『カシスウー論』 ~勤勉で、統制の取れた「ドSなサッカー」・・・編~
こんにちは イイダテツヤです。
第110回『カシスウー論』は、勤勉で、統制の取れた「ドSなサッカー」・・・編」です。
はじめに言っておきますが、今回は長々とサッカーの話をするので、興味のない人には退屈かもしれません。
年に数回、これをやってしまうのですが、そんなにたくさんはやらないので、どうかご容赦ください。
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やっぱりバルセロナはすごかった。
あえて私が言うまでもないけれど、本当にすごかった。
何人かのテレビの解説者たちも言っていたが、「あんまりすごさを感じさせないすごさ」がバルセロナにはある。
淡々といつものようにサッカーをやっていたら、20分か、30分に一度くらいは点が入り、終わってみれば「3対0」「4対0」になっているという感じだ。
やられる方にしてみれば、なんとも嫌なチームだろう。
「オレは今、戦ってるんだ!」という強い感触を得られないうちになんとなくやられてしまうのだから、なんとも言えない気持ちのまま呆然としてしまうだろう。
たまたま私はクラブワールドカップの準決勝をスタジアムで見ることができた。
メッシやイニエスタを生で見られることにももちろん興奮したのだが、テレビカメラに写らない部分も含め、バルセロナというチームの動きを見られたのが、じつの興味深かった。
バルセロナというチームは、ディフェンスの徹底ぶりが想像以上にすごかった。
誰もが知るように、バルセロナの代名詞と言えばポゼッション。
パスをつなぎ、ボールの保有率を高め、じわじわと攻撃をしていくというスタイルだ。
だから、当然パス回しはものすごくうまい。
とはいえ、相手にボールを奪われることもある。
どんなチームだって90分間ボールをキープすることはできない。
しかし、バルセロナのサッカー(特に中盤のディフェンス)を見ていると、「1分たりとも相手にボールをキープさせない」という意識でプレイしているように見えるのだ。
彼らの場合、自分たちがボールを持っているときは4~5人の選手が動き、パスコースをつくる。
言ってみれば、それが基本の形だ。
逆に言うと、残り4、5人の選手は止まっていたり、たらたら歩いていたりする。
ところが、ひとたび相手にボールを奪われると、全員の意識がキュッとディフェンスモードに入り、プレッシャーをかけ始める。
この瞬間の統一感が本当にすごい。
ボールの近くにいる1~2人の選手はすかさずボールにアタックし、その次に近い選手はパスコースを切りながら、次のゾーンにプレッシャーをかける。
そして、もう一つ遠い選手は動いたことで空いたスペースを埋め、逆サイドの選手はバランスを考えながらポジションを移動する。
これら一連の動きが、一瞬にして、まるで機械のように始まるのだ。
昔からあるサッカーやホッケーの盤ゲームに、1つのレバーを動かすと3~4人の選手が同時に動くタイプのものがあるが、まさにあんなイメージだ。
「ボールを奪われた」というスイッチが入ると、みんなが同じ意志をもって一斉に動き出すのだ。
そんなプレッシャーをかけられた方はたまらない。
個人技や近くの選手とのパス交換によって1人、2人は交わせたとしても、次々と襲ってくるプレッシャーの連鎖を逃れ、広いスペースに逃げるのは相当に難しい。
するとボールを後ろに戻すしかないのだが、バルセロナのプレッシャーは範囲が広く、バックパスだからと言って許してはくれない。
それもそのはずで、もともと彼らは「危険なゾーンからボールを押し戻そう」なんてこれっぽちも考えていないのだ。
ボールを奪い返し、自分たちのポゼッションサッカーを再開することが目的なのだから、どこでボールを回そうがおかまいなしにプレッシャーをかけてくる。
