②石田順裕vsゴロフキン 前日公開計量〜侍の夢〜3.30モナコWBA世界ミドル級タイトル戦 | @TUG_man石田順裕応援ブログ

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世界リアルボクシングドキュメント

@TUG_man石田順裕応援ブログ-石田順裕vsゴロフキン


29日。先日から降り続いた雨も止み、霧がかった空の隙間から時おり太陽も顔をのぞかせた。これから公開計量へと向う。

モナコの国土面積は約2㎢と日本の皇居の2倍ほどの広さしかない。

@TUG_man石田順裕応援ブログ-日本庭園
短い距離の移動の間にも日本庭園やF1で最も有名なコーナー、ローズヘアピンカーブなど観光名所を巡る。

海岸線を走り、急な山道を上がり15分ほど。会場となるカジノ・デ・モンテカルロに到着した。

@TUG_man石田順裕応援ブログ-モンテカルロ
このカジノはパリのオペラ座の設計者、シャルル・ガルニエによってデザインされたモナコを代表する建築物だ。

賭け事と言えば少し野蛮なイメージもあるが、モナコではカジノは単なるギャンブルではなく社交界の歴史そのもの。

ここへセレブたちが高級外車で乗り付ける。ランボルギーニ、ベントレー、ロールスロイス。それを記念に写真を撮る観光客も多い。

モナコの中心街、カジノ前は人でごった返していた。

@TUG_man石田順裕応援ブログ-巨大看板
その光景を巨大ポスターの男2人が見下ろしていた。“ミドル最強の男”ゴロフキンと“戦い続ける男”石田順裕だ。

@TUG_man石田順裕応援ブログ-看板
辺りを見渡すと街の至る所に試合の看板が立てられていた。

セキュリティーチェックを受けた後カジノ内に入る。だだっ広いカジノフロアを2つ越えた向うに特設ステージが組まれていた。

@TUG_man石田順裕応援ブログ-計量会場
会場は世界各国から集まって来たボクシング関係者で埋め尽くされている。

日本からはこの日に合わせてツダジム本石マネージャーと小松後援会長も駆けつけ、元WBC世界スーパーフライ級王者徳山昌守氏の姿も見られた。

ここは特別なゲストを招いた催事のみに使用されるスペシャルルームだ。天井に派手なシャンデリア、壁には装飾が施されている。

その部屋の後方にひと際目立つ人だかりがあった。

@TUG_man石田順裕応援ブログ-グローブチェック
挑戦者石田順裕と王者ゴロフキンの姿だ。

両者ともに試合のレギュレーション説明を受けている所だった。細かくルールを確認した後は使用されるグローブをチェックした。

そうして一通り手続きを済ませると場所を移動させ、今度はプレスインタビューが始まった。

“ニックネームは何ですか?”

海外ボクサーにはよく自身が持つボクシングスタイルを象徴するニックネームが名付けられている。

@TUG_man石田順裕応援ブログ-サムライ魂
「ニックネーム?ん~サムライソール。ソウル。心。魂」

そう言えば石田順裕はこれと決まったニックネームを名乗っていなかった。石田順裕を象徴するもの。ボクシングスタイルとは何か。

それは強いハートにある。日本の侍魂だ。

“今まで戦った中で一番強かったのは誰ですか?”

「今までで一番強敵だったのは…ポール・ウィリアムス」

“その難敵との試合には勝ちましたか?”

ボクシング専門の記者ではないのだろう。結果を知らないようだ。

「ノー、アイムロスト」

いいや負けた。

あの時パニッシャー相手に12ラウンドフルに戦い抜いた。しかし勝てなかった。ウィリアムスだけではない、その後ピログともフルラウンド渡り合い、効かす場面も作ったが勝てなかった。

集計では離されたがラウンド毎で見ればほんのちょっとの差だった。

思い返す事2年半前もそうだ。メキシコでのリゴベルトアルバレス戦。この時は優勢のうちにゴングを聞いた。勝ったと思った。しかし石田の手は上がらなかった。

2-1スプリット判定で敗れ王座から陥落した。

石田順裕は日本で活躍していた頃の華麗なアウトボクシングスタイルからよりファイトするスタイルへと変貌を遂げた。

試合が決まらなかったこの一年も果敢にアタックを仕掛ける実戦さながらのスパーをこなして来た。

“海外のリングは打合いを制する事ができなければ勝てない”

石田順裕は海外のリングで勝利するスタイルの完成を目指した。


@TUG_man石田順裕応援ブログ-ラウンドガール
“ハローミスター!ボンジュール!”その時、場内アナウンスが流れた。

モナコの国旗をイメージした真紅に白のセクシーな衣装のラウンドガールたちがステージを華やかに彩る。間もなく公開計量が始まる。

“チャレンジャー!ノブヒローイーシダー!”

