2021/01/19放送
マツコの知らない世界
'合計1万3千冊の受験参考書を収集する男性'
有江晴彦(アリエハルヒコ)さん(以下、有江)
《勉強が楽しくなる!受験参考書6選》
有江「もともと参考書っていうもの自体が、古本屋さんで基本買い取ってくれない。書き込みがあったり汚れてたりするので。図書館の分類のところにも参考書っていう項目はない。だから図書館に行っても参考書は置いてない」
マツコ「確かに参考書は見たことない」
有江「国会図書館も納本している出版社さんのところはいいんですけど、そうでないところが大半なので」
マツコ「国会図書館も集めてはいないんだ?」
有江「集めてないです。この世に自分が集めなかったら無くなっちゃうものを集めるのが好きなんです」
マツコ「なるほど。国会図書館ですら集めていないものを、集めている喜びか。それはすごくよくわかる」
有江「参考書のマニアってあまり数がいない」
マツコ「あたし初めておうかがいしました」
有江「参考書のマニアってだいたい3通りの部類に分類できまして、1、まじめ系。2、知識系。3、コンプリート系」
マツコ「あたしの予想ですと、有江さんは3番ですよね」
有江「そうですね、ちょっと2があるんですけど、だいたいが3です」
マツコ「よくわからないけど、わからないままでいい」
有江「1番のまじめ系というのは、教師の方とか高校の先生とか塾の講師の方が、他の人はどう教えてるのかって参考にするため」
マツコ「1番の方はどちらかというと、趣味というよりは、実際に必要だから集めてる方ですよね」
有江「2番目の知識系というのは、クイズ愛好家ということでだいたい早稲田とか慶應とか、難関大学の問題は満点取らせないために難しい問題がたまに出る。そのレベルっていうのが、クイズ番組の最後のほうの決勝戦とかで出るような問題と、だいたいレベルが一致するんです」
マツコ「そうなってくると、ちょっと2が入ってるってことは、有江さんもクイズ好きで?」
有江「好きで、昔はクイズ研に入っていました」
マツコ「予選に出た番組ありますか?」
有江「『史上最強のクイズ王決定戦』で予選落ちしています」
マツコ「クイズ専門じゃないから。なに専門かって言われると、よくわからないんですけど」
有江「僕にとって参考書の魅力とは、人生で一番情熱があった浪人時代にタイムスリップできる魔法の本」
マツコ「情熱のピークは浪人時代ですか?」
有江「そうですね、そこで燃え尽きてます」
マツコ「あら。キャバクラにでも連れていってあげようか。それ以上に情熱を傾けることないですか」
有江「そうですね、その頃っていうのはカリスマ講師と呼ばれる、予備校で人気講師というのが何人もいらして。今の感覚で言うと500人の小屋を満員にさせるお笑い芸人とかアイドル。私代々木ゼミナール通っていたので、秋山仁先生は直接習っていないんですけど、他の5人の方はライブの500人入る箱にそこに満員で授業を受けるっていう。そこでおもしろい授業を聞いて、勉強ができるようになる快感みたいなものがあった。あまりに楽しかったので二浪して大学に進学。受験参考書っていうのは、当時の授業をそのまま再現したものがけっこうありまして、それを読むことで当時のことがリアルに思い出せる」
土屋博映(古文)
菅野祐孝(日本史)
秋山仁(数学)
前田秀幸(日本史)
矢木哲雄(数学)
吉川栄治(古文)
マツコ「このあとにこれを超える高揚感はないんですか?」
有江「ないですね。おもしろいものを見にいくだけでいいので。今は仕事をしながらなので、仕事とかいろいろつらいものがあってプラスアルファですけど。この時代は授業しかない」
マツコ「そうなると働きたくないってことですかね?」
有江「働かなくてすむんだったら働きたくない」
マツコ「あたしも一緒です」
有江「参考書を集めて眺めて何をしているのかという。参考書マニアの楽しみ方。見てもらおうとする工夫を読み取る。参考書も商品ですので、売れないと消えてしまう。いろいろ売れるためのアイデアを出して、これなら受験生が買ってくれるだろうっていうアイデアが出てきた結果の本。『語呂とマンガで覚える西尾の笑って覚える英単語』、当時の英語の神様と言われた先生と戦前の杉浦茂先生という巨匠の方がタッグを組んだ珍しい参考書です。一番上に暗記用の語呂合わせがあって、それをマンガで表現している。たとえばabruptlyという単語があると、『突然に』という意味。太った方が油ものを食べて最後死んでしまうというマンガ。これで記憶に残りますよね」
マツコ「絵があることで?でもおっしゃるわよね、すごい人は絵で覚えていくって」
有江「右上にある単語をパラパラっとめくって、気がつくことってありますか?最初のほうはaからcはいっぱいページがある。ところがだんだん後ろにいくにつれて言葉が減っていって、最後アルファベットがvで終わっちゃう」
