『西洋の敗北と日本の選択』(エマニュエル・トッド)読了。
2023年以降の、雑誌『文藝春秋』に掲載された記事をまとめたもの(一部、本書向
けの加筆あり)。内容的には『西洋の敗北』と重なるところも多いが、『西洋の敗北』
では、トランプ再選以降の内容が余り含まれていなかったので、本書では近々のトピ
ックについても取り上げられており、興味深く読むことが出来た。
再選後のトランプは、米国による世界の一極支配の構造が崩れ、米中による新冷戦
構造に移る中で、いかに中国に対抗していくかとの考えに基づき諸政策を進めてい
るように思うが、トッドはこの試みは失敗に終わると考えている。
政策の一つに、中国頼りのサプライチェーンから距離を置いて米国内の製造業を復
活させるというものがあるが、現在の米国はエンジニアの人数が少なく(正確には、
人口におけるエンジニアの割合が少なく)、成立しないとの指摘だ。
今後の世界が米中の新冷戦構造に移行するとの指摘をしている人間は多いが、このト
ッドのような視点からの指摘は他には余りないもので、改めて新鮮で面白く感じる。
ただ、仮に米国内の製造業が復活しないという指摘が正しかった場合、米国は中国と
の競争でかなり分が悪くなるわけで、そうなれば米国の属領である日本は、かなり厳
しい状況に陥るのではないか。
またトッドは日本の進む道として、核武装を提案する(これはトッドが以前から言い
続けていることだが)。米国の将来性や、また、日本が紛争に巻き込まれた際に米国
の「核の傘」が実際には機能しないことを考えてのことだが、これは、至極真っ当な
提案と思える。
本書によるとトランプ政権の国防次官であるエルブリッジ・コルビーは対中戦略を
考えれば、日本・韓国・台湾・オーストラリアの核保有が解決策と述べており、高
市政権も前向きに考えてくれないものか、心から祈りたい。
ただ、世界情勢や軍事というものをマトモに考えた場合、真っ当であるはずのこう
いった提案が、日本の旧メディア・言論空間では、全くきちんと取り扱われず、頭
ごなし・感情的な否定論で終わってしまうんだよな。毎度のことながら、結局、日
本の問題=旧メディアの異常性との結論になってしまうな。