『カシスウー論』 ~御茶ノ水のドイツ料理レストラン『フランツィスカーナー バー&グリル』編~
こんにちは 菓子酢ウーロンです。
第12回「カシスウー論」は、御茶ノ水にあるのドイツ料理レストラン『フランツィスカーナー バー&グリル』編です。
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靖国通り小川町の交差点から御茶ノ水駅の方向へ上っていくと、坂の途中に石造りの一軒家がある。
夜ならば、黄色の照明でライトアップされて、
かなりいい感じの雰囲気を醸し出している店がドイツ料理レストラン『フランツィスカーナー バー&グリル』だ。
それにしても、どうして『フランツィスカーナー』なんて、こむずかしい名前にしたのだろうと不思議に思う。
聞くところによると有名なドイツビールの名前だそうだが、知らない人ならまず覚えられない店名だ。
サッカーが好きな私にしてみれば、「ああ、あのシュバインシュタイガーみたいなお店ね」と覚えるのが精一杯である。
(ちなみに、シュバインシュタイガーとはドイツ人のサッカー選手です)
ドイツ料理と言えば、誰がどう考えたってソーセージとビールだろう。
大きめのビアジョッキをガチンガチンとぶつけ合うように乾杯して、
皮の厚いソーセージにバキッとフォークを突き刺して、プリミティブにかぶりつく。
私の持っているドイツ料理のイメージだ。
適度な偏見もブレンドされているが、大筋では間違っていないだろう。
『フランツィスカーナー』でも席につくなりウェーターがやってきて、「まずは、どのビールにしましょう?」と何の疑問もなく聞かれた。
「ドイツ料理屋でビールを飲まない男なんて男じゃねぇよ」という「飛ばないブタはただのブタ」的プレッシャーを感じはしたが、
カシスウーロンの看板を背負っている私としても、こんなところで引き下がるわけにはいかない。
もちろん、私は「カシスウーロンを!」ときっぱりと言い、
たぶん相手は「なんだオマエは、飛ばないブタか!」と思ったことだろう。
「ふん、ブタが飛ばなくなって別にいいじゃないか!」なんて思ったりもするが、
まあ、ドイツ料理屋に来ている私にも責任の一端はあるので、自分勝手な被害妄想を膨らますのはやめておいた。
結局、ビールがおいしいと評判の店で一滴もビールを飲まなかったわけだが、料理はそれなりに堪能できた。
ひな鳥をまるまる一匹グリルした料理がおすすめだと聞いたので、それを注文すると、
かなりのボリュームがあったが、割とあっさりした味付けで、一緒に行った友だちと2人でペロリと食べてしまった。
すぐ隣には15人くらいの団体客がいて、これまた豪快な料理を次々と注文しては、みんなでガツガツ食べていた。
食べて、飲んで、大声でわめき立てるのでけっこう迷惑ではあったが、それはそれで楽しそうなパワフル食事会だった。
ボリューム満点の、ヨーロッパ系ディナーというと、私には忘れられない悲惨な思い出がある。
もう10年ほど前のこと。私は一人でヨーロッパを旅行したことがある。
バックパックを背負い、2週間ほど列車でまわるという『ブチ深夜特急』みたいな旅だ。
その旅行も半分が過ぎようとしているころ、私はフランスのシャモニーという町を訪れた。
アルプスの麓にあるウィンタースポーツの盛んな場所で、アルペンスキーのワールドカップが開催される立派なゲレンデもある。
町の様子としては、いささか観光地化されすぎていて、洗練されたヨーロッパテイストはあまり感じない。
個人的な印象を述べるなら、蔵王とか、志賀高原みたいな雰囲気だ。
旅行の間、あまりまともな食事をしていなかった私は「ここで一発おいしい地元料理を食べよう」と決めていた。
シャモニーはフランスでありながら、スイスとの国境に近く、スイス系の料理屋がたくさんある。
正確には、「サヴォア料理」というらしい。
ポピュラーなところでいえば、チーズフォンデュみたいな料理たちである。
そこそこまともなレストランに入った私は、若いウェイトレスに案内されて席に着いた。
渡されたメニューを形だけ開いてはみるが、予想通り「チーズフォンデュ」しか読むことができない。
当然のように、チーズフォンデュの文字を指さして、「これをください」と注文したところ、
そのウェイトレスが「あれや、これや」とごちゃごちゃ文句を言い出した。
相手はフランス語しか話せず、こちらは中学レベルの英語である。
まともなやりとりなど、できるはずがない。
「ボンジュール、ボンソワール、シルブプレ」的な言葉を彼女はイライラした口調でまくし立て、
「何でもいいから、チーズフォンデュを持ってきてくれよ」と私は応戦する。
