2020/02/04放送
マツコの知らない世界
 
'全国300か所の床を撮る女性'
今井晶子(イマイアキコ)さん(以下、今井)
 
 
今井「はじめまして。今井晶子と申します。よろしくお願いします」
マツコ「独特な。お帽子も独特」
今井「恐れ入ります。床が好きな理由です。こだわっているはずなのに、ほとんど見られていない儚さ」
マツコ「まあね。確かに」
今井「私60~70年代のカラフルで、模様が凝っている床が特に好きなんです」
マツコ「カラフルで凝ったデザインの床?」
今井「本当にいっぱいあるんですけれど、みんな下向いて歩いたりしないので、誰も見てないし。私も見始めるまでは、そんな気にしなかったので。見始めると虜になるっていう。私としては、売れないアイドルみたいな。永遠にセンターに来ないアイドルみたいな感じ」
マツコ「今井さんが把握している限りで、床好きっていうのは何人くらい?」
今井「私が把握しているくらいですと、10人くらいしかいないんですけど。潜在的には何百人、何千人いるはずなんですけど」
マツコ「いやいや、潜在的な話をし出すと」
今井「そんなアイドルなんですけれども、推し面と呼んでるんですけど」
マツコ「やっぱり10人くらいだとめんどくさくなってくるものよね」
今井「私の推し面をぜひ見ていただきたいと思います。こちらなんですけれども、3枚並んだだけでもうかわいい!みたいな」
(愛知県シューカドー、愛知県丸一ストアー、東京都四谷バル)
マツコ「ああー!言われてみれば確かにそういう所ある」
今井「ありますよね」
マツコ「両脇は室内よね。真ん中は、これなに?これも室内なの?」
今井「いえ、これは室外です」
マツコ「へえー、凝ってるね」
今井「よくお分かりになりましたね、写真だけで。そんな室内室外が」
マツコ「なんかちょっとPタイルっぽいじゃない」
今井「あっ!」
マツコ「いやいやいや、やめてください。無理くり仲間にひきずる。なんか『あら?床好きじゃない?』みたいな。やめてくださいよ、Pタイルはみんな知ってますよ」
今井「いやいや、意外と知らないんですよ」
マツコ「最近の若い人はね、あんまり。昔はフローリングなんてハイカラなものはこの世に無かったので、畳かPタイルだったんですよ、日本家屋というものは。だから、全然、あれですよ」
今井「おやおやおや?」
マツコ「全然そんな。急に床好きにされても」
 
今井「ここでですね、私が全国あちこちに行って、床を集めた研究の成果を見ていただきたいと思います。こちらなんですけど、私と床仲間が集めたものなんですが」
マツコ「じゃあ珠玉のラインナップね」
今井「そうですね」
マツコ「デザインがおしゃれな」
今井「はい、デザイン性に富んでて、カラフルなものですね」
マツコ「あたし、出身だから言うわけじゃないんだけど、あの千葉のやつが一番かわいい」
今井「はい、あれすごいかわいいですよね」
マツコ「あれなに?どこ?」
今井「あれが、『そごう柏店』」
マツコ「千葉のそごう?え?あんなところあった?」
今井「あるんです。1階の駐車場のほうなんですけど」
マツコ「へえー、こんなかわいかったんだ」
今井「こんなかわいかったんです」
マツコ「あー、あとあれもかわいいね。あの京都のいろんな色のタイル組み合わせて作ってるやつ」
今井「あれが、ご存知だと思うんですけど、『きんせ旅館』ていう」
マツコ「床?」
今井「そうなんです。すごい有名な」
マツコ「ハイカラだったんだね。いやー、でも確かにこれはなんでこんなものを気づかずに普段過ごしてるんだろうって、逆に思うわね」
今井「こんなに色とりどりにあるのにっていう。続きまして老舗の喫茶です。『喫茶古城』さんなんですけども、床で見られたことないかもしれないですけど、床がこのようなことになっていてですね」
マツコ「これは凝ってるわね」
今井「そうなんです。凝ってるんです。これだけじゃなくて、通路全面が色違いパターン違いで、絵画のように」
マツコ「すごいね!金かけたね」
今井「そうなんです。当時、1万円札を貼るようだって」
マツコ「これ全部切ってるし、デザインしてカットして。まあでも昔ってそういうお店あったよね。『入った途端に世界が変わる』みたいな。つまらなくなったわね、今日本って」
今井「そうなんです」
マツコ「全部茶系とグレー系でね」
今井「そうなんです。もう悲しい」
マツコ「マズイ、マズイ、これ共感されすぎると、引きずりこまれるわ仲間に」
 
