『カシスウー論』 ~丸の内のカフェ・レストラン『ヴィロン』編~
こんにちは 菓子酢ウーロンです。
第23回『カシスウー論』は、東京・丸の内にあるカフェ・レストラン『ヴィロン』編です。
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東京駅・丸の内口を出て、もっとも線路に近い道を左方向へ3、4分進むと、
カフェというか、レストランというか、とにかくそんな風情の『ヴィロン』という名の店が見えてくる。
歩道に向かってテラス席が張り出していて、「素敵な午後のひとときでしょ!」といわんばかりに
オシャレな雰囲気を振りまいているので、すぐに見つけることができるはずだ。
表参道あたりによくありそうな店構えだが、場所が丸の内になってしまうと、
まあ、何と言うか、そうそうファッショナブルにはなりきれない。
別に『ヴィロン』が悪いというわけではなく、表参道と丸の内では、
人も、空気も、ファッションも、言葉も、恋人たちのあり方も違うので、同じにはならないということだ。
(別に、同じになんかなる必要はない)
『ヴィロン』は、正確には『ブラッセリー ヴィロン』というらしい。
「ブラッセリーって、いったいなんだ?」と気になってインターネットで調べてみると、
「教えてgoo」などのコーナーで、
「ビストロとブラッセリーの違いを教えてください」と尋ねている人がけっこういた。
まず、驚いたのが「ブラッセリー」が「ビストロ」に似た意味だということをみんなが知っているということだ。
世の中には、自分がまるで知らないことを、当たり前のように知っている人がたくさんいる。
「教えてgoo」はそんな人生の教訓をも教えてくれる。
まあ、そんなことはどうでもいいとして、サイト上の返答を読むと、
ビストロとは、気軽に入れる小さなカフェ・レストランで、
ブラッセリーは、それよりももう少し大きなカフェ・レストランだそうです。
なんじゃそりゃ。
「大きい馬は馬ですが、小さい馬はポニーです」みたいなあいまいな区分けだが、それが事実なら仕方がない。
「呼びたいように呼べばいい」と私は個人的に解釈することにした。
そうなってくると、わざわざ「ブラッセリー」なんて言うのは面倒なので、
気軽に入れる小さなカフェ・レストランを見つけて、どうしてもフランス語で呼ばなければならない場合は、
私は迷わずビストロと呼ぶ。
そのほうが絶対わかりやすいでしょ。
でももし、年下の彼女から「あなたって、物知りね」と尊敬されたい人は、「ブラッセリー」と呼べばいいだろう。
(そんなことで尊敬されるなら・・・ということだけど)
(そして、そんなことくらいで尊敬する彼女って、なんだかバカっぽいけど・・・)
(さらには、バカっぽい彼女に尊敬されて喜んでいる男って、なんだかミジメだけど・・・)
何はともあれ、『ヴィロン』の店内はヨーロピアンで素敵な感じだった。
入り口付近には、おいしそうなパンが売っていて、それを店内で食べることもできる。
私は午後の中途半端な時間に入ったので、パンは食べず、
ノルマをクリアするみたいにカシスウーロンを一杯だけ飲んだ。
天気はそれほどよくなかったが、ほどよく涼しかったので、あえてテラス席に座らせてもらった。
通りを歩く人にチラチラ見られるのは、多少気になるが、私はテラス席がけっこう好きなのだ。
どうでもいいことをぼぉ~と考えるなら、店内よりも断然テラス席がいい。
そして、たいていの場合、私はどうでもいいことをぼぉ~と考えているので、
何かにつけてテラス席のほうが好都合なのだ。(もちろん、季節は選びます)
といって、丸の内の『ヴィロン』の場合、目の前に素敵な光景は何もないないので、
過度な期待はしないでください。
視線のすぐ先にはJRの線路が何本も走っているし、手前の道は「はとバス」の集合場所になっている。
あの「はとバス」は、こんな東京のど真ん中からスタートしていたのだ。
それも驚きだが、「はとバス」の集合場所がものすごくショボイのにもっと驚いた。
黄色の車体に、赤字で「HATO BUS」と書いてある例のバスが何台も並んでいて、
「これから東京中の名所をまわってやるぞ!」という活気に満ちているかと思えば、
どちらかというと、時代遅れの観光地みたいな寂しさをたたえている。
そんな物憂げな「はとバス」の車列を見ながら、
ぼんやりと過ごすには『ヴィロン』のテラス席はもってこいである。
とりあえず、私も「はとバス」について、ひとしきり思いを馳せてみた。
「考えてみたら、私は『はとバス』に乗ったことがないなぁ~」とか、
