忘れ得ぬ洋楽ポップス:ローリング・ストーンズ:1978~現在 | じろやんの前向き老後生活

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 自分に影響を与えた文芸・音楽・映画・絵画を紹介したり、お遍路や旅の思い出を語ったり、身辺雑記を綴ったりします。

 ローリング・ストーンズは、思春期に荒れていた私を救ってくれた恩人である。それについては、2020年の記事「我が懐かしき曲・中学編・『一人ぼっちの世界』など」で語ったので繰り返さない。

 「一人ぼっちの世界」でストーンズを知った私は、中高時代ストーンズに熱中した。1966から69年にかけてのことだから、半世紀以上前である。

 上京して大学生になった私は、「東京」が繰り出す文化の波に襲われた。音楽に関して言えば、FMを通じてクラシック音楽に目覚め、その結果ストーンズから遠ざかった。


 私が再びストーンズに耳を傾けるようになったのは、81年である。

 ただし、90年代に入ると、またストーンズに距離を置くようになった。

 ところが、2010年代に入り、定年退職を迎えると、時間が出来たせいか、再び彼らのサウンドを鑑賞するようになった。

 したがって、ストーンズに熱中した時期は、私の場合、3期ある。

 

 中高時代のストーンズについては以前の記事で語ったので、ここでは、第2期の80年代と第3期の2010年代のストーンズの話をしよう。

 なお、69年にブライアン・ジョーンズが亡くなり、ミック・テイラーが加入した。

(ブライアン・ジョーンズ)

(ミック・テイラー)

 ミックは75年に脱退し、代わりにロン・ウッドが入った。92年にはビル・ワイマンが辞めた。

(ビル・ワイマン)

(左からチャーリー・ワッツ、キース・リチャーズ、ミック・ジャガー、ロン・ウッド)

 そして2021年にはチャーリー・ワッツが亡くなった。

 現在、ミックとキースとロンの3人体制である。

 

 80年代から2000年代の初頭まで、仕事が忙しかったり、子どもが次々と生まれたり、自分の部屋がなかったりしたことで家でじっくり音楽を鑑賞することが出来なかった。

 したがってもっぱら車の中で聴いていた。前回の記事でも述べたが、カセットテープにコピーしてカーステレオで聴いていた。

 81年、ラジオから、ストーンズがアルバムを発表し、あわせて全米ツアーを開始するニュースが流れ、「Start Me Up」という曲がかかった。

 ハンドルを握っていた私はたちまちこの曲に魅せられた。題名通り、この曲は心を高揚させた。

 私は、貸しレコード屋に行き、ニューアルバム『Tattoo You』のLPを借りた。

 これまでの経験からすると、ストーンズのアルバムは、少なくて数曲、多くて半分くらいつまらない曲に占められていた。

 ところが、このアルバムは駄作が少ない。「Waiting on a Freind」「Neighbers」などはとりわけ気に入った。

  

 その結果再びストーンズに興味を持ち始めた。私は70年代の作品をほとんど聴いてない。それゆえ、デビューから『Tattoo You』まで一通り聴いてみることにした。 

 ストーンズの音楽に浸ることは、仕事に追われていた当時の私にとっては気分転換になった。

 たまたま義兄(姉の夫。70年代末に結婚した)がストーンズのファンで、デビューアルバムから『Emotional Rescure』までの多くを持っていた。

 私は60年代のアルバムしか所有していなかった。それで義兄から借りることにした。姉夫婦は横浜に住んでいたので、それらが収められた段ボール箱が郵送されて来た。

 彼が持ってないアルバムは貸しレコード屋から借りることにした。

 

 私が持っていたアルバムは次の通りである。

 『Aftermath』(UK)『Between the Buttons』(UK)

   『Their Satanic Majesties Request』『Beggars Banquet』『Through the Past ,Darkly(Big Hits Vol.2) 』『あなたが選んだローリング・ストーンズ・ゴールデンアルバム』

