石田順裕inロサンゼルスvsゴロフキンinビッグベアー | @TUG_man石田順裕応援ブログ

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世界リアルボクシングドキュメント

@TUG_man石田順裕応援ブログ-石田順裕スパー


先週末。石田順裕は再びロスへと旅立った。

明日からまたアステカ、ワイルドカードジムを往復する日々が待ち受けている。3/30WBA世界ミドル級タイトルマッチへ向け最終仕上げに入った。

打倒ゴロフキン。

ロスでは現Sミドル級東洋王者清田祐三と合流した。2月末までの期間共に汗を流す。清田選手は3/21後楽園ホールで東洋タイトル7度目の防衛戦を控えている。こうして海外へ武者修行をするのはやはり練習相手に苦心しているからだろう。階級も近く、23勝中21 KOと破格のパワーを持つ清田選手と手合わせをすればゴロフキン対策になる。

日本から遠く離れた地で勝利を目指す日本人ファイターは他にもいる。同じルディ・エルナンデストレーナーの元で学びビッグチャンスを虎視眈々と狙う岡田隆志とも再会を果たした。


@TUG_man石田順裕応援ブログ-岡田隆志
岡田選手はアマでは全日本を制しプロ入り。2007年、後楽園ホールでデビュー戦を飾ると本場のリングを目指し海を渡った侍だ。べガスで行われた第2戦目は2010年、デビュー戦から2年半も後の話になる。結果はドロー。散々に待たされた挙げ句、早々にアウェーの洗礼を受けた。

そして第3戦。あのアロヨ戦だ。

マックウィリアムス・アロヨ。プエルトリカンの次世代スター候補。岡田選手が元アマ全日本王者ならアロヨは元アマ世界王者だ。日本vs世界、果たしてどちらが強いのか。しかしここべガスでそんな風にこの試合を観ていた者など誰一人としていない。

アロヨのステップアップ。スターの通過点。そう見られていた。

べガスではよく見られるリング。アロヨが勝ち、順調に階段を上がる。ただそれだけのマッチメーク。ごく有り触れた日常だ。岡田選手は未来の世界チャンピオンに挑んだ。
2010.6.12 McWilliams Arroyo vs Takashi Okada-1R2R
第2ラウンド。ラスト30を切った。激しい打ち合い。岡田選手のワンツーがクリンヒット。アロヨ膝をついた。ダウンだ。騒然とする会場。

3R4R4回戦。そのまま優勢のうち終了のゴングを聞いた。38-37、38-37、39-36岡田選手の手が挙がった。38-37が2人。つまりダウンを奪わなければ敗れていた事になる。倒さねば勝てなかった。勝利してなおべガスのリングの厳しさを見た。

これがホーム日本であれば“世界確実だ”なんてこぞって誌面を飾り、大々的に売り出されただろうか。最短で世界挑戦、なんて今流行の路線が打ち出されていたかも知れない。それほどの快挙だ。日本であれば。

しかし海外のリングでは日本人ボクサーを積極的にスターへと導こうとする気運はない。地道に一戦一戦、一勝一勝を積み上げる。そうしてチャンスを待つしかない。単身乗り込むとはそういう世界に身を置く事だ。勝っても天国なんて見えない。もちろん負ければ即地獄だ。勝って勝って勝ちまくる。そうして一筋の光がやっと見えて来るかどうか。

そもそも勝つためのリングに立てる保証すらない。

しかしその戦いに生き残った時、本物の世界的ビッグスターの後ろ姿が見えて来る。アロヨもしかりだった。日本ではそうそうお目にかかれないような猛者ども。そして華々しいリングが待っている。

近年、海外のリングに立つ日本人ファイターは増えて来た。世界戦も数多い。しかし日本のリングで築き上げた全面バックアップありきの海外挑戦とこの岡田選手の挑戦は全く一線を画す。己の拳一つで這い上がる。世界中の移民ボクサー達に交じり切磋琢磨していく姿は尊敬に値する。

岡田選手は海外マッチメークに苦心しながら現在も無敗街道を走っている。さらなる活躍を真に願う。

さあ、そういった世界観の超ド真ん中で戦う男が石田順裕だ。アウェー判定でベルトを奪われるとその足で単身海外へ乗り込んだ。そしてカークランドをなぎ倒しSHOWTIMEメインを張るとロシアで世界戦も行った。

失ったものは日本のリングと家族との時間。代わりに得たものは海外のリングとファイトマネーだ。

最後に試合をしたのは2012年5月、ピログとの世界戦だ。もう10ヶ月も前になる。再起を計りロスに赴いた際には“試合をするまで帰ってこない”そう胸に想いを秘めた。結局その滞在中に試合が決まる事はなかった。“このまま試合が決まらなければ引退するしかないのか”石田順裕は日本でオファーを待った。

そして“オレは帰って来た”