 
《明日見に行ける!美しすぎるノスタルジー床》
 
 
京王プラザホテルの床
 
マツコ「すっげぇ行ってたよ。新宿周辺にずっといた頃は。打ち合わせほぼ京王プラザだったわよ」
今井「なんと!」
マツコ「ええー、全然覚えてない。上のすごいシャンデリアだとか、そういうのは覚えてるけど。喫茶店から見える水張ってあるやつとかは記憶あるけど。ごめんなさいね、床。床ってなんなんだろう。本当に覚えてない」
今井「そこでぜひVTRをご覧ください。マツコさんご存知の京王プラザホテルなんですけれども、グググッと寄っていきます。この車寄せの入り口のところに」
マツコ「ここからイチャモンつけられるとちょっと。えー?車降りた途端にしたら見ないからね」
今井「そこがミソなんです。車降りたあと、みなさん見ないので」
マツコ「のっぺりとしたグレーの石畳かと思ってたら、こんなデザインされてたのね。全然記憶にございません」
今井「これは三角の複雑な形が組み合わせって」
マツコ「凝ってるわね」
今井「凝ってますよね。職人さんが一枚一枚きちんと貼っていかないとできないじゃないですか。そこに熟練の技もあって、とってもすばらしい床ですね」
 
紀伊國屋書店の床
 
マツコ「ここも、京王プラザよりも行ったわよ。まあでも建築物としてもね」
今井「そうなんです。有名な、前川國男」
マツコ「前川國男さんだからね」
今井「さすがご存知で。そうです。それが、おっ!ていうところにあるんです。VTRをご覧ください。ここもう良く見慣れた紀伊國屋の正面なんですけれども」
マツコ「うわ、今両脇工事中で見やすくなってるね」
今井「そうなんです。超レアな状態です。建物としても超レアな状態に。どんどん上がっていくんですけれど、4階のここから!ここからのウォーっとこの床が」
マツコ「ああ、ちょっとここ違うくなるんだ」
今井「そうなんです。4階のここだけにこんな」
マツコ「そりゃ覚えてねぇよ。なんで?奥につながるためにちょっとずつ濃くしてる?」
今井「鋭い!そうだと思うんです。奥が紀伊國屋ホールなんですけれど、そこに行くにあたって」
マツコ「向こうは薄暗くなってるしね」
今井「グラデーションを意識して作られてると思うんですけと。シンプルな三角形でグラデーションが形成されているなんて」
マツコ「おしゃれ」
今井「おしゃれですよね。モダンですごいおしゃれなんですよね。主張しすぎないけれども、すごいモダンな感じで、俳優さんに例えると笠智衆さんみたいな感じ」
マツコ「ちょっとベテランすぎませんか?」
今井「ベテランすぎますか?そんなすばらしい床を見ていただいて。続きまして、東京でも屈指の美しい床がいっぱい見られるスポットがあるんです」
 
