※お遍路通信5の続きです。
 
 下ると田園地帯に出ました。
                    76下る

 まだこの辺は中土佐町です。
                    77中土佐町

 遍路道が国道56号(中村街道)と交錯したり、重なったりします。四万十町に入りました。
                    78四万十町に入る

 遍路道が国道からそれている所があります。車の往来がないので、助かります。田や畑だらけで人影が見られません。
                    79国道沿いの遍路道

 影野という地区に遍路小屋がありました。
                    80遍路小屋

 ここで昼食。我々は見ての通り、菓子類と果物。Nさんはパンを食べた。
                    81昼食

 国道56号をひたすら歩きます。雲行きが怪しくなってきました。
                    82仁井田

 道の駅あぐり窪川がありました。
                    83道の駅あぐり窪川標識

 道の駅でトイレ休憩。歩き遍路の女性陣にとってトイレは重要です。遍路道には数が少ないので、道の駅、鉄道駅、コンビ二のトイレは貴重です。
                    84道の駅

 窪川トンネルに差し掛かりました。ここを通過すると、四万十町の中心地窪川の市街地に入ります。
                    85窪川トンネル

平成の大合併前、窪川町といいました。岩本寺と共に栄えた町です。須崎と中村の中間にある大きな町です。
                    86窪川市街
 
 岩本寺は街の中にあります。寺に通じる道は門前町の雰囲気です。
                    87岩本寺

 持ち物紹介の欄で、納め札に触れるのを忘れたので、ここに紹介します。札にはこのように書きます。願い事を書く人もいます。          
                    納め札

 境内は大きい方ではありませんが、風情のある寺です。ここのには宿坊があります。評判がいい宿坊ですが、私達は泊まりません。
 ここでNさんとは別れることになりました。彼女は私達と異なる民宿に泊まるからです。彼女も金剛福寺を目指すので、どこかで会うでしょう。Nさん、2日間ありがとう。妻にとっても充実した日々でした。がんばってください。
                    88本堂
 
 私達の今夜の宿はうなぎ屋「うなきち」です。ここは2階から5階までの部屋をユースホステルという名で提供しているのです。素泊まり3700円です。ここに泊まって1階のうなぎ屋でうなぎを食べるのお遍路さんが多いと聞きます。私達もその一人です。四万十町に行く以上、四万十川のうなぎを食べたいと思っていました。
                    89うなきち

 部屋は二間をぶち抜いたかなり広い部屋で、隅に店関係の物が置かれていました。
 いつものようにすぐ風呂に入りました。ユニットバスの風呂が付いてました。その後、スマホで日記をつけました。
                    92部屋

 夕食は6時です。あまり広いとはいえない店内は満席に近い状態でした。ここの人気が分かります。この小さな町でこれだけの客が入る店は少ないのではないでしょうか。前もって予約していたため二畳ほどの小部屋に案内されました。
 私は「うな重 上」、妻は「並」を注文しました。写真の通り、かなり大きなうなぎです。これで「上」は2800円、「並」は2000円です。都会に比べたら、破格の安さです。
 味は絶品です。関西風の焼き方のため、皮がやや硬い感じがしましたが、それもおいしさの一つです。たれの味もよし。満足しました。心からうまいと思いました。
 味がよい上、この安さ。このお店、◎です。お勧めです。
                    90うな重上
                (うな重 上 )
                    91うな重並
                (うな重 並 )

 歩行距離 約25Km 所要時間 約7時間 

 
 3月14日(月)[5日目] 雨 ネスト・ウエストガーデン土佐(黒潮町)泊

 4時起床。今日は一番長い距離を歩きます。そのため5時に出発することにしました。
 天気予報の通り、雨が激しく降っています。おっくうな気分に襲われましたが、歩かなければなりません。雨対策の支度をしました。
                    93雨対策

 出発です。真っ暗です。時折走る対向車のヘッドライトに雨脚が銀色に光ります。今回で最大の試練と思われる日になりそうです。
                    94出発

 (行くぞ!これも修行だ!)と自分を鼓舞します。妻もたくましく前に進みます。
                    95夜明け前

 遍路道が国道56号です。今日はひたすら56号を南下します。歩道が狭い所がけっこうあります。
                    96国道56号

 黒潮町に入りました。拳の川という地区に休憩所があったのでそこで朝食にしました。出発してから約2時間半経っていました。妻が家から持参した菓子類です。まだあるのです。
                    97昼食

