2020/01/03放送
マツコの知らない世界
宇多田ヒカル(ウタダヒカル)さん(以下、宇多田)
マツコ「これ同姓同名の違う人じゃないよね?『宇多田ヒカル登場』って書いて、同姓同名とかって。大丈夫だろうな?宇多田ヒカルさんです、どうぞ」
宇多田「はじめまして」
マツコ「ミラクルひかるじゃないよね?本物よね?」
宇多田「よろしくお願いします」
マツコ「何しに来たの?こんな雑多な場所に」
宇多田「お呼びいただけたので、喜び勇んで」
マツコ「こちらこそ、本当にありがとうございます。おきれいになったんじゃない?」
宇多田「あらそんな。いやいやいや、ありがとうございます。...なんでしょう、この感じ」
マツコ「なによ。緊張しないでよ」
宇多田「いや、あんまりないので。こういうお仕事が」
マツコ「そりゃそうでしょう。こんな番組に出てほしくないよね」
宇多田「よく見てます。よくというか、日本に今住んでいないので」
マツコ「見てくださってるのはありがたいんだけど、出ちゃダメよ。人間にはやっぱりいる場所っていうのがあってね。宇多田さんは別にここにいなくてもいいのよ」
宇多田「いやいやいや、すごい嬉しいです。なんかうそみたい」
マツコ「びっくりするでしょ、なんかもうホームパーティみたいでしょ?たぶんTBSのゴールデンでやってる番組で一番安上がりなセットですからね」
宇多田「TBSって他にどんな。いまいち局名とチャンネル数とか番組が結びつかないんです」
マツコ「そうね。なに?TBS。天気予報?森田さん?」
宇多田「時代劇だったらなんですか?TBS」
マツコ「水戸黄門です」
宇多田「あ、なるほど」
マツコ「時代劇が好きなの?」
宇多田「母親の影響ですね。彼女がチャンネルを決めていた」
マツコ「裏切らないわ。藤圭子は裏切らない。時代劇見てたのね。裏切らない」
宇多田「白黒はっきり、善悪がはっきりしてるのが好きだったみたいです」
マツコ「あたしお母さん込みで好きなんだもん」
宇多田「ありがとうございます」
マツコ「お母さんの話をしだしたら、明日も枠取ってもらわないといけないくらい、止まらなくなるからね」
宇多田「...はい...」
マツコ「いや、いいの。テレビだからっていってベラベラ話してなきゃいけないなんてルールはないんだから」
宇多田「そうですね」
マツコ「そうですよ。せっかく宇多田さんが出てくれたんだから、沈黙を楽しむっていうね。そういうのもありだと思うよ」
宇多田「でももともとこういう場だと、様子がおかしい感じに見えるなっていうのは、客観的に自分が出演してたテレビを見ていても思ったので」
マツコ「様子がおかしくはないよ。大丈夫よ。様子がおかしいっていったら、あたしのほうがよっぽど様子がおかしい。そこはあたし人様のこととやかく言えないんで大丈夫よ」
宇多田「じゃあいきますか」
マツコ「いく?」
宇多田「じゃらん。マツコの知らない落とし物の世界」
マツコ「じゃらん言わせたね。宇多田ヒカルにじゃらんって言わせたね」
宇多田「仕事柄、よく歩くんですよ。歩くと、歌詞考えたり、書き物をするときにすごく良いので、よく歩くんです。作詞してる期間とか」
マツコ「ロンドンで?」
宇多田「どこでも」
マツコ「そういう時に、目につくんだ?」
宇多田「そうですね。気がついたらツイッターとかインスタが、道で見つけた物の画像の写真しかあげてない場になっていて」
マツコ「そっちのほうがどっちかというと様子変わってるわよ」
宇多田「有名な方とか、今日の現場の誰々さんと一緒にニコッみたいなのとか、セルフィーとか、仕事にまつわる何かだったりするんですけど、私は自分をのせるのがあまり好きじゃなくて。時々海外のミュージシャンとかにインスタ教えてって言われて教えても、『これは本当にヒカルのなのかい?』って他の人に確認されたりして。偽物の教えたって思われたりするらしくて」
マツコ「だからナンパした女に、昔リカちゃん電話聞かされたみたいなものよね。...わからないね、これもうわからないだろうな。ね、そういうことよね」
