マツコの知らない世界
'年間3000本のアスパラガスを食べる男'
内山裕史(ウチヤマヒロシ)さん(以下、[内山])
[内山]「僕は北海道出身で、職業がアスパラガス農家。旬の季節には1日30本食べる生活」
[マツコ]「1日30本は大げさに言ったでしょ」
[内山]「僕の小さいときの記憶ですが、7人家族だったんですけれども大皿にゆでたアスパラがどっさり。みんなそれ取ってむしゃむしゃ」
[マツコ]「味付けは?」
[内山]「マヨネーズがあったりなかったり」
[マツコ]「ない場合は?」
[内山]「なくてもおいしいんですよ」
[マツコ]「ないまま?それがご飯のおかず?味薄いわね」
[内山]「そんなことないんですよ、よだれ出ますよ」
[内山]「アスパラ年間何本食べてますか?」
[マツコ]「50本くらいは食べてると思う。アスパラガスがメニューにあったら絶対頼むかもしれない」
[内山]「好きなほうですね」
[マツコ]「ホワイトだったらソテーにしただけのやつとか、グリーンのやつでも天ぷらとか意外とそのもので食べるほうが好きです。アスパラ好きの方を横にして言ったら失礼になるのかもしれないけど、添え物的なイメージを持ってる人も多いですよね。あたしは違いますよ。私はそれこそそのままでも好きだけど」
[内山]「すばらしいですね。ありがとうございます。こちらを見てください。好きな春野菜、アスパラガス、第1位。大人気です」
[マツコ]「いやいやこれはだってオシャレアンケートでしょ」
[内山]「出典『Salad Cafe サイト』」
[マツコ]「パヤパヤ女がアンケートに答えてるのよ」
[内山]「みんなが好きなアスパラなんですが、衝撃の真実。年間1人当たりの消費量たったの3本」
[マツコ]「えっ?うそでしょ!?」
[内山]「平均すると。僕みたいに3000本とか、毎日食べるのはない」
[マツコ]「食べる習慣のない方は全く食べていない」
[内山]「理由としては、1.他の野菜と比べて高い。2.脇役の野菜」
[マツコ]「ブロッコリーがようやく付け合わせ野菜から脱却してきたもんね。もうすぐですって。あとしかたなく脇役になってるところもあると思うわよ」
[内山]「スーパーでアスパラ探そうと思ったら大変ですね。ブロッコリーも手前で陣取ってますから。こうやってなかなかアスパラがガバッて出てこないのには農家側にも事情がありまして。アスパラガスは農家殺しの赤字野菜。アスパラっていまだにどういう作物か、きっちり解明されていない。どういう病気がどういうタイミングで出るとか。急に病気でバッタリなくなったりする。あと、植えてから3年目まで穫れない。今年種植えて、今年穫れない、来年も穫れない、再来年ようやく穫れる」
[マツコ]「えっ?初めて作る畑だからってわけじゃなくて、毎回種を植えた後3年かかる?」
[内山]「種植えて3年かかったあとは、毎年生えてくる。最初の2年がただただお金出すだけの、ただただ労働力を費やすだけの期間。そして穫れる期間は30日ぐらい」
[マツコ]「30日間収穫してるの?収穫期間以外は他の物を作らなきゃいけない?」
[内山]「収穫のための準備をいろいろ」
[マツコ]「意外に楽そうに思うもんねアスパラって。なんかヒョロヒョロ~っていうのをポキッと折って」
[内山]「機械では全く穫れないので、全部腰をかがめて歩いて収穫」
[マツコ]「たいへんだよね。だからこういう太い幹か生えてくるように改良できれば、ポキッて折って収穫できるようになればいいけどね。普段食べてるのは成長途中?あのあとぶわーっとなるの?」
[内山]「松みたいな木になる。2 m50cmくらいまで。木になって冬枯れるんですよ」
[マツコ]「1年で枯れるんだ。おもしろ~。気持ち悪い生物ね」
[内山]「でもおいしいじゃないですか」
[マツコ]「まあね。おいしいからいいか!」
《最大の魅力は旨味の奥にある「えぐ味」》
[内山]「たくさんアスパラを食べて、取り寄せて食べて、取り寄せて食べて、アスパラの本当のおいしさに気づきます。アスパラ農家やってて、これがあるアスパラがすばらしいなってことに行き着きます」
[マツコ]「個人的な味覚でしょ?」
[内山]「他のアスパラ農家とも共通するし、味にうるさいシェフもこれがないと納得しないぐらいの感じです」