ロスキャンプだ。到着間もなくスパーを開始。はやる気持ちにまだ身体はついて行かない。イメージだ。ゴロフキンを倒すための理想のイメージは遥か高みにある。しかし試合のために。勝つためにトレーニングができる喜び。どうすればゴロフキンを攻略できるか考えることができる。魂が燃える。


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休日は一面に海が広がるカフェで疲れを取る。“もう2度とこの景色を見る事はないのかもしれない”そう思った海。どこか懐かしい香りがする。石田順裕が生まれた土地、熊本の有明海と似ているのかも知れない。誰と戦うのか。何のために戦っているのか。一体どうしたらいいかも分からない。試合が決まらずモヤついていた頃の焦燥感はもうない。

ゴロフキンと戦う。世界ミドル級ベルトを奪取するために戦う。

焦りは消えた。しかし代わりに今度は不安が襲う。もがくだけの時間も今回特別に与えられた。急造のオファーではない。試合までまだ1ヶ月半ある。勝つためにもがく。バッグ打ちをやめられない。ここでヤメてあいつに勝てるのか。もっと。もっと。スパーリングでは激しく打ち合った。ゴロフキンのパンチはこんなもんじゃない。もっと来い。もっと。もっと。

ムキになるな。考えろ。集中だ。冷静に。ボクシングは闘争心が何よりもまず勝敗を決する。知っている。闘争心なんて今にも爆発してしまいそうだ。今は抑えるので精一杯だ。試合にピークを持って来る。これから。これから。久しぶりに万全で試合に望めるんだ。3/31か。

モナコで奇跡を起してやる。



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そして一方迎え撃つ格好の王者ゴロフキンもカルフォルニア州ビッグベアーサミットジムで最終仕上げに入っている。こちらは3/9B-HOPと対戦を控えるLヘビー級王者クラウドと合流しトレーニンングを開始した。

ここサミットジムも世界中からトップボクサーが集い腕を競い合う世界有数のボクシングの聖地だ。ゴロフキンは元3階級制覇シェーンモズリーとスパーリングをこなしスピード感溢れるベテランテクニシャン、石田順裕対策を講じている。

Gennady Golovkin vs Shane Mosley Sparring
スパーをしたモズリーのGGG評はやはり高い。

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シェーン・モズリー
「ゴロフキンが考えられるビッグマッチとしてカネロがウワサされているがたぶんそれはないだろう。オレはカネロとも拳を交えたがパワーが違いすぎる。一階級下のカネロでは勝てない。さらにスピードもゴロフキンの方が格段に上だ。ゴロフキンのライバルはやはりマルチネスじゃないかな」


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今この最強ゴロフキンvs最高マルチネスのビッグマッチの話題が世界中のボクシングファンの間でされている。さらには見解としてあのマルチネスが対戦を避けているとも囁かれている。

真相は定かではないがゴロフキン陣営は2013年から2014年にかけ、マルチネス、ギール、クイリンら世界王者との統一戦。ならびにピログ、チャベスjr、ルビオにバーカーらビッグネームとの対戦を矢継ぎ早に行う事を公言している。“ミドル最強はゴロフキン”を実際のリングで証明して見せると鼻息は荒い。

そのゴロフキンの前に立ちはだかったのが“戦い続ける男”石田順裕である。


@TUG_man石田順裕応援ブログ-モナコ
モナコ公国。この国ではおよそ60人に1人が警官の職に就く。街中に警察官を配備し監視カメラが目を光らせ、一度事件が起きれば国境を閉鎖してまで事件解決に当たり世界で最も治安がいい国と言われている。大富豪が金品を身にまとって安心して自由に街を歩けるようにとの配慮からだ。

それが一大カジノ国家モナコだ。この世界で最も優雅な国が今回の舞台となる。メインイベント石田順裕vsゴロフキンのWBA世界ミドル級タイトルマッチだ。

ボクシングは海外では言わずもがなギャンブルだ。最新オッズが出た。ラウンドごとの細かいものはまだ確認できていないが単純に勝つか負けるか、簡単な基本情報を交えて説明されているものを見てみよう。

【王者ゴロフキン評】
王者ゲンナジー・ゴロフキンはこれまで25戦して全勝22KO。現在12連続KO勝利。最近ではガブリエル・ロサード、グジェゴジ・プロクサ、そして日本の渕上誠と3連続KO防衛中だ。そして全25試合でかかったラウンドは103。つまり総じて4ラウンド以内に相手を仕留めている計算になる。
【挑戦者石田順裕評】
挑戦者石田順裕は34戦して24勝8敗2分け、9つのノックアウト勝利を記録している。注目すべき最近の5試合は2勝3敗。2勝は衝撃のカークランドを含むいずれもファーストラウンドノックアウト勝利。そして3敗は判定までもつれ込む展開となっている。ピログ、ウィリアムスの一戦はラウンドごとは競ったものの集計では大差をつけられた。
【総括】
王者が優位だ。強さを見せつけ連勝記録を伸ばすだろう。果たして連続KOの更新はなるか。それとも37歳タフなベテランテクニシャンが世界で最もパワフルなファイター相手に劇的な勝利をやってのけるだろうか。
【オッズ】
ゴロフキン勝利1.02:石田順裕勝利12。1:12と出た。例えば100ドル賭けてGGGが勝てば102ドルに、NOBが勝てば1200ドルになる。

