5月13日(月)から16日(木)まで、3泊4日で京都の旅を行った。ここ数年、年に2回ほど旅に出ている。週末の混雑を避けるため、平日の月曜日から始めることが多い。

 前回に引き続き2度目の京都旅行である。妻も一緒である。

 私は昨年の秋から谷崎潤一郎訳の『新々訳源氏物語』を読み始めた。

 現在3巻目に収蔵されている第45帖の「橋姫」を読んでいる。

 谷崎源氏は原文に即して訳しているため、主語が省かれている。述語の尊敬表現で主語が誰であるかを見極めなければいけない。幸いスマホやパソコンに原文と現代語訳を併記しているブログがたくさんある。それを参考にしながら鑑賞している。大変であるが、楽しみながら読んでいる。

 原文で読むのが一番いいのに決まっているが、私にそんな力はない。ただ、私は、40年以上前に高校2種と中学校1種の国語免許状を取得した。それには国文学を勉強しなければならない。源氏物語に関する単位もあった。岩波の日本古典文学大系を紐解きながら、源氏物語や和歌や日記に関するレポートを書いたことを覚えている。

 その後、古典文学大系を開くことはほとんどなくなった。書架に眠っている状態だ。

 今年に入り、大河ドラマで紫式部を描いた『光る君へ』が放送されている。普段私は大河ドラマは見ない。しかし、私が熱中している物語の作者を描くので初回からかかさず見ている。次回が待ち遠しいファンになってしまった。

 藤原道長が活躍した時代を描くため、当時の歴史的背景を知っていればさらに面白くなる。

 私は、ここ3年日本史の古代に熱中し、大学時代に購入した中央公論社の『日本の歴史』シリーズを1巻目から読んできた。古代史にかかわる出雲や奈良(飛鳥、斑鳩、平城京跡地など)には旅行した。現在平安時代に入り、平安初期から中期までの巻を読んでいるところである。

 このことも今回の京都旅行にからんでいる。

 前回訪れて京都が好きになってしまった。自分を引き付ける魅力がたくさんある。ということは見聞する場所があまりにも多い。4、5回訪れないと、私なりの「京都」を味わえないと痛感した。

 その様子を今回も紹介しよう。

 

 1日目:5月13日(月)

 前回恒例の宇都宮線黒磯行きの下り電車(5:57)に乗り、隣駅の那須塩原駅で6:12発上り東北新幹線東京行きに乗る。始発なので空いている。

 次第に雨脚が強くなる。京都は午後から上がるらしい。

 東京駅7:33発ひかり新大阪行に乗る。前回もこれ。「大人の休日俱楽部」では「のぞみ」には乗れない。今後もこの電車に乗るだろう。

 これまた前回食べた崎陽軒のシューマイ弁当を購入。妻は家から持参したおにぎり。この弁当を「ひかり」で食べるのが楽しみ。起床後何も食べてないので余計おいしい。

 京都に10:13に到着。

 まずコインロッカーに荷物を預ける。

 身軽になったところでスタバでコーヒーブレイク。私たちにとってスタバのサイズ(トール)は大きすぎ。妻と飲んでも余るくらい。それにスタバの味にはなじめない。スタバは私たちにとってフラペチーノ専門店。コンビニのコーヒーで十分。親戚にもらったギフトカードで支払えた。

 今日の見学予定は平等院と伏見稲荷大社である。どちらもJR奈良線で行ける。  

 遠い方の平等院に向かう。20分ほど乗って宇治駅で降りた。小雨模様。

 そこから歩いて平等院へ。欧米系外国人や中国人観光客が目立つ。

 途中宇治橋に出る。宇治橋を渡るのが目的の一つだが、帰途渡ることにする。

 源氏の宇治十帖には宇治川がよく出てくる。最初の「橋姫」では主人公の薫が宇治に隠棲する八の宮(光源氏の異母弟)の元に通う。通いだした数年後、八の宮の娘たちに好意を抱くようになる・・・。

 宇治川は重要な舞台装置である。

 たもとには紫式部の像が建立されていた。ご挨拶する。

  近くに鳥居が立っている。

 ここは表参道入口で、約200m先に平等院がある。

 平等院は藤原頼道が建立した。現存しているのは、かの有名な鳳凰堂(阿弥陀堂)だけで、千年前の建物である。国宝で、世界文化遺産でもある。

 拝観受付で700円払い、表門を潜る。

 鳳凰堂内部の拝観は別料金300円がかかる。橋を渡って北翼から入る。

 時間ごとに区切って入れるようにしているので混雑はない。五分ほど待って入れ、ゆっくり鑑賞できた。中国人の方が目立つ。彼らは声が大きいので目立つ。

10年ほど前に大修理(屋根の葺き替えや柱の塗り直し)が行われた。新しくなったので、古色蒼然が醸し出す重厚さは見られない。想像していたより小さい。やや期待外れだった。見学できるのは本尊阿弥陀如来が祀られているお堂のみである。扉が開かれているので快晴ならご本尊に日光が当たる仕組みになっている。往時は金箔が施されていた(現在はかなり剥落している)ので、燦然と輝く姿はさぞかし荘厳だっただろう。撮影厳禁なので資料写真を載せる。