宇多田「そういうことです、笑」
《ハマったきっかけは...東京で発見!衝撃の物体》
マツコ「今いくつになったの?」
宇多田「36です。もうすぐ37です」
マツコ「え~。もうあれ何年前なの?何年前の話になるの?あたしはいくつだったの?」
宇多田「プロフィールを紹介させてください。自分のプロフィール持ったの初めて」
マツコ「イヤでしょう。だから断ってもよかったって言ってるじゃないのよ。なんで受けたの」
宇多田「いやいや。宇多田ヒカル、36歳」
マツコ「存じ上げております。『ニューヨーク出身、ロンドン在住』。言ってみたいわー」
宇多田「こう見るとカタカナが多いですね。職業も全部カタカナ(シンガーソングライター)」
マツコ「あたしもあんまり人のこと言えないので。けっこうさっきから自虐された時、本当にあたし突っ込めない。あたしのほうがよりひどいっていう。ていうか、(デビューが)90年代だったんだ」
宇多田「はい。去年、20周年でした」
マツコ「20年経ったの?」
宇多田「もう21年です」
マツコ「ラジオで、仕事で相模湖かなんかで撮影をするので、あたしその時まだ裏方だったんだけど、カメラマンの女とか車で乗ってて、流れたのよ。『なにこの女』ってみんなでなって」
宇多田「15歳からやってると、本当恥ずかしいです。ただ単に14.15とかの自分の映像がいまだに出てくるって」
マツコ「そりゃそうよね」
宇多田「カラオケとかいって、ノリで『Automatic』とか誰かがいれて歌ったりするみたいなとき」
マツコ「けっこうなことする友達」
宇多田「仲良い人です」
マツコ「仲良くなきゃ無理よね」
宇多田「その時に本人映像というか、ビデオが流れるんです。あれはちょっと恥ずかしいです」
マツコ「あれはでもね、恥ずかしいのはもちろんご本人はそうだろうけど、画期的な映像でしたよ。びっくりしたもん、最初見たとき。だって立たないんだもん」
宇多田「あれ諸説あって、私の記憶ではセットが幅があまり作られてなくて、立ち上がっちゃうとそのぶんカメラ引くと横見切れちゃうって聞いて。これ以上引けないって言われて。でもずっと座ってるのじゃ、一曲座ってもたせるのって...と思って。前に出たり動き出さなきゃって思ったって記憶が私はあるんです」
マツコ「じゃあ、たまたま偶然できたのね。誰かすごいのが『立つな』って言ったわけじゃないのね。そういうわけじゃないのね。『ブラインドも開けるな』っていうね。そういうことじゃないのね」
宇多田「そういうことじゃなかったです」
マツコ「ああそう。やっぱりああいうものは偶然できるのよ。そこでずっと座ってなかったっていうね。中腰で立ったっていう勢いね。普通ちょっと考えるじゃん、中腰で最後までキツいなとかね。そうなるとあのタイミングで立たないわよ。だって中腰になってからが長かったもん。デビューのバッていう、行け!っていうのがあれを作ったのね」
宇多田「若さですね」
マツコ「だから若さってステキよ。...こういう話してるほうが良くない?今から内容変えない?三が日だよ?なんで三が日で宇多田ヒカルが落とし物の話してるの?」
宇多田「まず2010年の、おそらく初めてであろう物を見ていただいてよいですか?こちらなんですが」
(DVD『関西マニアック人妻投稿8』)
マツコ「名作よね」
宇多田「たぶん作詞がてらだったのか、お散歩がほぼ日課だったんです。麹町に住んでるときで、よく四谷のほうから銀座方面に向かって、日比谷公園の脇を通って歩いてたんです。晴海通りと日比谷通りの交差点、日比谷公園前警察署」
マツコ「ペニンシュラのところ?」
宇多田「はいそうです」
マツコ「ペニンシュラのところに落ちてたのこれが?ええー?そう考えるとすごいわね」
宇多田「いや本当にまさかっていう」
マツコ「誰が?日本放送のやつが落としたのかな?なんでこんなのがあそこに?」
宇多田「信号の近くに、交番の向かいだったんですけど」
マツコ「これは撮りたくなるわね」
宇多田「最初は裏のキラキラしてる面が上になってて、通りすぎたんですけど」