そんなプレッシャーをかけ続けていたら、選手はすぐに疲れてしまうのだが、バルセロナの場合は違う。
相手にボールを奪われる回数が極端に少ない上に、自分たちのボールになったら一気にクールダウンするからだ。
試合の中で数回起こる「緊急事態」には全員で本気で対応し、その危機が去ったら、自分たちの「のんびりサッカー」を再開する。
そうやって常にゲームを支配するのだ。
「のんびりサッカー」と言ってもパス回しは恐ろしくうまいので、相手としてはボールを簡単に奪うことはできない。
バルセロナの選手たちに「攻撃はしなくていいので、ボール回しに専念してくれ」と言ったら、いつまででも続けてしまうだろう。
さらにバルセロナの恐ろしいところは、自分たちはのんびりムードでも、相手にはのんびりさせないというところだ。
相手にしたら、ここが辛い。
そもそもサッカーの攻撃にはスピードアップのタイミングというものがある。
「さあ、いくぞ」というスピードのあるパス(あるいはドリブル)が始まって、そこから一気にゴールを奪いに行くというポイントだ。
もちろんバルセロナにも「いくぞ」というスイッチとなる速いパスやドリブルがある。
ただしこのチームの場合、「いくぞ!」と見せかけて「いかな~い」みたいな、イヤラシイ揺さぶりを何度もかけてくるのだ。
シャビからメッシに鋭いパスが入ったかと思えば、ワンタッチでポーンと返して、何事もなかったかのように「のんびりパス回し」に戻る。
あるいは、イニエスタがドリブルをしかけて、ゴール前まで入ってくるかと思えば、クルっと方向転換をして、またパス回しに戻すというようなことを、ちょこちょこ、ちょこちょこ、はさんでくるのだ。
これこそまさに「ドSのサッカー」。
そんなオオカミ少年みたいなことを繰り返されたとしても、なんせ相手はシャビに、メッシに、イニエスタだから、相手チームとしては「どうせウソだろ!」放っておくわけにはいかない。
いちいち本気で対応しなければ、「もし本当だったとき」に完璧にやられてしまうからだ。
そう思って本気で対応しようとすると、やはりあっさりいなされる。
「何だよ、また来ないのかよ!」「ああ、ボールが取れそうだったのに、取れなかった」というストレスはきっと相当キツイはずだ。
そんなことを永遠に繰り返されるので、相手ディフェンスは精神的にも体力的にも疲れてしまい、ジワジワと闘争心をもなくしてしまう。
あるいは、イライラして、冷静な集中力を奪われてしまう。
そんな状況になれば、どうしたって小さな隙ができてしまう。
90分間ドSの拷問に耐え続け、冷静に集中力を保ち続けることなど、ほとんど不可能だからだ。
ほんの一瞬集中力が途切れ、足が止まってしまうのだ。
その瞬間をシャビやイニエスタは見逃さない。
そして、一瞬でも対応が遅れればメッシを止められる選手など世界中に一人もいない。
そうやって(見た目としては、あっさりと)点を入れてしまう。
それがバルセロナというチームだ。
恐ろしいチームだ。
得点シーンはそれなりに華麗だし、スタジアムもテレビの前も大盛り上がりだが、そこに到る「勤勉で、統制の取れたディフェンス」と「ドSなパス回し」こそがバルセロナの土台。
そして、その土台の上にメッシというスペシャルな選手が立ち、バルセロナは完璧なチームとなる。
とにかくすごいチームなのだ。
過去にもすごいチームはあったけれど、こんな「ドSな凄み」を持ったチームは初めてなんじゃないかと思う。
ネイマールがグアルディオラに「僕も連れて行って欲しい」とバルサ入りを直訴したという報道もあるが、その気持ちはわかるねぇ。
ネイマールと言えば、プジョルにぴったりマークされながら、決して離れようとせず、勝負に挑んでいるところは清々しかったね。
そんなドMなネイマールが、私はけっこう好きになったけど、ドSなチームに入るのは、正直どうかなぁ・・・・・