ちなみにあのタイソンvsダグラスを越える番狂わせと言われた石田順裕vsカークランド戦で1:17。それより数値上いいが、話はそう単純ではない。当時石田順裕は海外のリングではほとんど知られていなかった。その影響は大きい。もし今vsカークランド再戦を組んでオッズを出せば1:17なんてオッズは出ないだろう。それどころか2:1くらいで優勢と出るのではないだろうか。

それくらい今の石田順裕は強い。それをしてこのオッズだ。恐るべしゴロフキン。その強さはオッズにもにじみ出ている。


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合い言葉は“モナコの奇跡”だ。察しの通りこれはかの伝説“キンシャサの奇跡”になぞらえている。タイソンvsダグラスが“世紀の大番狂わせ”ならそれを越えるのはアリvsフォアマンしかないだろう。

ジョージ・フォアマン。1974年。それまで40戦して全勝し37KO、ほとんどの試合を2ラウンド以内に決め象をも倒すと恐れられていた。対するアリは32歳。当時の選手年齢を考えるととうに峠が過ぎていると見られていた。

“オレはベトコンには恨みはないぜ”でも有名な徴兵忌避の影響で全盛期に3年半もの永きに渡るブランクを余儀なくされた。復帰後に2敗を記録しここ最近でも勝ってはいるものの競った判定続きでとてもあのフォアマンに勝てるとは思われていなかった。

誰も。いやアリ以外は。

試合は序盤から7ラウンドまでフォアマンの猛攻が続く。アリはロープにもたれかかり打ちのめされる一方だ。やっぱりか。誰しもがそう思った。アリ以外は、だ。8ラウンド突如としてアリが反撃に打って出ると象は沈んだ。
1974.10.30 George Foreman vs Muhammad Ali
ロープ・ア・ドープ。この戦いにおいてよく語られるキーワードだが真にこの奇跡を起こした要因はそんな事ではない。それよりも何よりも大切なキーワードは敗れたフォアマンから発せられた。


@TUG_man石田順裕応援ブログ-ジョージフォアマン
「試合前、アリは自分が負ける可能性をも考えていたのに対し、オレは勝つ事しか頭になかった。経験の差と言う事だろう。ダウンを食ったのは初めてのことだったからどうしていいか分からなかった。気がついたら試合が終わっていたのに気がついたんだ」

アリは負けをも覚悟しその上で勝利をもぎ取ろうとしたから勝てたのだった。勢いに任せて打つのでない。玉砕覚悟で挑むのではない。もっと切実に。もっと深く。もっとリアルに勝利を追求したからこそ奇跡は起きたのだった。絶対に勝つと言う執念だ。


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「ゴロフキン。あれはマルチネスよりも全然強いですよ。あれは強い」

まだ試合が決定してない頃の石田順裕の言葉だ。世界のトップレベルを知り尽くしている男の言葉だ。最強はゴロフキン、そう言った。そして今回世界戦ラストチャンスになる相手となった。

もう2度とロスには来れないかも知れない。石田順裕はそう思った。そう思えるほどにギリギリ限界を張って戦って来たからこそ再びロスの地に踏み入れる事ができた。

負けるかも知れない。どうすればヤツに勝てるのだろうか。だからこそ考える。だからこそ必死でバッグを打つ。だからこそムキになって打ち合う。今はまだイメージとはほど遠い。それも分かっている。このままでは負ける。

しかしだからこそ勝てる。

ロス入り初のスパーではムキになりすぎてしまった。2度目のスパーでは早くも軌道修正ができた。そうしていずれ近いうち石田順裕のイメージと身体は一体化するだろう。

考えるボクシング。石田順裕はリングで己と対話する。その長さが、その深さが、その強さが他を圧倒する。勝利を太く信じている。追い求めている。

石田順裕最強の武器はこのリングと向き合う姿勢だ。これまで己の人生ほぼ全てを費やして来た時間だ。ボクシングと向き合う。己へ問いかける。そして答えを見いだしたときゴロフキンを倒す事ができる。

王者ゴロフキンは勝つ事しか頭にないだろう。課されたミッションは勝つだけではない。何ラウンドで仕留めるかだ。自分が倒されるなんて微塵も思っていないだろう。だからこそ負ける。石田順裕には勝つ事ができない。

モナコの奇跡。起きるのではない。起こすものだ。あいつを倒す。絶対に勝つ。信じるでない。信じる力を手に入れるんだ。神経を研ぎすませ。集中だ。そうだ。見えるヤツの動きが。こうきたらこう。そうきたか。ならばこれでどうだ。行くぞ。やってやる。そうだ。これが。。。


今。奇跡へのピースが一つ。また一つと揃い始めている。


石田順裕。勝利へ向かって。


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