『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』(齋藤ジン)読了。
タイトルが気になって購入したが、その後、放置していた本だ。
今回、改めて読もうと思ったきっかけは、先日の日記で取り上げた『中国はアメリカ
に戦わずして勝つ』(副島隆彦)の中で本書が取り上げられており、副島が本書を紹
介しているのだが、内容がかなりとっ散らかっていて(とっ散らかっているのは副島
の文章の特徴でもあるが)、果たして本書は本当はどういった内容だったのだろうと
気になって読み始めた。
著者の齋藤氏は在米の投資コンサルで、本書ではバブル期頃から現在に至るまでの
経済の動きとその背景、その中でヘッジファンドがどういった動きをしていたのか。
また、今後の世界のパワーバランスの変化の中で、日本経済の先行きについての予
測などが述べられている。
イデオロギー的な偏りが少ない分析と平明な文章で、とても理解しやすい本だと思
う。特に氷河期世代が生み出された背景については、オレは、(当時の現役世代の)
雇用を守るために若年層を調整弁にしやがったと理解しているのだが、それを冷静
に説明+補足をすると本書の内容になるのだと感心した(※そもそもオレ自身が氷
河期世代のほぼ中央に位置するので、この問題を考えるときにどうしても感情が入
ってしまうということもあるのだが)。
また他に面白かったのが、齋藤氏は今後の世界情勢の中で日本経済は復活の方向へ
進むとの見解を示しているが(簡単に言うと、米国の中国封じ込め戦略の中で、米
国陣営の日本はある程度の優遇されるため)、これはどうなんだろうね。
世界が米国一極体制からの移行期であることは間違いないが、中国経済が思ったよ
り悪そうなところを見ると、米ソ二極体制のような米中二極にはならず、もう少し
多極化の方向に動くと予想した時、米国に優遇されたところで、日本はどの程度、
復活できるのだろうかと疑問に思った。もちろん、オレは日本には明るい未来が
待っていることを心から願っているが。
結論としては、とても面白い本だった。
バブル期からこれまでの日本経済に何が起こっていたか、また、これからの世界情
勢、経済がどうなるかについて関心がある方にはお薦め。もちろん、本書の述べる
未来が必ずしも正解とは思わないが、可能性のあるシナリオの1つだよなあと思った。
ちなみに、副島隆彦の紹介していた内容と本書の実際の内容は割と相違があるので、
その点は注意が必要ですが。