方多いじゃないですか」
森山「音程は落ちるって言いますよね」
マツコ「なかなか落ちないよね。落ちないよねって言ったら失礼だけど。すごいわよね」
森山「カラオケで普通の人がマネしちゃうと、痛い目にあう」
マツコ「下手したら救急車で運ばれますから。へんな血管が切れますから。気を付けてくださいねみなさん」
森山「ちゃんとした訓練を受けている人たち」
マツコ「そうですよ。必ず隣に看護師いますからね」
森山「この辺ご存知ですか。『噛めば噛むほど系』」
(Aimer、Uru、miret)
マツコ「そんなにめちゃくちゃ聴いてるわけじゃないですけど」
森山「日本語聴いてるんだけど、そんなに日本語聴いてる感じしないですよね」
マツコ「確かにちょっとしゃべってる感じに近い」
森山「ずっと聴いていられる安心感もありますし。たぶんなんですけど、海外とか洋楽のアーティストの情報を割と早く取り入れて自分の中で消化している」
マツコ「48のオカマでは太刀打ちできないなにかを感じるわよね」
森山「『洋風DIVA』、『和風DIVA』。一見同じカテゴリーに見えるんですが、洋風DIVAの人たちはパッと聞いたときに向こうの血がちゃんと流れてるぞっていう。ブラジルの人がサッカーうまいみたいなかなわないなって」
(洋風DIVA:Crystal Kay、AI、平原綾香)(和風DIVA:吉田美和、MISIA、JUJU)
マツコ「そのお三方パンって出てこられた時にははい、もう降参ですっていう感じはする」
森山「吉田美和さんとかMISIAさんとかは、日本人にもよい意味で受け入れやすいというか愛される歌唱法を時にはR&Bとかで歌われている」
マツコ「なかなかのツートップよね。エグイっちゃエグイわよね」
森山「平原さんはどっちかって言うとこの間にいるなあと」
マツコ「JUJUさんもけっこうどっちなんだろうって」
森山「向こうに留学とかしてたし。だからこの辺の住み分けっていうのはいろんな解釈があると思うんですけど、こうさせていただいて。綾香ちゃんなんかも引き出しめちゃめちゃあって」
マツコ「昔番組に来ていただいた時思ったのが、なかなかの変態ですよ」
森山「すみません、全部変態です」
マツコ「なるほど。全員変態なんですね」
森山「ホイッスルボイスというのがあるんですけど、それを聴いてみてください。思わず立ち上がって拍手したくなるような、日本を代表する女性歌手の一人なんじゃないかなって思っています。気になるのってあります?」
マツコ「気になるところはですね、オノ・ヨーコさんがはいっているところですね」
森山「『シャーマン系』ですね。よくこの言葉を導き出せたなって自分で。シャーマン系の方の歌声っていうのは、もちろん技術が確固とした裏付けしたものがあるんですけど、技術を超えた領域にあるなって。先ほど好きだっておっしゃってたaikoさん。やっぱシャーマンはシャーマンを選ぶんだなっていう感じがしましたよ。ドキッとしましたよね我々、打ち合わせ4回くらい重ねてますから。マツコさんシャーマン系選んだか。aikoさん選んだっていうのはドキドキしました。やっぱつながってんだなって」
(松任谷由実、aiko、あいみょん、オノ・ヨーコ)
マツコ「あたしけっこうaikoさんの声って、いっぱい星の数ほど女性の数いるけど、あんなアイコニックな方いないと思うよ」
森山「しかもですね、衰えを知らない。なんならますますのっていう」
マツコ「ここ2年くらい節回しが異常性が出てきている、最近のaikoさんの曲。もうとんでもないよ」
森山「シャーマン系の方たちもちょっと兄貴肌っていうか、神々しいんだけど、いいお姉さん」
マツコ「真ん中にめっちゃ女がいるんだよね。すごい強い感じに見えるんだけど、芯のところにいるのはすっごいマブイ女がいるのよ。乙女がいるの」
森山「あいみょんもたぶんそのその路線でいってる」
マツコ「このままだと化け物になりますよ」
森山「この辺は男のミュージシャンとかすごい人気がある。男の人に好かれている感じ」
マツコ「オノ・ヨーコなんてジョン・レノンに好かれましたからね」