 国道沿いに遍路小屋がありました。土佐佐賀温泉という宿泊施設で立てた小屋です。そこを覗いてみると、一人の若者がいたので声を掛けました。彼は風来坊力也さんといい、日本中を旅し、その様子をネットで実況中継しているのだそうです。ほとんど野宿だそうです。テントや寝袋をかついでいるため、雨天時は歩かず、雨が上がるのを待っているとのことでした。
 スマホで調べてみたら、彼のガジェット通信が公開されていました。力也君、話の相手になってくれてありがとう。私のブログを見た皆様、「風来坊力也君」の通信を開いてみてください。面白いですよ。
                    98風来坊

 ひたすら国道を歩きます。片端が崖のような道が延々と続きます。
                    99南下

 11時ごろ、道の駅発見。「なぶら土佐佐賀」という。「なぶら」とはどんな意味なのかしら。道の駅ではトイレが使える。当然寄る。
                    100道の駅

 新しく出来た道の駅らしい。土佐佐賀地区にあった。大便をして、すっきり!
                    101道の駅なぶら土佐佐賀

 写真用パネルがあったので、面白写真を。こういうのにふざけるのが我々夫婦。果物の文旦が有名な地区らしい。
                    102おふざけ写真

 さらに歩くと、土佐西南大規模公園という所に出くわした。お昼時なので、そこの休憩所で昼食。雨が上がってきました。
                    103公園内休憩所

 昼食は朝食のお菓子の残り。これらの菓子は、我が家で法事をした時、親族から頂いた物である。旅費節減のために妻はたくさん持参した。
                    104昼食

 公園から土佐佐賀漁港がある鹿島が浦が望めます。
                    105鹿島が浦

 トンネルがまたありました。今日も幾つくぐったでしょう。
                    106井の岬トンネル

 小学校のフェンスに「夢」という字の看板が。これを見て思いました。この年になっても私は「夢」を抱いている、と。
                    107小学校

 遠くに入野松原という白砂青松の海岸が現れました。かなりの長さです。天気がよければ、絵のような景色になっていたでしょう。高知県には、関東では全く見られない白砂青松が残っています。
                    108入野松原

 道の駅があったのでトイレ休憩のため寄りました。目的地のネストウエストまであと2キロです。右足にマメが出来ました。歩くのが限界です。
 黒潮町はホエール・ウオッチングが出来る所です。町も観光の一環として力をいれているような感じがしました。
                    道の駅ビオスおおがた

 津波緊急避難場所の看板がありました。黒潮町は、南海トラフ地震が起こった時、35メートルの津波に来襲されるのではないかと想定されています。そのため至る所に看板が立っています。この辺は平地なのであっという間に飲み込まれてしまいます。日頃からの注意が必要です。
私達も、海岸を歩く場合は、常に巨大地震が起きたら、どこへ逃げようかといつも考えています。
                    href="http://stat.ameba.jp/user_images/20160330/14/tuguto0313/40/eb/j/o0360064013606039747.jpg">110緊急避難所

 今日の宿泊先のネスト・ウエストガーデン土佐が見えてきました。入野松原一体は巨大な公園になっています。ネストウエストはその一角に立っています。思い足取りが軽くなってきました。しかしこの宿泊所の名前はなんて長いんでしょう。今でも正しく覚えられません。
                    
112ネストウエスト

 ネストウエストの正面です。4時15分、ようやく着きました。後で調べたら、約37キロ。11時間15分かかりました。今まで最長距離、最大時間です。休憩時間を差し引いても、10時間近く歩きました。
                    ネストウエスト

 ここはリゾートホテルをプチ化したような所ですが、気安い、気楽な施設です。国民宿舎に似ている感じがしますが、純然たる民間経営です。明るく、風呂も広く、従業員が親切です。すぐ気に入りましたが、客が少なかったので経営大丈夫かなといらぬことを考えてしまいました。
 部屋は畳部屋です。
                    113部屋の中