レトロな床の美術館
板橋
 
マツコ「こういう時って板橋が出てくるのねやっぱりね。しっとりチャーハン以来ね。板橋がフューチャーされるの」
今井「板橋がなぜ床の美術館かっていうと、再開発があまり進んでいなくて、個人商店さんが、昔ながらの姿でいっぱい残っている。屈指のスポットになっています。そこでぜひVTRをご覧ください。大山のハッピーロードです。ガーッと奥行きがあるすごい広い商店街なんですけど、進んでいくと、年齢層が高いかたの洋品のお店があります。ずいずいっと入っていくと、こんな激しい」マツコ「激しい?」
今井「パターンが激しい。赤とグレーでけばけばしさはないんですけど、優しい感じもないっていう。パンチがきいてる」
マツコ「名前が『FRONTIER』ですよ」
今井「そうです!『FRONTIER』です。続きまして、これクリーニング屋さんなんですけど、外からみるとちょっとタイルが」
(高級ドライクリーニング『光』)
マツコ「よくありがちなクリーニング屋さんね」
今井「ガラガラっと開けると、なんとこんなかわいいグリーンのチェックの柄。かわいいですよね」
マツコ「今でもそんな古くさく感じない」
今井「今でも通用するような感じ」
マツコ「あの青いタイル良いね!昔よく魚屋さんとかね、商店街にあったけれど。最近見ないねあの青いタイル」
今井「引き続きこちらが文具屋さんです。どこにあるんだって感じですけども」
(『いよや文具店』)
マツコ「え、1階じゃないの?」
今井「1階じゃないんです。これ2階。2階に上がっていく階段がかわいい柄」
マツコ「昔あったな、ああいう階段」
今井「ありましたよね、階段に。こんなオレンジの、すごいかわいい階段で」
マツコ「なんで2階に文房具屋さんつくったんだろう?」
今井「ここでですね、突然ですが、クイズ。床クイズを」
マツコ「床クイズ?たぶんもう金輪際出題されないクイズだと思うんですけど。噛み締めてお答えしたいと思います」
今井「こちらです。赤いタイルなんですけど、こちらはなんのお店のタイルだと?」
マツコ「いやいや、難しすぎるでしょ。ヒントは?」
今井「ヒントはですね、商店街だったら、まあまずあるお店ですね」
マツコ「色味だとお肉屋さんっぽいよね」
今井「おっと」
マツコ「当たった?」
今井「ぜひ正解を見て」
マツコ「お肉屋さんのショーケースの前ってあんな感じだよね」
今井「はい、まさに。すごい、よくわかりましたね」
マツコ「人生で一回こっきりの床クイズに正解しました。ほらほら、だいたいこういう色味だよね、お肉屋さんって」
今井「そうそう、赤い色が多いんです」
マツコ「コロッケ買ってる時、下はオレンジのイメージだもん」
 
