『カシスウー論』 ~秋葉原の 『アメリカンダイナー バー&グリル』編~


 こんにちは イイダテツヤです。 
 第50回『カシスウー論』は、秋葉原にある『アメリカンダイナー バー&グリル』編です。

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 秋葉原駅の電気街口を出て、右前方を見上げると、
 「秋葉原クロスフィールド」という大きなビルがそびえ立っている。

 その二階に『アメリカンダイナー バー&グリル』はあるので、迷う人はまずいないだろう。
 名前の通り、アメリカンなレストラン・バーで、ステーキとか、ハンバーグなど「ザ・アメリカン」なメニューを
 ゴテゴテした環境のなかで食べるというお店だ。

 ネオン管がピカピカしていて、ゆったりとしたソファは真っ赤。
 店の内装を決めるとき、「A案とB案だったら、どっちが下品かな?」と話し合って決めたみたいな感じなので、
 当然落ち着きはしないが、まあ、それだけテンションがあがると言えなくもない。

 こんな書き方をすると、徹底的に悪口を言っているみたいだが、
 そんなアホみたいなアメリカンレストランも、たまには悪くない。ホントに。

 たしかに、たまには悪くないのだが、今回の私の場合は「その、たまに」ではなかったようで、
 待ち合わせよりけっこう早く着いてしまったため、
 このハイテンションかつゴテゴテしたアメリカンな店で、一人雑誌を読む羽目になってしまった。

 別に、店が悪いわけでも、待ち合わせをしていた友人が悪いわけでもないんだけどさ・・・・


 とにかく、そんな状況で、雑誌『宣伝会議』を読んでいたら、
 「携帯電話ユーザーは、そのほとんどを暇つぶしに使っている」という記事が載っていた。

 マーケティングの専門家が書いた記事のようだが、
 そんなことをわざわざ言われなくても、電車の中でケータイをいじっている人を見れば、
 そのくらいのことはだいたいわかる。

 そうはいっても、改めて「お前らがやってることは、すべて暇つぶしなんだよ!」と言われると、
 「なるほど、そういうものかもなぁ」と妙に納得してしまう。

 考えてみれば、「暇つぶしから中毒へ」というのは、現代における一つのトレンドである。

 携帯電話そものもが「暇つぶしから中毒へ」進行しているし、
 mixiだって、twitterだって、結局みんな「暇つぶしから中毒へ」移行しているものたちだ。

 一日中家でダラダラしている人が、携帯電話をいじっているのも暇つぶしだし、
 移動時間やちょっとした待ち時間に、「時間の有効活用」なんて都合のいい名前をつけて、
 せっせと「渋谷なう」とつぶやいている人も、結局は暇つぶしから中毒になっているタイプだ。

 もちろん私も例外ではなく、
 普段、ほとんどの時間を家で原稿を書いているため、いつでもすぐに暇モードに入ってしまい、
mixiを覗いたり、どうでもいいネットニュースを読んでしまったりするのだ。 

 「ああ、アホな時間を過ごしているなぁ」と思うときはまだいいほうで、
 何も考えず、本格的に頭空っぽ状態で、夢遊病者が徘徊するみたいに、
 ネットニュースを次から次へと読んでいたりするのだ。

 怖いねぇ。これは紛れもなく中毒だ。
 
 この「ネット系暇つぶし」に多くの時間を侵略され、中毒化していくのは、
 じつはものすごく危険なことなのだ。

 「ネット系暇つぶし」には、いつでも、簡単にアクセスできるという手軽さと、
 多少なりとも人とつながっているという微妙な安心感がある。

 これが甘い汁となって、私たちはペロペロとなめてしまい、
 気がついたときには、目の下に真っ黒なクマが浮き出た、立派な中毒患者になっている。

 怖いですねぇ。

 職業柄、「出版不況がどうのこうの」という話をよく耳にするが、
 そりゃあ「ネット系暇つぶし」(通称・ペロペロ)に比べたら、本や雑誌が太刀打ちできるわけがない。
 機関銃相手に竹やりで勝負を挑むようなもので、
 「このやろう!」と言い終わらないうちに、ダダダダと連射されて終わりである。

 こんなことを言うと、「でも、本が好きな人は、変わらずに本を読むでしょう」と言う人がいる。
 たしかに、本が好きな人は、変わらずに本を読むかもしれない。

 しかし、「好きだからやる」というレベルでは、文化としてはどんどん衰退していってしまうのだ。

 本が好きだから読むとか、映画が好きだから観に行くというのは、
 オペレッタが好きだから観に行くとか、陶芸の世界がたまらないからカルチャースクールへ通うというのと、
 基本的には同じである。

 それぞれ趣味としてはすばらしいが、余程の熱意を持って続けない限り、だんだんと疎遠になり、
 趣味人口は減り続け、結果として「お手軽、安心のネット系暇つぶし」に侵略されてしまうのだ。

 だいたい人は、やり続けているから楽しさを感じるわけで、
 その行為から離れてしまうと、楽しさも一緒に忘れてしまうのだ。

 そうやって、本も、映画も、海外旅行も、車の運転も、すべてが衰退していって、
 国民全員がケータイ片手に、終わりなきペロペロに没頭し始める。

 お手軽、安心のペロペロ軍団を相手に、善戦しているのは「鉄道ヲタク系戦士たち」くらいのものだ。
 彼らは、昔ながらの時刻表を片手に、日本の全駅で下車するという、途方もなく面倒な行動を続けている。

 おそらく途中で、twitterでつぶやくというペロペロ行為もしているだろうが、
 まあ、それなりに善戦してはいるだろう。

 大多数を占める「ペロペロオンリー種」よりは、「ペロペロ+途中下車」のほうがはるかに健全で、人間らしい。

 私たちはもっと「面倒な暇つぶし」を愛し(別に彼らは暇つぶしじゃないだろうけど)、
 ペロペロ軍団の侵略に対抗していかねければならないのだ。

 そんなわけで、私の頭に最初に思い浮かんだのは、やはり「手作りバウムクーヘン」だ。

「どこが、やはりなんだ!」とツッコミを入れたい人のために解説を加えると、
 一層、一層をくるくると回しながら焼いていくあの面倒くささは、
 「面倒な暇つぶし」の象徴とも呼ぶべき行為なのだ。

 以前、タモリ倶楽部で手作りバウムクーヘンをやっていたが、噂に違わず、かなり面倒くさそうだった。
 あの手の面倒を、最後までちまちまやっていけるのは、やはりタモリだけだった。

 さあ、「ペロペロはもうウンザリなんだ!」という同士諸君、 
 いまはまだちょっと寒いけど、
 もう少し暖かくなったら、多摩川か、荒川の土手あたりで、バウムクーヘンをくるくる焼こうではないか!

 生地をつけては焼き、焼いてはまた生地をつけるという、
 果てしなき「面倒への旅」へ出発しようではないか!


 そして、バウムクーヘンをつくっている現場では、
 まかり間違っても、「私、twitterで実況中継するね」とか言うんじゃないぞ!
 
 このペロペロがっ!





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