『カシスウー論』 ~目黒の創作和食屋『和神』編~
こんにちは 菓子酢ウーロンです。
第22回『カシスウー論』は、目黒にある創作和食の店『和神』編です。
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目黒駅を出て、目黒通りを目黒川へ向かって5分くらい歩くと、
大きな三叉路があって、「渡るのが面倒だな」と思わせる、これまた大きな歩道橋が架かっている。
そのすぐ下に創作和食ダイニング『和神』がある。
店内の雰囲気はと言うと、いい意味で「高級感があるのか、ないのかよくわからない」という感じだ。
「高級感があるのか、ないのかわからない」なんて言うと、
「全然、いい意味じゃないだろ!」とつっこまれそうだが、本当なのだから仕方がない。
若者が大挙して訪れるようなチープな店ではないが、
50オーバーの大人たちが贅沢なひとときを過ごすほどでもない。
料理だって相応においしいし、サービスだってほどほどにいい。
どっちつかずと言えば、そう言えなくもないが、結局のところ、こういう店が一番落ち着くのだ。
最高の美人とデートをすると、どっと疲れるのと同じ(あるいは逆の)理論である。
美人とデートをしてまったく疲れないというのは、正真正銘のいい男か、
救いようのない無神経かのどちらかである。
まともな男なら、美人とデートをした後はずっしりと疲れるのが正しい反応だ。
「疲れたな」と言いながら、タイトなジャケットを脱ぎ、顔を洗って、鏡で自分の顔を見て、
「分相応」という言葉の意味を学ぶのだ。
そうやって男たちは大人になり、分相応な女性と、分相応な店へ行き、分相応に振る舞うようになる。
目黒の『和神』のようなお店で、適当な誰かと、カシスウーロンを飲むようになるということだ。
(もちろん、これ、「いい意味で」ってことですよ)
『和神』へ向かう前、私は目黒でマッサージを受けることにした。
ちょうど一時間ほど時間が空いてしまったのだ。
適当に入った店だったが、けっこう大きなところで、一度に10人以上の客が入れるようだ。
店の奥には、たくさんの施術用ベッドが並び、その一つひとつがカーテンで仕切られていた。
視覚的にはプライバシーが守られるが、話し声はまるまる聞こえるという、
微妙というか、(私にとっては)けっこう気になるつくりだった。(もっともそれが一般的な構造なんだけど)
私がマッサージを始めて10分くらい経ったころ、左隣に男性客がやってきた。
もちろん姿は見えないのだが、声の感じからして30代前半くらいだと思われた。
入ったときから、ちょっとずつうるさい男で、
「こちら、着替えになります」と言われたら、「はい、わかりました、ありがとうございま~す」と言い、
「お着替えが終わったころに参ります」と言われたら、「了解で~す。お待ちしてま~す」言う。
いちいち、ちょっとずつ何かが多いのだ。
声のボリュームもやや大きめで、「自分は感じがいいタイプ」と思い込んでいるふしがある。
女の子が10人いると、1人くらい必ずこのタイプを好きになってしまうのだが、
残りの9人から「サイアク~」「趣味悪くな~い」とけちょんけちょんに言われるタイプとも言える。
そして、いざマッサージが始まると、案の定「凝ってる自慢」が始まった。
このタイプは「凝ってる自慢」が大好きなのだ。
店の人に「ここ、ずいぶん凝ってますね」と言われると、
ものすごい嬉しそうに、「いやぁ、10時間くらい平気でパソコンに向かってるからねぇ~」なんて言って、
「肩凝るのが仕事、みたいなぁ~」と完全に無駄な付け足しをする。
その時点で、私は「そんなこと聞いてねぇよ!」と思ってるのに、
その男は「うちはペーパーレスだから、資料も全部ウェブで、
その反動で眼精疲労がひどくってさぁ~」なんて、本格的にどうでもいいことをしゃべり続ける。
しばらくして、「運動とか、されてます?」と店の人が聞くと、
「いやぁ、学生のころはけっこうテニスをやってたんだけどさぁ」なんて話し始めやがった。
おいおい、学生時代の話してどうすんだよ!