マツコ「気になった?」
宇多田「あれ?なんのCDだろう?見てみたい、と思って。信号で待ってるときに悩んで、いや見にいこうと思って戻って、拾ったらこれだった。交番のお巡りさんが、一連の動きをすごく見ていて。ずっと見入って笑っちゃってる状態だったので、写真撮り出して」
マツコ「しかもそれを撮ってるのが宇多田ヒカルだからね。なかなかの光景よ」
宇多田「ずっと視線を感じながら」
マツコ「これは衝撃的だったわね。一発目がね」
宇多田「なんだろうって気になったものを見にいって、見てみてよかった」
マツコ「よかったわよこれは」
宇多田「こんな発見がっていう、一発目として」
マツコ「誰がなんであそこに?」
宇多田「ポロっていうものじゃないじゃないですか。ポケットに入っていて、ケータイ取り出してとかじゃない」
マツコ「何かのメッセージだった可能性はあるよね。あえてああいう華やかな日本の中心地に」
宇多田「いろいろ妄想がふくらむ」
マツコ「プレイですよこれは。何らかのプレイよ」
宇多田「誰かに見つけてほしかったとしたら、まんまと」
マツコ「もしかしたら見てたかもしれないですよ。宇多田ヒカル!?って」
宇多田「お巡りさんだったらおもしろいですけどね」
AD「はああああ」
マツコ「何が『はああああ』だったの。そういうのが好きなのかおまえ。このやろう。ど変態が!」
マツコ「なにか落とし物に運命を感じて、こんな長いことずっと撮り続けることになるとは思ってないわけでしょ。たまたまその時は」
宇多田「そうですね」
マツコ「そういうことなのよ。それで9年後こんな番組に出ることになったのよ」
宇多田「♪ぱっ、ぱや、ぱや。どこで流れるんでしょう?」
マツコ「そんなのやるぐらいだったらちょっと一曲歌ってくれない?」
宇多田「歌いたくなるんですあれ」
マツコ「本当?もったいない。それだったらちょっともう一曲。『道』歌ってもらいたい。『道』好き」
宇多田「うれしい、ありがとうございます。いつか飲みの席で」
マツコ「できれば今日」
《ロンドン・パリ・ニューヨーク 世界で出会った落とし物》
マツコ「じゃあもうけっこう、枚数的に言ったらとんでもない枚数を撮ってる?」
宇多田「いや、そうでもないです」
マツコ「出会うだけのもあるんだ?『あ、いた』くらいで終わる」
宇多田「おもしろいなって思う物とか、なんだかかわいそうな感じがする物に特に惹かれます。よくあるものはスルーしちゃいます。軍手とか、それもひとつのジャンルであるらしいんですけど」
マツコ「ゲストで来てくれた。軍手だけ撮り続けている人」(片手袋の世界・石井公二さん)
宇多田「研究家の方ですか?」
マツコ「そう」
宇多田「私のインスタを過去にご覧になったことがあって、それ以来、私の目線にシンパシーを感じてくださったらしくて。つい先週本をいただきました」
マツコ「お知り合いだったとは」
宇多田「それはそれですごくわかるんですけど、私は『えっ?』っていうものが好きで。なんでこんなのが?っていう。落とし物に惹かれる理由、本来あるべき場所でない場所に置いていかれてしまった物に共感するから」
マツコ「共感」
宇多田「なのかなと最近思ってたんです。この番組のために過去の写真を全部整理して、まとめて見返していたら、共通点として申し訳なさそうというか、所在なさげというか。本来たどるべきはずだった運命からこぼれ落ちてしまった、予期せぬことも甘受せざるをえない、ただ置いていかれてしまったものの、誰にも目をくれられずにいるものが、なんか好きなのかな。...熱弁しちゃった」
マツコ「ものすごい真剣に話してくれてるなと思って。この人今落とし物の話してるんだよなって思って。ありがたいんだけどね。ありがたいのよ」
宇多田「そういう番組なんじゃないんですか?」
マツコ「そういう番組なのよ。それをあなたがやってるから、なにやってるんだろうこの人と思って。ありがたいのよすごく。びっくりしちゃった。ちょっとわかるわ」
