こんにちは、菓子酢ウーロンです。

 
 第1回は、北千住のバー『ブラス』編です。

 北千住駅前の大通りを5分ほど歩き、細い路地を一本入ったところにある『ブラス』というバーで、「菓子酢ウーロン」と『カシスウー論』は誕生した。
 2009年3月31日の夜のことだ。

 いつもいろいろとごちそうしてくれる先輩のジンが、「カシスウーロンばっかり飲んでるんだから、『カシスウー論』っていうメルマガを始めなよ」と言ったのがきっかけだ。

 ジャニーさんから「Youは今日から『菓子酢ウーロン』になっちゃいなよ」って言われたみたいだが、その通り私は『菓子酢ウーロン』になり、「カシスウー論」を始めた。
 (ちなみに、私のペンネームが『菓子酢ウーロン』に決まると、「おれは『ジン』がいいなぁ」と彼が言ったので、私にとってのジャニーさんは『ジン』と決まった。偶然なのか、必然なのか、やはり「J」だった。)
 
 ジンが言うように、私はいつもカシスウーロンを飲んでいる。

 私の友人たちは黙っていても私の分のカシスウーロンを注文してくれるし、ジンはカシスウーロンがあるかどうかを店選びの基準にしてくれているほどだ。
 
 じつにありがたい話である。
 ありがたい話ではあるが、残念ながら私はカシスウーロンを特別好んでいるわけではない。
 みんなの気遣いを裏切るようで心苦しいが、事実は事実として動かしようがない。

 
 だいたい、好き好んでカシスウーロンなんかを飲んでいるヤツなんていないのだ。
 世のいる『カシスウーロン党』は、それしか飲めないから飲んでいるに過ぎない。
 もちろん、『カシスウーロン党』だけではない。
 姉妹組織の『カンパリオレンジ連合』や『梅酒ソーダ協会』の連中だって同じだ。
 

 「好きで、カンパリオレンジを飲んでいるわけではないんだ・・・」
 「梅酒ソーダが飲みたいわけじゃないんだ・・・」


 彼らは悲痛な面持ちで、声にならない叫びを続けている。
 『カシスウーロン党』、『カンパリオレンジ連合』、「梅酒ソーダ協会」という
 『NAT』(軟弱系・アルコール・トライアングル 、通称ナット)に属している男性たちは、そんな苦しみをいつも抱えている。
 
 居酒屋に入り、世の酒飲みたちが「とりあえず、生、中ジョッキで」と無遠慮に注文するかたわら、「えっと、僕はカシスウーロンにしようかな」などと、強引なさりげなさを装わなければならない。
 悲哀に満ちた、無力で、無意味なレジスタンスだ。

 ところが、心無い酒飲みは「そんな甘いやつ、おいしい?」などと余計なことを聞いてくる。
 だから言ってるだろう。おいしいから飲んでいるわけではないんだ。
「酒が飲めないヤツは甘いものが好き」みたいな安易な決めつけなのか、底意地の悪い冷やかしなのか知らないが、「おいしいか?」なんて、どうでもいいことを聞いてくる。それもまるで勝ち誇ったように。
 
 酒が飲めない人間だって、飲み物に甘さなど求めていない。
 男はもちろん、女だってそうだ。


「甘くて、おいしいぃ~」という女子の言葉を聞いたら、半分以上がウソだと思ったほうがいい。
「せっかくおごってくれるんだから、それくらいは言っておこう」という社交辞令だ。
 どうでもいい人から届く「誕生日メール」みたいなもので、形式上のお礼は言うが、そこに気持ちは流れていない。


 そんな女子に向かって「そんな甘いやつ、おいしい?」なんて聞く酒飲み(男性)は、致命的な過ちを犯していることに一刻も早く気づくべきだ。
 甘い酒を飲む女子は、そもそも酒の話などに興味はないし、「おれはけっこう辛口の酒が好きだけどな」なんていう身勝手なプチ情報など聞きたくもない。
「このつまみは、酒がすすむ」的な、珍味談義もまったく不要だ。


 たいていの女性は甘いものが好きだが、「甘い飲み物も好き」と一括りにしてはいけない。
 注意して観察していると、女性の多くは甘い飲み物など飲んではいない。
 スターバックスの「なんとかフラペチーノ」を好む『フラペチ族』はたまにいるが、彼女たちにとってフラペチは飲み物ではない。あくまでも一般スイーツに属する。
 本当は「フラペチ+本日のコーヒー」を注文したいところなのだが、スタバで2品以上頼むと、ぼったくりみたいな金額になるので控えているだけだ。
 
 そもそもコーヒーをブラックで飲む女性はすごく多いし、紅茶に砂糖入れている場面もほとんど見ない。
 ペットボトルではお茶系が大半だし、そうでない人はたいてい水だ。
 ファミレスのドリンクバーでカルピスソーダを注いでいるのはいつもガキだし、コーヒーに砂糖とクリームをたっぷり入れて、奇妙なベージュ色へ変色させているのは50オーバーの男性が多い。

 もちろん、個人的なリサーチだが、反論は受けつけない。


 大事なことは、私のような酒が飲めない人種だって、飲み物に甘さなど求めていないということだ。


 これだけは覚えておいてもらいたい。
 カシスウーロンを始め、カンパリオレンジ、梅酒ソーダなど、微妙系アルコール飲料を注文している人がいたら、何も言わずにそっとしておいて欲しい。
「学生時代、柔道をやっていました」的な大男がカシスウーロンを頼んでも、決して笑ったり、二度見したりしてはいけない。
 飲み物はたしかにプリティだが、彼の肩越しに流れるハードで、ヘビーな、ブルースサウンドを感じ取って欲しいのだ。

 私たち『NAT』(軟弱系・アルコール・トライアングル、通称ナット)のメンバーが、夏場の生ビールや深夜のバーボンへの憧れをひっそりと心の奥へしまい込み、プラスチックのマドラーで、細くて長いプリティグラスの中身をくるくるとかき混ぜていることを忘れないで欲しい。

 それが『NAT』(軟弱系・アルコール・トライアングル、通称ナット)の、『IKK』(いつも・抱えている・哀しみ)なのだ。





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菓子巣ウーロンの『カシスウー論』
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