「平日の昼間からはとバスに乗る人は、どんな日常を送っているんだろう・・・」とか、
「なぜ、はとバスは『はと』なんて動物をチョイスしたのだろう・・・・」
「私だったら、もう少しカッコイイとか、カワイイ動物を選ぶけどな・・・」
「もしかしたら、平和の象徴と何か関係があるのかな・・・」という具合に、うだうだ考えるのだ。
恐ろしく非生産的な時間だが、目の前に「はとバス」が並んでいたら、「はとバス」について考えるしかないでしょう。
そりゃあ、並んでいるのが「猫バス」だったら、私だって猫についてとか、メイちゃんについてとか、
宮崎駿のあごヒゲについて考える。
それが生産的かどうかはわからないが、いずれにしても現実は「はとバス」なんだからどうしようもない。
そんなことをぼんやり考えていると、
少し離れた席に若いOL風の女性が2人やってきて、フランス旅行の計画を始めた。
2人で一冊の旅行ガイドを見ながら、なにやら楽しそうに話している。
カフェのテラスで、フランス旅行の計画なんて、なんて健全で、正しい2人なんだ。
フランス旅行といえば、私も一度だけシャンゼリゼ通りのカフェで、お茶を飲んだことがある。
ちょうど『ヴィロン』のテラス席のようなところに座って、パリの日の出を見たのだ。
もう10年以上も前のことだが、アムステルダムから夜行列車に乗り、
早朝のパリに入った私は開店したばかりのカフェの入った。
バックパックを背負い、見るからに汚い格好をしていたので、
店の奥まで入っていくのは気がひけて、テラス席に座ったのだ。
外は寒かったが、左手にはゆっくりと昇る太陽があり、右手の凱旋門を照らしている。
引き締まった朝の空気も心地よくて、なかなか悪くないロケーションだった。
私がイスに座るなり、すぐに白いジャケットを着たウェイターが注文をとりに来た。
「キビキビ動くとは、こういうことさ」という見本のような身のこなしだった。
私が温かいカフェオレを注文すると、
しばらくして、例のウェイターが右手にコーヒーポット、左手にミルクポットを持ってやってきた。
そして、私に一度ニコッと微笑むと、コーヒーとミルクの両方を、同時にカップに注ぎ始めた。
「わざわざ、そんな入れ方しなくても・・・」と私は思ったが、
それが彼の(あるいはパリの、もしくはシャンゼリゼ通りの)やり方ならば、従うほかない。
パリジャンの演出と、シャンゼリゼの朝日を十分に堪能した私は、再び彼を呼んでチェックしてもらった。
値段は、日本円にして約1800円だった。
カフェ・ラ・ミルもびっくりの堂々たる値段である。
パリに来る前のアムステルダムでは、一泊1500円程度の宿に泊まったというのに、
カフェオレ一杯で、2000円(チップ込み)も使ってしまった。
でも、本当のことを言えば、そんな予感をうすうす感じてはいた。
私が入店したときは、ほとんど客がいなかったからわからなかったが、
後に来る人たちのなかで、テラス席に座るのはシックで、ラグジュアリーで、エレガントなビジネスマンばかりだった。
彼らは一様に仕立てのいいスーツを着て、ふんわりとしたカシミヤのマフラーを巻き、
新聞をきっちりと一面から読むような人種だった。
私のようなタイプ(無学で、非生産的で、カジュアルで、貧乏な連中)は、
例外なく、店の奥のカウンターで立ったままコーヒーを飲んでいた。
私が座ったテラス席は、もっとも高級な場所だったのだ。
たぶん、料金は三倍くらい違うんじゃないかと思う。
白ジャケットのウェイターも、ミルクとコーヒーを同時に注ぐパフォーマンスをしながら、
心の中では「東洋人の若造が生意気に」と思っていたことだろう。
そんなどうでもいい思い出に浸っていたら、いつの間にか「はとバス」は一台もいなくなっていた。
きっと、浅草「浅草寺」とか、銀座四丁目とかに行ってしまったのだろう。
テラス席に座ってぼんやりしていると、30分くらいの時間は瞬く間に去っていく。
猫バスに乗って、まったく別の時空に移動してしまったみたいに、ぽっかりと時間が抜け落ちてしまうのだ。
無駄といえば無駄だけど、気持ちのいい時間といえば、そう言えなくもない。
そんな無駄な時間を過ごしたくなったときは、カフェのテラス席がおすすめです。
もちろん、誰もいない砂浜とか、きれいな川べりが最高だけど、そんなところへはなかなか行けないので、
カフェのテラス席でも(その気にされなれれば)十分に代用できます。
これからの季節は、特に気持ちがいいですよ。
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こんにちは 菓子酢ウーロンです。