マツコ「つらくなったんですかね?」
有江「つらくなったんだと思います。そういうのをおもしろいって笑うのがひとつの楽しみです」
有江「他に『写真で覚える入試古文単語ネコタン365』。日めくりカレンダー形式になっていまして、猫の写真と古文の単語がセットになっている。セリフの中が古文の単語の使い方みたいな」
マツコ「これ覚えられますかね?だって、『そこはかと』の覚え方。『そこはかとうさんのお宅ですか?』って猫ちゃんに質問しているわけよ。猫ちゃんが『ちがうよ郵便屋さん。ここにはっきりとヤスダって書いてあるでしょ』。『そこはかとうさん』の『そこはかと』だからね。覚えられます?」
有江「猫好きの方だったら。4月1日の一番最初のページを。寅さんのセリフのパロディ。『ものの始まりが1なら、国の始まりが大和の国。ネコタン365の始まりは、あからさまでござい』。それに対して『あからさま』っていう単語の意味は『ご存知、フーテンの寅さんの名セリフをちょっと拝借してネコタン365の始まり始まり~』という」
マツコ「『あからさま』っていうのは『ちょっと』って意味なんだよっていうのをこれで覚える」
有江「これも目で見て覚える、そして語呂で覚えるっていうのが、相乗効果が生まれる本になっています」
有江「他に『エロで覚えるエロ語呂世界史年号』。ご存知ですか?」
マツコ「いやいや、知らないですよ。こんなのあるんだって思って」
有江「比較的最近の本ですけどね。世界史の年号と事項を暗記するための参考書ですね」
マツコ「これ言っていいのかな?」
有江「ちょっとゴールデンはまずいと思う」
マツコ「そうですね、まずいですね。あたしがまずいって言ってるんだから、相当まずいです。意外と見ちゃうね。買っちゃおうかなこれ」
有江「それは今改訂版が本屋さんで売ってます」
マツコ「ちょっとおもしろいです」
有江「もうひとつの楽しみ方が、手の内をすべてさらけ出している本を発見する。予備校の先生っていうのは、本を書いていることがひとつのステータスで、参考書を出していることで宣伝になるんです。だから先生としては本は書きたい、だけどあんまり授業の内容を書き過ぎちゃうとあの先生はこの本を読めば終わりだから授業を受ける必要はないと。本によってはちょっとこれはばらしすぎじゃないのっていうような本もあります。『たった見開き2ページを読むだけで身につく!有坂誠人の現代文速解 例の方法』。なにかヤバいものとか、口に出すのもはばかれるものを、例の○○って言いますよね」
マツコ「ああ、『例のもの』って言うね」
有江「それからこの『例の方法』ってついて、あまりにも効果がありすぎて、受験生の間でも『例の方法』は知ってる?っていう感じでノウハウが書かれた本です。問題文に丸をつけたり四角をつけたり三角をつけたり、決まった手順で線をつないでいくことで答えのある箇所が見えてくるようになってる方法が初めてここで公開された。見開き2ページの内容だけで国語ができるようになるっていうことで、私のいる会社に昔昇進試験っていうのがあって、試験の内容が国語の入試問題を持ってきて試験を受けさせられる。その受けた人たちがみんな落ちるので、この本のここを読めばいいんじゃないのっていうことでこの本を推薦してから、合格率が非常に上がりました」
マツコ「会社の方の?」
有江「みんな主任になってお給料上がっていった」
マツコ「お優しいですね」
有江「『ギャグもダジャレも大公開 土屋の古文』。先ほど出てきた代ゼミで有名な土屋先生という方の授業の内容をテープからおとして本にした内容。授業中にやっていたギャグとか覚え方とかが全部載っている。『僕はワクワクするんだ』っていうところを『わくわく動物ランド』って言って。当時はみんなテレビ観ているからウケるんですけど、今の人が読んだらなぜここにこんな言葉が出てくるのかわからない」
マツコ「これたぶん当時もウケてなかったと思う」
有江「土屋先生のひとつの特徴が、歌を授業中に歌う。覚えなきゃいけないことを歌にするっていうのが得意」
マツコ「それは覚えやすいかもね」
有江「♪『てむ』『てき』『てけり』の『て』は完了。『なむ』『にき』『にけり』の『な』『に』完了。『てば』『なば』『てばや』『てばし』『なまし』『つべし』『ぬべし』みな完了♪、っていう歌なんですけど、土屋先生が歌うと生徒がみんなそれで覚えてしまうという。1回聞いただけで頭に入ってしまう」
マツコ「いいえ、入ってないです」
有江「その他、別の意味で手の内を明かした『いづみ・古文ライブ講座』。ご存知ですか?」
マツコ「いえ、知りません」
有江「駿台の方」
マツコ「ちょっとアイドル的な感じだった?」
有江「そうですね、受験生のマドンナと言われた」
マツコ「あれ、じゃあわかるかな?お写真ないんだよね」
有江「中に写真はある」