いまの話しろよ、いまの話。
店の人も「ああ、そうなんですか~」と明らかにトーンダウンしている。
まあ、そんな感じで、カーテン越しのバカ野郎の話を(楽しく)聞いていたわけだが、
マッサージ店では、このバカ野郎もめずらしいタイプではない。
「凝ってる自慢」はもちろん、「忙しい自慢」「寝てない自慢」もよく見られるパターンだ。
自慢話というのは、目の前で聞かされるのは最悪だが、第三者として盗み聞きをするのはけっこう楽しいものだ。
割合よく遭遇するのが、「店にクレームをつけた自慢」。
「店員がメニューを間違えたから、取り替えさせた上に、料金を半分にさせてやったよ」なんていう、アレである。
これはいわゆる『武勇伝系』で、「昔、オレもやんちゃでさぁ・・・」みたいな自慢と同じメンタリティである。
その話のどこが誇れるのだろうか、と本気で聞き返したくなるが、
そこはそっとしておかないと変な空気になってしまう。
そのほか、『何でもやっちゃう系』もよく見られるパターンだ。
以前、カフェで隣になった女性は
「私は何でも電子レンジで料理をしてしまうんだよね」というめずらしい自慢話を展開していた。
「煮物から、パスタから、ご飯から、カレーまで全部電子レンジでつくってしまうから、
ここ一か月くらい、ガスコンロ使ってないのよ。ハハハハ」という自慢だ。
まあ、何というか、害のない、お茶目な自慢だと思う。
「オレはどこへでも自転車で行っちゃう自慢」とまったく同じ構造だが、
電子レンジに重点を置くあたり、なかなかいいところに着目した、新スタイルの自慢である。
ほかには、辛いものが食べられる『やせ我慢系』の自慢、
「私はゴミとか、タバコとか投げ捨てする人が大嫌い」と公言する『街をきれいに系』の自慢、
「ぼくは、霊感が強いんですよ」という『根拠もないし、興味もないよ系』の自慢など、さまざまなパターンがある。
他人の自慢話に注目するなんて、完全に性格がひねくれているとは思うけど、
けっこう楽しいので、一度やってみてください。
そういえば、「オレって、けっこう性格悪いんだよね」という『自分はちょっと特別系』
(別名『B型系』)っていう自慢もある。
そんなことを言い出したら、何でも自慢になっちゃうんだけどさ。
こんにちは 菓子酢ウーロンです。
第22回『カシスウー論』は、目黒にある創作和食の店『和神』編です。
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目黒駅を出て、目黒通りを目黒川へ向かって5分くらい歩くと、
大きな三叉路があって、「渡るのが面倒だな」と思わせる、これまた大きな歩道橋が架かっている。
そのすぐ下に創作和食ダイニング『和神』がある。
店内の雰囲気はと言うと、いい意味で「高級感があるのか、ないのかよくわからない」という感じだ。
「高級感があるのか、ないのかわからない」なんて言うと、
「全然、いい意味じゃないだろ!」とつっこまれそうだが、本当なのだから仕方がない。
若者が大挙して訪れるようなチープな店ではないが、
50オーバーの大人たちが贅沢なひとときを過ごすほどでもない。
料理だって相応においしいし、サービスだってほどほどにいい。
どっちつかずと言えば、そう言えなくもないが、結局のところ、こういう店が一番落ち着くのだ。
最高の美人とデートをすると、どっと疲れるのと同じ(あるいは逆の)理論である。
美人とデートをしてまったく疲れないというのは、正真正銘のいい男か、
救いようのない無神経かのどちらかである。
まともな男なら、美人とデートをした後はずっしりと疲れるのが正しい反応だ。
「疲れたな」と言いながら、タイトなジャケットを脱ぎ、顔を洗って、鏡で自分の顔を見て、
「分相応」という言葉の意味を学ぶのだ。
そうやって男たちは大人になり、分相応な女性と、分相応な店へ行き、分相応に振る舞うようになる。
目黒の『和神』のようなお店で、適当な誰かと、カシスウーロンを飲むようになるということだ。
(もちろん、これ、「いい意味で」ってことですよ)
『和神』へ向かう前、私は目黒でマッサージを受けることにした。
ちょうど一時間ほど時間が空いてしまったのだ。
適当に入った店だったが、けっこう大きなところで、一度に10人以上の客が入れるようだ。
