卒業式シーズンたけなわですね。来週の次男の卒業式にと、長男が3年前に着た
ブレザーを出してみました。甥っ子のお下がりです。中学高校はたいてい制服がありますが、
小学校は私服なので、各家庭でそれなりの服を用意したりしますね。
それにまつわる、忘れられない話があります。毎年この時期に必ず思い出されます。
もう数年前になりますが、日経新聞の夕刊に、いま学校の保健室で起こってることなど現代保健室
事情なるものを現場の先生方が綴る記事が連載されていました。その中のA少年の話。
A君は両親が離婚し、祖父母に引き取られて生活しているが、そんな境遇を全く感じさせない
明るく元気な男の子で、時々保健室にも顔を出す人懐っこい性格。
そんなA君が、卒業式の朝、突然駆け込むように保健室に入ってきて、泣き崩れた。
「僕…こんな服じゃ、卒業式に出られない。出ない。」と泣き叫ぶA君。
見るといつもの見慣れた着古した服。 この騒ぎに、参列に来たA君の祖母も保健室に呼ばれた。
「毎日の生活に精一杯でこの子に何もしてやれん…」と嘆く祖母。
泣き声が収まるのを待って、先生が「卒業式には何が大切か!」をこんこんと語る。
式が始まる寸前、押し黙っていたA君はとうとう意を決したように「僕出るよ。」と立ち上がる。
壇上で卒業証書をもらうA君は肩をすぼめ、その背中はいつもより小さく小さく見えた。
うろ覚えの部分もありますが、こんな内容の記事です。
A君はいつもの服で、いつもの気持ちで学校に来たのでしょうね。
そして教室に入るや否や…驚いたことでしょう。その時のA君の気持ちを思うといたたまれません。
学校側は式典に際して、きちんとした服で…なんて言いませんし、お手紙にもありません。
これは、慣例的なことであり、昔は普段着の子もいたのです。豊かな時代は時に残酷です。
それにしても、保健室があって良かった。受け止めてくれる先生がいてくれて良かった。
今や保健室は学校で一番重要な場所になっているのかもしれませんね。
ところで、A君はその後どうしているでしょうか?元気に真っ直ぐに成長してくれていたらいいな。
しきりにそんなことばかり考えてしまう卒業シーズンです。