森山「『悟り系』からCoccoさん、『シャーマン系』からaikoさん、これをマツコさんが選ばれたっていうのはイメージ通り。ありがとうございますって感じですね」
マツコ「あたし直太朗に心の中を読まれていたのね」
森山「もしかしたらそうかもしれないですね。」
マツコ「すでにピロートークをしている感じね」
森山「これはもうピロートークです」
《歌声で最高の安らぎを感じる!癒し効果がある歌姫3選》
森山「こちらをご覧いただきます。僕にとって究極の安らぎを得られる歌声、ララバイ系に母性を感じ癒される。幼少期のさっきのお話じゃないですけど、母性を感じる歌声に胸がキュンとし、そして安らぎを覚えるという形なんです。ひとりひとりご紹介させていただいてもいいですか?こちらです」
(手嶌葵「明日への手紙」)
マツコ「はい!大好きですあたし。出てんだか出てないんだかわからないときがたまらん」
森山「話が早いですね。とにかくマイナスイオンが感じられる。都会の喧騒を感じる通勤電車の中で聴きたい。マイナスイオンですから、森とか大自然の中で聞いちゃうと、わからなくなっちゃう。同じ成分なので。逆にギャップで聴いていただきたい。通勤電車とかで聴くと、より自分の世界とか彼女のハートフルな」
マツコ「あたしこれなんとなくわかるのが、昔電車で通勤していた時に、元ちとせさんがちょうど『ワダツミの木』でデビューされた直後で、不意打ちでそれを通勤電車の中で聴いちゃったのよ。あたし号泣しだして。恥ずかしいくらい。みなさん気を付けてください。通勤電車の中はやられますから」
森山「涙を流すっていうのはは、自分に素直になるってことですから、あえて通勤電車で泣いてしてほしい。涙を流すと浄化作用がありますから」
マツコ「たまりませんな!」
森山「同じ歌い手の自分からみても、どういうふうな声帯になってるのかな、あるいはどういう空気の循環でそういう振動が鳴るのかなっていう。本当に優れたクラシックの楽器のような。唯一無二」
マツコ「知らないもんね、こんな方ね。すごいよね」
森山「この歌声を聴いてさえいれば、どんな理不尽なことでも乗り越えていけるんじゃないかな」
マツコ「確かに。理不尽なことだらけですから、この世の中は」
森山「僕も想像しちゃうんですよ、こういう歌声聴くと。手嶌さんとは目黒の田道の交差点でただお見掛けしたくらいなんですけど。『あ、手嶌さんだ』と思って。そしたら妄想が膨らんじゃってこういう歌歌ってみたらいいんじゃないかなとか。そうやって一人もそもそ作ったりとか。歌声を聴いた時に、この人こういう歌声だけど、本当はこういう性格なんじゃないかなということを、一人でつぶさに想像するのが好き」
マツコ「手嶌さん、これはファンタジーですからね。気を悪くされないで聞いていただきたいんですけど。本当はどういう人なんですか?」
森山「こんな優しい歌声を持っているんだけども、ものすごい頑固な人なんじゃないかと思っている。周りのスタッフが手を焼いちゃうくらい。それは別にプライドとかじゃなくて、この歌声で歌っているということで、カバーもたくさんされている。この人が歌うと清志郎さんもそうなんだけど、もうその人の曲。『私はこの歌声でしか歌えませんし、この歌声で歌うの』ていうある種においての一本気のところがある」
マツコ「みなさん、あくまでもこれ妄想ですからね」
森山「二人目。こちらの方ご紹介したいと思います」
マツコ「渋いところだしてくるはねあんたって」
森山「考えすぎて眠れない夜に聴きたい、山本潤子『竹田の子守唄』」
マツコ「曲も渋い」
森山「『翼をください』などで知られている、元赤い鳥メンバーの山本潤子さん。彼女の歌うあまたある曲のひとつ。『竹田の子守唄』、これもすごいです。かなり破壊力あります。子守唄って、『かもめかもめ』もそうなんですけど、ちょっとおどろおどろしい。そのおどろおどろしさもちゃんと残しながら、安らぎがそこにあるみたいな。銀河に揺られているような気持になるんです。僕も今でも眠れない夜に聴いている。山本さんはファルセットと地声の差がよくわからない。太い声で、でも安らぐ声」
