空ちゃんが砂漠で遭難
ハル君は前に死んじゃった。
ハル君のパパはね、それから一人で散歩するようになったんだ。
でも、僕たちに会っても目を合わせてくれなくなったんだ。
ハル君がいた時は必ず立ち止まってお話ししたのに。
素っ気なく、こんにちは。ってママに言うだけなんだ。
ママもなんにも言わなかったよ。
それから、一年くらいして、ハル君のパパは笑顔でこんにちは。って言うようになったんだ。
ママも笑顔だった。
それから、一年して、今朝はハル君のパパがしゃがんで僕たちを撫でてくれたんだ。
ニコニコして「可愛いね。可愛いね。」って、撫でてくれたんだ。
ハル君がいた時とおんなじパパさんだった。
明はクネクネしてたくさん撫でてもらったよ。
僕は少し離れたとこからハル君パパを見てた。
ママはとっても嬉しそうだった。
ハル君パパと別れて歩いてたら、近所のおじさんに会った。
いつも豆柴のあの子と歩いてた目の細いあのおじさんだよ。
今日は一人だった。
「去年、うちの犬死んじゃったんだよ」って一人で喋り始めて首にかけたタオルで両眼を押さえて歩きながらママと話してた。
ママが「看取ってあげられて良かったね。」って言ったら、おじさん「そうだよ。俺らがいなくなったらこの子達が一番困るんだからな。」って笑ってた。
「だから、もうあの子で最後だ。俺が歳だからな。飼いたいけどな。」って、また泣いてたよ。
俺はなんだか…なんだか、よくわからない気持ちになって、散歩から帰って足も洗わず、ご飯も食べずに二階の部屋に行った。
なんだか、一人になりたかったんだ。
その後、ママがとーちゃんにハル君パパと目の細いおじさんの話を泣きながらしてた。
とーちゃんとママが「空、寂しくなっちゃったんだね。」って話してるのが聞こえた。
あぁ、俺寂しかかったのか。って思った。
その後、ママが迎えに来てくれて、ご飯を食べたよ。
ご飯はいつも通り美味しかった。
今度、また、ハル君パパと目の細いおじさんに会ったら笑って挨拶しよう。
俺はあんまり、愛想良くないけど、その分明がクネクネするからな。それでいいだろ。
な、ママ。