そのやりとりを見かねたのか、奥から店長らしい中年の男性がやってきた。
するとその男は私に向かって、「あなたは2人ですか?」みたいな質問を投げかけてくる。
「いやいや違うよ。1人でしょ。見ればわかるだろ」と答えているのに、その男は「2人、2人」と連呼してくる。
こっちの語学力にも相当な問題があるが、彼の英語もかなり怪しいモノだった。
結局、彼はあきらめたらしく、私のテーブルに料理が運ばれてきた。
そのときにになって初めて気づいたのだが、私が頼んだのは、「2人分でしか注文することのできないコース料理」だったのだ。
きっと、店長とウェイトレスの間では
「店長、どうします? あの東洋人、1人ですよ」
「ごちゃごちゃうるせえから、とにかく全部出しちまえよ」
みたいなやりとりが交わされたのだろう。
その後の彼らのやり口は、陰湿で、悪意に満ちていた。
チーズフォンデュの鍋こそ一つだったが、
私の前には、サラダとスープが二皿ずつ運ばれてきたのだ。
チーズフォンデュ用のフランスパンも、バスケットに山盛り積まれている。
周囲のフランス人たちは、ちらちら私のほうを見るし、
5歳くらいの女の子は、クリクリの目を見開いて、私のテーブルを3分くらい凝視していた。
「そうか、そういうことだったのか・・・」と気づいたときはもう遅い。
それにしても、二皿ずつ運んでくるっていう嫌みなやり方はひどいだろう。
さすがに、最後のデザートとコーヒーだけは一人分しか運んでこなかった。
「十分に痛めつけてやった」と彼らも満足したのだろう。
店の奥にいる店長とウェイトレスは、ニヤリと笑って握手しているに違いない。
いいさ、いいさ、好きなだけ勝利のワインに酔いしれるがいい!
生涯を通じて忘れられない食事というのはそう何回もないが、
シャモニーのあの夜だけは絶対に忘れない。
いつかきっとあのレストランには、リベンジを果たさなければならない。
2人以上で訪れて、最高のディナーを楽しむ。
私たちのテーブルの上には、もちろんカシスウーロン。
もしメニューにないと言うなら、缶入りのものを持ち込んだっていい。
いろいろ文句を言われるだろうが、どうせまともな意思疎通など図れないのだ。
お前たちにお前たちなりのやり方があったように、
私には私の流儀があり、背負っている看板があることを存分に見せつけてやる!
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第12回「カシスウー論」は、御茶ノ水にあるのドイツ料理レストラン『フランツィスカーナー バー&グリル』編です。
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靖国通り小川町の交差点から御茶ノ水駅の方向へ上っていくと、坂の途中に石造りの一軒家がある。
夜ならば、黄色の照明でライトアップされて、
かなりいい感じの雰囲気を醸し出している店がドイツ料理レストラン『フランツィスカーナー バー&グリル』だ。
それにしても、どうして『フランツィスカーナー』なんて、こむずかしい名前にしたのだろうと不思議に思う。
聞くところによると有名なドイツビールの名前だそうだが、知らない人ならまず覚えられない店名だ。
サッカーが好きな私にしてみれば、「ああ、あのシュバインシュタイガーみたいなお店ね」と覚えるのが精一杯である。
(ちなみに、シュバインシュタイガーとはドイツ人のサッカー選手です)
ドイツ料理と言えば、誰がどう考えたってソーセージとビールだろう。
大きめのビアジョッキをガチンガチンとぶつけ合うように乾杯して、
皮の厚いソーセージにバキッとフォークを突き刺して、プリミティブにかぶりつく。
私の持っているドイツ料理のイメージだ。
適度な偏見もブレンドされているが、大筋では間違っていないだろう。
『フランツィスカーナー』でも席につくなりウェーターがやってきて、「まずは、どのビールにしましょう?」と何の疑問もなく聞かれた。
「ドイツ料理屋でビールを飲まない男なんて男じゃねぇよ」という「飛ばないブタはただのブタ」的プレッシャーを感じはしたが、
カシスウーロンの看板を背負っている私としても、こんなところで引き下がるわけにはいかない。
もちろん、私は「カシスウーロンを!」ときっぱりと言い、
たぶん相手は「なんだオマエは、飛ばないブタか!」と思ったことだろう。
「ふん、ブタが飛ばなくなって別にいいじゃないか!」なんて思ったりもするが、
まあ、ドイツ料理屋に来ている私にも責任の一端はあるので、自分勝手な被害妄想を膨らますのはやめておいた。
結局、ビールがおいしいと評判の店で一滴もビールを飲まなかったわけだが、料理はそれなりに堪能できた。
