2019/07/09放送
マツコの知らない世界

'唐辛子を日々研究する激辛ラーメン店主'
一匠(イッショウ)さん(以下、[一匠])




[マツコ]「ちょっと~。これお店の名前なんじゃないの?」
[一匠]「そうです」
[マツコ]「うわ、宣伝」
[一匠]「違います、あだ名が通称一匠です。どっか行くと『一匠さーん』って」
[マツコ]「あとなに?そのDEAD or ALIVEって?」
[一匠]「これうちのラーメン屋さんの名前です」
[マツコ]「ラーメン屋さんの名前がDEAD or ALIVEなの?一匠じゃないの?」
[一匠]「『拉麺一匠 DEAD or ALIVE』です」
[マツコ]「あー、なるほどね。たぶんね、そのお店あと3年だね」
[一匠]「30年と言ってください」
[マツコ]「こんなおちゃらけに見せといて、ちゃんとメモ書いてきて。まじめよ。ちゃんとしようちゃんとしようって思ってるでしょ」
[一匠]「最初だけですね。かなりテンションがあがってきちゃって。後ろのスコヴィル値が。唐辛子の辛さの単位スコヴィル値が」
[マツコ]「そうですか」
[一匠]「今回、すてきな国産日本唐辛子の魅力を伝えたいと思います」
[マツコ]「国産特集なんだ」
[一匠]「大丈夫ですか?」
[マツコ]「ダメって言ったらどうしてた?」
[一匠]「海外のヤバい唐辛子の話でもしようかと一瞬思っちゃいました」
[マツコ]「ああ、なるほど。そんな臨機応変にできるの?じゃあダメです」
[一匠]「今回、日本国産の唐辛子をいっぱい用意してきたので」
[マツコ]「予定調和を選ぶの?」
[一匠]「今日がんばってスタンバイしてる、国産唐辛子がかわいそうなので」
[マツコ]「じゃあしょうがないわよ」
[一匠]「さっそくいかせていただきます」
[マツコ]「予定調和に生きるね」
[一匠]「今世界の唐辛子業界は『旨辛』ではなく『ただの激辛』に」
[マツコ]「これ鈴木亜美さんじゃないの?」
[一匠]「もうBE TOGETHERです」
[マツコ]「うるさいな」
[一匠]「まず大前提として、唐辛子は『辛い』の前に『うまい』があります」
[マツコ]「それよく言うじゃん激辛の人って。でもさ、あれ食べると、ただ辛いだけ。全然うまさ来ないよ」
[一匠]「そうなんです。激辛になった唐辛子は辛いけどうまくないっていうのを、僕は変えるためにここにお話しに来た」
[マツコ]「でも絶対辛いの出してくる」
[一匠]「辛いけどその前にうまいが来ます。旨辛にもっていきたいところで、激辛になってる妨害がこちらです。『チリバブル』でございます」
[マツコ]「なに?」
[一匠]「今世界中で世界一辛い唐辛子が作られていってる現状なんです。例えばギネス記録にこれが世界一番辛いですって認定された途端に、全く日の目を浴びなかった唐辛子が世界中からドカーンと問い合わせ。『その商品をくれ』、『食べさせろ』、世界が変わる」
[マツコ]「その激辛世界一になったやつが?」
[一匠]「アメリカってホットソース、いわゆるタバスコとか辛いソースあるじゃないですか。あれがすごく普及しているんですけど、あの市場規模って一年間で2000億と言われている」

