『カシスウー論』 ~飯田橋のフレンチレストラン『ラ・コリンヌ』編~


 こんにちは 菓子酢ウーロンです。
 第11回「カシスウー論」は、飯田橋のアグネスホテルにあるレストラン『ラ・コリンヌ』編です。

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 外堀通りから東京理科大の脇の路地を入って、ちょろちょろと細い坂道を登っていくと、アグネスホテルというプチホテルがある。
 ホテルのエントランスから見えるところに、ラウンジのようなオープンスペースがあって、そこがレストランとなっているめずらしい造りだ。
 本格的なフレンチレストランなのだが、開放的な雰囲気で、格式ばったところのない気持ちのいい店だ。


 『ラ・コリンヌ』では、何を食べても割合おいしいのだが、
 ウロコがついたままの魚をカリカリに焼いた料理が私のお気に入りだ。
 サクッ、フワッ、パリッという独特の食感を楽しめる。
 料理名は忘れてしまったが、メニューを見れば「これだな」とすぐにわかるはずなので、訪れた際は、ぜひ味わってみて欲しい。
 (時期的な限定メニューだったら、すみません)


 本当にどうでもいいことだが、
 魚料理のときによく出てくる、平べったいスプーンみたいな食器がどうにも気になって仕方がない。
 あの微妙な形状に、心惹かれてしまうのだ。

 焼いたり、蒸したりした魚を崩す感じも気持ちいいし、
 崩した魚の身にソースをからめてから、口に運ぶまでの流れも悪くない。

 ものすごい便利というわけではないけれど、
 「魚料理のときは、ぜひ私を使ってね」という、ちょっと無理やりなポジション取りが私の好みに合っている。


 気になって調べてみたら、「フィッシュ・スプーン」とか、「ソース・スプーン」という名前がついているらしい。
 (「ターナー」とも言うようだが、「フィッシュ・スプーン」が一般的のようだ)

 拍子抜けするほどストレートな名称で、ちょっとがっかりしたが、
 狙いすぎて、誰も覚えられないネーミングよりは好感が持てる。
 そもそも、偉そうな名前をもらえるほどエース級の活躍をするわけではないのだ。

 スプーンにしては浅すぎるし、フォークのように何かを突き刺すこともできず、
 ナイフのような切れ味もなければ、箸のように料理をつまみあげることもできない。

 彼はただ、やわらかくなった魚を崩し、ほんの少しのソースとからめるためだけに存在しているのだ。


 なんてマイナーで、限定された役割なんだ。

 
 過去に私は、大福をつくる工場でベルトの上を流れてくる平べったい餅に、
 小さく丸めたアンコを乗せるだけというアルバイトをしたことがあるが、
 それに匹敵するほど、限定された役割だ。

 そんな限定された端役のくせに、
 テーブルの上にセットされた食器たちのなかでは、そこそこの存在感を放っているところがカワイイ。

 太った小学生がチューバを吹いている感じとちょっと似ていて、微笑ましい。
 見た目には目立っているが、音楽的な存在価値はよくわからないというあたりはそっくり。
 それでいて、演奏会の前日にはしっかり床屋へ行って、眩しいくらいのカリアゲを披露する。
 えっちら、おっちら、チューバを抱えて登場したはいいが、
 演奏時間は意外と短くて、ほとんどの時間を指揮者の先生を見て過ごす。

 そんな姿を見せられると、男の私でもつい母性本能をくすぐられてしまう。


 フィッシュ・スプーンには、太った小学生のチューバ奏者と同様、残念な魅力があふれているのだ。


 素敵なレストランのテーブルで、フィッシュ・スプーンを見かけたら、
 ぜひ、太った小学生のチューバ奏者を思い出して欲しい。
 なんとも言えない愛しい気持ちになって、よりいっそう魚料理がおいしく感じられるはずだ。



 限定された役割という意味では、テーブルに散らかったパン粉などを集める器具も負けてはいない。
 あれには、決まった名称があるのだろうか。
 私なりにけっこう調べてみたが、判明しなかったので、知っている人がいたらぜひ教えてください。

 左官屋が壁を塗り固めるときに使うヘラみたいな形状をしているものもあれば、
 筒状の形の一部が開いていて、そこからパン粉を拾い上げるというパターンもある。

 いずれにしても、「これからデザートが始まるぞ」というときにウェイターがやってきて、
 テーブルの上をサササッと滑らして使うアレである。


 「名称を教えて欲しい」と言っておいてナンだが、個人的にアイツはあまり好きではない。
 だって、「オシャレにパン粉を集めよう」っていう発想自体、
 ナルシスティックで、嫌味なヤツの考えそうなことだ。

 ああいうヤカラが登場すると、
 「フレンチレストランでカシスウーロンはいただけないなぁ~」と非難されているような気持ちになってしまうのだ。
 

 私の被害妄想であることはわかっているが、
 フィッシュ・スプーンのように、ゆるく、残念な感じのほうがはるかに心落ち着くし、親近感もわく。
 
 『フィッシュ・スプーンと太った小学生のチューバ奏者』というタイトルで、
 奥田民生とか、所ジョージあたりが曲を作ってくれないかなぁ。

 まともなフレンチレストランなら、そんな曲を流してくれないだろうけどさ。




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