宇多田「たぶん今お話されたようなことだと思うんですけど、2018年の終わりに、久しぶりにコンサートをやった時も、MCの部分でしゃべること全く準備しないでやるんです。歌い終わってふっとしゃべるところだってなった瞬間に、『なんでこんなたくさんの人が私を見てるんだろう?なにやってるんだろうここで』って毎回あって」
マツコ「今でも?」
宇多田「ここは何?私はなんなんだろうっていう」
マツコ「ああでもそれはすごいわかります。あたしも本来あるべき場所じゃないところに置いてかれたようなもんなんですよ」
宇多田「そこに共感しちゃう」
マツコ「共感っていうものはちょっとわかりますあたしも。本来はこんな華やかなスポットを浴びてベラベラしゃべっているような、こんな立場ではなかったわけですから。今でも目の前で宇多田ヒカルが『関西人妻シリーズ』のCDRを見せているっていう」
宇多田「『関西マニアック人妻投稿』です」
マツコ「『関西マニアック人妻投稿』の8ね。もう忘れない」
宇多田「ああ、(パネルが)大きいですね。想像の倍くらい大きかった」
マツコ「やることがないから大きくしがちなんです、この番組。こんなにいらないんですけど」
宇多田「これが全てではないんですけど、その一部。なにか気になるのありますか?」
マツコ「一番気になるのが、ケチャップが好き。ケチャップは写真としてもすばらしい。あれHEINZのポスターにそのまま使ってもいいくらいの良い写真。あれあそこに置いてあったの?最初から。なんなんだろう」
宇多田「誰かが明らかにあそこに置いたんだろうなっていうのがわかるパターンだったので、だったらあの状況込みで物憂げなケチャップの袋を撮ろうと思って」
マツコ「写真としてはケチャップね。物として気になるのはピザよね」
宇多田「ピザの下のところに『BUNO APPETITO』って、『召し上がれ』って書いてあるんです。なんかすごく食べたくない状態で笑っちゃって」
マツコ「あと、ここで食べてたのかな?」
宇多田「ここはロンドンなんですけど、ロンドンは普通にゴミみたいな。日本だったらあんなふうに路上に放置しないよねっていうものが、けっこう落ちてるんですよ」
マツコ「じゃあこれロンドンだと、意外と日常の光景?」
宇多田「そうですね。だからジャガイモもロンドンですし、ホイールもロンドンです。ドアが落ちてたのはすごいびっくりしたんですけれど」
マツコ「あれはもう何かの暗示じゃないかっていうね。恐ろしいよね」
宇多田「歩道にドアが。粗大ゴミとして出しておいたけど、ゴミ収集車が持っていってくれなかったとか」
マツコ「なるほど」
宇多田「ミキサー卓も粗大ゴミだったと思うので、そういうのが多いですね」
マツコ「すごいね。もう海外しかないのかな」
宇多田「日本に帰ってきてこういう仕事をしているお友達と会うと、大変だなとは思います。有名な人が普通に生活することをあまり許してくれないというか。なんかこう『おー!』となっちゃうのが大変そうだなとは思います」
マツコ「普通にコンビニで買い物してるだけで、週刊誌に載るからね。なにがおもしろいのかはわからないんだけれど」
宇多田「私もスーパーで買い物してるのが週刊誌に載って、合計いくらだったとか書かれて。誰だってこんな買い物するじゃんって疲れがガクッときて」
マツコ「あたし『私服は2パターン』って書かれた。いいだろ!別に!って」
宇多田「続いて、落とし物の写真を撮る理由。『あれなんだろう?』という好奇心をやりすごすことができない。周りがスルーしてるっていうのもあって、喜びがあるんですよね。まわりが気づいてない物に気づいたよろこみたいな」
マツコ「なるほど」
宇多田「すごく地味なんだけど、本当はかわいい女の子に気づいた時みたいな」
マツコ「私だけが知ってるみたいな」
宇多田「それは本能的なのかな」
マツコ「シールとかはもはや。どこかに貼ってあったの?」