マツコ「イヤだ、まあまあ勘違いしてたわよ」
有江「別の意味でさらしてしまった本として有名」
マツコ「この髪型、時代よね」
有江「時代ですね。バブル期」
《あなたの家にも眠っている?売ればお金になる激レア参考書》
有江「今、参考書業界というのはいろいろ新たな波がきていまして、YouTuberの参入で激変する参考書業界」
マツコ「あたしついこの間『情熱大陸』で見たわ。YouTubeの先生。本当に予備校の授業みたいなのをYouTubeでされてる先生」
有江「YouTuberがこの参考書が良いって説明して、それが絶版になってる本だとすると、みんながほしいほしいいうことで出版社が動いて復刊するっていうことも起きています。そういう復刊ブームの中で個人的に良い本なんだけど絶版になってしまって、これが復刊してほしいなっていうのを取り上げてみました」
マツコ「完全におねだりじゃない」
有江「おねだりです」
マツコ「お持ちはお持ちなんでしょ?」
有江「持ってます。だから私は別に困らない。世のため人のために、こういう本がもっと広まってほしい。タイトルがすごいタイトル。『古文が宇宙語でなくなる日』」
マツコ「おしゃれね。装丁も山下達郎のジャケットみたい」
有江「古文の普通の参考書の入門編とかでもきびしい人向けの、もうちょっと下から始める。ある程度これを読んだ次に入門書が読めますよ、っていう。一桁の点数しか取れないような人向けの参考書って意外と無いんです。書かれた方は代ゼミの先生なんですけれど、その後に滋賀大学の副学長までなられる。学者として本格的な方がちゃんと書いた本」
マツコ「ちょっとおもしろいね、古文。これ古書ですよね?ちょっと書き込み入ってるね。なぜか知らないけどすごい書き込みが少ないのよ。たぶんこの子はやめたね。当時の定価が1000円」
有江「今この本がヤフオクにあがってくると、だいたいお値段が1万5000円くらいになります」
マツコ「え?ジャケ買いですかね」
有江「『潮田の英解講義』。こちらの代ゼミの潮田先生っていう東大英語とか非常にレベルの高い英語を教えてらっしゃった方。この人の特徴は日本語訳が非常にきれい。非常に読みやすい日本語を書かれています」
マツコ「なるほど。教科書っぽい感じじゃなくて、口語体に近いような」
有江「典型的な例として、alwaysという単語をどう訳すかっていうことで。普通はだいたい『いつも』と。それが『昔から』という訳なんです、そこに出てくるのが。いつもということは、昔からずっとやっているからいつもなんだよと」
マツコ「それは確かに出てこないね。戸田奈津子さん的なやり方よね」
有江「読んで、そういう発想があったかって感動できる。潮田さんが書かれた本がこれしかない」
マツコ「そうなんだ、だから逆にものすごいこれ価値ある」
有江「授業を受けたことが無い人が潮田さんの授業の内容とかどういう訳を書いていたかということを知るためには、この本しかない。定価が900円の本」
マツコ「でもすごい。相場が5万円」
有江「ものがヤフオクとかに出てこないので。そういうマニアが中身が良いということで認めた本が取り合いになった結果、そういう値段になった。良い本が広く読まれてほしい。私は持っているのでどうでもいい」
マツコ「言い方ですよ。これを本当に活用してほしいってことよね」
有江「こういうオークションとかで高くなっているものの頂点」
マツコ「これよりすごいのあるの?」
有江「これはまだまだ」
マツコ「これで安いほうなの?当時の受験生の方、家の段ボールをもう一回見返してくださいよ、みなさん」
有江「家にあれば激レア、伝説の参考書ということで。伊藤和夫先生の『新英文解釈体系』っていう本が有隣堂から1964年に出ています」
マツコ「1964年。でもたぶん日本中探したらこれ出てくるんじゃない?もちろんお持ちなのよね?」
有江「ごめんなさい、これはさすがに私も持っていない」
マツコ「あら!」
有江「私もほしいです」
マツコ「その値段でも?」
有江「私のお給料では厳しい。英語の参考書のコレクターで、かつ大学教授の教育学を教えてる方がいらっしゃいまして、その方が自分のホームページとか自分の著書でベタ褒めしたんです。それで日本中のマニアがそんな良い本があるならぜひほしいということで取り合いになっちゃってる。お値段のほうが、50万円」
マツコ「あら!いいへそくり」
有江「これがスタートになる」
マツコ「じゃあ状態が良かったりするともっと?」
有江「表紙無しでこれくらい」
マツコ「表紙無しで50万円?じゃあ表紙ありで、しかも書き込みなしで装丁とかもきれいですよってなったら、ヘタしたら100万円いっちゃうかもしれない?」
有江「場合によっては」
マツコ「一回見てみる価値はあるわねこれ。まず晴彦に譲ってもいいっていう人はTBSまで」
有江「お願いします」
~完~