■Control(原題:コントロール) | ツボヤキ日記★TSUBOYAKI DIARY

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■Control

●1980年5月18日にJoy Divisionのヴォーカル、イアン・カーティスが逝った。
2007年5月20日、52歳の誕生日を迎えたアントン・コービンはカンヌ映画祭にいた。

最近またラジオから流れてきたりが嬉しいニュー・オーダー。彼らのミュージックビデオも手がけているアントン・コービン監督作、カンヌで上映された「コントロール」(原題)が気になる。23歳で自殺したイアン・カーティスを主人公に捉えた物語をモノクロ映像で映画化したものだが、カンヌ映画祭の開催中の情報では、初監督と初主演の二人組がちょいと目を引いた。







アントン・コービンは、ロックスターを撮るカメラマンとして知名度の高い人物。無論写真のみならず、ミュージックビデオのディレクターとしても数々の作品を送り出していることから、フィルム等での知名度もあるものの、長編映画は初挑戦だった。
イアンの命日前日、5月17日にカンヌで初上映された映画「コントロール」は、通常のショービズ伝記映画とは異なった趣きだった模様。

映画「コントロール」は、1970年代のイギリスを舞台に、イアン・カーティスの妻デボラ・カーティスによる「Touching From a Distance」(邦題「タッチング・フロム・ア・ディスタンス―イアン・カーティスとジョイ・ディヴィジョン」)が原作。ほとんど無名のまま(熱狂的なファンは現存だが)自殺してしまったにも関わらずロックの神話となったシンガー、イアンが主人公。






映画では、原作者であるイアンの妻デボラに、アントン・コービスとは既にU2のビデオ出演等でも馴染みのサマンサ・モートンが扮している。年齢不詳、時代を自在にわが世界とする女優が心強い。
映画は、イアンが持病である癲癇と闘いながらも、妻への愛情…ベルリンでのツアーで出会ったアニック・ホナーの間で揺れながら、修復できない家庭生活、そしてステージ…ロックスターの憂鬱がそこにあるかな。

イアン・カーティスが自殺する夜…行くはずのないような仲間との約束をすっぽかして自宅に戻り、彼の不倫を問うデボラとの出口の無い会話の果てに妻は実家に向い、彼は自らの死へ向うことになる。
イアンは癲癇の治療のために服用していたバルビツール剤を常用。鬱病を併発。それは、バンドはアメリカへのツアー目前の夜だった。




独りになったイアンの行ったこと。ヴェルナー・ヘルツォークの「シュトロツェクの不思議な旅」(STROSZEK:1977)を見たという。さらにイギー・ポップの「イディオット」を聴き、ウィスキーを飲みながら、妻に手紙を書いた。陽が上る時刻…白みかけた夜の終わりに彼はロープを首に巻いた。

多くの人々の目に触れたロックのアイコン。スターへの階段を駆け上ろうとした矢先に逝ったヤツを誰か違う俳優が演じるというのは、非常に難しいだろう。コービンもそう考えていたようだ。どんなに上手い俳優であっても演ずるのは非常に難しい役割だと。しかし、撮りたかったのだ。
そこにサム・ライリーが現れた、という。




「サムなしには、この映画に関して考えることができなかった。サムは、とても誠実だ。 彼はこの映画の中でイアンを演じることにより、その存在で映画の全てを語っている。」とコービン。

コービンは、彼自身の映画のために突如浮上してきたニューカマーの存在サムに対して「イアンを演じる俳優を捜し当てることを心底望んでいたが、見つけることは難しいと思っていた。それが私が思っていた以上の無垢で新鮮な耀きをもった彼に出会うことが出来た」という。

サム・ライリーは、イアンの持病であった癲癇がどのような症状だったか、ステージ上でどうだったか…パフォーマンスにどう影響をもたらしたか、研究し、彼のパフォーマンスを鏡の前で繰り返し模倣することが必要だと思った。そして実行した。








既に映像作家として、写真家としての名声を獲得したとはいえ、アントン・コービンにとってこれが初めての映画制作だった。
サムにとってもそれは初めての映画出演だった。

誰が何をほざくのか…あの時代が去った今でも語り継がれ、伝説にさえなろうとする男を主人公の映画。
映画はイギリスの公共投資の資金提供を得る事が出来ないまま、コービンは自身の資金を注ぎ込むことで低予算で完成させ、カンヌ映画祭で上映の機会を得た。

