■Solnze(英題:The Sun):太陽 イッセイ尾形
●第55回ベルリン国際映画祭コンペ部門に出品されたロシア映画「太陽」(アレクサンドル・ソクーロフ監督)で昭和天皇を演じたイッセー尾形(53)がスポーツ報知のインタビューに応じた。
映画「太陽」は、僅かな情報と小さなカットのみで、その後何度かアップしようと思いつつも時期を見計らって慎重にと、とどまっていたのだが、記事になった事を踏まえて、簡単な紹介参ります。
●ベルリン映画祭が終った。映画「太陽」はどこに行くのだろうか。
アレクサンドル・ソクーロフは、ヒットラー、レーニンを描いた後に、歴史上の人物として、日本の天皇Hirohitoを描く構想を約10年程まえから、周囲の者に洩らしていた、という。
映画は静かに、しかし着々と準備が進められ、ロシアにおいて撮影、さらにCG処理等を施し編集、完成し、ベルリン映画祭のコンペ部門へ出品という情報が告知された。
映画祭は終わり、各マスコミは無冠だった事をさも残念そうに伝えたが、この映画が何故、国内公開が危ぶまれる、いや、できないだろう、という状況におかれているのかは明確にしない。
結果、その放送によって、決死の覚悟を決めていた多くの国民、死ぬまで戦い抜く、と自ら言い聞かせていた国民、欲しがりません勝つまでは、と連呼していた国民の命を救うことになった。無論、早くこんな戦争は終われと祈っていた国民にしてもそうだ。同時に、それは相手国であるアメリカ、中国、英国、ロシア人の命をも救うことにはなった、というソクーロフの解釈の元にこの物語は進行している模様だ。
この映画「太陽」は、この時の天皇とマッカーサーとの会合を中心に描いたものであるという。マッカーサーの伝記、当時の事細かな記録等を長期に渡り、収集分析したシナリオを元に、ソクーロフは映画化にこぎつけた、のだという。マッカーサーの伝によれば、天皇という人物を、その精神において、それまで会った日本の誰よりも紳士であった、というような記述が残っているとか。当方は未見なので詳細は知らず。
何故、題名が「太陽」なのか。天照大神(あまてらすおおみかみ)、つまり日本における天照大神より124代目の子孫として、神として奉られた存在であった天皇を描いた作品であるから「太陽」なのだ。
戦争という苛酷な状況を終えた自国他国の人々の前にさらされた1人の象徴的な人間の心の動揺、葛藤、左右されるその狭き道を、私たちは映画に見るのだろうか。
また、「太陽」は、天皇を描きながらも、当時の時代性や背景をソクーロフ流のヴィジュアルで構成しているという。ある種、ドキュメンタリー映像などに感じられる古さを念頭においたのか、フィルムの色調や画像などに手が加えられた物であるという。撮影はロシアのサンプトペテルグ。アカデミー賞に今年ノミネートされたヒトラーを描いた「ダウンフォール」も撮影場所は同じだった。
とはいえ、戦後処理に明け暮れる日本。天皇の居場所である皇居、また、焼夷弾攻撃で荒廃した焼け跡の模様なども再現されている、というが、時折りこの映画の中には幻想的な場面も挿入されているという。
イッセイ尾形は、数年前に天皇の姿に扮したポラロイドをロシアのソクーロフに送っていたという。それが2年前にソクロフ自身から返事を貰い、その後に出来上がった日本語と英語による台本を目にした時の興奮を記者に語っている。役者であれば、まずはそうだろう。(2005年/製作国ロシア・イタリア・フランス/日本公開2006年8月5日)
―役の影響を考えたのは?
「ロシアに渡り、マッカーサーとの対面シーンのリハーサルをやりました。天皇陛下が『原爆を落としたのはお前たちだろう?』と英語で問う場面があり、天皇の映画を撮るというのはこういうことなんだ、と実感が出てきました。帰国後、いろんな人から“妨害がある”とか“消されちゃうよ”とか言われ、初めて恐怖を感じました」
―役を降りようとは?
「事務所のスタッフと相談しましたが、起こるかどうか分からないことを悩むのはどうかと考えました。僕個人のことと、仕事のことは分けて考え、むしろ、この仕事に誇りを持って、全力で臨もうと考えました。実際、脅迫はありませんでした」
「本や写真集は読みましたが、あまり役立たなかった。衣装を着て、防空壕(ごう)のセット内に入り、息苦しさを感じた。人間としての当たり前の反応を感じながら、演じていきました」
―防空壕のセットは監督の想像なのですか?
「いえ、実際に資料が残っているそうで、監督は写真も見せてくれました。御前会議も事実に基づいています。監督は相当、下調べをしていました」
―一方、史実と違うという指摘もあります。
「ええ、(終戦間際の御前会議で)昭和天皇が明治天皇の歌を朗読する場面がありますが、実際は開戦のときに読まれました。この映画はこれまで誰も知らなかったこと、記録になかったことを、監督が芸術家として想像をはせて描いたもの。僕自身も天皇陛下をチャーミングな方に見せたいと思い、演じました」
―口を動かしたり、「あ、そう」との口ぐせをまねていますが。
「口については監督からは開けていてほしい、という指示だけはありました。天皇陛下は常に周囲からは見られている存在です。まゆを上げたり、下げたりすれば、意味が出てしまう。なるべく、表情に感情を出さないように過ごされていたと思います。それが口に出たのではないか、と指摘された外国のプレスの方もいました。まねというつもりはありません」
「劇中で陛下は自分を神とあがめることを否定します。一人の人間が『自分は人間である』と宣言する。なんて悲しい、なんてナンセンスなんだ、と思いました。これを世界中で唯一、背負わされた人間が昭和天皇。あの大変な時期に、権力の頂点に立たれた。これは想像を絶することです」
―会見では「見ていない人と同じ土俵に立ちたくない」と話しました。
「言いたかったのは、とにかく見てほしい、ということ。見ていただかないことには、映画の意図することは何も伝わらない。日本公開は難しそうですが、正直、理解できません。今後、海外の映画館や映画祭では上映されるので、日本の方も見てほしいです」(スポーツ報知 聞き手・平辻哲也)
▲Trailer
▲Official site
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「太陽」の画像をクリックで公式サイトに変わります。
●Directer&Screenwriter:Aleksandr Sokurov アレクサンドル・ソクーロフ
●Cast:Issei Ogata イッセイ尾形 Shiro Sano 佐野史郎 Kaori Momoi 桃井かおり Robert Dawson ロバート・ドーソン
★追加:第13回サンクトペテルブルク映画祭グランプリ受賞(6月29日)
下記、さとしさんより朗報が入りました。さとしさん、UKですね。日本では扱わないのかアマゾンに尋ねてみますか。。。。にしてもこのパッケージ、これは下に貼っておきますね。有難うございます!
★8月5日東京封切の後に全国を巡回。熊本は秋、Denkikan上映。
- アレクサンドル・ニコラエヴィチ ソクーロフ, 前田 英樹, 児島 宏子
- ソクーロフとの対話―魂の声、物質の夢
- アレクサンドル ソクーロフ, Aleksander Sokurov
- 映画『太陽』オフィシャルブック
- A.ソクーロフ, 島尾 ミホ, 吉増 剛造, 児島 宏子
- ドルチェ-優しく―映像と言語、新たな出会い
- みや こうせい
- アレクサンドル・ソクーロフ