『カシスウー論』 ~『天狗 銀座ナイン店』編~

 こんにちは 菓子酢ウーロンです。
 第7回「カシスウー論」は、新橋の『天狗 銀座ナイン店』編です。
 天狗さんには失礼だが、「天狗・銀座ナイン店」を目指す人はあまりいないと思うので、
 場所の説明は省かせていただきます。
 新橋駅から、歩いて5分くらいのところです。



 歳をとるにつれて、この手の居酒屋(チェーン展開していて、とにかく安い)には、
 めっきり行かなくなってしまったが、つい先日、久しぶりに天狗(銀座ナイン店)に行った。
 実際に行ってみると、それはそれでなかなか悪くない。
 料理だって十分においしいし、お酒だってカシスウーロンに限っては何の問題もなかった。
 注文するたびに、カシスリキュールとウーロン茶の割合がバラバラだったが、それがどうしたというのだ。
 
 大人になるとは、細かなことをちまちま気にするようになるってことさ・・・

 と誰かが言っていたが、なるほど、そうかもしれない。
 細かなことなど気にしないで(あるいは気づかないで)、ズンズン前に進んでいくのは、若さの特権だ。
 カシスリキュールとウーロン茶の配分が気になるなんて、醜くて、悲しい老化にほかならない。



 5月は春の修学旅行シーズンで、山手線なんかに乗っていると、中学生の団体をよく見かける。
 私が出合った5人くらいの集団(青森なんとか中学というバッチをつけていた)は、
 どうやらお台場へ向かうらしい。
 フジテレビがどうとか、ビーナスフォートにはどんなショップがあるとか、わいわい話している。
 そして、有楽町を過ぎたあたりで、リーダー的存在の女の子が

 「次が『にいばし』だよ。降りるよ!」

 と大声でみんなに声をかけた。

 なんだよ、もう「にいばし」かよ・・・
 お台場は「にいばし」からどれくらい?

 などと、残りのメンバーが口々にしゃべっている。

 私を含め、電車に乗っている全員が『にいばし??』と言う顔を彼らに向けたが、
 そんな視線にはまったく気づかない。

 まあ、それでいいのだろう。
 彼らには彼らの世界があり、
 山手線も、京浜東北線も、地下鉄も、ゆりかもめも、すべてが「にいばし」にやってくるのだ。
 サラリーマンの聖地も「にいばし」、演舞場も「にいばし」というわけだ。
 
 たまたま私も「にいばし」からゆりかもめに乗り換える予定だったので、
 はからずも彼らの観察を続けることができた。

 ゆりかもめでは、今後のスケジュールを話し合っていた。

 ある女の子は「裏原(ウラハラ)か、代官山へ行きたい」と強く主張していている。
 その子のスカート丈はかなり微妙だったが、どうしても「裏原か、代官山」へ行きたいらしい。
 それはそれでいいじゃないか。
 どんなにヘンテコなスカート丈でも、裏原や代官山は君を拒んだりはしない。
 スカートの丈と目的地には何の因果関係もないのだ。

 そうかと思えば、男子の一人が「東京ドームだけは、外せない!」と言い出した。
 彼が持っている携帯電話のストラップはACミラン(イタリアのサッカークラブ)のものだったが、
 なぜだか、東京ドームは外せないらしい。
 
 私のような大人が、そんな細かいことをごちゃごちゃ言うべきではない。

 彼には、彼なりの深い事情があるはずだ。
 お父さんがたまたま買ってきてくれたのが、ACミランのストラップで、
 彼としては嫌々つけているのかもしれない。
 サッカーと野球の区別もつかない、相撲一筋のガンコ親父なのだろう。
 そんな親父が、息子が中学に入った記念にと、買ってくれたストラップである。

 「父さん、僕は野球部なんだよ・・・」とは、さすがに言えなかったのだ。

 彼はいまどきめずらしい孝行息子なのだ。
 そんな彼がつい漏らした本音が「東京ドームは外せない」だった。 
 東京ドームでジャイアンツをストラップを買って、
 家ではACミラン、外ではジャイアンツという具合に使い分けるのだろう。
 悲しくも、やさしい心遣いではないか。


 さらに別の女の子は、「どっかのヒルズには行きたいな」と、またアバウトなことを言い出した。
 どっかのヒルズというのは、六本木か、表参道のことだろうが、
 そんなところへ行って、いったい何をするのだろう・・・・
 「どっかのヒルズ」という程度の思い入れなら、「お台場で手を打っておけよ!」と言いたいが、
 私が意見を差し挟むわけにもいかない。

 
 最終的に、リーダーの女の子が驚くべき「まとめ」に入った。

 いまからお台場へ行くでしょ、
 そしたら次に、裏原と代官山へ行って、
 その後で、東京ドームへ行こう。
 それで、時間が余ったらヒルズにも行ってみよう。


 さすがリーダーだ!
 と言いたいところだが、みんなの意見を順番に並べただけだった。
 
 せめて、いまの時刻くらいは確認して欲しい。
 もう午後2時を回っている。
 どんなにスピーディに回っても、お台場を出るのは4時。
 それから原宿なんかへ行ったら、すぐ夜になってしまう。
 班別の自由行動が何時まで許されているのかは知らないが、現実的には、代官山へ行くのも厳しいだろう。
 東京ドームと「どっかのヒルズ」は、間違いなく憧れのまま終わってしまう。

 そんな私の心配をよそに、

「明日はディズニーランドだよ!」
「イエ~イ」

 と全員で盛り上がっている。

「ナンだよ、もう明日の話かよ!」とつっこみたいところだが、それが若さというものだ。
 

 そして、ゆりかもめが「台場」に近づいたとき、

 「あれ、『台場』と『お台場』って同じなのかな・・・」

 と誰かが言い出した。
「おいおい、そんなことも知らないのかよ」と私は急に不安になったが、
 その不安どおり、彼らは『台場』で降りずに、そのまま乗っていってしまった。

 私は「台場」で降りたのでその後のことは知らないが、
 おそらく彼らは、裏原にさえ行くことはできなかっただろう。 

 でも、それでいいのだ。
 裏原や代官山、東京ドームや「どっかのヒルズ」に行けなくたって、
 明日になれば、ミッキーが君たちのことを待っていてくれる。


 やっぱり、修学旅行は東京に限る。
 ちなみに私は京都・奈良だったが、あんなところは十代の若者が行く場所ではない。

 聖徳太子には申し訳ないが、どう考えたって、法隆寺よりシンデレラ城だよね。




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