「内部告発の時代」(深町隆、山口義正) | たにやんのブログ

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お久しぶりです。

しばらく読まずに放置していたこちらを読んでみました。

「オリンパス現役社員」とプロフィールに書かれた深町氏と、FACTAでオリンパスの事件を追った山口氏の共著です。
軽い気持ちで読み始めると、私も今までに個人的に関わった「事件」やそれに関連した人物、当時の心情など記憶がよみがえり、この本も多くの関係者やその心の動きまでよく取材してあるなと感心して読み進めていました。
本編からいくつか抜粋してみます。

「権力抗争や陰謀ではなく、人として良心に逆らえなかった」

「一方で内部告発は不正を暴くのと引き換えに告発者の心を歪めてしまうことさえある」

「不正や不条理に対する憤りや、それを正そうとする自分が理不尽な仕打ちを受けることに対する恨みは、想像もつかないほどの力強さで人の心を捉えて離さない」

「不正を正すという大義名分があるため、いつまでもそこにとどまって争い続けることを正当化してしまう」

「どこかで着地点を探らないと、家庭が崩壊したり、人生そのものが空疎なものになりはしないかと心配するのだ」

「もしもあなたが、うちの会社にも、「いい人」が多いなと感じたら用心しなければならない。そうした人々の集団は時としてとんでもない方向に暴走してしまうことがあり、これほど恐ろしいものはないからだ」

「性格的に穏やかで丸みのある人たちの集まりだから、組織の和を乱してでも、あるいは身を挺してでも不正にストップをかけようとする人物がなかなか出てこない」

「彼らは会社のため、組織の和のため、自分が我慢して口をつぐめば円滑に物事が運ぶと考えがちだ」

「部下が「それは法律上、問題です」と反対意見を唱えると「上司の俺が私心を捨ててこんなに一生懸命やっているのに、部下のお前がなぜそれを理解しようとしないのか」と、怒りの矛先を部下に向けて排除してしまう」

「こうして気がついた時には問題は取り返しがつかないほど深刻になっており、その不正は排除された部下の内部告発によって発覚するからだ」

「不正を不正と思わない体質やこれを隠し続けようとする企業風土はもはや組織に根付いてしまっており、これを根絶やしにするのは難しいだろう」

「新たに入社した職員がそうした企業風土に染まってしまえば、定年退職するまでの数十年間はそれを後輩社員に引き継ぎ続けるからだ」

いわゆる「クソ株」の発生から、何らかの出来事でそれが表に出るまでに延々と続く連鎖ですね。もしそこで働くことになった場合、経験がなければ見抜くことは非常に難しいですし、たとえ腕利きのスペシャリストであったところで、流れに逆らい声を上げるのは難易度が高いことと思います。

こんな記述もありました。

「もしもあなたが内部告発を敢行するのなら、できれば満たしておいた方がいい条件がある。それは、
①あなた自身が優秀な人材で、精神的に会社から自立していること
②我慢強い性格であること
③組織の内外に味方になってくれる人物が何人かいること
この三点である」

本編にもありますが、会計士に反市場勢力と組んで活動する人物がいるように、弁護士の世界にも札付きの法律事務所はありますし、たとえ大手法律事務所であっても、質の悪い弁護士は存在します。
一方で、知識経験にも優れ、人間として素晴らしい先生も法律の世界には大勢いらっしゃいます。図らずも、私も身を持って経験することになりましたが。

結論として、私が思うに、もし自分がこのような場面に遭遇した場合、間違ったことは正されなければならないのはもちろんですが、手に余るようだと速やかに外部の専門家の力を借りながら、自身の身の安全も図り、まずは自分の生活や人生を最優先に考える事かと思います。
裁きは法律や、場合によってはマスコミ、世論に任せ、それまでの道筋を付けることができればゴールと考え、一刻も早く記憶から離して、自身の日常生活に戻る事が最優先です。その事に気を取られていつまでもこだわってしまうのは仕方のないことですが、悪事を働く者はどんな形であれ、必ず転落することを私もこの歳でようやく学びました。