『昭和20年8月15日 文化人たちは玉音放送をどう聞いたか』(中川右介)読了。
中川右介はノンフィクションの作品を多く手掛ける作家で、他の著作では、『昭和
45年11月25日 三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』と『沢田研二』を読んだこ
とがある。
『昭和45年11月25日』は当時の多くの政治家や文化人たちが、当日にどういった
状況で事件に遭遇し、どういった感想を述べたかをまとめた本で、様々な捉え方が
羅列されていて面白く読めた。一方で、『沢田研二』は評伝としては対象の掘り下げ
方が足らず、イマイチな印象だった。同じ題材であれば島崎和歌子の『ジュリーが
いた 沢田研二、56年の光芒』の方が圧倒的に面白かったな。
本書は終戦の日を題材に、前者と同じまとめ方をしていたので、それなりに読める
だろうと購入した。
本書で登場するのは文化人(小説家、映画、演劇、音楽関係者)。政治家や軍人に
ついては、他の多くのメディアで取り上げられているので、本書は文化人に絞った
ということだろうか。登場するのは、三島由紀夫や川端康成、黒澤明、三船敏郎、
古関裕而、美空ひばり、手塚治虫などなど。年齢は、終戦時、すでに初老の者から
小学生の者まで様々。
取り上げられている人間に、多少なりとも関心があれば面白いのではないだろうか。
逆に関心の無い人間についての記載は、割と読むのが辛い感じ(オレは作家や映画
関係者などは面白く読めたが、歌舞伎は余り知らないので、あーこんな役者さんも
いてこんな状況だったのねという以上の感想は無かったな)。
皆、様々な状況で様々な感想を述べているが、ガキの頃に終戦日に遭遇しながら、
やたら記憶が鮮明なのは後付けじゃねえの?と思ったね。
特に気になったのが大江健三郎で、終戦当時、大江は10歳なのだが、情景描写に
しろ玉音放送に対する感想にしろ、後から盛りまくった内容で失笑してしまった。
詳しくは触れないが、もうね、戦後民主主義を妄信する人間のバカさ加減を煮し
めた感じ。
あと玉音放送について、徳川無声が「何という清らかなお声か」と言い、一方で
石原慎太郎が「正直、子供心にがっかりした」と真逆の感想を述べており、もち
ろん当時の年齢もあるが(徳川が51歳、石原が13歳)、人間とは面白いものだと
思った。
昭和帝はオレがガキの頃は、まだご健在でいらしたので、オレもお言葉を聞いた
記憶があるが、確かにあの独特の話し方は不思議な感じがしたので、石原の感じ
方は解る気がするな。
まあ、昭和史に関心があれば、読んでも良いのでは。何か深堀りされて深い考察
とかがあるわけではないので、Wikipediaとかをだらだら読むのが好きという方
には良いのではないでしょうか。