こんにちは、菓子酢ウーロンです。
第4回の「菓子酢ウーロン」は、赤坂にあるのバー『バンブ』編です。

一ツ木通りから、ものすごくわかりにくい路地を少し入ると、京風の民家のような小さな建物がある。
そこがバー『バンブ』である。
カウンターのみ10席程度の店で、誰かをふらっと連れて行ったら、
「へえ~、こんな店知ってるんだ!」と必ず感心される店だ。

後で知ったことだが、どうやらマスターが京都出身らしい。
京都出身というと、はんなりとした印象を抱くかもしれないが、
私的には「コッテコテの関西人」というイメージだ。
バーテンとしての腕はいいみたいだし、かなりのこだわりを持っているのはよくわかるが、
1つ質問をしたら、60倍くらいのマシンガントークが返ってくる。

上等なマシンガンを入念に整備している人にしか撃てない、
流暢で、絶え間がなく、独善的かつ破壊力満点の連射の雨だ。

「あぁ マシンガンで撃たれるとは、こういう感じなんだろうなぁ・・・」
とリアルに体感できる殺人トークである。
そういうのが好きな人には、とてもオススメだ。
(そういうのが好きな人って、どんな人だろう・・・・)


こだわっているだけあって、カシスウーロンもひと味違う。

なんと、注文を受けてから、お湯を沸かしてウーロン茶を煮出すのだ。
なぜそんな方法を採るのかについても詳細な説明をしてくれたが、残念ながらすべて忘れてしまった。
マシンガンで撃たれ、遠のく意識のなかで「とにかく、あなたはこだわっているのねぇ・・・」と感じるのが精一杯だった。

こだわっているのはいい。
だが、出てくるのが遅いのは困る。
別に早く飲みたいわけではないが、一緒にいる人を待たせるのは非常に心苦しいのだ。
実際、「お先にどうぞ」と言っても、「まあ、最初の乾杯ぐらいは・・・」なんて待たれてしまうこともけっこうある。

私以外の全員がビールだったりすると、もう最悪だ。
ビールはすぐに出てくるし、時間が経つほどにどんどんアワがなくなっていく。
ビール党によると、キンキンに冷えていて、アワのバランスが絶妙なビールほど最高なものはないらしい。
カシスウーロン風情が、そんな最高の瞬間を邪魔するのは本当に申し訳ない。
しかし、私にできることは何もないのだ。

目の前では、小さなコンロのヤカンを乗せて、カチッ、カチッと火をつけようとしている。
そんなときに限って、なかなか火がつかなかったりして、余計にイライラする。

「おいおい、ウーロン茶なんて何でもいいんだよ」と心の底から言いたいが、
こだわりのマシンガンにそんなことを言えるはずもない。



そう言えば、さまぁ~ずの大竹もテレビで似たような話をしていた。
自分の注文したものだけが、なかなか出てこなかったり、忘れられたりするというのだ。

考えてみると、けっこう私もそのクチかもしれない。
ウーロン茶を煮出すのは例外中の例外としても、私の料理だけなかなか出てこなかったり、
私が並んだ列だけが、一向に進まないという経験は案外多い。

スーパーのレジで、「おっ、ここは空いてるな」と思って並んでみたら、
『研修生』というバッチをつけた店員で、鬼のように手際が悪かったりする。
商品のバーコードを読み取るのがうまく行かず、何度もトライした挙げ句、
訳のわからない番号を打ち出したりする。

「いやいや、絶対バーコードの問題じゃないって」
「おれにやらせてみろよ!」と本気で言いたくなる。

コンビニの店員にいたっては、すべての商品を小さめの袋にぴったり入れたいらしく、
えらく時間をかけて、入れ方を調整している。

「おいおい、おまえのパズルの時間じゃないんだ」
「もっと、大きい袋にざくっと入れろよ!」と言いたいが、
まあ、口に出すほどでもないので、黙ったままパズルのチャレンジタイムにつき合っている。

人をさんざんつき合わせておいて、ぴったり入るとどこか誇らしげに商品を差し出してくる。

せめてもの抵抗にと「ぴったり入れられたって、こっちは嬉しくも何ともないんだよ!」
「むしろ、持ちにくいだけなんだよ!」という熱い思いを表情に込めるが、
肝心の店員はまるで見ていなかったりする。

私の怒りの表情だけが、魂の抜け殻みたいにふわふわと空中をさまよい、消えていく。

やり場のない怒りとは、まさにこのことだ。 
きっと、私のような人間があと30年もすると、新聞の投書欄にせっせと手紙を送ったりするのだろう。
そう思うと、そこはかとない寂しさが込み上げてくる。
コンビニからの帰り道、十分な持ち手がなくなるほどパンパンに膨らんだ袋を持ちながら、
「ああ、おれって細かい人間なんだな~」と妙に自己嫌悪に陥る。

たしかに、私は「すべらない話」より「ゆるせない話」を楽しみにしている哀しい生き物だ。
でもきっと、世の中には私のような哀しい生き物がたくさんいるはずだ。 

哀しい生き物同士、どこかでひっそりと、おいしいお酒を飲み交わしたい。
適度に居心地がよく、適度にしかこだわりのないお店で。


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