こんにちは 菓子酢ウーロンです。
 第6回「カシスウー論」は、青山の『がらり』編です。

 南青山3丁目の交差点から、千駄ヶ谷方面に進み、
 原宿団地北という交差点を左に曲がって、しばらく行ったあたりにあるお店です。
 例によって、非常にわかりにくいのですが、
 わかりにくさもお店の価値を高める要因の一つなので、まあそれは仕方ないでしょう。

 

 『がらり』はとにかく料理がおいしい。
 刺身もおいしいし、ローストビーフが入ったサラダも絶品だった。
 もともとは先輩のジン(第一回カシスウー論に登場)につれてきてもらった店だが、
 その後も何度か使わせてもらっている。

 先日も、大学時代から付き合いのある友人と『がらり』のカウンターに座り、
 「一回の飲み代はいくらが妥当か?」という話題で盛り上がった。

 条件はこうだ。
 一軒目に行く店で、適度に食事をして、適度に飲む。
 コース料理を食べるみたいにがっつりとした食事はしないが、
「それなりに、腹は減ってるでしょ?」なんて言いながら、料理もそこそこ注文する。
 そして、アホみたいには飲まない。

 さて、いくらでしょう?


 私たちが出した結論は、「一人あたり5000円~6000円」というものだった。
 高級店とはいかないが、学生が大挙してやってくるチェーン店よりはハイレベルという感じの店が想定されている。

 ちなみに、その日のお会計は一人7000円だった。
 安くはないが、驚くような話でもない。


 そんなことを友人と話しながら、
 「おれたちも歳をとったなぁ~」と感慨にふけった。
 学生のころ、食事と言えば上限1000円、飲みに行ったら2500円が相場だった。


 「一生、取り替えません!」みたいな救いようのない油で揚げたから揚げと、
 「輪ゴムをたくさん炒めてみました!」みたいな、パサパサのやきそばがあれば、心の底から楽しめた時代だ。


 「ローストビーフの入ったサラダがさぁ・・・」なんて、
 えらそうなことを言うヤツは誰もいなかった。


 別の友人(福島県出身の男)なんて、地元の友だちが東京へ遊びに来たとき、
 「東京で一番オシャレな店を紹介してやる」と言って、イタリアン・トマト(通称・イタトマ)に連れて行った。
 (もちろん、ギャグで連れて行ったわけではない)
 
 連れて行かれた連中も、「さすが東京だね」なんてコメントしていたというから、
 涙がでるほど、無邪気で、やさしい時代だったのだ。


 大学一年のとき、私は初デートで『壁の穴』(新宿店)へ行ったのを強烈に覚えている。
 いまはもうなくなってしまったが、新宿通りの『壁の穴』と言えば、オシャレな店の象徴的存在だった。(もちろん、当時の話だ)
 彼女と私は、それぞれパスタを頼み、安いワインを少しだけ飲んだ。
 当たり前のようにワインリストを渡されてしまったので、頼むしかなかったのだ。


 新宿の『壁の穴』を覚えている人もいるだろうか。
 緑の壁が印象的で、通りに面したガラス窓からは店内がよく見える。
 テーブルには薄いピンクのクロスがかかっていて、教科書どおりにキャンドルライトが揺れている。
 デートにはぴったりのお店だった。


 しかし、私が強烈に覚えている理由は、もっと別のところにある。

 パスタを食べて、少しだけワインを飲んだ結果、会計は2人合計で7000円を超えていた。
 食事は1000円、飲んだら2500円の時代である。


 私は目玉が飛び出そうになった。
 しかし、初デートから目玉が飛び出てしまったら、その先はない。

 私は必死で平静を装って、なんとかその料金を払った。
 財布は空っぽになったが、払えただけマシである。

 間違っても、「足りなかったらカードで払えばいいじゃない」なんて言わないで欲しい。
 「パンがなければ、ケーキを食べればいいじゃない」的問題発言だ。

 その数年後に、丸井のカードをつくってローン地獄を経験するのだが、それはまだ先の話だ。
 

 いま思えば、『壁の穴』なんて背伸びをしないで、
 東京で一番オシャレな店にしておけばよかったのかもしれない。

 
 『壁の穴』新宿店にリベンジしたいところだが、緑の壁のあの店はもうない。
 良くも悪くも、それだけの時間が流れたということだ。



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  菓子巣ウーロンの『カシスウー論』
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