 
《超希少!探したくなるレジェンド床》
 
 
今井「最後はですね、見つけたら奇跡という床をご紹介したいと思います。床の神に愛されなければ出会えない、名画ならぬ一期一会の名床。これは床をいくつも見てきた上級者向けです。私も1年で1回会うか会わないかみたいな床なんです。こちらです。三軒茶屋の『喫茶セブン』さんなんですけど、これどこがレアなのか?」
マツコ「別に今までの流れから言ったら、そんなに際立ってなにかおかしい要素は感じないんですけど」
今井「実はこれ、タイルの向きをよくよく見ていただきたいんですけど、右上の4つの並びは円を描いてるじゃないですか。丸じゃないんです」
マツコ「あ、本当だ。あと下も。3箇所くぼんでるやつと、2箇所くぼんでるやつと」
今井「そうなんです。形が違うんです。なんでこんなことになったかというと、こちらのご主人がご自分でDIYされて、貼ったそうなんです。その時にうっかり向きを間違えてしまってですね」
マツコ「まあでも、今井さん以外気付いてる方いらっしゃらない」
今井「いえいえ、床仲間が」
マツコ「10人しか気付かなかったことですからね」
今井「続きましてこちらなんですけれど。これはどこが?」
マツコ「これも失敗のものかしら?こっち側は全部お花みたいになってるじゃない。あれって続いちゃってるよね?タイルが」
今井「これは間違えていたのではなくて」
マツコ「これは合ってるのね?」
今井「合ってるんです。右側は八王子で、左側は練馬なんですけれど」
マツコ「使い方が違ってたんだ?」
今井「そうです」
マツコ「ああ!なるほど」
今井「全く同じタイルなんですけど、並べ方で」
マツコ「練馬の人クセあるわね。あれは八王子が正解よ、あのタイルは。へえー、おもしろい」
今井「こんなに表情が変わるんだって」
マツコ「同じタイルでね」
今井「こんなふうに、出会えただけで奇跡という床がいくつかあるんですけども、それをさらに上回る超レアな床があります。出会えたら奇跡、色違いの床。メーカーさんが、同じ柄で色違いを発売していたんですけれども、同じ場所で使われるっていうことがないですし、他の離れている場所でも使われていることは滅多にないっていうレアな床です。すごいお気に入りの床があるんですけど、こちらです」
マツコ「色違いあります?これって、柄からすると青だけだった可能性もあるよ」
今井「ところがですね、何年も探し続けていたんですけど」
マツコ「あったの?」
今井「床仲間が、『宮城の温泉で見かけたかも』っていう情報をもらってですね、長年探し求めていたものがあるっていうので、今回行こうと思って、行ってきた
ナレーション「今井さんの色違い床を探す旅に同行」
今井「今日は床を探しに仙台までやってきました。探してた床に会えるかもしれないのですごく楽しみです」
ナレーション「やってきたのは、宮城県仙台市。目的の色違いの床を見にいく前に、まずは駅近くの商店街で好みの床探し。するとさっそく」
今井「よさげなのがありそうなので、入ってみたいと思います。すみません、私東京から観光で来たんですけど、今外から床の模様がかわいいのを見つけて、言われることありますか?あ、ないですか」
ナレーション「無事に撮影の許可をいただけた様子。今回見つけた床が、創業80年を誇る老舗履物店(『はきもの林屋』)の渋い色使いとどこか懐かしさを感じるデザイン、クッションフロア。さっそく撮影開始と思いきや。なんと靴を履き替えはじめた」
今井「床の色に合わせて、床の色を変えようと思いました。靴をだいたいいつも2~3足持ち歩いて、そのつど、発見した床の色に合わせて靴を変えます。必ず床を撮る時は足を入れて撮るようにしてるんです」
ナレーション「床と色合いのよい靴に履き替えたら、カメラで撮影」
今井「撮れました。私以外が見ておもしろいか、わからないですね。こういう感じです。良い床が撮れたと思います
マツコ「こんな後半になってそれを言われるとは」
ナレーション「満足がいく床が撮れたら...」
今井「お商売しているところに行って『床だけ撮らせてください』ってちょっとあんまりなので、礼儀としてちゃんときっちりお買い物してっていうふうにいつもしてます。あまりにも無礼千万なので」
ナレーション「商店街での床探しを終え、いよいよ目的地へ。色違いの床を求めて仙台市から車で1時間。やってきたのは、大正創業の老舗旅館、『高友旅館』。床仲間からの情報でこの旅館を知り、予約していた今井さん。長年探し求めてきたお気に入りの柄の色違い。いよいよ念願のご対面」
今井「これです!これを探してやってきました」
ナレーション「こちらが今回の目的、今井さんのお気に入りの柄の色違い」
今井「うわー、ちょっとグルグル回っちゃいましたけど。ようやくたどり着きました。ここにあったんだねっていう感じですね」
ナレーション「さっそく記念撮影。しかし...」
今井「あれ?えーと、同じっぽいんですけど、よくよく見ると違いますね。こことかほぼそれっぽいかなって思ったんですけど、よくよく見ると違いますね」
ナレーション「改めて、2つの写真を見比べてみると、似てはいるものの、別の柄であることが判明」
今井「すみません。ほぼほぼ同じ。でも全然違うんです」
ナレーション「はるばる宮城まで来たが、本来の目的は果たせず」
今井「この柄を捜索中です。もしもこの柄の色違いを見かけた方がいらしたら、教えていただけると嬉しいです。よろしくお願いします」
マツコ「こういうオチは意外性があっていいわね」
今井「とんだ無駄足を」
マツコ「いやいや、それだけたいへんだってことがわかりましたよ。あとこれからも絶滅していく一方だしね」
今井「そうなんです。どんどん減っていってしまうので、常に追い続けなければっていう。でもこれで、全国の皆様が床の魅力に気付かれたと思うので。ちょっとでも床の寿命が延びて」
マツコ「この番組ね、うまい物食ってる時だけはね、翌日その商品が売れるんですけどね。この手のものは、そんなに影響力ないです」
今井「あれ?」
 
 
~完~