『大人のブルーハーツ』(スージー鈴木)読了。スージー鈴木といえば、『ザ・カ
セットテープミュージック』シリーズで知られる音楽評論家。同氏の過去の著作
では、サザンオールスターズや桑田佳祐に関わるものは読んだことはあったが、
それ以外の著作は、今回、初めて買った。
内容は、ブルーハーツの作品から代表的な32曲の歌詞について、スージー鈴木が
分析・語るというもの。
感想としては、過去の著作に比べると、余り面白くなかったな。『サザンオールス
ターズ 1978-1985』や『桑田佳祐論』に比べ、分析的な内容が減った分、著者
の感情や政治的主張(主張と言うほど深いものではないが、それに類すること)
が増えていた。この手の本でオレが聞きたいのは、あくまでも対象についての分
析や考察なので、ちょっと残念な感じ。
もちろん、オレが安易な反原発主張が嫌いなので、内容的に引っ掛かったという
こともあるけれど。
表現者のありたかについて言えば、オレは、音楽でも映画でも絵画でも、芸術に
関するものに、作者の思想や主張が含まれるのは当然のことで、むしろ、どんど
ん出せば良いと思う。受け手は、思想・主張を含めて、良し悪し好悪を決めれば
良いのだ。
自分とは異なる政治的主張を歌っていたとしても、それを上回るくらい音楽性に
感じるところがあれば聞けば良いし、自分の好む思想を表現した映画であっても、
脚本・演出などがイマイチであれば見なければ良いだけだ。
例えば、オレが大好きな沢田研二は、反原発主張をしている点で、オレと考え方
は異なるが、沢田研二の様々な曲や映画は、それが気になるくらい好きなので、
反原発主張していることは、どうでも良いと思っている。
ただこの点で気になるのは、音楽でも映画でも著名な人物が語る思想は、反戦だ
の反原発だの、左派・リベラル方向の内容ばかりだよな。
反対だけなら、学ばずとも、土井たか子みたいに「ダメなものはダメ」論法で語
ることが出来るので、勉強していない人間でも語りやすいのかもしれないな。
少しは核融合発電推進を歌うミュージシャンや、移民が実は経済成長には役立た
ないことを訴える詩人とかも出てくれば良いのにな。作品がイマイチなら、耳を
貸すことはないけれど。