マツコ「全部ファルセットに聞こえるし、全部地声にも聞こえる。わからないね」
森山「それが不思議なところ。でも芯がちゃんと」
マツコ「たまりませんね」
森山「この世代の方は、ライブで聴いていただきたい。今の音源ももちろんすばらしいですけど、ライブで聴いた時、鳥肌立ちますよ。こんな美しい歌声を出す山本さんなんですけど、きっと」
マツコ「山本さん相手にもやられる?」
森山「割とボーイッシュで、さばさばされているのかなと思ったりして」
マツコ「『あんたさ』みたいなことたまに言ってる感じですか。それなんとなくあたし今回は共鳴できます。少し股を開いて座られるときなんかがあるんじゃないかなっていう」
森山「絶対あると思う」
マツコ「あたしもそんな感じがします。別に下品とかじゃなくて、かっこよくね。しつこいようですけども、妄想ですからね、みなさん」
森山「三人目の方はこの方です。見知らぬ旅先で聴きたい、プリシラ・アーン『Dream』」
マツコ「突然毛色の違う方が」
森山「そうですね、この方は韓国とアメリカ人のハーフ。日本でも活動されていて、それこそジブリの『思い出のマーニー』の主題歌を担当されたり。異様におしゃべりしながら歌ってる小鳥のさえずりみたいな。足が軽くなるというか。日本語の曲もカバーされたりするので、アグネス・チャンさんが日本語で歌を歌った時のキュンとくる感じ」
マツコ「若干たどたどしい感じね」
森山「この人も本当に唯一無二の歌声。歌っているのにしゃべっている、しゃべっているのに歌っている」
マツコ「あたしスザンヌ・ヴェガ好きなんだけど、そういう感じよね。あと今の人なのに、古い」
森山「アコースティックギターを抱えて、髪の毛が長くて」
マツコ「ウッドストックに出ているきれいどころみたいな」
森山「大好きで、そういう女性が」
マツコ「ドンピシャなのね」
森山「すごい肝っ玉が据わってる人だと思ってて」
マツコ「ちょっと自制しなさいよ。プリシラに関しては若干オブラートに包んで言ったほうがいいと思う」
森山「大丈夫です。たぶん動じない子なんじゃないかな。ちょっとやそっとのことじゃ。僕がいっしょにやってて、例えばお茶しててコーヒーがこぼれちゃって、プリシアにかかっちゃった。ごめんごめんってなってても、『全然いいよ、気にしないで。新しいの買おうと思ってたの』みたいな」
マツコ「急に下手になってません?妄想が。どうしたんですか」
森山「というお三方、オススメでございます。3人の中でなにか」
マツコ「もちろんすばらしいのよみなさん。手嶌さんはすでにあたしの中にいたから。それはもうごめんなさい」
森山「ライブって行ったことありますか?」
マツコ「あたしないの」
森山「行きません?」
マツコ「え、いっしょに行ってくれるの?」
森山「マツコさんが行ってくれるなら僕も」
マツコ「あんたも行ったことないの?」
森山「ない」
マツコ「そうなのよね。好きな人のライブほど行けないのよ。そんなこと言ったらごめんなさい、今までライブ行った方。そういうことじゃないのよ」
森山「どうしよう。差し入れ何?」
マツコ「やっぱ自然食品じゃない?」
森山「無添加の」
《歌声×歌詞が相乗効果を生む!究極ソング2選》
森山「歌声の力があれば、歌詞の世界観が一気に広がる。今歌声を重点的に聴いてきたんですけども、歌声からさらに歌詞の世界に広がっていく」
マツコ「あらやだ。闇に入っていくのね」
森山「歌詞がよくてさらに歌声までよいんだったら、非の打ち所がない」
マツコ「卑怯ですよ。あなたもけっこう卑怯な部類に入ると思いますよあたし」
森山「いやそんなことないですよ、みなさんに比べたら」
マツコ「なにをおっしゃってるのよ」
森山「そうですか?」
マツコ「そうですよ。意外と2回目くらいで受け入れるタイプ」
森山「でも逆を言うと、この歌声があるからこの歌詞を呼んだのかな。いい歌声がいい歌詞を呼ぶ、この奇跡をみんな聴きたくて音楽を聴いてるんだと思う。まずお一人目。こちらです。歌声×歌詞=希望を感じる、荒井由実さんで『翳りゆく部屋』」