第23回『カシスウー論』は、東京・丸の内にあるカフェ・レストラン『ヴィロン』編です。
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東京駅・丸の内口を出て、もっとも線路に近い道を左方向へ3、4分進むと、
カフェというか、レストランというか、とにかくそんな風情の『ヴィロン』という名の店が見えてくる。
歩道に向かってテラス席が張り出していて、「素敵な午後のひとときでしょ!」といわんばかりに
オシャレな雰囲気を振りまいているので、すぐに見つけることができるはずだ。
表参道あたりによくありそうな店構えだが、場所が丸の内になってしまうと、
まあ、何と言うか、そうそうファッショナブルにはなりきれない。
別に『ヴィロン』が悪いというわけではなく、表参道と丸の内では、
人も、空気も、ファッションも、言葉も、恋人たちのあり方も違うので、同じにはならないということだ。
(別に、同じになんかなる必要はない)
『ヴィロン』は、正確には『ブラッセリー ヴィロン』というらしい。
「ブラッセリーって、いったいなんだ?」と気になってインターネットで調べてみると、
「教えてgoo」などのコーナーで、
「ビストロとブラッセリーの違いを教えてください」と尋ねている人がけっこういた。
まず、驚いたのが「ブラッセリー」が「ビストロ」に似た意味だということをみんなが知っているということだ。
世の中には、自分がまるで知らないことを、当たり前のように知っている人がたくさんいる。
「教えてgoo」はそんな人生の教訓をも教えてくれる。
まあ、そんなことはどうでもいいとして、サイト上の返答を読むと、
ビストロとは、気軽に入れる小さなカフェ・レストランで、
ブラッセリーは、それよりももう少し大きなカフェ・レストランだそうです。
なんじゃそりゃ。
「大きい馬は馬ですが、小さい馬はポニーです」みたいなあいまいな区分けだが、それが事実なら仕方がない。
「呼びたいように呼べばいい」と私は個人的に解釈することにした。
そうなってくると、わざわざ「ブラッセリー」なんて言うのは面倒なので、
気軽に入れる小さなカフェ・レストランを見つけて、どうしてもフランス語で呼ばなければならない場合は、
私は迷わずビストロと呼ぶ。
そのほうが絶対わかりやすいでしょ。
でももし、年下の彼女から「あなたって、物知りね」と尊敬されたい人は、「ブラッセリー」と呼べばいいだろう。
(そんなことで尊敬されるなら・・・ということだけど)
(そして、そんなことくらいで尊敬する彼女って、なんだかバカっぽいけど・・・)
(さらには、バカっぽい彼女に尊敬されて喜んでいる男って、なんだかミジメだけど・・・)
何はともあれ、『ヴィロン』の店内はヨーロピアンで素敵な感じだった。
入り口付近には、おいしそうなパンが売っていて、それを店内で食べることもできる。
私は午後の中途半端な時間に入ったので、パンは食べず、
ノルマをクリアするみたいにカシスウーロンを一杯だけ飲んだ。
天気はそれほどよくなかったが、ほどよく涼しかったので、あえてテラス席に座らせてもらった。
通りを歩く人にチラチラ見られるのは、多少気になるが、私はテラス席がけっこう好きなのだ。
どうでもいいことをぼぉ~と考えるなら、店内よりも断然テラス席がいい。
そして、たいていの場合、私はどうでもいいことをぼぉ~と考えているので、
何かにつけてテラス席のほうが好都合なのだ。(もちろん、季節は選びます)
といって、丸の内の『ヴィロン』の場合、目の前に素敵な光景は何もないないので、
過度な期待はしないでください。
視線のすぐ先にはJRの線路が何本も走っているし、手前の道は「はとバス」の集合場所になっている。
あの「はとバス」は、こんな東京のど真ん中からスタートしていたのだ。
それも驚きだが、「はとバス」の集合場所がものすごくショボイのにもっと驚いた。
黄色の車体に、赤字で「HATO BUS」と書いてある例のバスが何台も並んでいて、
「これから東京中の名所をまわってやるぞ!」という活気に満ちているかと思えば、
どちらかというと、時代遅れの観光地みたいな寂しさをたたえている。
そんな物憂げな「はとバス」の車列を見ながら、
ぼんやりと過ごすには『ヴィロン』のテラス席はもってこいである。
とりあえず、私も「はとバス」について、ひとしきり思いを馳せてみた。
「考えてみたら、私は『はとバス』に乗ったことがないなぁ~」とか、