  シングル盤は・・・。

 「Get Off of My Cloud」「19th Nervous Breakdown」「Paint It Black」「Have You Seen Your Mother,Baby, Standing in the Shadow?」 「Let's Spend the Night Together(Ruby Tuesday)」

「We Love You(Dandelion)」 「Jumpin’Jack Flash」

 「Honky Tonk Women」

 

 義兄が持っていたアルバムと借りて来たアルバムを挙げてみよう。

 『The Rolling Stones』(日本盤)『The Rolling Stones No.2』(UK)

 『Out Of Our Heads』(US) 『Desember's Children』『Big Hits(High Tide and Green Grass)』(UK)

 『Got Live If You Want It!』『Flowers』『Let It Bleed』『Get It Ye Yars Out』『Stkicky Fingers』

 『Exile on Main St.』 『Goats Head Soup』『It's Only Rock'n Roll』『Love You Live』『Black and Blue』『Some Girls』『Emotional Rescure』

 私はアルバムをカセットに落として、車で聴いた。

 60年代の曲はあらかた知っていたが、70年から『Emotional Rescure』までは、シングルヒットした作品以外、初めて聴く曲が多かった。

  改めて聴いてみると、ストーンズの曲作りは、リズム・アンド・ブルース(R&B)を生かしたロックン・ロール(ロック)が主体だが、そこにブルース、カントリー、フォーク、ポップス調の曲が加味されていることに気づいた。レゲエやディスコなど時代の流行サウンドも取り入れていた。

 中でも、ブルースの存在が大きいことに改めて気づいた。

 ただ、中高生時代、私は、ブルースのよさが全く分からなかった。30歳代に突入したこの時点でも味わえなかった。

  

 60年代の中高生時代に好きだった曲を挙げてみる。

 「Tell Me」 

  「Satisfaction」「The Last Yime」「Get Off of My Cloud」「I'm Free」「As Tears GoBy」「Mother's Little Helper」「Lady Jane」「Under My Thumb」「Out of Time」「I Am  Waiting」「Take It or Leave It」「Paint It Black」「19th Nervous Breakdown」「Heart of Stone」「Back Sreet Girl」

 「Connection」「Cool,Calm&Collected」「Complicated」「Something Happened to Me Yesterday」 「She's a Rainbow」「Sympathy for the Devil」「Jumpin’Jack Flash」「Let's Spend the Night Together」  「Ruby Tuesday」「Dandelion」「Sittin' on a Fence」 「Gimme Shelter」

 こうみると、ロックやメロディアスなポップス調の曲が多い。

 

 好きだったたアルバムは・・・。

 『Aftermath』(UK)『Between the Buttons』(UK)

『Their Satanic Majesties Request』は駄作だと思った。お遊びのために寄り道した印象を抱いた。

 ブルースを生かした『Beggars Banquet』の良さをこの時は分からなかった。 

 

 81年時点で新たに好きになった曲(上記以外)を挙げる。

 「Brown Sugar」「Bitch」「Sweat Virginia」「Sweat Black Angel」

 「Angie」「Time Waits for No One」

 (ミック・テイラーのギターソロが泣かせる)

 「Crazy Mama」「Memory Motel」「Miss You」「Dance(Pt.1)」など、

  シングルヒットした曲、メロディアスな曲など多彩にわたっている。

 81年時点で新たに好きになったアルバムは・・・。

 『Stkicky Fingers』『Exile on Main St.』『Some Girls』『Tattoo You』

 ライブ盤は含まれてない。録音がよくないことと、演奏曲がオリジナルと若干ずれているためである。

 

 一通りストーンズのアルバムを聴き終わった私は、再びストーンズに関心を抱き、ライブ盤の『Still Life』(82年)、『Undercover』(83年)、『Dirty Worlk』(85年)、『Steel Wheels』(89年)と、発表されるたびに借りに行った。