[一匠]「私の自己紹介をさせていただきます。今はラーメン店で毎日ラーメン作ったりいろいろしています。18歳のとき、京都で和食の料理人修行を始めます。このころは、唐辛子とは全く接点もなく、むしろ苦手なくらいだった。京料理なので、唐辛子とかニンニクとかは基本NGだった。そのなかで、23歳のときにいろんな料理をできるようになろうと思って大手中華チェーン店さんに働いたときに、こんな楽しい世界なんだと思った。そこから現在、辛くてうまい唐辛子の配合してる」
[マツコ]「ヤバい粉じゃん」
[一匠]「今回私が作った自家製マーラージャンをベースに、かけて楽しい食べておいしいシリーズを持ってきました。こちらはネギ塩仕立てのマーラージャン」
[マツコ]「それくらいだったら食べられる」
[一匠]「こちらは九州の甘醤油を加えた甘醤油がおいしいマーラージャン、これは和歌山の朝倉山椒といいまして、けっこういい山椒あるんですがそれをバチバチにきかせた鬼痺丸っていうしびれ系の」
[マツコ]「あまり好きじゃないやつだ」
[一匠]「これ全部旨辛です」
[マツコ]「ネギのほう食べたい。...あ、おいしい。バカみたいに辛くするわけじゃないのね。辛いけど、合う。おいしい。これこのままイオンとかで売っても売れると思うよ。売ったら?」
[一匠]「一応売ってます」
[マツコ]「いやいやあんなしょぼくれた店たたんで」
[一匠]「しょぼくれてないです」


《旨辛を味わえる!究極の辛唐辛子料理5選》


[一匠]「旨辛を追い求めたところで本題に戻りたいんですけれど、唐辛子本来の旨辛を味わうには生で食べるべし。今実際流通している唐辛子って、乾燥している物が多い。なった状態から乾燥させてるんですよ。乾燥させたあと細かく砕いて粉末にしてビンにつめる。そうすると唐辛子にもともとある水分を飛ばしちゃってる。実はその水分って旨みで、その旨みの部分が無くなっちゃってるのはもったいない。私のオススメする生の唐辛子を使った料理を。生の鷹の爪ってありそうでなかなかない」

・四川激辛餃子
(餃子 王)

[マツコ]「サクサクってなってるのが生?おいしいな。野菜を食べてる感じがする。あんまり唐辛子は野菜って認識ないじゃん」
[一匠]「淵野辺にある神奈川県の『餃子 王』さんってお店で、四川唐辛子っていう生の唐辛子を使っている。もともと王さんは宮廷料理をやられていまして、中国の金賞とか銀賞とかいろんな賞をとっているという、すごい料理人。辛い餃子作ろうと思ったら粉練り込むじゃないですか。そうじゃなくて、生を入れることによってみすみずしいシャキシャキっとした感じが出てくる。それが肉の旨みとあいまってすごくおいしくなる」
[マツコ]「確かに」
[一匠]「王さん大喜びです。本来の餃子はこれより肉がめちゃくちゃ多い。パンパンで食べたら肉汁がジュバーと出てくる。あえて唐辛子のおいしさを味わってもらうために、肉の量を少なくしている」
[マツコ]「今日、すごいいいタイミングでさっきテレビで餃子が映ってて、餃子が食べたくてしょうがなかったの」
[一匠]「しっかり唐辛子の旨辛を味わっていただいたんですが、実際生の旨さをどうやって味わうのかというと、輸入に頼らない。逆境に立ち向かう日本産を狙え。しかし全国の農地約450万ヘクタール中、唐辛子は約70ヘクタール」
[マツコ]「えっ、70ヘクタールしかないの?もともと唐辛子を食文化に組み込んでた国ではないからね」
[一匠]「日本には1500年に唐辛子が伝来したんですけど、最初は食用ではなくて、靴下の中にいれて、凍傷とかしもやけよけに使ったりとか、忍者が武器に使っていたりした。なぜこんなふうになってるかというのは、唐辛子は連作といいまして、今年唐辛子植えました、来年も唐辛子植えます、ってことができづらい品種なんです。プラス収穫の作業が、僕から言わせると正気じゃないです。素手で唐辛子取った場合、唐辛子成分が肌に入っていって、収穫シーズンになると夜寝るとき手を布団につけられない。痛くて」
[マツコ]「でも素手じゃないとダメなんだろうね」
[一匠]「輸入にほぼ頼ってはいますが、本当に心をこめておいしい唐辛子を作ろうっていう農家さんが日本にはけっこうたくさんいるんですよ。今回、いろんな段階の辛さにしていきます」