[マツコ]「へぇー、何?」
[内山]「アスパラガスの本当の魅力、旨味の奥にあるえぐ味です」
[マツコ]「山菜っぽい感じ?苦味みたいな」
[内山]「苦味とは違うんです。近いけどちょっと違う。これからえぐ味を体験していただければ。まずは一般に流通してるアスパラを食べてもらいます。えぐ味を感じやすいのは頭のほうなので、ます頭から」
[マツコ]「苦味はそんなに気にならない」
[内山]「そしてうちやま農園のを食べてみてください」
[マツコ]「えぐ味の前に、甘いね。えぐ味はほんのりよ。私みたいな素人がまず驚くのは、こんなに違うんだっていう。なんでこんなに差があるの?」
[内山]「アスパラって、鮮度が大事。穫ってからなるべく冷蔵で運んだ方がいいんですよ。野菜ってだいたい常温で流通するじゃないですか、宅急便とかも。それを常温で流通して、常温で置いておくと、やっぱり固くなったり味もなくなっちゃうんですよね。一応うちなりに頑張ってることがあって、うちの畑は泥炭地っていう土地なんですけども、有機物がたくさんあるんですよ。ピートモスって泥炭のことですけど、ウイスキーの香り付けとかに使うじゃないですか。アスパラにもなぜか香りが乗りやすいんですよ」
[ナレーション]「内山さんのように全国各地の農家では、日々おいしいアスパラガスを作るため様々な品種で試行錯誤しているんです」
[内山]「アスパラって、品種の名前が世に出ない。トマトとかジャガイモは品種名でブランド化されてるんですけど」
[マツコ]「だったら品種名出せばいいじゃないのよ。長野県の『どっとデルチェ』ひどいわね。ひどいって言っちゃったわよ。どんどん出てくるから『どっとデルチェ』なんだろうね」
[内山]「これの後継品種は『ずっとデルチェ』」
[マツコ]「オシャレね~」
[内山]「このなかでも、『さぬきのめざめ』。香川県だけの品種で、たぶん日本で一番大きなアスパラのイベントをやってるところは香川県かもしれないです」
[マツコ]「なんていうんですか?」
[内山]「『アスパラ大騒ぎ』。今年で7年目になる、高松市で開催される大人気のイベント。一万人以上が足を運ぶ。アスパラのためにこんな列になるんですよ、見たことない、こんなイベント。地元の24店舗がお店をだします。アスパラが主役になるイベントなんてなかなかないです。アスパラで一万人集まるって、すごくないですか?」
《『えぐ味』で厳選!絶品アスパラガス3選》
[内山]「これからアスパラガスのえぐ味に特化して紹介していこうと思います。まずは、夏アスパラ」
・ウェルカム
佐賀県
ビール感覚で手が止まらない!のどごし爽やかなえぐ味
[内山]「ビールってちょっと苦いじゃないですか。ちょっと苦いけどどんどんいけちゃう感じの」
[マツコ]「濃いの?」
[内山]「それが、薄いんですよ。生育が早すぎて。春はまだ寒いからゆっくり伸びるんです。夏のアスパラって根に溜めた養分が光合成した養分となって、すぐアスパラに入っちゃうからえぐ味が爽やかなんです」
[マツコ]「おいしい。確かに爽やか。ムシャムシャ食べられる」
[内山]「夏にトマトとかはいっぱいスーパーで並ぶけど、夏アスパラなんて並んでるの見たことなくないですか?」
[マツコ]「でも、ここ何年かで夏野菜の代名詞の一つではあるよね。夏カレーとかよくやってるじゃない、それには必ず入ってるわよね」
[内山]「そうなんですか、よかったです、そこまで認知が広がってて。夏もアスパラなんです」
[ナレーション]「ちなみにこの夏アスパラの食感を生かして、ピーマンの代わりにチンジャオロースにしてもおいしいんだそう」
[マツコ]「あたしアスパラ意外と好きなのが、炒り卵とアスパラ。アスパラを先に炒めて、火が通ったら卵混ぜて、トロトロっした段階で食べる」
[内山]「僕あんまり卵とアスパラ合わせるのあんまり好きじゃない」
[マツコ]「じゃあもうアンタとは合わないわよ」
[内山]「次おすすめしたいのはホワイトアスパラなんですけれども、その中でもおすすめしたいのがこちらです」
・ガインリム
北海道
フルボディのワインのように鼻から抜ける濃厚なえぐ味
[マツコ]「ホワイトアスパラは全部それなの?」
[内山]「違います。ホワイトアスパラは日に当てなければホワイトになる」