 『Still Life』は今までのライブ盤より音がよかった。

 『Undercover』と『Dirty Worlk』は退屈な曲が多かった。前者で良いのは「Undercover of the Night」で、後者で良いのは「One Hit(To the Body)」だけだった。

 この頃ミックとキースが喧嘩したので、公演が長い間行われなくなった。互いにソロアルバムを発表した。

 一応聴いたが、ミックの「Just Another Night」以外の曲は心に響かなかった。2枚目以降は聴かなかった。

 89年、二人の仲が元に戻り、4年ぶりに発表した『Steel Wheels』は完成度が高く、はずれの曲がほとんどなかった。彼らの復活に感動した。

 これらのアルバムの中で、好きな曲は次の通りである。

「Mixed Emotions」「Almost Hear You Sigh」「Rock and a Hard Place」

 

 中高時代はストーンズに熱狂したが、三十歳代になるとさすがにそのような感情は起こらなかった。音楽そのものを楽しめた。ただ、彼らの音楽には人を興奮させる力がある。それは今回も経験した。

 80年代にはビデオレコーダーが普及したので、彼らのライブ映画のビデオを借りたり、彼らのヒストリーのビデオを買ったりした。

 88年に東京ドームで行われたミックのソロ公演のテレビ中継は楽しかった。

 この次はストーンズで来日してほしいと思ったところ、90年にやって来た。

 そのテレビ中継は今でも覚えている。感動のあまり興奮し、中高時代に戻ってしまった。

 これらを通して、彼らの真の魅力はライブ演奏にあることを再認識した。 

 

 90年代にはいると、ビル・ワイマンが脱退した。そんなこともあり彼らはスタジオアルバムからも遠ざかった。

 私の方もストーンズへの興味を再び失った。

 94年、5年ぶりに新作が発表された。『Boodoo Lounge』である。

 この頃音源媒体はCD時代に入っていた。 私はTUTAYAからCDを借りて来たが、『Steel Wheels』には敵わないと思った。

 このアルバムを最後に新作のアルバムを聴かなくなった。

 

 それから18年が過ぎ、2012年に私は定年退職をした。それからストーンズに三度目の関心を抱いた。

 それはYoutubeで彼らのアルバムが聴け、ライブ(デビューから現在まで)動画が見られるようになったからである。

 そして現在に至っている。

 この期間、聴いてなかったアルバム、『Bridges to Babylon』(1997)、『A Bigger Bang』(2005)、『Blue &Lonsome』(2017)、『Hackney Diamonds』(2023)を耳を傾けてみた。

 『Blue &Lonsome』はブルースのカヴァーアルバムなので、オリジナルはたった3枚。『Bridges to Babylon』から『A Bigger Bang』まで8年の開きがあり、『Hackney Diamonds』は何と18年ぶりに発表した。 

 これは何を意味するのか。

 『Blue &Lonsome』は良かったが、他の3作はつまらなかった。一度聴いただけで「この曲、最高!」と思うような曲に出会えなかった。歌唱力やギターの冴えはすごいのだが、メロディやサウンドに新鮮味がない。やはり創造力の衰退は否定できない。老いてロックを生み出すのは大変なのかもしれない。

 

 これで全部のアルバムを踏破した。もしBEST1を選べというなら、私は『Beggars Banquet』を推す。

 元々このジャケットだったが、当時レコード会社が、便所の落書きとは不謹慎であると許可しなかった。そのため急きょ、下の無地ジャケットに変更させられた。

 ストーンズ側は不満だった。このことも後年自分たちのレーベルを立ち上げる一因になった。

 便所の落書きジャケットでの販売は1984年になってからである。

 中高時代の私は、ブルースを受け付けられなかったので、この作品の良さが味わえなかったが、年をとるにつれて味わえるようになった。

 本アルバムは、コマーシャルさが影を潜め、原点回帰し、ブルース、フォーク、カントリーなど生ギターの良さを生かした曲にあふれている。もちろん、「Sympathy for the Devil」「Stray Cat Blues」など前衛的なロックもある。ミックの多様な歌唱、キースやブライアンのギター演奏も素晴らしい。全曲が好きになった。

