誰よりも知られていて、誰よりも謎なおっさん/いしいひさいち(65歳) | だからおっさん最高だって言ってんだろ

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いしいひさいち

いしいひさいち。

めっちゃ打ちにくいです、いしいひさいち。キーボードの早口言葉って感じ。
いしいひさいちは、皆さんご存知朝日新聞の朝刊で25年間連載し続けている漫画家です。
それ以外にも週刊文春や各種スポーツ紙での連載を多く抱えており、
サラリーマン諸氏にはあの独特の筆致がサブリミナル的に刷り込まれているでしょう。

以前書いた通り、私は小学生の頃よりエロ目的で週刊文春を読んでいたため
当時連載されていたいしいひさいちの風刺4コマにも触れていました。
まだ政治にも世の中にも現実感のなかった小学生時代の私が、
「エリツィンはお酒が好きなんだ…」とか「アラファト議長は目が超離れてるんだ…」と
世界情勢の一端を知れたのは、池上彰よりもフランクないしいひさいち漫画のおかげです。


もう少し物心がしっかりつき始めてからは、いしいひさいちの漫画家としての能力、
そのシンプルながらも的確な筆運び、「似てないのに似てる」という力技の似顔絵、
強烈にデフォルメされながらも的確なキャラクター作りという面白さに圧倒されました。
いしいひさいちと言えば「ののちゃん」に代表される日常漫画が有名ですが
本質的には大人向けの風刺や毒のある漫画作品が多いようです。

しかし、いしいひさいちについて調べると驚くのが、その情報の少なさです。
いしいひさいちはインタビューもほとんどなければ、近影もありません。
ネットを探るとかなり若い頃の写真が一枚だけ出てきますが、ほぼゼロ。

インタビューに至っては「いしいひさいち 仁義なきお笑い」という特集ムック本で
本人が本人にでっちあげでインタビューという名の寄稿をしているだけです。
もちろん顔写真はありません。
(このムック本はめちゃくちゃ中身が濃い上に最近新装版が出たので是非買おう)


これだけ国民的なキャラクターを生み出し、
しかもそれがジブリという国民向けの大御所によってアニメ化され、親しまれていても
本人は漫画でしかメッセージを発信しないという、その徹底具合。
私達が知る「いしいひさいち」とは、ボサボサ頭に無精髭を生やし、
なんとなく不満そうな下がり眉で歩く二頭身の自画像だけです。

私は常々「漫画家の内面は全てキャラクターに表れる」という説を唱えていますが
いしいひさいちの内面は、そのあまりに強烈かつ数の多すぎる個々のキャラクターにより
分裂しすぎて逆にわからないことになっています。
本当にいしいひさいちという一個人は存在するのでしょうか。まあするんだけどさ。


ジブリの力まで総動員して日本国民全体に浸透したキャラクターがいても
その生みの親は顔すらわからないって、なんかすごいロマンですね。おっさんのね。
今いしい氏は65歳ということですが、多分自画像は25年間変わっていません。
その普遍性も含めてとってもロマン。こういう非実在的実在おっさんは日本の宝ですな。
とにかくそのシンプルながらもで簡素な線に隠された世界は深く面白いので
皆さん新装版ムック買いましょう。


次回はまた漫画家か、俳優か、迷うところです。
どうぞお楽しみに。