宇多田「あれはニューヨークの地下鉄の手すりにピッとくっついていて、見たら『PRAY』って書いてあったんです。『祈れ』っていうとあれだけど、『祈り』とか『祈る』とか『祈りなさい』みたいな。みんな汚いかもしれないし触らないと思うんですけど、取って見てみたら、すてきな言葉が意味ありげな言葉があって、いろいろフワッてなる、『見てよかった』っていう。その好奇心を貫いて見た者だけが得られる」
マツコ「それを貼った人も、それを念頭に置いてあそこに貼ったのかな?」
宇多田「そうかもしれない。そういうのをいろいろ考えるのが楽しい」
マツコ「確かにシールは楽しいわよね」
宇多田「これがもしかしたら一番最近なのかな」
マツコ「これ何?」
宇多田「天使の羽なんです」
マツコ「しかも手作りっぽいわね。段ボールになんかつけてあるみたいな」
宇多田「ロンドンのみんな酔っ払ってみるような、小さいコンサート会場に人のショーを見にいって、それがちょうどハロウィンだったんです」
マツコ「こういうのをつけてくるファンがいるのね」
宇多田「みんなコスプレで来てて。私はその前に息子のクラスの子たちとママのハロウィンパーティに行ったその足で」
マツコ「そんなの行ってるの?」
宇多田「コウモリのかっこうで行ったんですけど」
マツコ「そういうことやってるのね」
宇多田「そのあとに行ってみたら、裏のバーのお酒売ってるエリアのすみっこに置いてあったんです」
マツコ「天使じゃない!って思ったんだろうね。前の日までは天使だったんだけど、なんか違う!って思ったんだろうね」
宇多田「でも、これすごく大きいんです。たまたま友達といっしょにいたので、写真を撮ってもらえた」
マツコ「すごいわね。こんなことしてるのねロンドンで」
宇多田「楽しかったです」
マツコ「子ども血引いてる?」
宇多田「そうですね」
マツコ「うわっ。もうね、すごいのよ。藤圭子から宇多田ヒカルってのがすごいのよ」
宇多田「遺伝子ってすごいなって思いますね」
マツコ「もう一回子ども産めない?」
宇多田「なんでですか?」
マツコ「女の子作ってほしいの。女の子」
宇多田「ああ、そりゃあまあ。でも私は男の子で良かったってなったから」
マツコ「でもそれもなんとなくわかるわ」
宇多田「気楽。女の子ってすごいガーリーな服を選んであげたり、ガーリーな遊びを」
マツコ「たぶんお母様はあなたと向き合ったのはたいへんだったと思うのよ」
宇多田「そうですね、母親もすごい少年っぽい」
マツコ「それもそうだし、この才能をもって生まれた娘っていうので、なんかいろんな思いがあったと思うのよ」
宇多田「でもライバル心とか競争心がないのが、うちの特徴かなと」
マツコ「ライバルと違うのよ。『背負わせるのか、この子に』っていうね」
宇多田「そこに葛藤あったかな。もう迷いなくヒカルの声は良いから、良い声だから、良い声だから、みたいな。プッシュプッシュみたいな」
マツコ「あ、そっちだったんだ」
宇多田「そうです。私のデビューする何年も前に母親が『徹子の部屋』に出演して『娘がすごいの』って言って、初めて作った曲の音源を流してたりっていうのを、最近ネットで見て。ああこんなことしてたんだ、恥ずかしい、12歳の時の曲が流れてると思って。私は逆に恥ずかしくていやだったんです」
マツコ「いや、でももう認めざるをえなかったんじゃない、お母さんも。化け物が生まれたわっていう」
宇多田「どう思われてたんだろう。ただの親バカだと思ってたんですけどずっと」
マツコ「そんなことないわよ。あたしはもう化け物を生んでほしいんですよ」
宇多田「すごいたいへんじゃないですか、赤ちゃん。もうこれからまたっていうのはなんか」
マツコ「手伝えることがあったら手伝うわよ」
宇多田「それすごいな」
マツコ「恋はしてるの?」
宇多田「恋は別にしていいんじゃないですか?そんなそうそうしないですけど」
マツコ「もうあんましなくなった?」
宇多田「うん、そうですね。でもすごく良いものだと思うし、してはいたいですよね。ただなんか、わーってなるのはイヤだなと思っちゃうんですけど。狭くなるのはイヤだな」
マツコ「昔から?」
宇多田「そうですね。巻き込まれていく感じの。自分でオッてアクティブなほうではないので。なんかこう気がついたらそうなってるみたいなのは卒業しなきゃっていうことで」