 この宿泊所を妻が選んだのは、洋食のフルコースが安価で食べられるからでした。また私の誕生日を祝うためでした。(女房殿、ありがとさん)。実は私の誕生日は昨日でした。3月13日です。吉永小百合と同じです。(関係ないけど)。うなぎでお祝いするよりも洋食フルコースがいいということで。めでたく昨日で64歳になりました。
 ここでは素泊まりにし、フルコースの夕食を注文するという形にしました。朝食は食べません。これだと8200円で泊まれました。朝食を食べないのは、朝食の時間が7時からだからです。出発が遅いと、次の宿泊先に着くのが当然遅くなります。歩き遍路はこれでは疲れてしまうのです。朝早く立ち、夕方前に宿泊先に着く。私達にはこの方法が合っています。
 夕食はおいしかったです。質量共に大満足。これで4000円とは安い。ここも◎です。この宿泊所はお勧めです。昨日のうなぎ同様、おいしい夕食が食べられ、実にハッピーです。以下フルコースを紹介します。
                    115食前酒
                 (食前酒)誕生日、おめでとう!
                    114フルコース夕食
                  (前菜)
                    116パイ包みクラム
             (パイ包みクラムチャウダー)※絶品
                    117中身は
                  (その中身)
                    118パン
                 (パン)※お代りできます
                    119桜海老スパ
                (桜海老入りスパゲッティ)※絶品
                    120魚料理
                 (魚料理)※絶品
                    121肉料理
                (肉料理:牛肉)
                    123デザート
                 (デザート)
                    124コーヒー
                 (コーヒー)
 どちらかと言えば、シーフードを使った料理が美味しかった。さすが高知県!

 歩行距離 約37Km 所要時間 約11時間15分 

 
 3月15日(火)[6日目] 晴 民宿いさりび(土佐清水市)泊

 5時起床。6時、出発。
 歩いてしばらくすると、日の出を迎えました。写真では分かりづらいですが、見事な朝日でした。大きく、真っ赤な球体なのです。
                    127朝日がまん丸

 県道42号から広域農道へ入ります。
                    128県道42号
 
 アップダウンが続きます。車の往来は少ないです。
                    アップダウンが続く農道
 
 道脇にバイキンマンの人形が立っていました。さすがやなせたかしの故郷、高知県!まもなく四万十市に入りました。
                    130バイキンマン
 
 竹島小学校の屋上が津波避難場になっていました。四万十市も約27mの高さの津波に襲われると言われています。ここは15mの高さですが、内陸部にあり、海岸との間に高い山々がある地形のため、この高さでも避難場になっているのでしょう。ただ、四万十川が近いのが気になります。
                    131小学校屋上

 四万十川に達しました。四万十大橋近くの土手上に休憩所がありました。時刻は8時40分です。2時間40分歩いたということです。
                    132四万十川大橋傍休憩所

 朝食にしました。菓子類が底を尽きましたので、近くのコンビ二で買ったパンを食べました。私は朝はパン党なので、おにぎりは苦手なのです。美しい四万十川を見ながらの食事はこのうえない贅沢だと思いました。
                    133朝食

 四万十川の美しさはなんと形容したらいいでしょう。感動しました。写真では伝わりません。ここは旧中村市で、川は下流の先端です。3キロ先に河口があります。そのため川幅があります。2、3百メートルはあるような気がします。
                    134四万十川を背に

 渡った橋は四万十大橋と言います。橋から見た川の景色がまた美しい。緑と青が混ざったような色合いですが、よく見ると透き通っています。下流でこれだけ透明なのですから、中流や上流の透明度はものすごいでしょう。残念ながら遍路道は中流や上流地域を通っていません。
 私は四万十川を見ているうち、黒潮町出身で、旧制中村中学校出身の作家、上林暁の『四万十川幻想』という作品を思い出しました。よほどの文学通でない限り、上林の名を知らないでしょう。昭和に活躍した純文学の私小説作家です。
 『四万十川幻想』は中村市を再訪した上林がかつての同級生たちと四万十川の川下りをしながら、中学時代を懐旧するという小説です。随筆に近いような作品とも言えるでしょう。昔の私小説作家には文章が上手な人が多いです。他に彼の作品で好きなのは『小便小僧』です。
                    135四万十大橋から見た川
 
 橋の中央付近がふくらんでいて展望台のような形になっていました。ベンチが備え付けられています。粋な計らいです。設計者の優しい心が感じられました。しばらくこのベンチに座って川を眺めていました。
                    136橋のベンチ

