ある天才エンジニアの転落(その①) | たにやんのブログ

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1999年、後にネットバブルと呼ばれた、ソフトバンクや光通信の株価が高騰し、高値を付けたその時代に、その男はある会社に就職しました。

彼はインターネットに興味がありました。

その可能性を感じたのか、彼が選んだ就職先は、当時ネット関連株という扱いをされていたものの、後に株価が大暴落してしまう、本来ネットとは関係のない会社でした。

その男が最初に配属されたのは、徹底したドブ板営業でテレアポと訪問を繰り返す、法人向け商材の事業部でした。

インターネットに興味があったからこの会社選んだのに、と思ってもあとの祭りでした。当時はまだ若かったので、ひたすら耐えるしかありませんでした。

そうしているうちに、株価の暴落が始まりました。会社はあっという間にお金に詰まった状態になり、社債の償還資金の工面にも困る状況になりました。喉から手が出るほど現金が欲しかった会社は、あるマザーズ上場企業をTOBで傘下に収めました。

この会社は曲がりなりにも、彼が望んでいたインターネット関連の会社でした。すぐに異動願いを出したその男は、ここがまさに天職だと感じ、開発や新サービスの企画のため、寝る間も惜しんで働きました。

彼は「地域ポータルサイト」を開発しました。このサービスは、47都道府県それぞれにポータルサイトを持ち、地域情報がインターネットから得られる、タウンページがネットになり、広告収入で成り立つ前提の事業モデルでした。
ドブ板営業が日本一得意な部隊を持つグループなら、全国津々浦々から広告も取ってこれるだろう、描いた絵に一点の曇りもないではないか、その男も自画自賛でした。
もちろんグループのオーナー社長も手放しで讃え、なんと社名まで変更し、ある事件で汚れた象徴となっていた名前も捨てて、心機一転生まれ変わった会社としてスタートを切ることになりました。

昔、foursquareというサービスがあったのを覚えておられる方も多いかと思います。GPSを利用し、行った場所でチェックインをするというものでしたが、なんとこれをfoursquareより先にサービスとして提供していました。
これに加え、GPSから最寄りのお店を検索するという、現代ではごく当たり前の機能をサイトに付けていましたが、当時スマホはまだ影も形もなく、ガラケーの世の中でした。
画期的で先進的な機能も、積極的に広報を行うこともなく、世の中に広く知られることはありませんでした。

一方ではこのサービスに注目する企業もありました。ある不動産ポータルサイト大手の会社が業務提携を申し出て、サービスが広まるならと喜んで提携しました。

しかし、その不動産会社はノウハウを吸収すると一方的に提携を打ち切り、今度は自社で「地域ポータルサイト」を始めました。
同社の決算説明資料でも、毎四半期ごとに進捗が詳らかに開示されていました。しかしながら思ったように収益を上げられず、巨額の特損計上とともに、サービスを打ち切り、撤退しました。

この会社でも、鳴り物入りで始めたサービスにも関わらず、収益が思うように上がらずに、赤字を垂れ流し続けていました。

(→「その②」に続く)