【おっさん候補生シリーズ】多分作者にも忘れられてる狂気の青年/泥田坊あきら【漫画家超残酷物語】 | だからおっさん最高だって言ってんだろ

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泥田坊あきら

さあやってきました。今回はどマイナーですよ。
作者自身も、キャラ名を言ったところで覚えていないかもしれない。
唐沢なをき『漫画家超残酷物語』より「泥田坊あきら」です。
せっかく高野政所さんが昨日の記事をRTしてくれたのに何という指向だろうか。
(高野政所さん、ありがとうございます。)

今回はネタバレ全開ですが、6ページ短編の上
唐沢漫画の一番の見所は全体的に溢れる狂気だと思っているので、あえてネタバレします。

『漫画家超残酷物語』は、IKKIで連載されていました。
元ネタはもちろん永島慎二の『漫画家残酷物語』ですが、『超残酷』はギャグマンガです。
毎回6ページ、あらゆる漫画家の話を盛り込んである短編オムニバスの形を取っており
今回紹介する「泥田坊あきら」先生は、第7話「しあわせ」に登場します。


泥田坊先生は、新人ながら残酷描写の好評な作品を生み出し、人気を得ます。
残酷描写のためなら自らの身にすら刃物を立てる狂いっぷりを見せ、
編集者に「そこまでしなくても」と止められても残虐な展開を押し通す。
ホラーの大御所、ギチ山仰天斎先生にも期待される存在です。
(本論とは全く持って関係ありませんが、
 『超残酷物語』を通して冴え渡る唐沢なをきのネーミングセンスの趣味悪さは最高です)

しかし彼は、連載中に子供(女の子)を授かります。
それを期に残虐漫画が描けなくなって行く泥田坊あきら。
見かねたギチ山先生は、自らが成長した娘に足蹴にされている様子を見せることで
家族の幸せより作家の幸せを取れと説得します。
・・・が、泥田坊先生は子供の可愛さを取る。例えそれが「今だけ」でも・・・
「しあわせ」は、そういう話です。


この作品、冒頭の泥田坊先生のヤバさと綺麗な顔のギャップだけでも最高なんですが
その後、自分の信念である残虐描写が脆くも崩壊する姿、
そしてさりげなく提示されている「成長した子供からは愛されないであろう未来」と
三点セットで短い間に濃い泥田坊先生の人生が語られており、素晴らしいんです。

彼の、おっさんとしての将来は
ギチ山先生が見せた通り、成長した娘に足蹴にされる人生かもしれません。
それでも泥田坊先生が娘を愛しているとしたら、その不憫さだけでご飯10杯は行けるし
その上で更に残虐描写に磨きを掛けてたら、歪み方が意味不明でもう最高です。
もちろん短編なので、泥田坊先生のその後はわかりませんが
こういう短く濃い漫画の中で強烈に個性を発揮するキャラクターは本当に永遠ですね。


さて次回は2013年のヒット映画から、1人ご紹介です。
泥田坊先生くらい狂った情熱を持った青年。
どうぞお楽しみに。