 川と並走する国道321号が遍路道になっていますが、せっかく四万十川にご対面したのだから、川沿いの土手を歩くことにしました。日が高くなり、春の到来を思わせます。風がなく、暖かさが感じられます。こんな素晴らしい日にこの美しい川の土手を歩けるとは、なんて幸せなんでしょう!こういう時、歩き遍路をしてよかったとつくづく思います。どこからか鳥の鳴き声が聞こえます。青い水面で日光が反射しています。青い空に白い雲が浮かんでいます。こういう時、なぜか青春時代を思い出してしまうのです。なぜかキャンデーズの「~もうすぐ春ですね 恋してみませんか~」という『春一番』の一節が浮んで来、口ずさみました。
                    137川沿いの道 

 川沿いの道から国道321号に移ります。今日の目的地、民宿「いさりび」までここから約13.5キロです。
                    138国道321

 四万十市から土佐清水市の境界に伊豆田トンネルが横たわっています。全長1.6キロです。こんなに長いトンネルを歩くのは初めてです。妻が持参した紙マスクを付けました。助かりました。今回これで何個目のトンネルでしょう。10個は通り抜けたと思います。
 対向車のスピードによる風圧を避けるためには立ち止まるのが一番。ただし、壁に触ってはいけません。排気ガスの塵埃がこびりついているからです。一度触ったら、真っ黒になりました。
                    139伊豆田トンネル

 ドライブイン水車(現在廃業)の横に公衆トイレがありました。近くに休憩所もありました。
                    140ドライブイン水車のトイレ

 一休みしていたところ、一人の歩き遍路の男性が、我々の進行方向からこちらにやって来ました。彼もトイレ休憩しようとしたのです。年の頃50代と思われる長身の男性で、歩き方が颯爽としてました。話した所、38番札所金剛福寺参拝を終わり、39番延光寺を目指しているとのことでした。39番に行くためには国道を逆戻りする必要があるのです。彼が、「学会があるから、日曜日に飛行機で帰らなくてはいけない」と言ったので、私が「大学の先生ですか」と言うと、胸を張ってそうですと答えました。彼から、国道321号と県道21号が交わる地点に「ロッジ カメリア」という面白い遍路宿があるという話を聞かされました。
 大学の先生のお遍路さん、話してくれてありがとう。
                    141休憩所

 国道からいったん遍路道は県道21号に移ります。歩いている人もいなければ、車の往来もほとんどありません。昔の長閑な田舎を歩いている感じです。川が清冽です。
                    142県道21号の遍路道

 40分ほど歩いた所、国道と県道が交差する地点に差し掛かりました。道標が立ったので見ていたところ、戸が開き、中から「お茶を飲んでいきなさい」と声をかけられました。壁を見ると、「Lodge Camellia」と書かれてありました。ここが大学の先生が教えてくれた「ロッジ カメリア」でした。英語表記とは洒落れていますね
                    143ロッジカメリア
 
 経営しているご夫妻とお話ししました。夫妻は大阪出身の方で、歩き遍路の魅力に取り付かれたのでこのロッジを開いたということでした。テレビ朝日の番組『人生の楽園』に出てきそうなご夫婦です。上がりかまちで美味しいお茶やコーヒーやお菓子をいただきました。旦那さんの大阪弁がとても愉快でした。
 なんとこの宿は3000円なのです。そのうえお接待として、夕食(カレーライス)と朝食(コーヒーとトースト)が無料です。お風呂も洗濯機もあります。室内は清潔感にあふれています。究極の善根宿ではありませんか!全国の歩き遍路の皆さん、もしこの付近で宿泊するならこのロッジにお泊りください。特に金銭的余裕のない若者のお遍路さんや外国の方々にとっては最高だと思います。あたたかいお接待を受けたお礼にこの場を借りまして宣伝させていただきます。
 以前から把握していれば、私達もここに泊まったと思います。残念!記念写真を撮らせていただきました。
 カメリアの旦那さんと奥様、お接待ありがとうございました!
                    144カメリアご夫妻

 国道を再び歩くと、下ノ加江海岸という場所を通りました。この辺には足摺岬のイメージである断崖絶壁はありません。
                    145下ノ加江海岸

 この海岸のそばに今日泊まる民宿「いさりび」がありました。国道に面した高台にあるため眺めがよさそうです。
                    146いさりび
                    147いさりび

 この続きは、お遍路通信5の(3)で紹介します。