筆者:高橋洋一
出版社:PHP新書
平成29年3月29日初版発行
この本は年金の問題点が良く分かる本です。私は社会保障関係の仕事に就いていますが、私から見ても目からウロコの内容が多々ありました。その内容を以下に紹介していきます。
・年金は保険である。(26P、114P)
年金は「長く生きた人を保障する保険」であるということ。(年金には障害年金や遺族年金もありますが、原則的には老齢年金(長生きした場合の生活保障)であり、その場合、早死にした人には「掛け捨て」となってしまいます)
なお、最近よく言われている「社会保障費が大変だから、消費税を上げるしかない」という財務官僚の主張はおかしいとのこと。(38P)年金が保険であることを知られると「保険なら、保険料を上げればいいじゃないか。消費税は関係ないじゃないか」という、まっとうな意見が出てきてしまいます。もし、そんな意見が国民の間で広がれば、消費税を増税しにくくなります。そのため、年金が保険であることになるべく触れないようにして「消費税を上げないかぎり、年金は破綻する」と思ってもらったほうが財務省にとって都合がいいようです。そうすれば、消費税の増税がしやすくなって、自分のシマを拡大させていくことができます。また、「年金が保険であること」を知られない方が経済界も都合がいいのです。(39P~41P)その理由は、厚生年金保険料は労使折半のため、年金財源を保険料で賄おうとすると保険料を上げることとなり、保険料は労使折半のため会社負担分も増えてしまいます。ついては、会社が本来払うことになっている保険料を広く社会一般の側に転嫁することになると消費税増税を充てるということとなり、消費税は累進的ではない(一律)ため収入の低い人の負担が多くなってしまいます。ついては、私たちがしっかりと年金が保険原理で成り立っていることを理解する必要があると筆者は言います。(「財務省」と「厚労省」と「経済界」が結託している構図が見えてきます。)
・国民年金はわりとお得な年金(188P)
給付⇒国民年金の満額は781,700円です。10年間受給すると約780万円が受給できます。
保険料総額⇒1ヶ月16,540円のため、ざっくり言うと16,540円×12月×40年=約790万円(保険料を現在価値に置き換えないで計算)
つまり、40年掛けた保険料総額を10年の受給で元を取ることができるようです。そのため、こんな有利な制度を利用しないのはもったいないと記載しています。(189P)
その他、民間の年金商品の選び方についても書かれています。
この本は、年金制度の問題点について分かりやすく書かれた本ですので、興味のある方にお薦めします。最後になりますが、素晴らしい本を出版してくれた筆者と出版社に深く感謝いたします。ありがとうございました。