マツコ「あら」
宇多田「ていうところで大人になったなあって最近思ってたんです」
《マツコvs宇多田 落とし物で妄想合戦》
宇多田「宇多田流、落とし物の楽しみ方。落とした人のことを想像する。これはもうこれまでの話の中で」
マツコ「もうやっちゃってたね」
宇多田「自然としてましたね。そうなるんですよ。すごい妄想がふくらむ系のをおひとつ。これ、すごくかわいそうじゃないですか?パリの路上ですね。これ落ちてるより、もっとかわいそうになっちゃってるっていう」
(壁の隙間に人形が押し込まれている)
マツコ「これはわざとなのかな?それとも落ちちゃってるやつを、踏まれちゃったりしたらあれだから、持ち主の女の子とかがまた見つけにきた時に、守られてるように奥にギュッと入れたのかな?」
宇多田「だと思います」
マツコ「そっちを取るタイプよね」
宇多田「人の善意を」
マツコ「あともう母だもん」
宇多田「まあそうですね。でもこの顔が怖いんです。下からのアングルで見ると」
マツコ「ああ、もうこれは何かを宿した可能性があるわね」
宇多田「落とされたことへの恨みが」
マツコ「なってきてるよ」
宇多田「パリ、ちょこちょこぬいぐるみが落ちてるんです。さっきもあったんですけど、クマのぬいぐるみがただ置いてある」
マツコ「あれもパリ?」
宇多田「パリですね」
マツコ「あれでも落とさないよね?だから下手したら『いらない』って」
宇多田「それもかわいそうなんですよね」
マツコ「かわいそうよ」
宇多田「そのかわそうな感じが好きなんです。一回、体調を崩して寝ている人のことをいとおしく感じちゃって、写真撮ったら怒られたことが」
マツコ「スレスレで生きてますよ」
宇多田「これロンドンのコヴェント・ガーデンっていう、割と観光客が集まる、人がいっぱい集まる場所だったんですけど、脱ぎ捨てられたズボン」
マツコ「これあたしね、すげぇロンドンぽいって思った」
宇多田「そうなんです。こういうのがあるのがロンドンなんですよ」
マツコ「日本でもしこういうのがあったら、事件性みたいなところまで考えちゃうじゃない。これは日常」
宇多田「誰も気にせずに周りを」
マツコ「そうだよね、酔っぱらうとよく脱ぐよね、くらいな」
宇多田「あるある、みたいな」
マツコ「そうそう。『家帰るとパンツのときあるよね』みたいな国」
宇多田「ドラマチックな。動きながら、歩きながら脱ぎ捨てていったみたいな感じが」
マツコ「あたしこれね、寝そべってたと思う。んあーって寝て、んんーって脱いだんだと思う」
宇多田「ああなるほど、だから横に」
マツコ「あと裏返ってないし。合ってるかな?」
宇多田「そうだと思います。私がそうだと思いますとは別に」
マツコ「いやいや、評論家ですよ」
宇多田「落とし物の評論家になれますよ」
マツコ「何言ってるんだろうね本当に」
宇多田「なりたくないですよね」
マツコ「そうですね。あんまりなりたくはないですけど」
《最もテンションが上がる!宇多田の大好物No.1》
宇多田「ひとつ、シリーズ化してるものがあるんです。すごくテンションが上がるものがあるんです」
マツコ「これだけはちょっと別枠にしてもいいような?」
宇多田「別のフォルダで保存しているものがあって。一番テンションが上がる落とし物、何だと?」
マツコ「ええー。ヒントは?」
宇多田「なんかやっぱり、かわいそう感とか。悲壮感とまではいかないんですけど」
マツコ「よく落ちてる物でしょ?シリーズ化できるってことは」
宇多田「そんなによくあるわけでもなくて、6.7年の中で、10枚いってるかなくらい」
マツコ「これはわからないわね」
宇多田「じゃあいきますか。あ、これも初めてかもしれない。めくり」
マツコ「無理にとはいいませんよ。やりたいです?」
宇多田「はい、そうですね。どんな感触か」
マツコ「じゃあどうぞ。でものり付けするやつのセンスがかかってるんですよ」
宇多田「毎回違うんですか?」
