【読書記録】芥川賞候補傑作選 戦前・戦中編 1935-1944 | 月並みなログ

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『芥川賞候補傑作選 戦前・戦中編 1935-1944』(鵜飼哲夫 編)を読みました。

芥川賞に興味があるわけではなく、この本に収録されている、中島敦の『文字禍』が読みたかったので。

 

 

『文字禍』は、以前に読んだ本で紹介されていて、それで気になって読みたいと思っていました。確か、言葉に魂はあるか否かといったような内容の本でした。タイトルは忘れました。

 

アッシリヤ人の暮らす王国の図書館で、毎夜、文字の精霊の話し声が聞こえるという噂が立った。王にこの精霊の研究を命じられた博士は、文字の精霊が人々の生活に害を成していることを発見するが、博士自身にもこの精霊の魔の手が忍び寄っていた。という、文字についてのおとぎ話のような短編。

 

なんじゃこりゃという感想を抱きそうなお話ですが、私としては大変興味深く読めました。

特に私は日本史に興味があるので、若い歴史家の「歴史とは、昔、在った事柄をいうのであろうか? それとも、粘土板の文字をいうのであろうか?」という問いに対する博士の「反対に、文字の精の力ある手に触れなかったものは、如何なるものも、その存在を失わねばならぬ。」という答えは、なるほどそうかもしれないと納得してしまいました。

 

私のように漢字とか言葉が大好きな人は、面白いと感じるのではないでしょうか。

 

 

他に印象に残った作品を挙げるなら、村田孝太郎の『鶏』でしょうか。

鶏の生活を、終始鶏の視点から書かれた小説で、解説や当時の芥川賞選考者の批評にもあるように、斬新で面白く読めました。

 

太宰治や織田作之助など、文豪として有名な作家の小説も掲載されてますので、いろんな文豪の作品を読みたい方におすすめです。