残暑と言うには茹だるような暑さが続く9月。下旬に差し掛かるにも関わらず、肌を焦がすような陽の光と不快な蒸し暑さを避けるようにザン・ビエは自宅で過ごしていた。
日課の筋トレを終えチョコレート味のプロテインを飲み干し、パソコンデスクの前に座りウェブブラウザを立ち上げる。ライブ配信サイトの視聴画面には開演までの時間がカウントダウンされていた。
開演まで約30分。
デスクトップに常駐するコミュニケーションアプリに目を移すと、地元の友人がオンラインになっていた。サービス業のため休日が不定期な彼に連絡してみると、その日はオフのようだった。これ幸いとライブ告知のフライヤー画像を送り、自分の家で一緒にこのライブを見ないかと誘ってみると直ぐ様快い返事が届いた。
彼が来るならと地元友人のグループへもアニソンライブの鑑賞会をお誘いしてみると、ポツポツと快い回答が続いた。直前の誘いにも関わらず、意外にも賑やかになりそうだ。
第4回岡山アニソンワールド。このアニソンライブには、地元友人グループにも属する豆山賊を含め、ザン・ビエの友人、ジャギ、hayata、ダイヤが集まったG4というアマチュアコピーバンドが出演する。
G4は、ギターボーカル2名、ベース兼コーラス、ドラムの4人バンドで、一般的な4人という意味の『General 4』から名付けられた。自分たちが大好きなロック・ミュージックを共有し、持ち前のパワフルな演奏をもって観客を沸かせる。その完成度は『General』というより『Genius』ではないかとも囁かれている。
開演の15時になった。楽しい時間が始まる。
20時半。G4の出演時間に合わせてか、ザン・ビエの誘いに乗った彼の友人たちが揃っていた。
「あ、あれ豆山賊だ」
格闘ゲームのオフライン対戦している手を止め、一同配信画面に目を向ける。早々と食べ終えた差し入れのファストフードを横にやり、各自視聴の体勢を取る。
「でっか!身長どんくらいあるんや」
ギターボーカルのジャギを見て友人の一人が声を上げる。
「左の人、ヒゲすごいな!」
「付け髭?」
「豆山賊、フードかぶっとるやん」
「ほんまや。雰囲気出るなー」
「ククリくんかよ、テルミか」
それぞれが岩場で砂金を見つけたかのようにはしゃぐ。
ザン・ビエも満面の笑みで堪能する。自分の知らないユニットの渾身のパフォーマンス、台本のないリアルタイムでのイレギュラーな事態、観客とのコール&レスポンス。
この手のライブイベントは宝探しだ。ザン・ビエは友人とその時間を共有することの喜びを噛み締めていた。