『カシスウー論』 ~「決まっている」というクールで、スマートな生き方・・・編~

 こんにちは イイダテツヤです。 
 第106回『カシスウー論』は「決まっている」というクールで、スマートな生き方・・・編」です。

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 知り合いに、一年365日一日も欠かさずカレーを食べている男がいる。
 「365日カレー」というブログもやっているので、興味のある人はぜひ覗いてみてください。

 たしか4、5年は続けているはずだから、その継続力たるや本当にすごい。
彼の血管にはカレーが流れているといっても決して過言ではない。

 その継続力は文句なしに賞賛に値するのだが、それとは少し違う部分で私は彼に憧れている。

 あるとき私が「毎日カレーを食べ続けるなんて、本当にすごいね」と彼に言ったら、「何を食べるか考えなくていいっていうのも楽なもんですよ」とさらりと言われたことがある。

 そのやりとり自体、本人は覚えていないかもしれないが、それはそれでなかなか深い真理をついた答えだった。

 どちらかと言うと私は優柔不断なほうで、一人でふらふらしているときでも「今日は何を食べようかな」とけっこう長く悩んでしまう。

 街中を散歩するのが私の唯一と言ってもいいくらいの趣味なので、たとえば新宿で打ち合わせを終えた後、そのままふらふらと飯田橋まで歩き、腹が減ったらご飯を食べるというパターンをけっこうやる。

 ただしこのとき、「何を食べるか」がなかなか決まらないのだ。

 ひどいときは、ものすごく空腹なのに「ああ、どうしようかな・・・」と思いながら、その後1時間半くらい歩き続けてしまうこともある。
 歩いている途中でおいしそうなラーメン屋や洋食屋を見つけても、「いやもっと先に、いまの自分にぴったりくるお店がるかもしれない」と思い、どんどんやり過ごしてしまうのだ。

 空腹なのだから、さっさと入って、さくっと食べればいいのに、なぜだかそれができない。
 つまり「決められない」のだ。

 その結果、お店がほとんどないエリアに出てきてしまって、もう耐えきれず吉野家に入るなんてこともめずらしくない。

 吉野屋が嫌いというわけではないけれど(いや、むしろ好きなほうだけど)、ひたすら空腹を抱えた挙げ句に吉野屋の牛丼というのは、やっぱりちょっとせつないものがある。

 結局、私は吉野屋のカウンターに座り「ああ、なんであのときにカレーを食べておかなかったんだろう」「どうせなら、あそこでラーメンを食べればよかった」とけっこう深く後悔するのだ。

 その点「オレはカレーを食べる」と決まっていれば、決断は早いだろうし、後悔も少ないはずだ。
 カレーを食べた後、ものすごくおいしそうなラーメン屋を発見したとしても、「毎日カレーを食べる」という使命を背負っているのだから、ラーメン屋なんて関係ない。

 すまんな、ラーメン屋、
 あいにくだがオレは「365日ラーメンを食べる人間」ではないのだ。

 とニヒルに笑い、通り過ぎればいいだけだ。

 なんてクールで、スマートなのだろう。
 「決まっている」というのは本当にカッコイイのだ。

 私の古い友人に、夏はジーパンにTシャツ、寒くなったらそれに革ジャンを羽織るという男がいるのだが、これもまたクールな潔さだ。
 夏の終わり、秋にさしかかったときはTシャツ一枚で寒そうだし、冬が終わり、ポカポカとした陽気の頃には革ジャンは相当暑そうだが、そんなことは気にしない。

 中間季節? オレには関係ない話さ
 オレにとって服というのは、Tシャツと革ジャンのことさ

 と実際彼が言ったわけではないが、その生き様が語っている。

 ちなみに、さまぁーずの大竹は、スニーカーと言えばナイキのエアフォースワン、白の無地と決まっているらしい。
土田晃之はアディダスのものばっかり着ているし、劇団ひとりの私服といえばバーバリーと決まっているらしい。

 その「決まっている感」に私はどうも憧れてしまう。

 決まってるって、なんかカッコイイと思いませんか。
 クールで、スマートで、スピーディで、ブレがない。そしてなぜだかちょっと優しい。
 まさにイイ男の条件だ。


 さて、今年ももう年末。
 書店や文具売り場へ行くと、来年の手帳がズラリと並んでいる。

 つい先日、神田三省堂の手帳売り場で例によって私が「手帳、どうしようかな・・・」と迷っていると、三十歳くらいの女性が颯爽とやってきて、わずか二秒で手帳を決め、さっさとレジへと向かってしまった。 

 一瞬たりとも立ち止まることなく、まるでマラソンランナーが給水所で水をとるみたいに彼女は来年の手帳を決めてしまったのだ。
 やはりイイ女も「決まっている」。

 なんてカッコイイんだ。

 そんな彼女を目の当たりにして、私も迷わず今年と同じ手帳にすることに決めた。
 そして「この先、一生この手帳を使い続けてやる」と心に決めたのであった。

 まさに、私の「決まっている人生」の第一歩が始まるのだ。
 そう思って売り場を探していたのだが、三省堂に私が使っている手帳は売っていなかった。

 おいおい、私のこの思いをどうしてくれるんだよ・・・・
 私のクールで、スマートで、スピーディで、ブレのない人生の第一歩をどうしてくれるんだよ・・・
 と思いながら私は家に帰り、ネットで注文することにした。

 こういうのって、なんかスマートさに欠けるよねぇ・・・・・

 まあ、ちょうどいいから、エチオピアでカレーでも食べて帰ろう・・・・