![麻藤兼嗣](https://stat.ameba.jp/user_images/20160925/14/ttttong/70/6a/j/t02200293_0600080013757111224.jpg?caw=800)
その第1巻が発売された時から話題をかっさらっていた「波よ聞いてくれ」。
構図、絵、台詞回し全てが完璧の沙村広明が繰り出す地方ラジオ局シンデレラストーリーです。
読み返せば読み返すほど気になる箇所や隠された仕掛けに気づき、更には先が読めない。
11月に発売される3巻が皆さん待ち遠しいですね?そうですよね。
という訳で、今回は「波よ聞いてくれ」の作品内フィクサー、麻藤さんです。
この話は、男に逃げられ酔っ払ったカレー屋店員の鼓田ミナレが、
居酒屋で絡んだ麻藤さんにラジオパーソナリティとして取り込まれ育てられる感じの話です。
こういう「主人公を手玉にとって上手いこと動かす」みたいなフィクサーキャラは
意外そうな展開に関しても「実は俺が仕込んでた」的流れによく持っていくため、
読者はその万能性にやられて一気に惚れる傾向が大変顕著です。
だもんだから麻藤さんも普通にもう、惚れなきゃおかしいキャラなんです。
他にも宝田さんとか久連木さんとか良い味を出しているおっさんは多数出て来ますが
麻藤さんの全知全能さにはやっぱり負けちゃいますね。
因みに作中で女たらし扱いされている光雄は一番魅力が感じられませんですね・・・若いからか?
麻藤さんはそれ以外に、物語開始2ページ目で年齢がわかるというおっさん好きに優しい設定も
胡散臭すぎるドジョウ髭とポニーテールも含め構成要素が全部最高って感じのおっさんです。
そして何でしょう、主人公を突然ゲリラ的にラジオパーソナリティに仕立て上げるなど
ちょっと汚い手も色々使う「大人はキレイ事ばかりじゃやって行けないぜ」感も
おっさんのほどよいグレ方を表していて非常に理想的です。
いつも取り上げているおっさんは、どちらかと言えば自らのおっさん化を諦めていますが
麻藤さんの場合は諦めと共に「折角だしこの人生ともっと遊んでやろう」というのが感じられ
すごい・・・格好良い・・・・・・お前そんなんおっさんじゃないと出来ないんだぞ・・・・・・
いや普通のおっさんだってそんな余裕綽々の人生送れないぞ・・・という男の惚れそうな男。
しかもそれで一匹狼かと思ったら娘がいるし。恐ろしいバランス感覚を持っている社会人だ。
沙村広明はこの作品みたいに人がギャースカしてるスラップスティック風の作品もある一方で
もう救いようもなく暗くてただ可哀想みたいな話もフツーに描く人なので
「波よ〜」も、突然麻藤さんが社会的な死を与えられるんじゃないか気が気じゃないですね。
そうであったとしても超楽しみに読んでますけど。早く次巻が読みたいね。
さて次回はおっさんのある風景について。
どうぞお楽しみに。