殺人 ! (1930) | つぶやキネマ

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140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★


殺人 ! (1930)


 同じ劇団の女優を殺した罪で女優ダイアナ(ノラ・
ベアリング)は死刑を宣告されたが、彼女の証言に疑念
を抱いた陪審員サー・ジョン・メニエ(ハーバート・
マーシャル)は、劇作家で俳優という立場を活かして
独自に捜査を開始する...というお話。ヒッチコック作品
としては珍しい"探偵モノ"なのだが、脚本・演出共に
あまり良い出来ではない(注1)。元々が舞台劇という事も
あって会話が多く、映像で観せる場面が少なかったのも
完成度に影響しているようだ。サー・ジョンが鏡に向って
自問自答するシーンはトーキーを逆手に取ったような感じで
面白かったし(注2)、要所要所でヒッチコックらしいカメラ
ワークや編集テクニックが観られてそこそこ楽しめる。
前半にかなり長めの陪審員による審議の場面があるのだが
「十二人の怒れる男(1957)」みたいな展開でニヤニヤして
しまう。後年のヒッチコック作品の定番でもある、主要
人物以外は喜劇的でちょっと可笑しいというコメディ要素
を加えるあたりも、本作でほぼ完成しているように思える。
ダイアナが命がけで真犯人をかばう理由や、真犯人が告白書
を書いて自殺してしまうあたりに説得力が無いのが惜しい...
犯人探しの過程のグダグダ感も問題なのだが、いっその事
「ハリーの災難(1955)」みたいなブラック・コメディに
していれば傑作になったかもしれないなぁ。


●スタッフ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:ジョン・マクスウェル
原作:クレメンス・デイン、ヘレン・シンプソン
脚本:アルマ・レヴィル
撮影:ジャック・コックス
音楽:ジョン・レインダース


●キャスト
ハーバート・マーシャル、ノラ・ベアリング、
フィリス・コンスタム、エドワード・チャップマン、
マイルス・マンダー、エスメ・パーシー、
ドナルド・カルスロップ


◎注1; 原作は「サー・ジョン登場」という戯曲で、
脚本を書いたのはヒッチコック夫人のアルマ・レヴィル。
トーキー初期はサイレント時代の反動からか、台詞の異常
に多い映画が流行ったようで本作もそんな1本なのだろう。
以前のヒッチコックなら、映像テクニックで観せていた
ような所も台詞であっさり処理されている場面が多い...
奥さんの脚本に文句をつけられなかったのかもしれないが。

◎注2; 鏡に映ったサー・ジョンのモノローグは、口を動かさ
ないで無言のまま表情を作り、それに自身の内なる言葉が
かぶさるという演出なのだが、同時録音の時代なので台詞は
似た声の別の俳優がしゃべっているのかもしれない。ハーバ
ート・マーシャルが前もって録音していた可能性もあるが、
その時ラジオから流れている「トリスタンとイゾルデ」の為に
スタジオに30人のオーケストラを呼んだというヒッチコックの
証言もあるので事前録音は考えにくい...オーケストラの件は
レコードを使うという方法もあるのでヒッチコック得意の
ホラ話かも。

◎蛇足; ヒッチコック映画はヒッチコック自身が一場面だけ
登場する事が有名だが、本作では映画中盤で、サー・ジョン
と劇団員夫妻がダイアナの家の戸口で話している場面で、
前を横切るカップルとして登場。


 

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