マツコ「気持ちいい~って時もあれば、チッっていうね、なんだこれっていう時もあって」
宇多田「やってみます」
マツコ「あ、今日うまいですこいつ。いい感じにシューって」
宇多田「いい感じでしたね」
マツコ「スプレーいい感じで塗れて」
宇多田「絆創膏です」
マツコ「わからないですね」
宇多田「そうですよね」
マツコ「超難題クイズでした」
宇多田「わかったら怖い」
マツコ「絆創膏、使用済み?」
宇多田「そうですね。これまた用意していただいた。10枚は超えてますね。これ本当はもっとあって、ほとんどロンドンとフランスですね。こんな感じでこう地面に落ちてるんですよ。最初に見た時に、地面がケガしてるみたいで、いとおしいと思ってしまって」
マツコ「うわー。もう一回ちょっと。地面が?」
宇多田「地面がケガしてるみたいで。それはどっちの『うわー』ですか?」
マツコ「違う違う、そのまま歌詞にできそうな」
宇多田「そうですか?どんな歌詞ですか。特にあの左上のやつとか、割れ目にちょうど」
マツコ「あと不思議なのが、二枚重ねじゃないですか」
宇多田「そうなんです。あれだけ異質なんです」
マツコ「あとね、大きいやつ。大きいやつの左上が、ちょっとヨレヨレってなってるでしょ?あれよくなるよね。あれね、大きいとね開けづらいのよ。きれいにやったつもりが、あーっていう」
宇多田「これ整理してて気づいたんですけど、右の下にある2枚はアングルが違うだけで同じ絆創膏だって気づいたんです」
マツコ「別の日に撮ったの?」
宇多田「3か月以上あいてるんですけど。撮った日付を確認したら」
マツコ「そう考えるとおかしいわよね」
宇多田「どんだけ取れにくいのかっていう」
マツコ「あと3か月経って、あんなにきれいな状態でいられるかっていうね。地面にああやって落ちてたら。貼り直してるんじゃない?」
宇多田「新しいのをずっとあそこに?」
マツコ「だからたぶん彼か彼女かね、あそこに貼ってる人は、彼にしか見えないあそこに傷があるのよ」
宇多田「本当になにか隠されてる」
マツコ「あと靴いっぱい持ってるよね」
マツコ「もうずっとロンドンいるの?」
宇多田「当分はいますね、たぶん」
マツコ「子どもも育て始めちゃったしね」
宇多田「学校も入ってるし。私は子どものころにすごくいろんな所に、急にニューヨークだとか急に東京帰るとかが多かったんですけど。そのおかげで良かったことも今となってはあるんでしょうけど、やっぱりなんかたいへんだったなと思って。あんまり子どもにはさせたくないなと。まあでも普通に育ってほしい。元気に自分らしく」
マツコ「子ども産んで良かったタイプね」
宇多田「そうですね。すごく感謝してます」
マツコ「ちゃんとやられてる感じも出てるし、でもなんかちゃんと女だし。やっぱり血だよ。もう計算とかじゃできないのを感じる。なんかこう、なんでもこいっていう。変わらないからそんなに私っていうね」
宇多田「そうですね。でも親から学んだっていうのはあるかもしれない。子どもできたから、人間そんなに変わるわけじゃない。親だってただの人間じゃんっていう。それをお手本にっていうわけじゃないですけど、でも自分らしくいないと、全部子どものためにっていう感じで、全部そこに自分のもの託しちゃうと、子どもがそのうちママ、ママじゃなくなった時とか巣立った時に、あれ?なんにもなくなったみたいな。私の人生なんだったの?っていうのを子どもに対して感じたくないから、私も私らしく生き続けて、それを見てもらえたらいいなって思います。もちろんいろいろ合わせてはいますけど。そのほうが楽しいのかな。...マジな話しちゃった」
マツコ「いやいや、いいのよ。落とし物の話だけってわけにもいかないし。いいのよ。そんなんもう世の中が何やってんだマツコこのやろうってなるから。なに普通に落とし物の話だけ聞いてるんだおまえはって」
宇多田「でも落とし物の話がいっぱいできて楽しかったです。今までないんですよ、人に対してこんなに説明できたというか、話をできたことが。誰もそんなに聞いてくれないし」
マツコ「笑」
~完~