まず初めに石田順裕の名からコールされた。上下RSCスウェットを脱ぐと引き締まった肉体美が現れた。例えるなら一切の無駄を省いたサラブレッド競走馬のような筋肉だ。スピード感溢れるパフォーマンスを期待させる。

@TUG_man石田順裕応援ブログ-石田順裕
158.5ポンド。およそ71.9㎏で一発クリア。念のため朝食を抜いた。メキシコでは計量器に細工をされた苦い経験がある。リミットいっぱいまで600gほど余裕を残して完璧な仕上りを見せた。

“WBAミドルウェイチャンピオン!ゲナディーゴーロフキーン!”

続いて王者ゴロフキンの登場だ。相変わらず笑顔を絶やさない。ジャージーを脱いだ。驚愕する。顔だけ人間でその下は獣。マウンテンゴリラのような身体をしている。野太い両腕にぶ厚い胸板。これがKOを量産して来た“神の戦士”の肉体か。

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159.25ポンド。およそ72.2kgでこちらも一発OK、ガッツポーズを見せた。

両者向き合って火花を散らす。そしてカメラマンのリクエストに応えいくつかポーズを決めるとステージを降りて行った。


“ISHIDA186㎝に対しゴロフキン178㎝とちょうど頭一つ分飛び抜けてISHIDAの方が高い。この身長差がどう出るかが試合のキーになるだろう”

各紙メディアが報じる試合予測はこの身長差を交えて論じ、どれも似通っているものばかりだった。その後こう続く。

@TUG_man石田順裕応援ブログ-にらみ合い
“身長差とリーチを活かしISHIDAはアウトボックスを展開するだろう。常に動き続けるISHIDAをゴロフキンがいかにして捕らえるか。しかしいずれ後半には王者がストップを呼び込むか全会一致の判定で勝利するだろう”

知っている。まともに打ち合えばゴロフキンの強打が待っている。

だから足を使って左で翻弄する。なるほどいい作戦だ。ゴロフキンの拳からわずかの間逃げ仰せる事ができそうだ。

しかし猛攻に遭いポイントを失う。判定まで持っても勝つ事はできないだろう。そればかりか執拗に攻め立てられ倒されてしまうかも知れない。そうして幾多の猛者たちが打ちのめされて来たのだ。

さばこうとすれば九分九厘負ける。

石田順裕に肩入れしているはずの日本のボクシングファンの間でも戦局は厳しいと見る目が多かった。あるいは判定まで持ちこたえただけでも偉業だと。そんな風に捉えられていた。

しかし石田順裕の目的は立ってゴングを聞く事ではない。欲しいものはただ一つチャンピオンベルトだ。

勝機を見いだす。勝つために戦う。

その勝率を五分とまでは行かないまでも三分四分に上げる方法がある。

少なくとも10回戦えば1~2回は勝ちに持って行ける方法がある。一つだけある。それは最も危険で最も勇気がいる戦法だ。

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「リングの中央で戦う。ロープに詰ったら負けなんで。1回、2回、早い回での勝負を狙ってます」

世界各国のリングに立ち、苦汁をなめ、そこから幾度となく這い上がって来た。実戦でそれを学び強くなった。石田順裕にしかできない戦い方だ。

“サムライ魂を見せてやる”


@TUG_man石田順裕応援ブログ-夜更け
宿舎ホテルまでは全出場選手乗り合いのシャトルバスが出ている。計量では睨みをきかせたライバル同士が隣り合って座る。

アフリカンやドミニカン。陽気なお国柄のボクサーたちが唱い出す。

外はもう薄暗い。明日開催されるボクシングナイトの夜はさらに深い。幻想的なネオンが光り輝き水面を照らす。夢の国モナコ。

@TUG_man石田順裕応援ブログ-石田順裕の覚悟
「ボクシングで飯を食べてるし仕事には変わりはないけど、僕にとってボクシングは夢のある仕事です。もう一回チャンピオンになるって夢持って頑張って来たんで、必ず勝ちます」

石田順裕の夢。

石田順裕の覚悟。

“モナコの奇跡を起こします”


バスの中ではラテンの歌声と手拍子が響き渡っていた。



@TUG_man石田順裕応援ブログ-石田順裕の夢