マツコ「ユーミンの場合はやっぱり歌詞もご自分で書かれているわけだし」
森山「曲調自体がすばらしい世界観なんです。何とも言えないような風景描写だったり言葉みたいなのが出てくる中で、最後『輝きはもどらない わたしが今死んでも』。これドキッとしますよね」
マツコ「最後のところにいった時、なんかハッとするよね」
森山「でも全然絶望感がないし、曲がキラッキラしているっていうのは、この歌声に後光が差しているんだろうなと」
マツコ「なんか不思議だけどユーミンの曲ってそういうちょっと甘ったれみたいなフレーズでも、ものすごい強靭な精神を感じるんだよね」
森山「これをユーミンさんは14歳の時に作った」
マツコ「すごいわ。リアルシャーマンだもんね」
森山「もしかしたら14歳の時だったからこそ、こういうことができたのかな。僕からすると本当にアクロバティックな歌詞なんです」
マツコ「10代の頃のほうが、ユーミンの歌詞ってすごい哲学的だし。途中からユーミンって経済を抱えながら歌い始めたじゃない。だから全く意味の違うものになっていったじゃない、ユーミンが。バブルを背負う以前のユーミンってすごいよ」
森山「きっとユーミンさんって、言葉にできない解読できないなにかが、歌声の成分があるんだろうなっていう象徴ですよね。いっしょにお食事させていただいたことがあるんですけど、気づいたら心の中で拝んでいる」
マツコ「わかりますよ。あたしも飯倉のキャンティでユーミンとお食事させていただいた時、ユーミンが食事を自制していた時で、でも『今日は気分いいから飲んじゃおうか』って言って赤ワインをあけたユーミンを見て、あたしはユーミンの気分を良くさせたんだって思って家で泣きました。思わず赤ワインを開けさせたんだあたしは。飯倉のキャンティで」
森山「最高のシチュエーションですよね。しゃべり声がかっこいい」
マツコ「そうなのよ。全部かっこいいの。『明日朝早いからちょっと家からだと空港が遠いから、今夜はオークラなの』って言って去っていった」
森山「めっちゃエピソードがユーミンさんっぽい」
マツコ「オークラなんだ!っていうね」
森山「歌声×歌詞=解放感がすごい。五輪真弓さん『少女』」
マツコ「『五輪真弓』と『少女』っていうその画力がすごい」
森山「五輪さんはフォークブームが終わって、その後にニューミュージックというか日本の歌謡曲の草分けな」
マツコ「仏のような、仏像のような。年齢とか性別とか、そういうのはもうどうでもいいんだっていう感じの方だったのよ」
森山「基本的には語り部なんですよ。『私』とか『僕』、『君』みたいな曲じゃないです。語り部の立場から歌っているのに、その少女を投影して、五輪さんの内側から発行されている。『夢が大きな音をたてて 崩れてしまったの』っていうのが自分にかかっている感じがする。最後にドキッとするっていうか。結局自分のことだったの?みたいな。サプライズがあるんですよね」
マツコ「最後も意味深よね。『行く』っていうのはどこに行くって言ってるんだろう。少女として守られている世界から飛び出すってことなのか、はたまた人としてどこかに行くってことなのか」
森山「聴く人の、あるいは聴く時代とか聴く時期によって聞こえ方が変わる。想像させる。でも歌詞だけじゃダメなんです。この説得力のある歌声」
マツコ「あの声じゃなきゃね。あんな歌詞歌われたらおまえに言われたくないよってなるもんね。最後五輪さんの歌聴いてて感じたんだけど、森山さんって相当お母様の影響を受けてるのを感じるんだけど、五輪さんっぽいっちゃ五輪さんっぽいよね。歌のセンテンスのつなげ方というか切り方とか。五輪さんの聴いてて、直ちゃんっぽいってちょっと思った」
森山「それはうれしいですね。インディーズの頃の曲で、メジャーでは歌ってない」
(♪「ソフィー」)
マツコ「いい歳の取り方をしている。すごいわ直ちゃん。このくそみたいなスタジオを、あんな空気にした人は今までいませんでしたよ。今日は知世祭りを開催するって先ほどみなさんにご報告したんですけれども、今夜は直太朗祭りです。1から直太朗と向き合います」
~完~