・山梨県産ハラペーニョ
2500~5000スコヴィル

[マツコ]「ハラペーニョはあたし大好きよ」
[一匠]「今回ポイントとなるのは、山梨県産ということ」
[マツコ]「あら、立派。ハラペーニョってこんなでかくないわよね?」
[一匠]「なぜ山梨県産にこだわってるかというと、富士山が近いんですよ。唐辛子って水を与えれば与えるほど甘くなっちゃうんです。水が少なければ少ないほど辛くなるっていうのがある。富士山のおいしい水をたっぷり吸ったハラペーニョ」
[マツコ]「あんまり辛くないんだ」
[一匠]「辛さがなくなっていきます。どちらかというと、野菜としてのみずみずしさをしっかり感じることができながら、じんわりとちょっと辛い。生のハラペーニョのおいしさをマツコさんに味わっていただくために、一番合う料理」
[マツコ]「なに?」
[一匠]「ハラペーニョホッパーという、メキシコでは定番の家庭料理。ハラペーニョの中にチーズをつめて、衣をつけて揚げるという料理」
[マツコ]「何もつけなくていいの?」
[一匠]「そのままで」
[マツコ]「さっき言ってたけど、水をいっぱい吸ってるからだと思うけど、ちょっと辛く感じるピーマン。みずみずしい感じ。うまい。肉詰めとかにしたらおいしいんじゃない。ピーマンと同じやりかたで」
[一匠]「こちらハラペーニョホッパーが人気のお店が新宿歌舞伎町にある『カーサテキーラTokyo』というメキシコ料理専門のお店。ここはタコスとか、メキシコの牛のステーキなどがけっこう人気。ハラペーニョホッパーは生の山梨県産のハラペーニョを使ってるということもあって、みずみずしさとチーズのマイルドさ。最高の組み合わせの料理です」
[マツコ]「うまい」

・千葉県産プリッキーヌ
5万~10万スコヴィル

[マツコ]「あー、これなんかよく最近有吉ゼミに出てくる辛いやつ」
[一匠]「今プリッキーヌ来てますね」
[マツコ]「ここまで来るとたぶんあたしはもう無理だと思う」
[一匠]「それが先行して、辛いっていうイメージが植え付けられています。実は千葉県産っていうのは、天候が穏やかで、雨が少ない。雨が少ないからバランスがよく辛い唐辛子ができる。『辛いっ』ていう辛さがまず最初に来ます。そして、辛いって言ってる間に『あれ、辛さがどこか行った』っていうのがプリッキーヌ。こちら生の千葉県産のプリッキーヌを使った料理が、ガパオライスです。このガパオライスを出してるお店が、本格的なタイ料理を出す東京カレッタ汐留の『ASIAN TAWAN 168』。タイ人のシェフが料理を作ってるんです。唐辛子って火を加えることによって辛さがガラッと変わるんです。プリッキーヌの辛さでお肉の辛さが無くならないように調理を低温でする。プリッキーヌの辛さを一番料理に合うように引き出した」
[マツコ]「これはけっこうくるんじゃないの?...あたし舌がバカになってるのかな」
[一匠]「実はこれがプリッキーヌなんですよ」
[マツコ]「辛いよ。辛いけど、『辛いですねぇ~』くらい」
[一匠]「これが生の良さで、ガツンと一瞬くるんだけれど『あれっ?』って抜けてしまう。このお店のすごいところ」
[マツコ]「おいしい。全然大丈夫。あと関係ないけどこちらのガパオライスたいへんおいしい。かなり印象変わった」
[一匠]「これが生のポテンシャルなんですよ。唐辛子は激辛ではなく旨辛という」
[マツコ]「あたしやっぱり強いのかな?つまんないねあたしが激辛」
[一匠]「激辛じゃなくて旨辛」
[マツコ]「チッ」