[マツコ]「えっ!?あれ日に当ててないだけなの?じゃあ黒いビニールで覆えばみんなそうなるんだ」
[内山]「暗くする方法と土の中で育てる方法とあるんです。作り方違って味も違うんですよ。土の方がよりえぐ味があって、より味が濃くなる」
[マツコ]「ちょっとグリーンよりは手間がかかるんだ。だからそのぶん値段高いんだ。内山さんの気持ちは分かるけれども、調理してあるやつが食べたいな。生で食べるとよくわかるけれど、あたしやっぱり生は...。焼いて~」
[内山]「ちょっと調理してあるものもあるんですけれども。オリーブオイル塗って魚焼きのグリルで焼くっていうのがめちゃくちゃおいしい」
[マツコ]「あー、うまい!」
[内山]「香ばしいのも加わると余計おいしいですよね。この鼻から抜けるようなえぐ味わかります?グリーンにはない華やかな、これたまらないですよね」
[マツコ]「生で食べてえぐいから、調理した時も残っておいしいんだよね。あれぐらいないと、調理したとき消えちゃうんだよね」
[内山]「次に参ります」
・ラスノーブル
北海道
もうすぐ食べられなくなる?幻のアスパラガス
[内山]「北海道でも産地であるのは一箇所しかなくて、そこから今日送ってもらったんですけども」
[マツコ]「一箇所しかないの?」
[内山]「もう種が手に入らない。20年ぐらい前にもう種が無くなっちゃって」
[マツコ]「今ある種が尽きたらもう終わりなの?」
[内山]「幻のアスパラガスを守るスペシャル精鋭部隊、北海道美瑛町『白金アスパラガス生産部会』」
[マツコ]「食べ始めたときものすごいあっさりして、あれ?これ味ないのかな、って一瞬思うんだけど最後すごい濃くなるわよね。個人的に、いろいろ品種改良されたものすごい凝ったやつより、このめちゃくちゃシンプルな味が好き。原子の味に近いと言うか、アスパラってこんな味だったんだろうなっていう」
[内山]「これ料理にって思ったんですけれども、アスパラはご飯と合うので、寿司にして、だし醤油で食べてみてください」
[マツコ]「ちょっとクセになる」
[内山]「内山家はアスパラとご飯で食べた」
[マツコ]「みなさん本当に困ったらやってみて」
《農家の妻直伝!簡単絶品アスパラ飯》
[内山]「そんな僕からもう一個提案があります。アスパラガスの消費量をもっと増やしたい。週一でアスパラガスを食卓に。農家の妻直伝、おいしいアスパラ飯」
[マツコ]「ああ、へんなのがある。これなぁに?」
[内山]「スムージーです。香りが...」
[マツコ]「うぉっ、アスパラだけじゃん!飲みづらそう」
[内山]「ちょっとフルーツとかも入れてるんですけども」
(アスパラガス10本、リンゴ1/8個、パイナップル1切れ、ハチミツ大1、水1/2カップ)
[マツコ]「こうやって作ると、匂いが強いの分かるね。小松菜とかのスムージーと全然違う。あっ、一口飲むと慣れてくる」
[内山]「えぐ味もちょっと残るし、フルーツも入ってるので甘さも」
[マツコ]「あたし、今ね、どうにか野菜を取ろうとしてるのよ。これは飲む。贅沢!これアスパラガス10本ぶん!スムージー飲む女なんてバカにして生きてきたけど、これからスムージーを飲もうと思っているのよ」
[内山]「鮭のちゃんちゃん焼きにアスパラガスをいっしょにいれました」
(生鮭、アスパラガス、味噌だれ、バター、七味唐辛子をアルミホイルで包みオーブントースターで約15分焼く)
[マツコ]「これ、鮭なくてもいいよ。アスパラの味噌炒めいいね」
[内山]「炊き込みご飯です。アスパラを一緒に入れて炊くとぐちゃぐちゃになっちゃうので、炊き上がった後に蒸すときに入れて、10分ほど置く」
(アスパラガス、鶏肉、ニンジン、油揚げ、ひじき、白だし、水、米)
[マツコ]「こんなにほのかな出汁で炊いてるのに、アスパラの味が一番薄くなる。一番えぐいだろって思ってたけれど。不思議ね。あたしははこれぐらい薄い味のほうが好きだけどね」
[内山]「こんなところで、アスパラガスの世界おしまいなんですけれど。どうでしたか?」
[マツコ]「アスパラって野菜を食べているっていう実感がわきやすい野菜なんだよね。味もすごいしっかりしてるし、歯ごたえもあるし、色もグリーンで綺麗だし、今日からブロッコリーと並んでアスパラも好きって言います」
[内山]「やったー!」
~完~