「平日の昼間からはとバスに乗る人は、どんな日常を送っているんだろう・・・」とか、
「なぜ、はとバスは『はと』なんて動物をチョイスしたのだろう・・・・」
「私だったら、もう少しカッコイイとか、カワイイ動物を選ぶけどな・・・」
「もしかしたら、平和の象徴と何か関係があるのかな・・・」という具合に、うだうだ考えるのだ。
恐ろしく非生産的な時間だが、目の前に「はとバス」が並んでいたら、「はとバス」について考えるしかないでしょう。
そりゃあ、並んでいるのが「猫バス」だったら、私だって猫についてとか、メイちゃんについてとか、
宮崎駿のあごヒゲについて考える。
それが生産的かどうかはわからないが、いずれにしても現実は「はとバス」なんだからどうしようもない。
そんなことをぼんやり考えていると、
少し離れた席に若いOL風の女性が2人やってきて、フランス旅行の計画を始めた。
2人で一冊の旅行ガイドを見ながら、なにやら楽しそうに話している。
カフェのテラスで、フランス旅行の計画なんて、なんて健全で、正しい2人なんだ。
フランス旅行といえば、私も一度だけシャンゼリゼ通りのカフェで、お茶を飲んだことがある。
ちょうど『ヴィロン』のテラス席のようなところに座って、パリの日の出を見たのだ。
もう10年以上も前のことだが、アムステルダムから夜行列車に乗り、
早朝のパリに入った私は開店したばかりのカフェの入った。
バックパックを背負い、見るからに汚い格好をしていたので、
店の奥まで入っていくのは気がひけて、テラス席に座ったのだ。
外は寒かったが、左手にはゆっくりと昇る太陽があり、右手の凱旋門を照らしている。
引き締まった朝の空気も心地よくて、なかなか悪くないロケーションだった。
私がイスに座るなり、すぐに白いジャケットを着たウェイターが注文をとりに来た。
「キビキビ動くとは、こういうことさ」という見本のような身のこなしだった。
私が温かいカフェオレを注文すると、
しばらくして、例のウェイターが右手にコーヒーポット、左手にミルクポットを持ってやってきた。
そして、私に一度ニコッと微笑むと、コーヒーとミルクの両方を、同時にカップに注ぎ始めた。
「わざわざ、そんな入れ方しなくても・・・」と私は思ったが、
それが彼の(あるいはパリの、もしくはシャンゼリゼ通りの)やり方ならば、従うほかない。
パリジャンの演出と、シャンゼリゼの朝日を十分に堪能した私は、再び彼を呼んでチェックしてもらった。
値段は、日本円にして約1800円だった。
カフェ・ラ・ミルもびっくりの堂々たる値段である。
パリに来る前のアムステルダムでは、一泊1500円程度の宿に泊まったというのに、
カフェオレ一杯で、2000円(チップ込み)も使ってしまった。
でも、本当のことを言えば、そんな予感をうすうす感じてはいた。
私が入店したときは、ほとんど客がいなかったからわからなかったが、
後に来る人たちのなかで、テラス席に座るのはシックで、ラグジュアリーで、エレガントなビジネスマンばかりだった。
彼らは一様に仕立てのいいスーツを着て、ふんわりとしたカシミヤのマフラーを巻き、
新聞をきっちりと一面から読むような人種だった。
私のようなタイプ(無学で、非生産的で、カジュアルで、貧乏な連中)は、
例外なく、店の奥のカウンターで立ったままコーヒーを飲んでいた。
私が座ったテラス席は、もっとも高級な場所だったのだ。
たぶん、料金は三倍くらい違うんじゃないかと思う。
白ジャケットのウェイターも、ミルクとコーヒーを同時に注ぐパフォーマンスをしながら、
心の中では「東洋人の若造が生意気に」と思っていたことだろう。
そんなどうでもいい思い出に浸っていたら、いつの間にか「はとバス」は一台もいなくなっていた。
きっと、浅草「浅草寺」とか、銀座四丁目とかに行ってしまったのだろう。
テラス席に座ってぼんやりしていると、30分くらいの時間は瞬く間に去っていく。
猫バスに乗って、まったく別の時空に移動してしまったみたいに、ぽっかりと時間が抜け落ちてしまうのだ。
無駄といえば無駄だけど、気持ちのいい時間といえば、そう言えなくもない。
そんな無駄な時間を過ごしたくなったときは、カフェのテラス席がおすすめです。
もちろん、誰もいない砂浜とか、きれいな川べりが最高だけど、そんなところへはなかなか行けないので、
カフェのテラス席でも(その気にされなれれば)十分に代用できます。
これからの季節は、特に気持ちがいいですよ。
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