 その後、池を半周し、正面が眺められる場所で写真を撮る。人気スポットなので多くの人がカメラやスマホをかざしている。

 道長・頼道親子の治世に藤原氏は全盛期を迎えた。平等院はこの世の極楽と称えられたらしい。道長、頼道、彰子、紫式部を偲びながら鳳凰堂を眺める。千年の時空を飛び越えるような錯覚に陥る。

 他の建物には関心ないので平等院を後にする。

 途中、宇治橋を渡ってみる。薫になった気分だ。とはいっても薫は貴公子。自分は一介の老人。周囲の風景は変わってもさざ波の響きは一世年前と変わらない。小雨に煙る川も情趣がある。

 宇治駅に戻り、京都方面の電車に乗る。次の目的地伏見稲荷大社へ向かう。

 

 伏見稲荷に行くには稲荷駅で下車。京都駅から2つ目。

 ほぼ目の前に大鳥居が立っている。駅から近いのは便利だ。

 人が多い。平等院よりはるかに多い。修学旅行生がとにかく目立つ。考えてみれば5月は修学旅行のシーズンだ。全国から集まるのだから多いのは当たり前。千本鳥居で写真を撮るのが流行っているのだろう。中高生に大人気の場所なのだ。

 思えば、60年前はこれほど人気はなかった。時代により人気スポットも変遷する。

 (二番鳥居の前で。奥に見えるのは桜門)

 楼門への階段を上がる。神社は寺院よりも朱色が目立つ。人気のある神社は式年ごとに塗り直すので鮮やかさを維持している。

 

 本殿に参拝する。屋根は檜皮葺。有名な神社に多い。檜皮葺の方が維持費もかさむゆえ財力がある神社でないと維持できない。

 寺院には仏像が必ず置かれているが、神社には目に見える物のようなご神体があるとは限らない。神道の原点はアニミズムなので、森羅万象に神が宿る。山そのものがご神体になっている場合もある。

 したがって、空間しかない神社の方が多い。ただし、そうは言っても、神社にたたずむと、人は普段とは違う感覚になるのだろう。宗教性、霊感、霊性、パワーなどを感じる。

 私も同じである。心が落ち着いたり、内面が癒されたりする。

 こういう感覚は外国人にもあるのだろう。それに一役買っているのは、ITや経済的豊かさではないか。異文化に寛容にり、好奇心を抱けるようになる。それゆえ昨今外国人の姿が寺社仏閣に多く見られる。

 だが、参拝客の多くは観光である。とりわけ若者の場合はそうだ。その一例が千本鳥居である。そこは人だらけで、修学旅行生や外国人だらけである。どうしてこんなに若者に人気があるのだろうか。SNSを通して世界でも名がしられるようになった。

 もう一つの理由はここが無料なことだろう。有名な寺社仏閣のほとんどは参拝料を取る。偉いと思う。ただ、これだけ混雑するのなら、参拝料を取ってよいと思った。

 千本鳥居は本殿の背後にあり、稲荷山の頂上に向かう坂道に設けられている。全部潜るのには片道1時間くらい掛かる。したがってほとんどの人が途中で引き換えす。

上に行くにしたがって混まなくなってきた。

 私たちも同じで能鷹社で引き返した。

 京都駅に戻り、スタバでフラペチーノを飲む。私たちはお昼を食べない。フラペチーノで十分。
 予定では今日の見学はこれで終わり。後はホテルに行くだけなのだが、まだ午後の3時。もう一つくらい見学が出来る。妻が花を見たいというので、急きょ京都府立植物園に行くことになった。地下鉄烏丸線の北山駅で降りればよい。ホテルがあるのも同線の四条駅。便利だ。北山駅までは京都駅から15分くらいであった。
 植物園は駅を出ると、すぐそばにあった。
 入園料は200円。府立だから安い。
 その割には園は整備されている。桜や紅葉の季節は最高だろう。
(上の写真はシャクヤク)
 今の季節の売りはバラである。
 見ごたえがあった。かなり広い。人も少ない。観光の疲れを癒すのに最適である。お得なスポット。お勧め出来る。
 
 ホテルは前回同様、「マイステイズ京都四条」。ここを京都の定宿にすることにした。
 価格は食事なしで7500円。早めに予約したので確保できた。日本人より外国人宿泊客の方がはるかに多い。英語、仏語、ドイツ語、中国語を耳にした。

  

 5時過ぎに夕飯を食べに行く。場所は四条河原町の高島屋にある「ロイヤルホスト」。ここで食事ができるギフト券を親戚からもらったので活用する。

 私はステーキ、妻はハンバーグを注文。この店は高級ファミレスと言った所なので味がよかった。

 ホテルに戻って風呂に入り、写真・動画を整理して、就寝。

 

          ―――― 続 く ―――

 

 次回は二日目に訪れた、三十三間堂、京都国立博物館、六波羅密寺、平安神宮、知恩院、八坂神社の思い出を語ります。