・京都府産ハバネロ
10万~35万スコヴィル

[マツコ]「怖くなってきただんだん」
[一匠]「ここが野菜としての唐辛子の旨みを感じられる限界値でもあり、辛さと旨みがバランスよく共存するレベルです」
[マツコ]「それぞれ皆さん言い分は違うだろうけど、一匠さんとしてはこれ以上だと旨みはあまり感じないと」
[一匠]「辛みが上にいっていまう」
[マツコ]「ハバネロがブームになったのには理由があるということね」
[一匠]「そういうことです。京都府向日市にある『そば処 にし村』創業30年のお店」
[マツコ]「おそば屋さん?」
[一匠]「昼時はけっこう満席になって、地元の人たちで満杯になる。一番売りは、自家製麺のそばやうどん」
[マツコ]「ここでハバネロが出るの?」
[一匠]「激辛料理を出す店ではないんです。しかし旨辛好きには知る人ぞ知る名店なんです。生の京都産ハバネロをペーストにしました。こちらを使ったお料理がハバネロカレーつけめん」
[マツコ]「ああー、なるほど。おいしそう」
[一匠]「これはおいしくハバネロを食べてもらうために、あえてペースト状のものを溶きやすいようにいれてるんです。カレーでいうチャツネみたいな感じで。ちよっと酸味を感じると思う」
[マツコ]「完全に辛いものに慣れてしまいました。おいしいですよ。カレーのおだしとしてもめっちゃおいしいけど、辛いか?これ」
[一匠]「これはだから生のハバネロっていのをおいしく食べてもらうっていうので作っている料理」
[マツコ]「そういう意味で言うんだったら、ハバネロが良い調味料のひとつとなってるってことだよね」
[一匠]「そうです。京都のハバネロがなぜこんなにおいしいかというと、京都って盆地なんです。盆地は水はけがよい。水がたまりすぎず、かと言って水が全く入らないわけでもない。ハバネロだけではなくて、ほかのいろんな唐辛子をたくさん生産してて、唐辛子栽培には向いている土地なんです」
[マツコ]「あたしもうバカになっちゃったわ。おまえちょっと食ってみて」
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[マツコ]「マジか?本当に?おまえテレビに染まったんだろ!ちょっと待ってあたし自分が気持ち悪くなってきた」


《知られざる注目品種!日本原産の唐辛子&旨辛料理》


[一匠]「今まで食べた唐辛子っていうのは、もともとは海外原産の唐辛子なんです。ここからは、日本原産の唐辛子をご紹介していきます」

・栃木の唐辛子

[マツコ]「特に名前はついてなかった?じゃあしょうがないわよね」
[一匠]「もともと生産量は日本一だった。どんどん生産量は少なくなってきた。唐辛子の世界ではレジェンドと呼ばれる吉岡源四郎先生というかたがいらっしゃって、1930年代にうまい国産の唐辛子作るぞ、といろんな土地を探した結果、栃木県の那須高原の近く。大田原市なんですけど、そこで作り始めて栃木三鷹という名前で」
[マツコ]「あ、ちゃんと名前あるのね」
[一匠]「これはキレのよいカリッとした辛さも味わえるんですけれども、野菜としての旨さも感じられる唐辛子で、最高にうまいです。この三鷹を使った料理をご紹介したい。昭和28年創業、栃木県大田原市にある『岡繁』というお店です。このお店はけっこうお肉料理を多く扱っている。地元のかたでいつもいっぱいなお店。超人気な旨辛料理がございます。唐揚げです。サンタ唐揚げというんですけど、このサンタ唐揚げには衣に三鷹を練り込みつつ、お肉にももみこんでいる」
[マツコ]「サンタ唐揚げっていうの?」
[一匠]「三鷹にちなんでサンタ唐揚げ」
[マツコ]「お前がやっちゃったわけじゃないんだな?お前のことだからやったのかなと思った。これだけだったらもっとうまかっただろうな。もう舌がバカになってるから。うまい。衣辛い系いいね。ご飯うまい。辛いと余計すすんじゃうわよね」
[一匠]「大田原市では震災の影響で生産農家さんが十数軒まで減っちゃったんですけど、今の現状では189軒まで増えてきてる。またこの唐辛子を作る農家さんが増えてきている」
[マツコ]「洋物と辛さが違う。すっきりする。パーンとくる。おいしい」
[一匠]「これが日本の実力です」
[マツコ]「ほどほどが一番いいってことよね。調和よね」
[一匠]「以上、マツコさんの知らない唐辛子の、あ、いや旨辛の世界でした」
[マツコ]「いいんだって、そういうのもお前らしい。旨辛の世界」
[一匠]「唐辛子の世界でした」
[マツコ]「唐辛子の世界だっけ?なんだこのやろう」





~完~