「こんな暑い中、散歩するんですか」
家人が「とても理解できない!」といふ顔をします。
「一日最低5000歩は歩かないとね。人は足から衰へるつていふから」
「歩くのはいいですけど、熱中症になつても知りませんよ。ほら、出かける前にコップ一杯のお水ーー」
差し出された氷入りの麦茶を呷つて出発です。なんとなく24時間テレビのマラソンランナーみたいです。
毎日会社に出勤してゐたころは気にもならなかつたのですが、仕事がなければ出歩かない生活になつてから、「けふは何歩歩いたかな」とふと不安になることがあります。
人間ドックのたびに医者から「来年までに体重は70キロを切つてくださいね。簡単なのは歩くことですよ」とお説教されるのも、「歩数」を気にし始めたきつかけです。
散歩と言つても、たんぼや公園を歩くわけではありません。
喫茶店やバーやレストラン、コンビニ、魚屋、薬屋などが連なる普通の町中です。路地の奥にはソープランドなんかもある。周囲の歩度に合はせるから、当然ほどほどの速さにはなります。
しかし、ただ歩くだけでは面白くない。それでなくても年中退屈し、常に何か椿事が身辺に起きないかときよろきよろしてゐる気の多い初老の男。
「あれ、こんなところにイタリアンの店が開店したのか。いつまでもつかな」
「事後の一休み」さながらの、ランチのひと稼ぎを終へてコックも女店員も店内の空気もボーッと弛んだ店に入り、「ワイン、一杯だけどいいですか?」とカウンターに腰を掛けます。
さらに1000歩ほど行きスタバの前に来ると、まだ30分近く歩くからこのへんでカプチーノのショートでも飲んでいくか、と小銭入れから320円を用意して、硝子ドアの小さなプラスチック板を押します。
カプチーノに砂糖は入れませんが、ダイエット目的の散歩だといふのに、途中でワインや珈琲を飲んだりしては逆効果かなと少々反省しつつ、でも世の中には腹いつぱい食べながら痩せる療法もあると聞くし、第一、寄りたい店を我慢してストレスを溜めてはそれこそ体に悪い、などと自分勝手な理屈をこねながら、スタバの一番歩道側の席で道行く人を眺めて夏の夕刻の一時を過ごすのです。
家人が「とても理解できない!」といふ顔をします。
「一日最低5000歩は歩かないとね。人は足から衰へるつていふから」
「歩くのはいいですけど、熱中症になつても知りませんよ。ほら、出かける前にコップ一杯のお水ーー」
差し出された氷入りの麦茶を呷つて出発です。なんとなく24時間テレビのマラソンランナーみたいです。
毎日会社に出勤してゐたころは気にもならなかつたのですが、仕事がなければ出歩かない生活になつてから、「けふは何歩歩いたかな」とふと不安になることがあります。
人間ドックのたびに医者から「来年までに体重は70キロを切つてくださいね。簡単なのは歩くことですよ」とお説教されるのも、「歩数」を気にし始めたきつかけです。
散歩と言つても、たんぼや公園を歩くわけではありません。
喫茶店やバーやレストラン、コンビニ、魚屋、薬屋などが連なる普通の町中です。路地の奥にはソープランドなんかもある。周囲の歩度に合はせるから、当然ほどほどの速さにはなります。
しかし、ただ歩くだけでは面白くない。それでなくても年中退屈し、常に何か椿事が身辺に起きないかときよろきよろしてゐる気の多い初老の男。
「あれ、こんなところにイタリアンの店が開店したのか。いつまでもつかな」
「事後の一休み」さながらの、ランチのひと稼ぎを終へてコックも女店員も店内の空気もボーッと弛んだ店に入り、「ワイン、一杯だけどいいですか?」とカウンターに腰を掛けます。
さらに1000歩ほど行きスタバの前に来ると、まだ30分近く歩くからこのへんでカプチーノのショートでも飲んでいくか、と小銭入れから320円を用意して、硝子ドアの小さなプラスチック板を押します。
カプチーノに砂糖は入れませんが、ダイエット目的の散歩だといふのに、途中でワインや珈琲を飲んだりしては逆効果かなと少々反省しつつ、でも世の中には腹いつぱい食べながら痩せる療法もあると聞くし、第一、寄りたい店を我慢してストレスを溜めてはそれこそ体に悪い、などと自分勝手な理屈をこねながら、スタバの一番歩道側の席で道行く人を眺めて夏の夕刻の一時を過ごすのです。