ひな鳥をまるまる一匹グリルした料理がおすすめだと聞いたので、それを注文すると、
かなりのボリュームがあったが、割とあっさりした味付けで、一緒に行った友だちと2人でペロリと食べてしまった。
すぐ隣には15人くらいの団体客がいて、これまた豪快な料理を次々と注文しては、みんなでガツガツ食べていた。
食べて、飲んで、大声でわめき立てるのでけっこう迷惑ではあったが、それはそれで楽しそうなパワフル食事会だった。
ボリューム満点の、ヨーロッパ系ディナーというと、私には忘れられない悲惨な思い出がある。
もう10年ほど前のこと。私は一人でヨーロッパを旅行したことがある。
バックパックを背負い、2週間ほど列車でまわるという『ブチ深夜特急』みたいな旅だ。
その旅行も半分が過ぎようとしているころ、私はフランスのシャモニーという町を訪れた。
アルプスの麓にあるウィンタースポーツの盛んな場所で、アルペンスキーのワールドカップが開催される立派なゲレンデもある。
町の様子としては、いささか観光地化されすぎていて、洗練されたヨーロッパテイストはあまり感じない。
個人的な印象を述べるなら、蔵王とか、志賀高原みたいな雰囲気だ。
旅行の間、あまりまともな食事をしていなかった私は「ここで一発おいしい地元料理を食べよう」と決めていた。
シャモニーはフランスでありながら、スイスとの国境に近く、スイス系の料理屋がたくさんある。
正確には、「サヴォア料理」というらしい。
ポピュラーなところでいえば、チーズフォンデュみたいな料理たちである。
そこそこまともなレストランに入った私は、若いウェイトレスに案内されて席に着いた。
渡されたメニューを形だけ開いてはみるが、予想通り「チーズフォンデュ」しか読むことができない。
当然のように、チーズフォンデュの文字を指さして、「これをください」と注文したところ、
そのウェイトレスが「あれや、これや」とごちゃごちゃ文句を言い出した。
相手はフランス語しか話せず、こちらは中学レベルの英語である。
まともなやりとりなど、できるはずがない。
「ボンジュール、ボンソワール、シルブプレ」的な言葉を彼女はイライラした口調でまくし立て、
「何でもいいから、チーズフォンデュを持ってきてくれよ」と私は応戦する。
そのやりとりを見かねたのか、奥から店長らしい中年の男性がやってきた。
するとその男は私に向かって、「あなたは2人ですか?」みたいな質問を投げかけてくる。
「いやいや違うよ。1人でしょ。見ればわかるだろ」と答えているのに、その男は「2人、2人」と連呼してくる。
こっちの語学力にも相当な問題があるが、彼の英語もかなり怪しいモノだった。
結局、彼はあきらめたらしく、私のテーブルに料理が運ばれてきた。
そのときにになって初めて気づいたのだが、私が頼んだのは、「2人分でしか注文することのできないコース料理」だったのだ。
きっと、店長とウェイトレスの間では
「店長、どうします? あの東洋人、1人ですよ」
「ごちゃごちゃうるせえから、とにかく全部出しちまえよ」
みたいなやりとりが交わされたのだろう。
その後の彼らのやり口は、陰湿で、悪意に満ちていた。
チーズフォンデュの鍋こそ一つだったが、
私の前には、サラダとスープが二皿ずつ運ばれてきたのだ。
チーズフォンデュ用のフランスパンも、バスケットに山盛り積まれている。
周囲のフランス人たちは、ちらちら私のほうを見るし、
5歳くらいの女の子は、クリクリの目を見開いて、私のテーブルを3分くらい凝視していた。
「そうか、そういうことだったのか・・・」と気づいたときはもう遅い。
それにしても、二皿ずつ運んでくるっていう嫌みなやり方はひどいだろう。
さすがに、最後のデザートとコーヒーだけは一人分しか運んでこなかった。
「十分に痛めつけてやった」と彼らも満足したのだろう。
店の奥にいる店長とウェイトレスは、ニヤリと笑って握手しているに違いない。
いいさ、いいさ、好きなだけ勝利のワインに酔いしれるがいい!
生涯を通じて忘れられない食事というのはそう何回もないが、
シャモニーのあの夜だけは絶対に忘れない。
いつかきっとあのレストランには、リベンジを果たさなければならない。
2人以上で訪れて、最高のディナーを楽しむ。
私たちのテーブルの上には、もちろんカシスウーロン。
もしメニューにないと言うなら、缶入りのものを持ち込んだっていい。
いろいろ文句を言われるだろうが、どうせまともな意思疎通など図れないのだ。
お前たちにお前たちなりのやり方があったように、
私には私の流儀があり、背負っている看板があることを存分に見せつけてやる!
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