朝、新聞を手にしたら、まづどの面から読みますか?
とりあへず1面、そして社会面(俗にいふ三面記事)、必要に応じてラジオ・テレビ欄――そんな順番でせうか。
41年間、新聞記者をしてゐたぼくは少々特殊な読み方をします。
1面の大見出しをざつと読んだら、次は4面に移るのが癖になつてゐます。
4面といふのは、社説などが載る3面の裏側のページです。
ここは日ごろはあまり人の目を引かないページかもしれません。
よほど政治記事が好きな人でなければ4面は素通りといふ人が多いと思ひます。
1面が主要政治記事だとすれば、4面は第2政治面ともいふべきページで、政権党内のいはゆる政局の動向とか野党内のニュースを伝へます。
正直なことを言へば、1面や社会面はどの新聞も似たり寄つたりで、大ニュースだけが載ります。記者倶楽部の発表物が大半だからです。
それに対して、4面の記事はその新聞社の政治記者がどこまで政界の深層に食ひ込んでゐるかの目安になります。
しかし、最近は4面に目をやる読者ほとんどゐないのではないでせうか。
実は今や、この4面までがどの新聞も似たり寄つたりの記事ばかりになつてゐるのです。
ぼくは永いこと政治部に所属してゐましたので、毎朝、各紙を手にして真つ先に開くのがこの4面でした。
現役のころ、政権党である自民党内では、五大派閥が血みどろの党内抗争を展開してゐました。
田中角栄率いる田中派、福田赳夫の福田派、大平正芳の大平派、三木武夫の三木派、中曽根康弘の中曽根派の五つです。
これ以外にも椎名派や水田派など小派閥も存在して、連日、「アイツは地元でA派閥に頼らないと選挙が危ないので、間もなく「あつちの水は甘いぞ」と派閥替へするのではないかとか、「BはこのところC派やD派の会合にこまめに顔を出して移動先を物色してゐるやうだなどと、党内でひそひそ話が止むことがありませんでした。
自分が担当してゐる派閥の議員にをかしな動きはないか、派閥の親分が他派閥の議員と頻繁に極秘接触してゐないかなど、毎朝、各紙の4面を開くたびにひやひやでした。
ぼくの見るところ、いま自民党内は全くの凪(なぎ)状態です。
1年前に「初の女性総理誕生」といふ興奮がいまだ冷めないこともあつて、世の中だけでなく自民党内の関心も高市首相ひとりに集中、ここしばらく派閥抗争の話など誰からも出ないやうです。
普通に考へれば抗争がないのは結構なことですけれど、ぼくは政権党にこんな平和な、無風状態が続くと、日本は将来大丈夫なのだらうかと危惧してゐます。
派閥抗争は政治家にとつては必須な権謀術数を磨く願つてもない場です。
やがて出世してそれなりの役職に就けば、ときには世界列強との外交交渉も必要になります。
もちろんそれだけでは困りますが、派閥抗争のイロハも知らないひ弱な政治家たちが日本の政権党の中枢を占めたとき、果たしてトランプ大統領や習近平主席など、百戦錬磨のしたたかな世界の政治家たちとちやんと戦へるのか不安になつてしまひます。