 

 彼らの魅力は何と言ってもライブ演奏である。YouTubeのおかげでライブに行けない者も家で味わえるようになった。大げさに言えば、長生きしていてよかったと思ったくらいだ。

 ITの日進月歩はすごいとしか言いようがない。

 彼らのツアーの歴史を見ると、60年代末から野外集会場やスタジアムで公演するようになった。

 90年代後半からツアーにスクリーンが設けられ、年を経るごとに巨大になっていった。これなら遠い席の観客は豆粒のようにしか見えないメンバーを迫力のある映像で楽しめる。

 投稿された動画は星の数ほどあるが、スマホで撮影された動画の音質は当然よくない。それに比しOffisialが提供する動画は音響がよい。編集されているのだろう。

 80年代から現代までのスタジアム公演を数多く鑑賞したが、小ホールで公演した映画「Shine light」のステージも味わいがある。 

 ライブでしびれた曲がある。

「You Got Me Rocking」「She Was Hot」だ。この曲を聴くと体が反応する。70歳になっても反応できるということは幸せなことだ。

 なお、2022年頃から 私の好きな「Out of Time」が演奏されるようになった。感激である。

 反面「Brown Sugar」が演奏されなくなったのは残念である。

 「Satisfaction」と共にフィナーレを盛り上げた曲だった。

 ツアーの成功の背景にはメンバーの体型も関係していると思う。全員がやせ型であった。普通中年になると太るのだが、全員そうならなかった。

 とりわけミックのスリムな体型はすごいに尽きる。二十代からほぼ変わらない。

 西欧人にしては珍しく骨盤が小さい上に太らない体質なんだろう。バレーダンサーのようだ。

 五十年ほど前にミックのコンサートを見に来たお父さんの写真を見たことがあった。

(ミックの父親)

 ミックと同じ体型をしていたのに驚いた。お父さんは体育の教師だそうである。

 体型と共に俊敏さも父親譲りなのかもしれない。

 ライブが大型化し、ステージを縦横に動き回わることを要求されるロックミュージシャンは絶対に太っていない方がよい。見る方にとっても太ったミュージシャンは見苦しい。一例が最近のビリージョエルである。

 ミックの体型の維持には、人一倍の努力があるのかもしれない。

 ただ、最近(2020年代)、キースは太り出した。おなかが出て来た。往年のスリムさから見ると信じられないくらいだ。禁煙したため食欲が増したせいだろうかと思ってしまう。

 

 2020年代になると、70歳代の終わりに近くなったせいか、ミックの歌唱力、キースとロンのギター演奏に衰えが見られるようになった。今年行われた「Hackney Diamonds Tour」はとりわけ顕著だった。

 それは仕方がない。むしろこの年齢で、あれだけ動き回り、プレイしていることこそすごいと言えよう。枯淡の魅力を十分醸し出している。  

 

  老いから来る衰えは、昨年発表された『Hackney Diamonds』にもみられた。

 この中でよかったのは、シングルカットされた「Angry」だけで、その他になると、うーん・・・。

 ただし「Angry」のプロモーションビデオは素晴らしかった。

 でも、先程と同じことを述べるが、80歳でこれだけの曲を生み出すのはすごいことだ。

 70歳代に足を踏み入れた私の経験から言うのだが、70歳代になると、才能に陰りが出ると思う。創造するということは大変なことなのだ。若い時のように、音が天から降りて来なくなったと思われる。

 彼らはどこまで転がり続けるだろうか。もしかすると私たちは、人間の能力の限界を極めるサンプルをストーンズに見ることが出来るかもしれない。

 

          ーーー 終わり ーーー

 

※次回は、ビージーズについて語ります。