きのうの講演は早朝9時半からでした。場所は箱根湯本温泉のホテル。団体様を得意客にしてゐる感じの大きなホテルです。

 講演の相手は、某県内の全市から集まつた選挙管理委員会委員長ら幹部たち約70人。主催者の説明では、前の晩、懇親会があり、この講演がをはると解散ーーのスケジュールださうです。

 温泉に浸かり、宴会でわいわいと騒いだ翌朝、朝食を済ませ身支度をしてから大会議場に集合させられ講演ーー客の身になると、なんともシンドイことでせう。

 「選管の委員長さん達ですので、時節柄、衆院の解散・総選挙がいつになるのかが最大の関心事です。そのへんのお話を集中的にして頂けると…」

 主催者の幹事さんは言ひます。
 いざ衆院解散となると40日以内に総選挙。選管としては投票所の会場の予約に気を遣ふのださうです。投票所となるのは学校や公共施設。選挙は日曜日なので、会場はどこも予約が1年ほど先まで決まつてゐる。

 「今は国の選挙だからと言つて簡単に先約をキャンセルしてもらへる時代ぢやないんです。いづれにしろ9月までにはあるわけですが、選管としては投票所の確保が出来なかつたらそれこそ一大事ですから」

 講演のタイトルは「日本の政治はどう動くか」。何をしやべつてもいい演題にしておくのは当方のズルイところ。

 大型のガラス窓越しに箱根の新緑を望む最上階8階の大広間が会場です。結婚披露宴でもやれるやうな広さ。そこにゆつたりとテーブル、椅子が並ぶ。

 壇上に立ち、司会者の弁を聞きながら会場を見渡します。年輩の方たちですから、それなりにきちんとしてゐます。温泉宿の広間といふ、どことなくだらけた雰囲気はありません。

 選管委員長といふのは土地の名士たちです。県会議員上がりとか市長経験者もゐて、地元選出の代議士の系列に連なる人も少なくありません。政治のプロと言つてもいい。いい加減な話でお茶は濁せません。

 全員に大層な「研修会資料」が配布されてゐました。写真付きの講師紹介、講演のレジュメ、僕が用意したA41枚の資料、メモ用の白紙がホッチキスで止めてあります。

 温泉で選管委員長の懇親会を開くだけでは税金も支出しにくから、翌朝、勉強会をやりましたといふエクスキューズの気味がなくもない。

 早くここを出て、箱根に登つて芦ノ湖でも遊覧して帰らうかといふ人もゐるでせう。昨夜は寝不足だから、早く家に帰つて老骨を休めたいといふ方もいらつしやるでせう。

 講演を始める前から、聴く方々の心境を慮るのも奇妙ですが、やや気の毒な思ひがしたのは事実です。

 「みなさんの関心が、いま、解散・総選挙はいつか、の一点に絞れらてゐるのはよく分かりますが、その話は最後にします。最初にそれを話してしまふと、ゆうべの宴会の疲れで皆さん、後半は眠つてしまひさうですから」

 90分間、それでも居眠りをする方はなく、ほつとしました。