大手新聞社が首都圏18か所で展開するカルチャーセンターのうち、中堅の2つのセンターを年末で閉鎖することを決定しました。
業種を問はず、コロナの災厄で店を閉めるのはいまどき珍しくもありませんが、この世界的な疫病の波がたうたう自分の足元にまで押し寄せてきたかと思ふと、時代の末端で生きてゐるのだといふ実感がわいて、妙に感動します。
といふのは、ぼくは閉める2つのセンターのうちの一方で、新聞社をリタイアしてから12年間、「エッセーを書く」といふ文章講座を続けてゐるのです。
受講者は現在15人ほどで、現役のサラリーマンもゐますが、ほとんどは子供の手が離れた中年主婦や、お孫さんとのテレビ電話が至上の楽しみの老女、旅行好きな閑雅な老夫婦、ネコを8匹も飼ふ教師、気ままな一人暮らしを愉しむ80男などで、センター閉鎖が発表されると、受講者が話し合つて「いかなる形態でもいいから、講座は続けてほしい」といふ要望書を持つてきました。
このところ広告収入の激減や、「新聞を読まない」若者が増えて定期購読者が減少するといふ苦悩をかかへる新聞社が、赤字続きのカルチャーセンターを切るのはやむを得ないことですが、ここで受講してゐる人たちは新聞の大事な購読者ですから、センター閉鎖に怒つた受講者に新聞をやめられたら困ります。
ぼくがカルチャーで講座を開いたのは、41年間お世話になつた新聞社へのご恩返しのつもりで、ことし喜寿を迎へたことだし、閉鎖を機に講座をやめようかとも考へたのですが、新聞社からの要請もあつて、10月期から「〇〇のエッセー塾」といふ、本名を冠した私塾の形で続けることになりました。
いつもワインを飲みに行くブラッスリーの個室を借り、講座の中身は今と全く同じ形で、月に4日ひらきます。カルチャーと違つて、ここでは講座中にコーヒーやジュースが飲めます。
今のセンターがJR駅のコンコース直結なのにくらべ、新教室は駅から8分ほど歩かなければなりません。
でも、受講料は新聞社の取り分がなくなつたのでほぼ半額。結婚式場併設のお店ですからコロナ対策も完璧で、当初、ぼくは10月期は今のまま継続と思つてゐたのですが、「善は急げ」といふ受講者の声で10月から急遽切り替へることになりました。
時代を反映して、受講者からは「パソコンを使つてリモートの講座をやれないか」といふ要望が出ました。
これはお断りしました。今もエッセーの提出と添削はパソコン経由ですが、講座そのものは直接、教室で顔を合はせて、お互ひの目を見て、でなければ文章の指導などできません。
最近、新聞でも雑誌でも、安直な表現、をかしな文脈、稚拙な構成の記事や文章が多くなつた気がしませんか。
あれはおそらく、編集者やデスクが執筆者とリモートのやり取りで済ませるやうになつたせゐです。