二人は互いに何も失うものはなかった、のだと振り返る。だからこの映画が完成できた、だと。
媚びないモノクロの世界から伝わるものは、死に絶えたパンキーな囁きだけではない、のだろう。失われた世代、葬り去られようとしている魅力的な奴の声が聴こえてくるぞ。青白くスリムな体型、そして大きな目のライリーは、イアンに重なって見えたんだろ。







1979年、コービンがオランダからイギリスに移ってきた当時のイギリスは国家的経済政策による財政緊縮の日々。人々の貧困に彼はショックを受けたという。そんな時、ジョイ・ディヴィジョンの連中に出会ったのだ。彼らは真冬の寒さの中、薄手のコートを羽織った簡素な身なりで煙草を吸いながら凍えていた…そして、今回のイアン役を得ることになったサムに会った時も季節は冬。
その時のサムの様子も当時を思い起こさせるような格好だったのだと。彼がこの映画にキャスティングされるまで何をやっていたか…リーズの倉庫でひたすらシャツを折りたたむ仕事に明け暮れていたのだという…ほぼ日雇い状態だったのだ。

映画の中でジョイ・ディヴィジョン(イアン)の歌は、サム・ライリーにより再構成されているそうだ。サム自身が楽器を演奏し、歌っているのだという。「10,000 THINGS」というアマチュアバンドに在籍したこともあるというが、本作のオーディションを受けるまでは全くの無名だったサム・ライリー、27歳。

さて、彼がこれからどう浮上するかは予測できない。魅力的な若者の一人がスポットライトを浴び、そこで水を得ればしめたものだが、と少し祈っておこうかな。いい面構え。共演した女優も既にメロメロ、なんだし(苦笑)。カンヌが一夜の夢で終わらぬように、と祈っておこう。で、見たい映画なのであります。







ところでアントン・コービンのミュージックビデオもモノクロ映像が多いのだが、映画「コントロール」がモノクロになっているのか…「私の中の、その期間の記憶がモノクロだから」と彼。
ニューオーダーの面子もこの映画を見たのだと言う。ジョイ・ディヴィジョンから生き残ったメンバーは滅多に意見を同じくすることはないのだというが(頑固者めッ)、この映画に関しては全員が好きな映画だ、と言ってくれたんだそうだ。

U2、ニルヴァーナ、プロパガンダ、エコー&バニーメン、ロクセット、マーキュリー・レヴ、ディアマンダ・ギャラス、デヴィッド・シルヴィアン、ディペッシュ・モード、キラーズ…ロックミュージシャンを中心に撮り続けているアントン・コービン。ちなみに、ニュー・オーダーのミュージックビデオのディレクターにも錚々たる面子が揃っていたね。フィリップ・ドゥクフレ、キャスリン・ビグロー、ジョナサン・デミ、ロバート・ロンゴ…そして、アントン・コービン。なんて贅沢なんだ!

映画ではニュー・オーダーは勿論、デイヴィッド・ボウイ、セックス・ピストルズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、イギー・ポップ等の曲が溢れているのだそうだ。(2007年/製作国イギリス/アメリカ公開未定/フランス公開2007年9月26日/日本公開未定)



▲Trailer


Corbijn Interview + Control footage (Joy Division) subtitled


▲Official site
オフィシャル間もなくご覧になれます。

●Directer:Anton Corbijnアントン・コービン
●Screenwriter:Matt Greenhalgh マット・グリーンハル
  Writers:Deborah Curtis (book) デボラ・カーティス
●Cast:Sam Riley サム・ライリー Samantha Morton サマンサ・モートン Craig Parkinson クレイグ・パーキンソン Joe Anderson ジョー・アンダーソン Nigel Harris ナイジェル・ハリス Nicola Harrison ニコラ・ハリソン Toby Kebbell トビー・ケベル Alexandra Maria Lara アレクサンドラ・マリア・ララ Matthew McNulty マシュー・マクナリー Ben Naylor ベン・ネイラー James Anthony Pearson ジェイムス・アンソニー・パターソン Tim Plester ティム・プレスター Robert Shelly ロバート・シェリー Harry Treadaway ハリー・トレーダウェイ