店の奥には、たくさんの施術用ベッドが並び、その一つひとつがカーテンで仕切られていた。
視覚的にはプライバシーが守られるが、話し声はまるまる聞こえるという、
微妙というか、(私にとっては)けっこう気になるつくりだった。(もっともそれが一般的な構造なんだけど)
私がマッサージを始めて10分くらい経ったころ、左隣に男性客がやってきた。
もちろん姿は見えないのだが、声の感じからして30代前半くらいだと思われた。
入ったときから、ちょっとずつうるさい男で、
「こちら、着替えになります」と言われたら、「はい、わかりました、ありがとうございま~す」と言い、
「お着替えが終わったころに参ります」と言われたら、「了解で~す。お待ちしてま~す」言う。
いちいち、ちょっとずつ何かが多いのだ。
声のボリュームもやや大きめで、「自分は感じがいいタイプ」と思い込んでいるふしがある。
女の子が10人いると、1人くらい必ずこのタイプを好きになってしまうのだが、
残りの9人から「サイアク~」「趣味悪くな~い」とけちょんけちょんに言われるタイプとも言える。
そして、いざマッサージが始まると、案の定「凝ってる自慢」が始まった。
このタイプは「凝ってる自慢」が大好きなのだ。
店の人に「ここ、ずいぶん凝ってますね」と言われると、
ものすごい嬉しそうに、「いやぁ、10時間くらい平気でパソコンに向かってるからねぇ~」なんて言って、
「肩凝るのが仕事、みたいなぁ~」と完全に無駄な付け足しをする。
その時点で、私は「そんなこと聞いてねぇよ!」と思ってるのに、
その男は「うちはペーパーレスだから、資料も全部ウェブで、
その反動で眼精疲労がひどくってさぁ~」なんて、本格的にどうでもいいことをしゃべり続ける。
しばらくして、「運動とか、されてます?」と店の人が聞くと、
「いやぁ、学生のころはけっこうテニスをやってたんだけどさぁ」なんて話し始めやがった。
おいおい、学生時代の話してどうすんだよ!
いまの話しろよ、いまの話。
店の人も「ああ、そうなんですか~」と明らかにトーンダウンしている。
まあ、そんな感じで、カーテン越しのバカ野郎の話を(楽しく)聞いていたわけだが、
マッサージ店では、このバカ野郎もめずらしいタイプではない。
「凝ってる自慢」はもちろん、「忙しい自慢」「寝てない自慢」もよく見られるパターンだ。
自慢話というのは、目の前で聞かされるのは最悪だが、第三者として盗み聞きをするのはけっこう楽しいものだ。
割合よく遭遇するのが、「店にクレームをつけた自慢」。
「店員がメニューを間違えたから、取り替えさせた上に、料金を半分にさせてやったよ」なんていう、アレである。
これはいわゆる『武勇伝系』で、「昔、オレもやんちゃでさぁ・・・」みたいな自慢と同じメンタリティである。
その話のどこが誇れるのだろうか、と本気で聞き返したくなるが、
そこはそっとしておかないと変な空気になってしまう。
そのほか、『何でもやっちゃう系』もよく見られるパターンだ。
以前、カフェで隣になった女性は
「私は何でも電子レンジで料理をしてしまうんだよね」というめずらしい自慢話を展開していた。
「煮物から、パスタから、ご飯から、カレーまで全部電子レンジでつくってしまうから、
ここ一か月くらい、ガスコンロ使ってないのよ。ハハハハ」という自慢だ。
まあ、何というか、害のない、お茶目な自慢だと思う。
「オレはどこへでも自転車で行っちゃう自慢」とまったく同じ構造だが、
電子レンジに重点を置くあたり、なかなかいいところに着目した、新スタイルの自慢である。
ほかには、辛いものが食べられる『やせ我慢系』の自慢、
「私はゴミとか、タバコとか投げ捨てする人が大嫌い」と公言する『街をきれいに系』の自慢、
「ぼくは、霊感が強いんですよ」という『根拠もないし、興味もないよ系』の自慢など、さまざまなパターンがある。
他人の自慢話に注目するなんて、完全に性格がひねくれているとは思うけど、
けっこう楽しいので、一度やってみてください。
そういえば、「オレって、けっこう性格悪いんだよね」という『自分はちょっと特別系』
(別名『B型系』)っていう自慢もある。
そんなことを言い出したら、何でも自慢になっちゃうんだけどさ。
